渋谷区神宮前にビルを持ち、一階フロアを美容院に貸し、2階フロアは・・・
あまり詳しく書いてしまうと、「あゝ、あそこだ・・・」と、直ぐ分かってしまう。
個人情報漏洩につながりかねないので、ここで…ストップ!
実はこの劇団員は、屋上に小さな庭を造り、池にはガマ蛙も飼っている。
(…らしい)
奥方や娘達は、彼のこの趣味にはついて行けず、大反対だったようだ。
説得に苦労したらしいが、折角造った池も放っておくとボウフラが湧き、
蚊が発生するとか…誤魔化しと、妙な脅しをかけて、話題をそらすことで
がまの居住権を獲得したたのだという。
だが、このガマ(蝦蟇)という生き物にまつわる民話や伝説も多いのに驚く。
ではその一つ、
住まいから程近い麻布の「がま物語」を簡単に・・・
聞きかじった話なので、途中からはなし道に迷うのが僕の悪いところだ。
が、今回はあらましだけを書くことにしたい。
☆
さて、東京が江戸といわれていた頃でございます。
ま、江戸の名物といえば“火事”と“喧嘩”といわれておりますが、
いえいえとんでもございません。
そそっかしさ、思い込み、やせ我慢、強がり、お節介焼き…から来る
涙もろさに人情味も名物と言えなくもありません。
…ただしコレ以前の話。
麻布近辺も火事の多いところで、
なかなか火事に遭わない家がありますと、
「あそこの親父は付き合いが悪いと思ったら、火事でも同じだ」
とんでもない陰口までたたかれる始末でございました。
三年と経たない短い間に、二度の火事に見舞われましたが、
その言うところの、“付き合いの悪い”一軒の家がありました。
「隣りまで全焼したのに、あそこだけは焼け残った」
「何か、マジナイでもしてるなら聞こうじゃないか」
焼け出された連中が、雁首そろえて訪ねて行きました。
すると家人は、「この池のせいでしょうか」
池に案内致します。
と、池には水がほとんどなく、少しばかり残った
水の中に、大きなガマ蛙が一匹昼寝をしておりました。
家人は、
「夕べの火事で、一生懸命水かけをしておりましたから、
草臥れて寝ているのでございましょう」
こう説明したといいます。
付け加えて、
「わたしも懸命に水かけを手伝っているうちに、火傷をしましたが、
ガマが流した汗を煮つめて塗りましたところ、ご覧のように完治しました」
これには、皆、二度びっくりです。
これはいいことを聞いた・・・と、ガマ蛙を集めて汗をかかせ、
それを煮つめ、「ガマの油」として売りましたところ、大人気。
いつの間にやら・・・「やァやァお立会い・・・」と言いながら、
きわどいパフォーマンスを見せて、
商売にする者まで現れたのだそうでございます。
麻布の住民は、売ったお金で家を建て直し、
池を作ってはガマを飼うようになったそうでございます。
以後数百年を経て、高級住宅街と言われるまでになりましたが、
果たして、どれだけの家がガマを飼っているか分りません。
喉もと過ぎれば熱さ忘れる・・・など諺がございますが、
言い伝えを大切にするなら、麻布から六本木まで、
ガマ効用を見直してもいいように思うのでございます。
どんどはれ!
・・・やはり、聞いた話とは少々違いますが、お許しいただきたいと思います。
ところで友人に、
それでガマを飼っているのか…と聞きましたら、
こんな話は、聞いたこともない…とのことでございました。