§8.カッパの授業プリント例
3. 世界の地名・人名の由来
今回、ご紹介するプリントは20年ほど前に作成したものですが、修正すべき部分は今のところ見当たらないので、ほぼほぼ現在も利用できる内容だと思っております。
ぜひ、遠慮なくご利用ください。
世界の地名・人名の由来そのⅠ
( )組( )番( )
世界のすべてを扱うと内容が盛り沢山になりすぎて訳が分からなくなる。ここでは日本が属するアジアの一部とヨーロッパにまず地域を限定しよう。さらにアジアは国名の由来を簡単に触れるにとどめておこう。
①アジア(東アジア、東南アジア中心)
a( ):古代の「三韓時代」の国名に由来。「韓」には「偉大な君
主」という意味があるとも。英名「コリア」は13世紀に侵入したモンゴルが「高
麗(コリョ)」を間違って「コリア」とヨーロッパに伝えてしまったからだとい
う。1945年、日本の敗戦により独立した際、現在の国名となる。
なお首都( )は「都」を意味し、固有名詞ではないため、本来、漢
字では表記されない。
b( ):「朝鮮」は中国人が半島北部を「朝光鮮麗」(朝
の光の美しい地)と評したことに由来。1948年、金日成が中国、ソ連の支援を受
けて独立を宣言した際、現在の国名となる。首都は( )。
c( ):「中華」とは「世界に中央に位置する華やかな国」の
こと。1912年、孫文が清朝を倒して「中華民国」を建国。1949年、国共内戦に
勝利した中国( )が現在の国名に改名。
中華民国政府(蒋介石)側は( )に逃げて「中華民国」の存続を図
る。首都は( )。
d( ):1542年、上陸したスペイン人が当時のスペイン皇太子フェ
リペ二世にちなんで命名。1898年、スペインから独立。後、アメリカ、日本と相
次いで支配を受けるが太平洋戦争終了後、独立。
アジアで唯一の( )教(カトリック)国。首都は( )
e( ):自称は「ヌサンタラ」(ジャワ語で島々の王国の意)。
1883年、ドイツ人学者がギリシア語で「 の島々」=インドネシアと命
名。その名の通り、古くからインドの影響を強く受け、地名も古代インドのサン
スクリット語(ジャワ=穀物、スマトラ=大海、ジャカルタ=勝利の都市…)に
よるものが多い。バリ島のように( )教を伝える島もあるが、多く
は( )教徒である。1602年からは( )の支配下に置か
れるが、太平洋戦争中は日本に支配され、戦後、独立を果たす。
首都は( )。
※「ジャガイモ」は江戸時代、ジャカルタからオランダ人によって日本にもたらされたため、当時
は「ジャガタライモ」と呼ばれていた。
f( ):サンスクリット語の「マラヤ」=「山地」に由来。イン
ド南東部にあった地名で、そこに住んでいた人々が移住し、同じ名前を付けた。
ポルトガル、オランダを経て1824年、( )が支配。1957年、独立
を果たす。首都は( )。
g( ):中国南部のタイ族が、モンゴル帝国の侵入によって南下し、1300
年頃、現在の地に定着。「タイ」の語源は不明だが、後世、「自由」の意で解釈
されるようになった。旧称は「シャム」で「浅黒い人の国」の意。
1939年、シャムからタイに改名。東南アジアで唯一、他国に支配された歴史を
持たない国(→親日的)。首都は( )。
h( ):1989年、ビルマから突然、改名。ビルマ語で「強い人」の
意。首都ヤンゴンは18世紀、この地を征服したビルマ人が「戦いの終わり」と言
う意で命名。なお旧称のビルマはヒンドゥー教の創造神ブラフマが英語で転訛し
たもの。インドとともに長らく( )の支配下に置かれていた。
i( ):自称は「カンプジャ」で3世紀頃の国、カンプジャに由来。
建国者とされるインドのバラモン僧カンプーの子孫(ジャ)の意。ベトナム、ラ
オスとともに( )の支配下に置かれていた。
首都は( )。
j( ):中国の呼び名「越南」に由来。越は前5世紀頃、長江南域にあ
った国で楚に滅ぼされて南下し、ベトナム人の祖となったという。10世紀まで中
国に支配、やがてフランスの支配を受けた。太平洋戦争後、南北に分裂し、社会
主義の北ベトナムとアメリカ寄りの南ベトナムとの間に緊張が続いた。1965年、
