㉚「教師のバトン」の皮肉と学校のブラック化
※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。
参考記事
〇「ネット出席」認知度に課題 学校側「前例ない」などと対応 不登校生徒の母「制度は絵に描いた餅」 専門家も「明確に
家庭に伝わるように」 TBS NEWS DIG_Microsoft 2025.11.12
これもまた学校のブラック化が新しい制度、改革の動きを受け入れる柔軟性や対応力を学校現場から完全に奪いつつある…という極めて深刻な事態を示しているのではあるまいか。私たちは文科省の通達が学校現場になかなか浸透していかない背景に潜む、教師たちの疲弊と言う事態の急速な進行にもっと注目すべきなのではあるまいか。
◎【年収超えの自腹】学校に貢いだ2500万円……公立学校の先生の財布が「無限の公
費」になる瞬間 All About 福嶋尚子・栁澤靖明・古殿真大
「学校に貢いだ」という側面もあるだろうが、児童生徒に貢いだ側面も大きいだろう。いずれにせよ長い教員生活を通じて「貢いだ」額が巨額に上ることは間違いない。教員の方ならば、自腹を切った事例を挙げ始めるとおそらく枚挙にいとまがないはずだ。
日本の極めて貧しく、古いままの公教育が、その貧しさにもかかわらず「やりがい」をちらつかせて無謀にも全人的な教育を教師たちに不当にも課してきた…「やりがい搾取」と呼ばれた欺瞞に満ちた歴史が必然的に生み出した現象こそ、教師による際限なき自腹なのである。こうした教師の自己犠牲的行為はかつてはほとんど問題視されることなく、いまだ学校に残存する教師聖職論によってむしろ美談化されてきた側面すらあったのだ。
教師による自腹の総額は自腹と自己責任による出費との境が非常に曖昧であり、グレーゾーンが極めて大きいため、きちんと算出することが極めて難しいケースが少なくない。したがって2500万円程、というザックリとした数字に強い違和感を持たれる方はもしかするとかなり多いのかもしれない。
しかし私の実感からすればこの数字、決して大げさで奇異なものではない。残業時間が厳密に把握されている企業の方ならばご理解と共感をいただけると思うが、教師には残業時間に基づくきちんとした手当は本当の意味ではほとんどと言って良いほど支払われていないのだ。仮に残業代等の総額及び教師の自腹分を「逸失利益」と見なして県や国に対し、損害賠償請求すると仮定すれば、損害賠償の総額は一体、どれほどの額になるのか…興味本位ではあるがザックリと概算してみたい。
仮に平均的な教師一人に対して退職までに支払われてこなかった残業代などの総額(労基法で定められた残業代と休日出勤の手当を基準にした、あくまでも近似値に過ぎないが…)を算出してみれば、それがどれほどの巨額に上るものなのか、この試算で容易に想像がつくようになるだろう。もちろん、給特法による4%分を最終的にそこから差し引いて総額を出していく必要はあるのだが…
私の某高校における月当たりの平均的な残業時間および休日出勤時間を用いて計算してみたい。さらに算出するために必要な数値として、本来ならばもらえるはずの月当たりの残業代、及び休日出勤代。これらは労基法の定める最低基準値、および現時点での公立高校教師の平均的給与さえ分かればとりあえず概算可能だろう。
公立高校教諭の平均的給与は2023年度の文科省実態調査によると月給で35万7000円ほどだが、あくまでも概算なのでここでは36万円キッカリとしておく。この額を2025年10月のカレンダーをもとに出勤日数22日として日給を計算する。100円以下を切捨てると、日額約1万6000円となる。これを勤務時間の8時間で割ると教師の平均的時給は約2000円となる。
労基法によれば休日労働に対する割増賃金は、通常の賃金の3割5分以上、深夜業に至らなければ残業代は一時間当たりの通常の給与額が在校時間の長さに応じて算出される。さすがに深夜業務は修学旅行や学検の採点、部活の合宿を含めても、年に数回程度なので今回の計算からは除外しておこう。
問題は勤務日の平均的残業時間であるが、勤務校の実態によってかなりの差があるものの、平均するとかなり少なめに見積もっても2時間となるだろう。休日出勤もまたかなり少なめに見積もっても月に平均3日。月単位の総時数で言えば最低でも20時間となるはず。
まず私の通常の残業時間は月単位でだいたい2時間(一日の平均的残業時間)×22日(2025年10月のカレンダーから特別時間割や学校行事などを度外視して単純にカウント)=44時間(月単位の平均残業時間)ほどであった。したがって当時、残業手当があったとすれば月給に上乗せされるべき額はとりあえず2000円(平均的時給)×44時間=8万8000円となる。
ただしここから給特法に基づいて4%の一律加算分を引かなければならない。その額は一月で360000×0.04=14400円となり、100円以下を切り捨てれば、加算分はおよそ14000円となる。かなり大雑把だが88000-14000=74000円が毎月、もらえたはずの概算での残業代となる。これを単純に12か月分、すなわち1年分の残業代に換算すると74000×12=888000円。さらに教員の勤務年数を60歳定年退職として38年とすれば、かなり粗雑な計算となってはしまうが、38×888000=33744000円となる。
これに休日出勤の額も加えてみる。月に平均20時間の休日出勤だとすれば2000(平均的時給)×20(平均的休日勤務時間)×1.35=54000円が一般企業ならば毎月もらえるはずである。これを年間に換算すれば648000円となる。この数字に勤務年数38年を掛ければ24624000円。残業代の総額33744000を足すと58368000円…
