
本文はここから
ある日のことでございます。
某ビルの4階でエレベーターを待ちながら、
これから行く友人に携帯から電話を入れました。
「これから行くから、早くても・・・」
そこまで言った時にエレベーターの扉が開いたのでございます。
「いまエレベータに乗るから、降りてまたする」
・・・と言って携帯を閉じようとした時でした。
手元が狂いまして、
「アッ!」
携帯電話はエレベーターと床の隙間を・・・・・音もなくすり抜けたかと思うと、
階下の暗闇の中に!

かすかにだが、携帯電話の悲鳴が聞こえたような気がしたのでございました。
すわ~っ一大事とばかり転がるように階下に急いだのでございますが・・・
1Fに行ってもダメ、
B1に行ってもダメ・・・
B2に行くと、そこが最終階でございました。
「あゝ、どうしよう」
「管理人室へ行くこう」
頭は順調に回転しているのがせめてもの慰みとでも申しましょうか・・・

そんなの無理だという・









このようなやり取りの末、
「関係者以外立ち入り禁止」のドアを開けてもらったのでございます。
更にドアを3つ。
埃臭い中を進んで、先を照らした懐中電灯の明かりの中に、
何やら破損したマシンが浮かび上がったのでございます。
少なくても3っつのパーツに分かれてしまってはおりますが、
明らかに携帯電話であることだけは見て取れました。
しかも・・・・
「もしもし・・・」
微かにではございますが、
電話がしゃべっているではございませんか・・・・





始めに声を上げたのは、
さっきまでゴネていた管理人ではございませんか。


何という生命力

声の主は友人だった。
ことの成り行きを話しますと、
「じゃあ、さっきの物凄い音は携帯が落ちた時の音だったのか・・・」
まさに感動の声を上げたのでございます。
この時の感動は昨日のことのように思い出されます。
携帯のショップに行き、この話をしました。
「はァ・・・そうですか!」
もっと驚け!・・・そういってやりたい気持でございました。
バラバラになった携帯でございますが、
わたしが現在使っているものは、その孫にあたるのでございます。
わたしは3っつに分解しても健気に生き抜いてくれた携帯を、
最強の携帯と称して、
胸のうちに大事にしまっておこうと決めたのでございました。
これで、この話は終わりでございます。