アメリカが介入して北ベトナム爆撃(北爆)を開始したが、戦争はドロ沼化し、
1973年、アメリカは撤退した。1975年、戦争が終結し、南北は社会主義勢力の
もとに統一された。首都は( )。
k( ):ラオ族の地の意。ラオは人を意味するだけ。熱帯の内陸に位置
するため、海岸を持つ国ほどには発展せず、ビルマやタイの支配を長く受けてき
た。首都は( )。
l( ):サンスクリット語で「 」を意味する「ヒンドゥ」に由来。
紀元前327年、( )大王率いるギリシア軍がインダス(これ
もヒンドゥに由来)川に到着。「ヒンドゥ」がギリシア語で転訛し「インド」と
なった。首都は( )。
世界の地名・人名の由来そのⅡ
( )組( )番( )
②ヨーロッパ:地名・人名の源流
※ヨーロッパ:( )神話中の「豊穣の女神エウロペが牛に化けた にさら
われてエレブ(エーゲ海の西側をさす)の地に着いた」という話に基づき「エウロペ(europ
e)」と呼ぶようになった。
ヨーロッパの地名、人名の由来はだいたい三つの源流に大別できよう。まずはキリスト教以前にヨーロッパ全体に大きな影響を与えた( )・ローマ文化、次にかつてヨーロッパ各地に存在し、地名などにその痕跡を残している( )人の文化及びゲルマン人の文化、最後に( )教文化である。
以下、順にそれぞれの文化に由来する地名・人名を見てみよう。なお、アジアの人名と違って欧米では姓が個人名としてもよく使用される。欧米では親が勝手に名前を創作する伝統はなく、( )や英雄などの歴史的有名人へのイメージに基づいてその中から随意に選択されるのである。また洗礼名=個人名を優先する発想から西洋では姓が後になるが、伝統的に「家」への帰属意識が強い東アジアでは姓=家名が先にくる、と考えられている(ただしミャンマーやマレー・インドネシア系、アメリカ先住民、アラブ人などはそもそも姓を持たない文化圏)。
ヨーロッパで世襲の姓を初めて全国民に義務付けたのはフランスで、1804年のいわ
ゆる「 法典」だそうだ。( )実現に向けて特権階級が独占してきた姓を市民にも開放するという市民革命の理想的目標と同時に近代的国民国家創出のため、国民への( )の強化(徴兵、徴税体制の整備)という観点からも姓の義務付けがなされたという(→日本の苗字必称令)。
A( )・ローマ文化
ギリシア神話に由来する地名、人名は数多い。「ヨーロッパ」以外でも大西洋=「 ・オーシャン」は神話において西のかなたで天を支える巨人「アトラス」にちなんで付けられた。
イギリスの地名にはローマ帝国が築いた城砦「カストラ」に由来する「チェスター」や「カスター」の付く地名も残されている。
人名では以下の名前が代表的。
・「フィリップ」:ギリシアの馬の神「フィリポス」に由来。「フィリポス」は「フ
ィロス」=「 」と「ヒッポス」=「馬」との合成語。
・「ニコラス」:同じく勝利の神「ニケ」に由来。「ニケ」に「ラオス」=「兵隊」
を付けた勇ましい名である。ちなみに4世紀の( )の司祭ニコラウスの伝説
(貧しい娘や子供たちの救済に努めた逸話が多い)から( )の
お話が生まれている。オランダ語で「聖人」を表す「サンテ」とニコラスの短縮形
「クラース」をつなげて「サンテクラース」と呼ばれていたのが、「サンタクロー
ス」に変化。ゲルマン時代の( )のお祭りに使われたアイテム(もみの
木…)を「クリスマスツリー」に転用し、さらにサンタクロースを現在のような赤
い衣装で白い髭の姿にアレンジするなど、キリスト誕生祭を北欧風の味付けにした
のは19世紀、ニューヨークにいたオランダ移民たちであった。なおニューヨークは
かつてニューアムステルダムと呼ばれていたようにオランダ系移民の多い都市であ
った。
・「 」:ギリシア語の「ゲオルギオス」=「農夫」に由来。4世紀初頭に殉
教した聖ゲオルギウスがイングランドやドイツの守護聖人とされたため、人名とし
て広く普及。
・「マーク」:ローマ神話の軍神「マルス」に由来。キリスト教福音者の聖マルコに
あやかる名として普及。
・「 」:ローマ神話の月、狩猟の女神「ディアナ」に由来。