実際には都道府県や年代、学校によって異なるだろうが、部活動を平日で2時間以上、休日で4時間以上指導した場合、その超過分に対して若干の金銭が支給される場合があった。ただしその金額は月にせいぜい1万円程度であったと記憶している。仮に1万円だったとすれば年に12万円、38年分で456万円となる。これも総額から引くと残りは538008000円となる。8000円は切り捨てて53800000円としておこう。
以上の計算はかなり少なめに見積もってのものである。実際には運動部顧問時代、4月や9月は一か月間、ほぼ一日も休んでいない、修学旅行では一日平均で2~3時間程度しか寝ていない、入試の採点時や逮捕された生徒への対応では時に深夜に及ぶ…休日の試合では会場校の場合、12時間勤務が当たり前…といったような事態は一切、考慮されていない。
53800000円に教師の自腹分を加えてみよう。この自腹分も教師の個人差は極めて大きいので平均的な総額を出すのはまず不可能であるが、敢えて自分を基準に概算を出してみよう。部活動関係の出費は、最小限に見積もっても年間で数万円は下るまい。これにクラス担任(自分の場合、文化祭での自腹が一番大きい)としての自腹分、教科担任としての自腹分(実物教材、印刷機、コンピュータ、インクなどの購入費。ただし最も高額な書籍代は除いておく)を足すと、極限まで少なく見積もっても年間でおよそ10万円は下らない。もちろん、こんなに少ない額で済むはずはないのだが、ここでは年間の自腹分をとりあえず最小値の10万円という事にしておく。
自腹分は勤務年数の38年をかけて総額380万円となる。これに53800000円を足すと54180000円となる。退職金や年金が次々と削減されている状況を踏まえれば、公立学校の教師という仕事が経済的な観点からはいかに割に合わない、激烈なレベルの自己犠牲で成り立ってきたか、お分かりいただけたかと思う。
もちろん、教師たちが失ってきたのは決して金銭だけではない。家族との団らんや休息、教材準備、生徒へのきめ細やかな対応…それらいずれも本来ならば最大限に尊重されるべき貴重な時間と体力、気力がことごとく失われていったのである。
この過酷な自己犠牲を教師たちにひたすら強いてきた文科省が、現場で悪戦苦闘してきた教師に対してこれまで一切の反省を見せず、謝罪すらせず、どれほど高慢ちきで無能な存在であり続けたのか…ぜひ一人でも多くの方にご理解いただきたい。
1.「教師のバトン」ってどんなバトン?
かつて文科省が上から目線で使った「教師のバトン」というフレーズは教師の皆様方にどのように響いたのだろう。カッパはむしろ全国の教育現場に絶望的な思いを一層募らせただけだと感じている。多くの教師が激しい憤りを持って受け止めたに違いないとさえ思っている。
「教師のバトン」という本質的に重い言葉は、悲惨な学校現場の泥水を一切浴びたことのないただの第三者、高学歴エリート役人達が脇からしゃしゃり出てきて云々するものであってはなるまい。当たり前過ぎることだが話の本筋としては学校という現場において日々行われている魅力的な教育活動を通じて当事者である教師自らが次世代の生徒達にバトンを渡していくはずのものである。とりわけ学校の教師が日常的に面白くて有益な授業をすることこそが生徒達に教職への憧れを募らせるのであり、そのことこそがバトンを次世代に渡していく行為そのものだと思うが、いかがだろう。
そうであるにもかかわらず、目標申告シート(自己評価シートetc)の記入、学習指導計画の作成、朝令暮改を繰り返す大学入試改革へのネコの目対応、学習指導要領の改訂、進学用調査書や指導要録の改訂、果ては混乱ばかり招いた不備だらけの校務IT化、意味不明な校内研修のつるべ打ち・・・息つく暇も無く矢継ぎ早に文科省や県教委から下々へ、あたかも罰ゲームのように押し寄せてくる仕事の山、山…
その多くは教育行政を熱心に「やってます」感を演出すべく仕組まれた、いざというときのためのアリバイ作りに過ぎないような、絶望的なまでに不毛感漂う雑務の塊。そして過熱する一方の部活動と噴出する学校や教師への批判、モンペアへの対応…これらに忙殺される余り、肝心の生き生きとした授業実践に手が回らなくなるどころかついには本務であるはずの授業までもが教師及び生徒達にとっても耐えがたい苦痛になってきている…
日本の学校教育が直面している本当の危機はそこにあるはずであった。
そうした学校の惨状に一切目をくれず、「定額働かせ放題」とか「やりがい搾取」という罵声が激しく飛び交い始めた学校に対して、現場で悪戦苦闘する教師の立場からすればどう見ても皮肉としか受け取りようのない「教師のバトン」という、美しすぎるほどセンチメンタルな表現を文科省の官僚は用いてしまった…
この人たちの究極的とも言って良いほどの現場に対する理解の無さ、鈍感さがSNS上での大炎上を招いた主な原因であったはずである。当然の帰結として現在、全国的に教師のなり手が不足してしまい、いよいよ学校教育の危機が深まってきている。
そんなことにすら今の今まで気付くことのできない、学校現場に恐ろしく無知な官僚や政治家が厚かましくも学校教育行政を動かしているのだから、学校現場が萎える一方となるのも致し方あるまい…などと思わず毒づいてしまうほどに学校現場のお上に対する積年の恨みが溜まりに溜まっている。これが現在の学校教師達の実情ではないのか。
もちろん文科省の官僚にも言い分はあるだろう。文科省に限らず、官僚の多くが安月給で過労死ラインを遙かに超える重労働を常時強いられているという。つまりお互いの職場がブラック化しているのだから、実はお互いに被害者でもあり、今こそ鬱憤をぶつけ合っている場合ではないのだ。官僚も教師も、同じ公務員として分断と対立を乗り越え、お互いに連携し、自分たちの労働環境の劣悪さを世間にもっとアピールして労働環境改善に持ち込んでいくのが事の本筋であろう。
※参考動画
◎【働き方】過酷な教育現場は改善できるのか?
