買い物を済ませ、
新宿へ出てコーヒーを飲んだ。
横の席に座った女性が
たばこを出して火をつけた。
プワ~ッと煙が流れてきて
むせってしまった。
女性に胡散臭そうな目で睨まれた。
「喫煙席か・・・すみません」
席を移った。
そして、どうして我輩は
「すみません」なんて謝ったのかを考えた。
謝る必要などないだろう?
いくら喫煙席だからといって、
人に向かってプワ~ッはなかろう。
タバコの煙にまかれると、
否が応でも肺ガンで亡くなった従兄弟を思い出す。
亡くなって3年が経つ。
仲の良い従兄弟だった。
亡くなる時は表から骨が見えるほど
痩せてしまっていた。
癌はタバコが原因だったに違いない。
二十歳になった彼に、
「吸ってみるか?」
と、すすめたのはぼくだ。
東京と山形では遠い。
会う機会の少なくなり、
ヘビースモーカーだったぼくは、
わけあってタバコをやめた。
タバコを吸わせたのだから、
自分が止める時には、
止めさせることも
しなければならなかったことだ。
それをしなかった。
・・・ために彼は亡くなったと思っている。
彼は絵を描いたが演劇も好きだった。
ぼくが大隈講堂で芝居をした後に
一緒に撮った写真がある。
煙にまかれるたびに思い出す従兄弟の
やせ細った姿を思い出す。
そして、その都度「済まなかった」と思う。
きょうも、その日になった。