・「エミリー」:ローマ建国者アエネアスの娘の名で原義は「並び立つ、勝利者」。
ボッカチオの作品に登場して以降、普及。男性名でエミール
Bケルト、ゲルマン文化
ア.( )文化:かつてドナウ川上流の草原地帯に住んでいた騎馬民族のケ
ルト人(「ケルト」=「 」)はローマ帝国の領土拡大や4,5世紀頃のゲルマ
ン民族の大移動などによってしだいにヨーロッパの片隅に追いやられ、その伝統
をわずかながらでも受け継ぐのは今や、イギリスのウェールズ地方(「ウェール
ズ」とはケルト人を追い払ったアングロ・サクソン人の言葉で「敵」を意味)や
アイルランド(ケルト語で「西の国」の意)などに限られてしまった。
彼らの遺産は「アルプス」(「アルプ」=岩山)、「ドーバー海峡」(「ドブ
ラ」=川)、「ライン川」(「リン」=川)、「ロンドン」(ケルト系ロンディ
ヌス族の地、「ロンド」は野性的、勇敢の意)といった地名などに残されてい
る。人名としては以下のものが代表的な名前である。
・「ニール」:アイルランドやイギリスに渡ったケルト人の言葉ゲール語で「闘士、
擁護者」の意「ニアル」に由来。5世紀のアイルランド王ニアル以降、普及。
・「 」:ゲール語の「アール」=( )に由来。ケルト民族を率いてサ
クソン人と戦った伝説上の人物「アーサー王」で普及。
・「ケネス」、「 」:ゲール語でそれぞれ「キネッズ」=火から生まれた
者、「ドムナル」=世界を支配する者の意。ケネスはスコットランド初代の王でド
ナルドは2代目の王であったため、普及。
・「ジェニファー」:アーサー王妃「グウィネヴィア」=美しき精霊に由来。
イ.( )文化:4世紀以降、中央アジアの遊牧民族( )族がヨーロッパに侵入(「 」はフン族の地の意。450年、フン族の王アッチラが
帝国侵入の拠点をこの平原に置いたことに由来。ヨーロッパの中で唯一、アジア系のマジャール人が建国した国でもあり、姓を先に名乗るというアジアの風習を伝えている)してきたため、これに押し出されるようにしてライン川とドナウ川の北側で農牧生活を送っていたゲルマン民族(もともと北欧からドイツ周辺に生活していた)がローマ帝国内に殺到し、ローマ帝国の滅亡(476年西ローマ帝国滅亡)を決定的にした。その後、ゲルマン民族は各地に部族ごとの国を作って、今のヨーロッパ諸国の源流となった。
国名として「 」=「フランク族の地」(「フランク」は投げ槍を意味する「フランカ」から)、「 」=「アングル族の地」(「アングル」は釣り針のことで、もともとの本拠地が釣り針の形をしたオランダ半島の南部であったから)、地名として「フランクフルト」=「フランク族が作った渡し場」などがある。イギリスにはアングル族やサクソン族の言葉に由来する都市名が多く、柵や囲い地を意味する「 」(→タウン、「ニュートン」は「ニュータウン」のことでイギリスでは100以上もある地名)、村や屋敷地を意味する「ハム」、開墾地を意味する「レイ」(「スタンレイ」は石の多い開墾地をさす…)、渡し場を意味する「 」(「クリフォード」は流れの速い瀬をさす…)、山城を意味する「バーグ」、泉を意味する「ウェル」などが語尾につく地名も多い。
なお特に北方に住むゲルマン人は「ノルマン」=「 の人」とか、「バイキング」=「 の民」と呼ばれた。そのうちのデーン人が作った国が「デンマーク」、スベリ族が作ったのが「スウェーデン」。「北航路の地」を意味する「ノルゲ」が「ノルウェー」になった。スェーデンバイキングの総称「ルーシ」(=「オールをこぐ人」の意)が進出して作ったのが「 」である。
※また東ヨーロッパにとどまった( )人は「スロバキア」「スロベニア」「セルビア」「ユー
ゴスラビア」などスラブ人の国を意味する国名を生み出している。
人名としては以下のものが代表的である。
・「 」(仏):ゲルマン祖語「ルド」=「雷鳴」と「ヴィヒ」=「戦い」との
合成で古高地ドイツ語の「ルドヴィッヒ」=「高名な戦士」が生まれ、5世紀に
( )王国建国者「クローヴィス」(フランス語)が活躍して以降、普
及。ドイツ語では「ルードヴィッヒ」
・「 」(英):ゲルマン神話の登場人物「カール」に由来。「カール」