精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル 2025/10/11 19:33
これほど日本の学校の現状を厳しく捉えている識者も珍しい。しかしこのような認識を持たないと、もはや教師のメンタルが保てない…ということは事実だと私も思う。ただしスマホの過剰使用が脳の疲労を招く可能性はかなりあるだろうが、使用制限の問題については判断を保留したい。
〇公立学校教員の4割が偏差値50未満の大学出身という時代に突入
Morite2 English Channel 2025/02/06 8:43
大学入試における偏差値がそのまま教師の授業力に反映するわけではないので、このデータが教師の力量の低下に直結するものではあるまい。しかし教員採用試験の倍率低下も考え合わせると、若手教員の学力低下の可能性は決して低くはあるまい。とはいえ、教師の学歴、学校歴、さらには当該教科の学力ですら、教師の授業力との相関は一般に予想されるほどに高くはないと考える。
担当する教科、科目への一定程度の理解、知識は確かに教師として全員が備えておくべき最低限の条件ではある。ただし多くの児童生徒にとっては教師の授業力、すなわち授業の魅力こそが肝心な要件であり、教師の学歴などは、ほぼどうでもよいことだろう。
高校教師の授業力の向上を図るには第一に大学での教員養成教育の改革が必須となるはずだ。同時に教師の負担を軽減して教師が授業準備等に専念できるよう、労働環境の大幅な改善を図ることが切実に求められていると考えるが、いかがか。
〇「今も一気に絶望の淵に立ってしまう」 心療内科に通院する現役教員の思い 精神疾患による病気
休職の教員が7000人超えで過去最多に 文科省調査
TBS NEWS DIG Powered by JNN 2024/12/20 2:53
こうした事態が生じてしまった背景には一体何があるのだろう。生徒たちに動画を視聴させ、まずはできるだけ多くの理由を考えさせたい。次に以下の参考記事をもとにして学校や教師のあり方を見直すべく、議論を深めていきたい。
※参考記事
〇「主体性の評価」見直し、高校教員83%が賛成…教員の負担軽減へ リシード 2025.8.22
こんな程度の事で教師の負担軽減につながるわけはない。また生徒の主体的な学びを抑圧する画一的一斉講義形式の授業がいまだに残存している日本の現状がある。加えて職員会議の形骸化やブラック化などによって教師側の主体性がそもそも奪われ、損なわれてきた経緯もある。
教師は自分たちの主体性が喪失してきているのに、生徒の「主体的な学び」を奨励し、評価sしなければならない…この皮肉、矛盾はどう捉えるべきなのだろう。まったくブラックジョークとしか言いようのない、珍妙な事態である。
〇子どもの自殺防止、教員向け新指針作成へ…学校と医療機関が連携強化
読売新聞 2025.8.22
…文部科学省は、学校が医療機関との連携を強めて、児童生徒の自殺を防ぐための教員向け指針を新たに作成する方針を固めた。自殺の危険性がある児童生徒を早期に把握し、適切な対応を促す狙いがある…とのこと。
一体、文科省はどこまで間抜けなのか、厚顔無恥なのか呆れ果てるばかりである。そもそも精神科の医者ですら、自殺防止は極めて難しい。しかも専門家であるはずの医者の中には東京の滝山病院のように、唖然とするほど質の悪い医師がいたりする。
精神医療への疑念が消えない中で、素人に過ぎない教師に医師の技量や資質を見抜けるわけがない。
そうした状況の下で、一体、どのような連携を学校と医療機関がとれるというのだろう?この程度の事、少し考えれば分かるはずだ。しかも文科省のおかげで加速した学校のブラック化がこうした難問への教師の対応力をひたすら削り続けている。
あまりにも当たり前のことなのだが、どう見てもこの問題の主体となるべきは校内においてたった一人、学校カウンセラーしか見当たらないはずである。
文科省は一体、教師に何を期待しているのだろう。仮に文科省の言う通り、教師が医療機関と好ましい連携をとるべきだとするならば、教師全員、最低でも学校カウンセラーの資格を必要とすることになる。無論、そんなことは不可能だ。
実際のところ、当の学校カウンセラーですら、自殺防止にむけて役立つような医療機関を探し出すことは至難の業であろう。自殺予備軍が抱える問題は多様であり、千差万別である。しかも多くの場合、彼らは重いうつ状態や希死念慮だけではなく、家族の問題や身体的疾患、経済的困難、対人関係の問題、低学力、不眠などの深刻な課題をいくつも同時に抱えている。カウンセラーや精神科医ですら、単独では対応困難なケースだって決して少なくない。であるにもかかわらず、文科省のおかげで疲弊の極にある素人集団の教師如きに、一体全体、この件についてどれほどのことができるというのだ。
学校が医療機関と連携する、ということは、医療機関との連携に対して学校や教師がそれなりの責任を負わされる、ということに他なるまい。仮に、それでも児童生徒が自殺した場合、教師側によってどのような連携がなされたのか、が問われてしまうからである。これでは教師たちまでもが深いウツと猛烈な希死念慮を抱くようになるに違いない。
