晩秋晩秋 汽車は高架を走り行き 思ひは陽ざしの影をさまよふ。 静かに心を顧みて 満たさるなきに驚けり。 巷(ちまた)に秋の夕日散り 舗道に車馬は行き交へども わが人生は有りや無しや。 煤煙くもる裏街の 貧しき家の窓にさへ 斑黄葵(むらさきあふい)の花は咲きたり。 詩集「氷島」 萩原朔太郎 定年の日を迎えたとき、心に浮かんだのはこの詩でした。