は古高地ドイツ語で男や農夫を意味するようになった。8~9世紀に西ヨーロッパを
統一したカール大帝以降、普及。フランス語で( )、女性名でシャルロ
ッテ、シャーリー、シェリー等
・「 」(英):古高地ドイツ語で「ルド」(=名声)と「ペール」(=輝
かしい)で「ロベール」となる。初代ノルマンディー公ロベール以降、普及。ロバ
ートソン、ロバーツ、ロビン、ロビンソン、ホッブズ、ホプキンスなど100以上の
名前が派生。
・「 」(英):古高地ドイツ語の「ヴィル」(=意思や冨の意)「ヘ
ルム」(=かぶと、守護の意、→ヘルメットの語源)の合成語に由来。11世紀の
「征服王」ウィリアム以降、普及。短縮形はビル、ウィル。
・「 」(英):古高地ドイツ語「ハイム」(=家、国)と「リッヒ」(=
支配、→リッチの語源)の合成語に由来。10世紀のドイツ皇帝ハインリッヒ1世、
12世紀のイングランドのヘンリー1世などにより普及。
Cキリスト教文化:基本的には聖書に登場する名前が由来となっているものでもっぱら人名に限って代表的な名前を挙げてみよう。
・「 」:洗礼者ヨハネ、あるいは伝道者ヨハネに由来。キリスト教世界では
最大の名前で、聖書に14人登場。ローマ法王にいたっては24人もいる。「ヨハネ」
はヘブライ語で「ヤーウェは恵み深きかな」。フランスではジャン、イタリアでは
ジョバンニ、スペインではファン、ドイツではヨハン。
ジョンソン、ジョーンズ、ジョンストン、ジャクソン、ジェレミー、ヘンデル、
イワノフ、ヤンセン、ヨハンソンなどが派生。
・「 」:洗礼者ヨハネの母エリザベトに由来。「エリザベト」の原義
は「エル=最高神=ヤーウェは誓いなり」。スペインではイザベラ、フランスでは
エザベル。愛称としてベティ、ベス、リズ、リザ…
・「 」:大天使ミカエルに由来。原義は「誰が神のごとくであるか」。イ
タリアルネッサンスの天才ミケランジェロは「天使ミカエル」を意味。なお大天使
は他に「ガブリエル」(=「神の力」)、「ウリエル」(=「神の炎」)、「ラフ
ァエル」(=神は癒したまえり)でいずれも人名の由来となっている。愛称はミッ
キー、女性名はミシェル。
※この名はあまりにも平凡だったため、アメリカではとるわけ黒人に付けられることが多かった。また
( )人にも多く、「ミッキー」はアメリカではアイルランド人への「蔑称」でもあ
った。ディズニーランドの創設者であり、「ミッキー・マウス」というキャラクターを作り出したデ
ィズニーは曽祖父がアイルランド出身の移民であったのだ。ただし「ディズニー」はフランスの「イ
ズグニー」出身という意味で、おそらく相当前の先祖がフランスからアイルランドに移住し、さらに
曽祖父のときにアメリカへ移住してきたのだろう。
・「ジェイムズ」:聖書に出てくるユダヤの三代目の族長ヤコブに由来。原義は「か
かとをつかむ者」。双子の兄のかかとをつかんで生まれてきたという。ユダヤ繁栄
の基を築いた。別名を「 」(=「神と競う者」「神の戦士」)。ジ
ャック、ジェイコブ、ジャコブ等。愛称ジミー、ジム。女性名でジャクリーヌ。
・「 」:キリストの母マリアに由来。10世紀以降、神にとりなしてくれる慈
悲深い聖母マリアとして熱烈な信仰を集めるようになり、女性名として圧倒的な人
気をほこった。なおフランスで「ノートルダム」、イタリアで「マドンナ」といえ
ば聖母マリアのこと。
※他にはキリストの一番弟子ペテロ(=岩)に由来する「 」、 初代ローマ教皇パウロ(=
小柄な人)に由来する「ポール」、十二人の使徒の一人トマス(=双子)に由来する「トーマス」な
どがある。
③ヨーロッパ人名の由来(別編)
以上見てきたように、欧米の地名、人名の起源となった文化は三つに大別できるが、さらに別の観点からは以下のようにも整理できる。
ア.地名や地形に由来:人名のほぼ半数を占めるという。以下具体例を挙げてみる。
・「ウッズ」:( )に住む人・「 」:小川。英語でブルック
・「ノートン」:「ノル」( )と「トン」(集落=タウン)の合成
・「 」:「ヒル」(丘)で「丘の上の集落」。クリントンも同様
・「ハミルトン」:平らな丘・「シートン」:( )
