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春夏秋冬・・・
四季の春や秋もあれば、
これを人生に喩えてもつかう。
街を歩いていて、
何処からか漂う金木犀の香りに、
「秋ねェ」
・・・と呟く人がいた。
或いは、
フッと見上げた視線の先に、
紫に色づいた桑の実を見て、
「秋ねェ」
・・・と笑顔を見せる人がいた。
こうして秋の訪れを感じる言葉を耳にしながら、
ぼくは、
日暮西山(じつぼせいざん)なる
言葉を頭に浮かべる。
いよいよ人生の秋、
葉の落ちた枝樹を過ぎる風の
身に滲みる年である。
・・・にも関わらず、
日暮途遠(にちぼとえん)である。
頂上を目指して延々と歩いて来た。
・・・が、気付くと、
いまだ山麓なのである。