★この物語は、全てフィクション
です。たとえ劇中に実在する
名称があっても、架空の物語
ですのでご了承ください。
＜痛快予想バトル＞
小説「疾風スタジアム」
第１回 ～祭りの準備～
最初は、ただの「遊び」だった。
この熱狂のきっかけが何だった
のか今となってはわからないが、
たぶん誰かがＳＮＳで呟いた
せいだったと思う。
このゲームは、東京競馬場の
ある府中市が舞台となっている。
競馬場を取り囲む町が、ＧⅠレー
スを町単位で予想して戦う。
昨年の秋、私が企画した。
１９年秋。
スプリンターズＳから有馬記念
までの１０レースを予想し、その
合計得点を町ぐるみで競った。
参加した町は、以下の熱い６チ
ームだ。
寿町
天神町
緑町
八幡町
本町
是政 （これまさ）
まず戦いは、枠順確定後、ユー
チューブで２つの数字が発表さ
れる。
それがスタートの合図だ。
発表された数字に導かれた６頭
から、各チーム１頭を選択、その
馬が複勝圏内に来るかどうか、
それだけを競う。シンプルな
ゲームだ。
昨年、最高の盛り上がりとなった
有馬記念。
優勝はこのレース終了まで持ち
越されていた。
その模様を、ユーチューブの告
知から再現してみたい。
それは、こんな始まりだ。
◆２０１９ 有馬記念
（ユーチューブより）
勇ましい音楽が流れている。
その音楽にのって、口上が語ら
れている。
臨 兵 闘 者 皆 陣 烈 在 前
北の「玄武」
南の「朱雀」
東の「青竜」
西の「白虎」
四神から受け継ぐ、未来への
予言。
この２つの数字は、四神の
「御心（みこころ）」
そして、それを語ることのできる
者は、この世に一人しかいない。
荒神翔太 （あらがみしょうた）
煙の中から、美少年の荒神翔太
が登場する。
翔太 「今週の有馬記念、四神
の「御心」その２つの数字とは・・」
５
１１
該当馬は、これだ！！
★稼働率・・８０％
◆四神の６頭
＜５と１１にクロス（隣接）する
該当馬の６頭）
４ スティッフェリオ
５ フィエールマン
６ リスグラシュー
１０ サートゥルナーリア
１１ キセキ
１２ クロスコミア
この中から、１頭選ぶべし！！
ウオーッ、という歓声とともに
レース映像が流れ、やがて勇
ましい音楽が終了する。
はっきり言って、口上なんか何
でも良かった。
だから昔読んだマンガの台詞
をパクリ、ちょっとした演出を
加えた。
熱狂できれば何でも良かった
のだ。
私の唯一の問題は、荒神翔太を
誰にするか、それだけだった。
この男に関しては、いずれ語る時
が来ると思う。
＜ゲーム仕様＞
このゲームは、選択した馬が複勝
圏内に来るかどうかを争う。
よって、配当は一切関係ない。
ルールに基づいた点数を集計し、
合計得点を競う。
それが「疾風スタジアム」だ。
◆得点表
＜着順＞
１着・・３点
２着・・２点
３着・・１点
該当馬なし・・５点
＜単勝オッズ＞
・ ５倍までは１点
・１０倍までは２点
・１５倍までは３点
・２０倍までは４点
・２１倍以上は５点
・該当馬なしの時は、１着馬
の単勝オッズによる点数
着順と最終単勝オッズによっ
て導かれた合計得点を、全１０
レースで競う長丁場のゲーム。
人気馬だけ買えば良いわけ
ではない。
何が起こるかわからない。
そこが、皆を熱狂させる一因
だった。
昨年の有馬記念。
６つの町が指名馬した馬は、
以下。
寿町・・・・リスグラシュー
天神町・・/サートゥルナーリア
緑町・・・・サートゥルナーリア
是政・・・・フィエールマン
八幡町・・//キセキ
本町・・・・スティッフェリオ
クロスコミアを指名した町は
なかったが、下位のチームは
自然と人気のない馬を選択し
がちになる。
有馬記念当日。
緑町に隣接する「府中の森
公園」には、すでにたくさんの
人が溢れていた。
６つのチームが指名した馬の
書かれた会報を、誰もが持っ
ていた。
指名馬について議論する人々。
祭りの半被を着ている者もいて
勇ましかった。
彼らは、真剣だ。
すでにこれは、遊びを超えて
いた。
１位の寿町と２位の天神町の
得点差はわずか１点。
２つの町は血走り、その雰囲
気は異様だった。
彼らは、荒神翔太の登場を、
今か今かと待ち望んでいた。
やがて、荒神翔太が登場する。
大きな歓声があがった。
「遥か、四神に導かれたグラ
ンプリレース、有馬記念を勝つ
のは、どの馬だ！！」
有馬記念のファンファーレが
鳴った。
盛り上がりは最高潮だ。
誰もが、スタートを凝視。
息を止める感じが、隣りから
伝わってくるようだ。
各馬、一斉にスタート！！
２分３０秒のドラマが始ま
った。
歓声の中、４コーナーまでは
一段の競馬。
手に汗握る一戦だった。
しかし直線、１頭だけ違う足
の馬がいた。
リスグラシューだ！！
一瞬の静寂。
１着は寿町が選んだリスグラ
シュー（６．７倍）。
天神町の選んだサートゥル
ナーリア（７．６倍）も２着に
来ていた。
抱き合って喜ぶの者。
ため息をつく者。
寒い中、ここだけは空気が
熱かった。
リスグラシューは１着なの
で３点、オッズから２点を
加算して計５点。
サートゥルナーリアは２着
で２点、オッズから２点を
加算して計４点。
これにより、かろうじて寿町
が逃げ切った。
１９年秋
優勝は寿町。
歓喜に沸く寿町。
リーダーは狂気していた。
一方、この世の終わりのよう
な顔の天神町。
そこには、このゲームに賭け
てきた男たちの熱き思いが
溢れていた。
寿町の男たちは、朝まで酒を
飲み、敗北した者たちは次回
のリベンジを誓った。
その「疾風スタジアム」
が、今年もやってくる。
いよいよ春のＧⅠシリーズの
幕開け。
高松宮記念から安田記念まで
の１０レースを予想する、長き
戦いが戻ってくるのだ！！
四神の「御心」の発表は、
金曜日。
各チームの指名馬は、日曜
日の１０時が締め切りだ。
競馬場をめぐる町内対抗戦。
２０年春、今年はどんな展開
が待っているのか？
今、確実に言えることは、また
眠れない日々が続くとい
うこと。
それだけだ。
ただ・・。
祭りの前夜。
今年は、不吉な風が吹いて
いた。
本当にやるのか？
この逆風を切り裂き、無事
施行されることを祈っていた。
次週、高松宮記念に続く。
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＜カッパの会＞
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