・「モーツァルト」:沼地の茂み・「 」:藪
・「クロフォード」:カラスのいる浅瀬・「ソープ」:酪農場
・「スタンフォード」:石の多い浅瀬、ないしは石でできた渡し場
・「スタンレー」:石の多い開墾地・「ブレア」:ケルト語で平原
・「シェルダン」:深い谷・「トワイニング」:二つの小川に挟まれた地
・「フランシス」:( )出身・「デニス」:デンマーク出身
・「 」:スコットランド出身・「ウェルチ」:ウェールズ出身
・「フレミング」:フランドル地方出身・「ブルックナー」:沼地の住民
・「リンカーン」:水辺のローマ人の集落
*他との合成で「 」=「チャーチ」+「ヒル」(教会のある丘)
イ.( )に由来:以下列挙してみる。
「 」:鍛冶屋、「ミラー」:製粉業、「ベイカー」:パン屋
「チャップリン」:( )、「クラーク」:下位の聖職者
「ケロッグ」:ブタ肉屋、「スペンサー」:執事、召使
「テイラー」:仕立て屋、「マーラー」=ペンキ屋
「シューマッハー」「シューマン」・「シューベルト」:( )
「ハント」:猟師、「フィッシャー」:漁師、「ターナー」:旋盤工
「ポッター」:( )、「カーター」:御者
「サッチャー」:屋根葺き職人、「カーペンター」や「ライト」:大工
「カルティエ」:トランプの業者、「フォスター」:森の番人
「 」:製塩所の監督、「ムッソリーニ」:綿織物職人か?
「ピューリッツァー」:毛皮職人・商人、「ワーグナー」:車大工
「 」:砂糖大根(ビート)農場のこと。
「ミレー」:キビの栽培人
ウ.先祖の個性、特徴(あだ名)に由来:これも以下列挙してみる。
「キャメロン」:( )、「フロイト」:陽気な男
「ケネディ」:( )、「ドゥーリトル」:( )
「アームストロング」:腕力の強い、「トルーマン」:誠実な人
「ブラウン・ブラック・ホワイト・グレイ・リード」:肌や髪の毛の色
「シュワルツェネッガー」:黒髪の農夫、「ニューマン」:新参者
「カルヴァン」:小さな( )、「ロング」:背が高い
「キャンベル」:ゆがんだ唇、「トルストイ」:太っちょ
「ゴルバチョフ」:せむし男、「シュトラウス」:まぬけ
エ.親の名を継ぐ:子を意味する「SON」や所有を意味する「S」が後ろに付く名前(イングランド)や、「MAC」、「MC」、が前に付く名前(スコットランド、アイルランド)、あるいは「O’」が前に付く名前(ウェールズ)は親の名を継いでいることを示す。
例:ジョンソン、エジソン、ボブソン、ウィリアムズ、マクドナルド、マッカートニ
ー、マッキントッシュ、マッカーサー、オニール
欧米の人名ではこれら以外にも( )人の場合にはかつて姓を持つことを禁じられていたとか、持つことが許されても、植物や鉱物名であること多かった(たとえばユダヤ人の有名人では「アインシュタイン」= 、「バーンシュタイン」=琥珀、「ルビンシュタイン」=紅玉、「エイゼンシュタイン」=鉄鉱石など)とか、欧米の黒人は白人から欧米の地名(ハリウッドの有名黒人俳優の「デンゼル・ワシントン」等)や「プリンス」、「デューク」(=公爵)などのような皮肉っぽい名前が付けられていた、女性は男性名の語尾を変えただけが多かった(男系中心社会だったから)…など興味深い点が残されている。
またアフリカにはかつての「奴隷海岸」周辺で地名として白人支配からの解放を喜ぶ「リーブルビル」(ガボンの首都でフランス語)、「フリータウン」(シエラレオネの首都)、「リベリア」(国名)が生まれた。
人は時代と場所を超えて、名前に様々な意味を込めてきたのである。
※参考文献
・「世界人名物語」梅田修 講談社現代新書 1999
・「地名の秘密」古川愛哲 リュウ・ブックスアステ新書 2002
・「地名の世界地図」21世紀研究会編 文春新書 2000
・「世界地図から地名の起源を読む方法」辻原康夫 KAWADE夢新書 2001
・「地名で読むヨーロッパ」梅田修 講談社現代新書 2002
・「地名から歴史を読む方法」武光誠 KAWADE夢新書 1999
・「人名の世界地図」21世紀研究会編 文春新書 2001
・「人名の世界史」辻原康夫 平凡社新書 2005