文科省が考えるべきは教師の負担を増やす事ではなく、教師の負担を大胆なレベルまで削減することであり、思い切った学校カウンセラーの増員と待遇改善である。そのための予算が確保できないのならば、文科大臣以下、教師や学校カウンセラーたちに平身低頭して謝罪し、自分たちの無力さ、無能さを深く恥じるべきだろう。
〇保護者からの過剰な苦情・不当要求「学校以外が担う」文科省が改訂案 リシード 2025.8.20
この程度の業務見直しで教員の負担軽減になるとは到底思えない。そもそもが学校の事務職員自体、人数不足であり、学校カウンセラーなどの専門家も不足しているところが多いはずだ。実際、事務職員の不足によって高校入試事務や受付の仕事を一部、教師が負担するようになったのは千葉県の場合、二十数年前からだったように記憶している。カウンセラーやケースワーカーに至っては、ほとんどの場合、千葉県では一つの学校に常駐できておらず、複数校を掛け持ちするのが普通だった。しかも様々な面で待遇が悪く、学校、教育委員会に対して大きな不満を抱えている方もおられたようだ。
既に過剰な負担にあえいでいる方々に教員の負担の一部をただ押し付けるだけ…これが文科省にとってはお手軽でとりたてて経費も要しない(財務省との勝ち目のない予算折衝を回避できる)、いかにも「賢明」な解決策なのだろうが、本来、検討すべきは教育予算の増額を前提とする事務職員の定数増加、カウンセラーらの待遇向上の方ではあるまいか。
軽減すべき教員の負担は他にもまだまだ沢山あるはずだ。学校行事の大胆な削減、無駄な官製研修の削減等々、肝心な改革にはこれまたノータッチ…にもかかわらず本来、学校の当事者が果たすべき保護者のクレーム対応を学校外に任せる…この発想自体、おかしくないか。むしろ学校内にスクールローヤーを含む複数の専門家を配置する形にして保護者との話がこじれないようにするのと同時に、担任や学年主任が一定程度まで関われる余地を残しておくことの方が学級、学年の経営上、都合が良い場合だって少なくあるまい。
文科省の官僚たちよ、今後は財務省と互角に戦えるレベルの予算折衝ができるよう、学校現場の生の声を少しでも直接、聞いて回る努力をしていただきたい。生の声が届いていないからこそ、この程度の下らない改訂案しか出てこないのだ。
◎教員採用試験、約50自治体が共同実施へ 負担軽減、面接などに注力 毎日新聞 2025.8.6
一見すると合理的な対応に見えるが、かなり危険な方向性を感じる。確かに性犯罪に走る人物を簡単に合格させるわけにはいくまい。しかし小論文や面接で人物、特にその性癖を見抜けるとは到底思えない。一体、どのような質問をすればそれを見抜くことができるのか、じっくりと担当者に伺ってみたいものだ。
大学入試での共通テストと同様、一次試験の足切りに利用する目的で共同実施する意図が見受けられる。だが、ただでさえ採用試験の倍率低下が深刻な状況下で、はたして合同実施の試験に「足切り」機能をどれほど期待できるだろうか。
加えて合同実施の試験はどのような組織が、どういう内容で作成するのだろう。場合によっては大学入試での共通テストのように、受験生の学習内容への過度の統制、画一化が進んでしまう恐れもあるだろう。大学での教員養成教育内容の均一化が生じてしまい、個性や多様性が侵害されないとも限るまい。新米教師への国家による妙な思想統制だけは避けたいものだ。
そもそも教員採用試験で厳しく問うべきは受験生の授業準備の在り方、発問の仕方など、実践的授業能力の方であろう。受験者数が多い場合、授業能力を問うことは時間的に難しいだろうが、人数の絞れてきた二次試験ならば可能ではないか。
大して判別力が期待できそうにない面接試験や小論文を二次試験とするような時代遅れの発想ではいよいよ日本の公教育はお先真っ暗、というほかあるまい。試験の合同実施によって教育委員会の仕事を削減するよりも前に、鋭意、学校現場にいる教師の仕事削減を優先してもらいたいものである。
◎教育現場のリアルな実態…教員の8割が10時間以上勤務 リシード 2025.7.29
…出勤してから退勤するまでの教員の勤務時間は平均11.17時間であることが2025年7月29日、小学館が運営する教員向けWebメディア「みんなの教育技術」の調査結果から明らかになった。8割を超える教員が10時間以上、4人に1人が12時間を超えて勤務している状況にあった。
教員の勤務実態に関するアンケートは、5月20日から6月30日にかけて全国47都道府県の教育関係者を対象に実施。Webメディア「みんなの教育技術」でのアンケート形式で実施され、有効回答数は5,412人だった。…
この調査は文科省や各教育委員会による同様の調査よりも、はるかに信用できる。私の実感に近い結果が出ているからだ。生徒たちには「公立教諭の時間外勤務、「月45時間」以下は小高7割 朝日新聞社 2024.12.26」のデータと比べて議論させると面白い授業になるだろう。
〇公立中35人学級、教員1万7000人増必要 400億円の予算見込む 毎日新聞 2025.6.17
