日経平均株価は年初来高値近傍での推移となっています。

 米中貿易問題やBrexit等の懸念事項も当面の出口が見え始め、残された文書署名や議会承認来が来月にも行われるのかどうか。

 市場の嫌う不透明感が取り除かれれば、四半期決算発表に目が向けられるようになるのでしょうけれど。

 

 日経平均225に対するPERが12.7倍前後と、ようやく妥当な範囲に戻ってきました。

 しかしながら、過去の推移でみられたPER=15倍水準には程遠いことに変わりはありません。

 下図は、日経平均株価と一株利益EPS、一株純資産BPSの推移を示しています。

 

 

 日経平均株価は '08年以降 '17年までEPSの推移をほぼトレースする形で推移してきました。これは日経平均株価が企業業績に対してPER=15倍前後の価値を見込んでいたことを示しています。

 さらに、日経平均株価の下値はBPSでサポートされ、企業の解散価値を下回るのはやりすぎと見ていたこともわかります。

 因みに、日銀のETF買いの平均取得単価推移は、このBPSの線にほぼ沿ったものとなっており、日本の企業をすべて解散させれば、日銀は損を抱えることがないことがわかります。

 ところが、'18年以降、日経平均株価の伸びは止まり、EPSに追従できていません。

 これが、PER低迷の原因なのですが、何が原因なのでしょうか。

 '18年以降、BPSも堅調な推移となっているのに・・・

 

 EPSもBPSも同じように上昇基調にあるというのは、両者の計算式の分母にある上場株式数に原因があるようです。

 東証一部の上場株式数は'12年9月末で3,640憶株、'14年9月末に3,983憶株、'15年9月末に4,044憶株に増加したものの、その後、恐らくは自社株買い償却等により減少しはじめて、'16年9月末に3,960憶株、'17年9月末に3,710憶株、'18年9月末に3,153憶株と、'18年に2割近くも減少しています。

 

 '19年9月末時点では3,095憶株と、ピーク時の約25%減。

 EPSの上昇は、もちろん企業業績の向上あってのことですが、分母となる株式数の減少も大きく寄与しているようです。これが自社株買いの効果(+償却)なのでしょうけれど。

 

 とすると、業績向上分はどれほどだったのでしょう。

 日経平均株価の現状の水準やPER=12.5倍前後というのは、この辺りが十分に考慮された値なのかもしれません。

 この1週間、情勢が一変しました。

 米中貿易協議が部分的な合意となり、英国の協定草案15日提出にEU前向き観測と、市場の期待感を高めることができて大幅高。日経平均株価は年初来高値を更新しました。

 

 まあ、米中部分的合意案も交渉期限を先延ばししただけでしょうし、Brexitも恐らくは期限延長で、状況が改善されたわけではないようです。

 それでも、もやもやし続けた市場に再度資金が入り始めたようで...

 

 米国企業の決算、金融系はまちまちの結果でも、もともと減益予想とハードルが低いためか、好決算に引きずられるようです。

 下図は、S&P500指数と、そのEPSの長期推移を示しています。

 リーマンショック後のこの10年間のPER平均は19.3であり、現状、その水準にあります。

 日経平均株価のPERは12.8倍程度であり、S&P500の19.3倍が妥当なのか、それとも高いのか・・・

 右軸はPER=20倍相当でS&P500指数を描いていますが、1990年から2015年まで、青いEPSの線がS&P500指数を上回っており、PER=20倍というのは長期水準からすると2~3割高いようにも見えます。

 

 それだけ、金余りの資金が流入した状況にあるということ。

 2015年以降、その傾向に慣れっこになり、FRBの資産縮小引き締めにより、低金利で借りた借金の借り換えに資金が回らないという異常な状況になってしまいました。

 経済規模が拡大したから、それに見合った資金を準備する必要があるといえば、それまでですが、本当にそれだけの需要があるのかどうか。

 さて、S&P500のEPS市場予想は来年も上昇するようですので、EPS=170もあり得そう。PER=19.3でもS&P500指数=3,280、ダウ平均株価では$29,500も視野に入ってきます。

 

 米中貿易交渉への期待感が剥落し米国株が軟調に推移しています。

 日経平均株価も少し大きめの島のアイランドリバースを形成し、今年5月初めを再現するかどうかの瀬戸際にいます。

 

 5/8にアイランドリバースを形成するきっかけとなったのもトランプ氏ツイート。第3弾分の関税率を10%→25%化でした。それから1週間後に第4弾を発表しました。

 これにより、日経平均株価は20,300円弱まで低下しました。

 

 今回の交渉も短期間で物別れに終わりそうで、第3弾分の関税25%→30%化を10/15に実施することになるでしょう。

 そうなると、日経平均株価ももう一回下押しなのでしょうか。

 

 それでも、それほど円高株安が進まないのは、日銀のETF買いがあるから。

 下図に、日銀のETF保有額と推定される損益分岐点及びTOPIX指数の推移を示します。

 

 

 日銀の保有額は30兆円にも達し、東証一部時価総額約600兆円の5%にも達しています。

 日本の主な企業の”国営化”が進み、年金・医療・教育の補助が大きくなり、日本型社会主義が進行するのですから、野党がこれを超える政策を立案できるはずもない。

 

 さて、その保有株の損益分岐点を見ると、買増しを続けてきましたので、当然のことながら上昇傾向にあります。

 過去の株価大幅下落時の傾向を見ると、'16年や昨年暮れの下落が、この損益分岐点前後で切り返してきました。

 

 今回、もし大きく株価が下落するとしても、日銀に損を出させるわけにいかないので、株価は損益分岐点近傍で切り返すことになるのでしょう。

 現状の損益分岐点推定値は、TOPIX指数基準で約1,450ですので、NT倍率を13.6倍とすれば、日経平均株価で19,720円。

 2万円攻防がもう一度あるのかどうか・・・

 

 因みに2万円を大きく割れる事態となれば、世界情勢のみならず日本経済を根本的に考え直す必要に迫られそう。