少子化が急速に進む先進国であり、いまだに経済大国の端くれであるはずなのに、何とした事か、デレダラと何十年もの間、40人学級を放置してきた国があった…この日本と言う国は少子化という、学級の定員削減に絶好の追い風が吹き続ける中で、学級定員の見直しすら、まともに取り組もうとはしてこなかった。その国力から見ても35人学級程度の事くらいとっくの昔に実現できていたはずである。マスプロ教育の弊害が叫ばれてから一体どれほどの歳月が経ったと思っているのだろう。
にもかかわらず、21世紀に入って四半世紀が過ぎ、マスプロ教育という言葉自体がとっくの昔に死語となった今の今となってようやくにして法改正を行い、35人学級を徐々に実現させていくのだという。かねてから口では「個別最適化」を唱えて生徒の多様性に応じた丁寧な教育の実現を謳ってきたクセに、「個別最適化」の足を引っ張る張本人たる40人学級を文科省は長らく放置してきた。
何という怠慢であろう。何という欺瞞であろう。国家百年の大計たるべき学校教育ですらこのザマである。この国の無策ぶりに呆れ果てるしかあるまい。しかも政府の無策ぶりが祟って学校のブラック化が進行し、近年は若者の教職離れが顕著となって深刻な教員不足が慢性化している。こうした状況下、一体、どうやって公立中学校の教員を17000人も増やそうというのか。文科省はこれまで通り、自らの責任は棚に上げて厚顔無恥にも各教育委員会に、ひたすら困難を極めつつある教員募集という難題を平気で丸投げするつもりなのだろうか。
このニュース、個人的には絶望しか感じられないのだが…
〇「子どもを救いたい」 その思いと現実の狭間で 採用数の4割超が退職…“子どもを守り職員も守る”
児童相談所の挑戦を密着取材【news23】 TBS NEWS DIG_Microsoft 2025.1.25
この国の老害政治家による若者や子どもたちへの切り捨て政策が、いかに学校の荒廃と児童生徒の不登校や自殺、引きこもり、非行、親による虐待、育児放棄などの諸問題をこれまで量産してきたか、しっかりと直視したい。不足しているのは教師たちや児相職員、民生委員だけではあるまい。何のための子ども家庭庁設置だったのか、もう一度、文科省、厚生労働省の責任を含めて厳しく問い直すべきだろう。
〇危機的状況な高知の教育界 「学校の存在意義を考え直さねば」相次ぐ教職員不祥事
で“緊急会議” KUTVニュース 2025.1.24
はたして高知県教委の対応はいかがなものだろう。かなり疑問のある、トンチンカンな方向性を感じてしまうのだが…教職員の不祥事が発生する背景に何があるのか、把握しようと努力した痕跡がこの教育委員会には見られないのではあるまいか。
もちろん、不祥事の多発が教師たちの規律の乱れに起因することも有るだろう。特に管理主義的な体質の組織ならば、なおさら服務規律の整備や罰則の強化などで教員の不祥事にゴリゴリの対応をしようとするに違いあるまい。
昔、校内暴力が吹き荒れた際、教師たちが体罰をも辞さない覚悟で厳しい生徒指導を行い、学校の沈静化に努めたように…かつての経験から、上から目線で生徒管理と教師管理の徹底を図ろうとする、老害管理職は高知県においても少なくあるまい。
そもそも高知県での教師たちの不祥事は本当に規律の乱れだけに起因するのであろうか。高知県の教員採用試験における倍率は全国的にもかなり低いと言われる。倍率の低下によって生ずる教員の質の低下は不祥事発生の土壌を形成する一因となるだろう。加えて教育環境のブラック化が教員不足によって一層、加速してきている現状も考慮する必要があるだろう。今、教師たちのストレスがどれほど蓄積してきているのか、県教委としてきちんと調べたうえで対応しているのならば良いのだろうが…
学校のブラック化を招いた責任は、もっぱら教師たちの仕事と責任をひたすら増やし続けてきた文科省と教育委員会にあり、現場の教師たちはそうした愚かな教育行政の被害者側に過ぎない…そうした側面があることを教育委員会はまったく把握できていないようだ。加害者のクセに被害者面して一方的に現場の教師たちを取り締まろうとする教育委員会の、居丈高な姿勢が教育界全体の崩壊を加速させかねない、最悪、最大の危険因子となってしまわないことを祈るばかりである。
「今の若い教師はたるんどる。実にけしからん!」とばかりに管理職らが老害風を吹かせているだけであるならば、高知県の教員採用試験の倍率は今後、さらに低下し、教員不足は一層、深刻となるだけだろう。そして教師の休職や中途退職が激増する危険性まで招いてしまうかもしれない。
「学校の存在意義を考え直さねば」ならないのは一体、どちらさんなのか…教育行政のお偉方自身、しっかりと謙虚に考え直した方が良いのではあるまいか。
〇6時間授業、授業内容増で子どもも教員も疲弊 現役小学校教員が語る「詰め込みす ぎカリキュラム」
の実態 AERA dot. 西島博之 2025.1.24
日本のカリキュラムがあまりにも過大であり、結果的に「詰め込み教育」がいつまでも改善されないままになっていることは、とっくの昔から明らかであるのに、今も何一つ反省されることなく平然と英語教育、情報教育や金融教育などが次から次へと教師の仕事として上乗せされてくる。そして教材研究の不足、授業方法の工夫の不足を日常的に自覚しながらも、疲弊しきった教師たちと、その教師たちから矢継ぎ早に、かつ大量に教え込まれる児童生徒たちとは、結局、退屈で未消化なまま、ひたすら前へ前へと勝手に進んでしまう授業自体を苦痛そのものと感じる点で、実は一心同体なのかもしれない。
「スクラップ・アンド・ビルド」の原則は守られることもなく、仕事量が教師たちの力の限界をとうに超えているにも関わらず、非情にも様々な課題が際限もなく学校に丸投げされてくる。教師たちの疲弊には目をつぶり、現場の悲痛な叫びに耳を貸すこともなく、淡々と学校現場の仕事を増やし続けてきた教育行政側の責任は万死に値するほど重い。
新たな仕事を次々と快く引き受けることが官僚たちの大きな手柄とされ、文科省や教育委員会での出世を約束する構造があるのだろう。しかし、結果的に児童生徒らの不登校は増える一方であり、教員の休職者や中途退職者も増える一方。当然の事、教員志願者は減り続け、教員不足が学校をギリギリの瀬戸際まで追い詰めている。そしてこれらの問題解決もまた、学校現場にほぼ丸投げされてくる。
何が間違っていて、誰が悪いのか、明確なのに誰も罰せられず、だから何も変えようとしない…今の自堕落な教育行政に自浄能力を期待するのはあまりにも愚かであろう。
〇公立教諭の時間外勤務、「月45時間」以下は小高7割 朝日新聞社 2024.12.26
こういう文科省がマスコミに垂れ流したまがいものの情報を、しっかりと学校現場の実態と照らし合わせることなく鵜呑みにし、短絡的にオウム返しするマスゴミの姿勢には怒りしか覚えない。ここで数値としてもっともらしく示されている「残業時間」はあくまで学校における残業時間であり、それが教師たちの残業の実態とはまったく乖離した数字であることは私も再三、指摘してきた。
既に10年ほど前から高校でも定時を過ぎる頃に、教頭から半強制的にしつこく帰宅を指示されるようになっていた。まだ業務を終えていない教師たちの多くは、どうしても校内でしか処理できない業務を除き、渋々、多くの仕事を抱えて帰宅している。そして自宅で採点や提出物のチェック、授業準備などの「お持ち帰り残業」を続けている。つまり文科省のいう「働き方改革」という美名はその実、学校の光熱費の節約と管理職の手柄稼ぎとしての名目的な残業時間の削減に過ぎない。実際の教師の職務はかえって家族へ転嫁され、教師たちの家計を削ることになっただけである。これはむしろ「働き方改悪」と呼ぶべき文科省側の悪辣な策略であり、ただの誤魔化し、イカサマに過ぎない。
こんなことだからマスコミは「マスゴミ」と呼ばれ、この10年ほどの間に教員不足がかえって深刻になっているのだ。文科省もマスコミも、もういい加減にしてほしい。
〇まだ8割の学校で“FAX使用” 校務デジタル化の進捗は? 教員の働き方改革にも関連 文科省調査
TBS NEWS DIG_Microsoft 2024.12.26
もはやどこのご家庭でも骨董品となっているはずのFAXを、いまだに学校の8割が使用していることの持つ意味を軽く見過ごすことは許されまい。すなわち日本の学校自体が骨董品と化している、と言っても良いほどに、日本の学校はあらゆる面で先進国の教育から遅れをとっているのだ。
もちろんハード面では児童生徒一人に一台、タブレットが支給された学校もあるだろうが、タブレットを学校でどう利用していくのか、授業ではどのような利用の仕方があるのか、きちんと理解できている教師がどの程度、いるのかは疑わしい。そもそもタブレット導入の先頭に立つべき管理職自身、タブレットの利用自体が心もとない人は決して少なくあるまい。
学校でのFAXの残存はDX化の流れに日本が取り残されているのみならず、個別最適化と自律協働型の学習導入にも完全に乗り遅れ、惨めにもガラパゴス化した日本の学校の現在を象徴していると思うのだが、いかがか。もちろん、これを打開するのはそんなに難しい事ではあるまい。DX化の推進役であるべき管理職や教育委員会のメンバーを大胆に若返らせれば良いだけである。
多少の例外もあるだろうが、多くの場合、DX化への抵抗勢力、すなわち老害教師が実は管理職や教育委員会に数多く潜んでいることは疑いようもあるまい。もちろんメンバーの若返りは年功序列の人事に囚われている限り不可能なので、まずは文科省が率先垂範、年功序列人事を辞めてみたらいかがだろう。いや、その前に都道府県教育長を文科省官僚などから選ぶことをまず、禁止してみてはいかがか。
〇教職大学院、定員充足率85.6%…18校が100%以上 リシード 2024.12.27
高校での授業内容や技術は科学技術の急速な発達、目まぐるしい世界情勢の変化などによって年々、アップデートされる必要性が増してきている。特に難易度の高い生成AIの修得が教師にとって必須になりつつある現在、その修得の機会を教師たちから奪うような、ブラック化した学校のままではかなりマズイだろう。
仮に校務の削減がなかなかはかどらない場合には、当面、教師が己の知識、技術をしっかりとグレードアップするために、煩雑な校務を一旦離れて教職大学院に進学することがより一層奨励されるべきだろう。でなければ肝心の教師たちがIT化、DX化の流れから取り残されてしまう。ところが、そうした危機的状況であるにもかかわらず、教職大学院の定員割れが常態化している。これこそがまさに日本の未来を危うくする重大事態だと考えるが、いかがか。
教職大学院の定員割れはなぜ生じているのか、文科省は一刻も早く、その原因を探り、具体的な打開策を提示すべきである。
◎給特法は枠組み維持、抜本的改正は議論なし 教職調整額は10%
毎日新聞 によるストーリー 2024.12.25
やはり予想通りの、最悪の結果になってしまった。全国の教師たちの多くが求めているのは際限のない仕事量と重責の積み重ねによる疲弊の軽減、解消であったはず。年1%の給与の増額など、「焼け石に水」どころか、まったくの見当はずれ。むしろ絶望感だけが深まる結果となった。これで次年度もまた全国的に教員不足が深刻化し、休職や退職に追い込まれる教師が増え続けるに違いあるまい。
物価上昇率はその上を行くことが予想されているというのに、そもそも、年1%の給与引き上げに私たちは一体どんな魅力を感じたらいいのだろう。馬鹿にするのもいい加減にしてほしい…いや、つまりそういう事なのだ。
日本の教師たちは150年を超える近代的学校教育の歴史の中で、ひたすら馬鹿にされ続ける存在に過ぎない…先進国内における教育予算の圧倒的な低さがそれを物語ってきたはずである。教師に向けられる世間の視線の冷たさもまた、その社会的地位の低さを物語ってきたはずである。
文科省が示す働き方改革の方向性が残業時間の削減という、ほとんど意味の無い、それでいて数値でゴマカスたぐいの詐欺的政策に集約されようとしている。そのことこそ、文科省が本当に意味のある改革を決して志向していないことをいよいよあからさまにしている。それでも教師たちは年1%の給与引き上げに狂喜乱舞する、と思われているのだから、もはや絶望するしかあるまい。
表向き、残業時間の削減は既に相当程度進んでいるはずだ。10年近く前から、学校に遅くまで居残る教師は年々、減少しているという印象は強い。ただしその裏側では自宅への「お持ち帰り残業」が増え続けてきたはず。業務が削減されていないのだから、それは当たり前である。つまり文科省は学校での残業を減らすことで電気代や水道代などを教師たちに節約させる一方で、本来、国家や自治体が負担すべきそれら業務上の必要経費の多くを教師たちの家計に転嫁させる、というとんでもない欺瞞を力強く推進してきたに過ぎない。
実に教師たちを馬鹿にしきった「働き方改革」である。だから、今後も淡々と日本の教師たちは絶望し続けるのだ。
◎精神疾患で休職の教員、過去最多に 生徒指導や人間関係が負担 毎日新聞 2024.12.20
若い教師、とりわけ女性教師の休職件数の多さは、相も変わらずの年功序列によって男性の老害教師が幅を利かす日本の学校現場の特色が背景にありそうだ。すなわち管理職の無責任な人事による若者への仕事の集中と学校での男女平等度の低さが休職という最悪の事態を招いていることを示しているに違いない。またその結果、児童生徒に大きな悪影響が及んでいることも推察できるだろう。加えて教師不足が叫ばれている中での休職の多さは、いよいよ日本の学校教育全体が軋みだし、破綻しつつあることを物語っていると思われるが、いかがか。
こうした事態を招いた背景には、既にポンコツと化した男中心の老害政治家が国政のみならず、地方政治にも幅を利かしている、情けない現状がありそうだ。そうした閉塞的な政治のあり方が、少子高齢化の急速な進展とともに日本社会の隅々にまでしっかりと浸透してしまったのだろう。すなわち、この問題は遅かれ早かれ学校社会を大きくはみ出していき、広く日本社会全体を機能不全に陥れていくのではあるまいか。
〇三重の公立校教員採用、受験者数が最少に 試験の前倒しも効果なし? 朝日新聞社 2024.12.5
一体、いつまでこうした的外れの、泥縄式対策が続くのだろう。教育行政への不信感は募るばかりである。高知では近年、教員採用試験の合格者の7割ti近くが教職に就くことを辞退している。実際、どの都道府県でも文科省が推薦する受験日の前倒しが何らの効果も見られない理由は誰の目にも明らかなのに、なぜ文科省や教育委員会はこうした不毛な駄策、的外れの弥縫策を繰り返すのだろう。
こうした惨めな状況を創り出し続ける教育行政側に最も欠けているのは、自分たちの過ちを認めようとしない、恥知らずなまでの頑迷さにあるのではあるまいか。企業側の採用試験が教員採用試験よりも早い日程だから、結果的に教員採用試験の受験者や教職に就く者の減少を招いている、との認識は見当外れも甚だしいのだ。
おそらくこうした自責の念を欠いた他責的認識が文科省には広くはびこっているのだろう。間違いなく若者の教職離れの主因は学校のブラック化にある。ブラック化への対応が不十分なまま、教師たちに過重な負担を課し続けてきた教育行政側の責任は極めて重大であろう。
ただし一番の責任を負うべきは教育改革をとなえて学校に大きな負担を課しながら、ひたすら教育予算を削り続けてきた歴代内閣である。立場からすればむしろ文科省の官僚はその被害者に過ぎないと言えるかもしれない。もちろん、おぞましいほど時代遅れで的外れな教育行政によって最も大きな被害を被っているのは児童生徒たちであり、それは教員の中途退職と教員不足の増大に比例するよう、徐々に増加してきたイジメ件数、不登校者数を見れば明らかである。
改革を阻む老害政治家たちが実権を握る日本政治の弊害、毒素はまず年功序列の世界の住人、とりわけ官僚たちに垂れ流されるに違いない。やがて官僚たちは地方に天下り、老害政治の毒素を地方にも浸透させる。いや、地方議会もまた老害地方議員たちによって既に国政以上に酷く汚染されているかもしれぬ。その毒素は末端の公務員、とりわけ教員に浸透し、無残にも児童生徒をくまなく汚染するはずだ。まさに老害のトリクルダウンが隅々まで行き渡っているのが日本の現状ではあるまいか。
○なぜ若い教師の代わりを私たちが…割を食う「氷河期世代の40代教師」の嘆き【学校現場の働き方改
革の実情】 THE GOLD ONLINE によるストーリー 2024.7.9
割を食っているのは40代だけではあるまい。大胆な負担の軽減と公平な職務の分担が実現出来ていない責任を教育委員会や管理職が一切負わないままで済んでしまうような人事考課システムこそ、大きな問題なのではあるまいか。思い切った職務の削減と公平な校内人事を上手にできない管理職の存在こそが学校のチームワークを崩壊させる側面を決して過小評価してはなるまい。
当然、文科省の当てにならない調査結果も決して鵜呑みにしてはなるまい。「働き方改革」の推進が管理職のお手柄となるような、「見せかけ」の定時退勤が横行している学校現場の実態は文科省の調査結果にはまったく反映されていない。信頼に足るデータを持たないままブルシットジョブをひたすら垂れ流してくる教育行政のあり方を根本から変えていかない限り、教員不足は加速するだけであろう。
○教師の過酷残業と消える ”当たり前” テレ朝news によるストーリー 2024.3.28
日本の教師不足の現状は私からすれば予想以上に軽度と言えるだろう。個人的には日本の学校教が直面している絶望的な現状においてすら、まだ教師を志望する若者が今それなりに存在していること自体、実に不思議なことだと感じているのだ。
内田氏が指摘しているように「半世紀遅れの教育現場」がほとんど改善されることなく、「もはや学校教育は崩壊している」と捉えるべき現状があるのに一体なぜ、一部の若者は「沈む船」に乗り込もうとするのか…どうして日本では少なからずの若者が敢えて教師を志望しているのか、その動機と原因が何としても気にかかってしかたない。つまり若者たちは「教育」というバラ色の幻想に目をくらまされ、大学の古臭い観念にとりつかれたままの教師たちによっていまだに洗脳されているのでは あるまいか。
仮に私が大学の教職課程を教える立場ならば、現状では学生に教職を積極的には勧めないだろう。 むしろ学校現場で教師が直面する数々の問題点を講義の中で赤裸々に取り上げていき、決して教職に関してはバラ色の未来を語るまい。そしてそれでもなお問題点を克服する意欲、体力、能力のある若者に限り、教職に就くことを渋々黙認する、という立場を選ぶだろう。
つまり私が大いに懸念しているのは大学での教員養成の中身が日本の学校の悲惨な現状をきちんと捉えたものにはなっていない、という恐るべき可能性なのである。一部の大学では相変わらず大昔の「教師聖職者論」に依拠した、教職の無限の可能性…などといった古の幻想を学生たちに無責任にもばらまき続けているのではあるまいか。その一方で学校の急速なブラック化による児童生徒及び教師の心身の不調や幸福度の低下問題をひどく矮小化してしまっているのではあるまいか。つまり今、教職を魅力あふれる聖職として大学が宣伝することは極めて罪深い、詐欺的所業ではないのか。
若者をだまして先々精神疾患などに追い込むことは犯罪的行為に等しいと言っても過言ではない、と私は思うのだが、いかがだろう。
◎「無理ゲー」の霞が関 退職官僚がつづった思いとは 毎日新聞 によるストーリー 2024.1.9
諸悪の根源は政治家の見識の低さであり、そうした政治家を選び続ける選挙民の意識の低さである。そして選挙民の意識の低さを巧妙に醸成してきたのはもっぱら日本の因循姑息にまみれた学校教育であろう。時間はかかるが、学校教育のあり方を根本から見直さないと日本の政治はいよいよ低次元の俗悪なポピュリズムに流されてしまうに違いない。
○日教組加入率2割切る=過去最低更新―文科省 時事通信 2024.3.1
学校のブラック化を止められなかった原因の一つが教職員組合の衰退。組合はなぜ衰退したのか、組
合のあり方を含めて問い直さなければなるまい。
…と思いつつも、「どうせお上はきれい事を並べては自分たちの手柄稼ぎのためにこれからも次から次へと現場の仕事を増やすつもりであろう。これまで通りに学校で生じた問題の責任も教師の資質の問題としてひたすら下々へ押しつけるだけであるに違いない」などとついつい愚痴ばかり並べてしまう。
この官僚達に対する根深い不信感とひがみ根性はもちろん健康的でも建設的でもない。それにわざわざお上から言われるまでもなく「教師のバトン」自体はしっかりと次世代へつないでいかなければならぬ教師自身の大切な使命であることに誰だって異論は無い。
バトンをつないでいくためにはまずもって教師のゆとりを回復することが最優先されるべきであるのは現状からして当然である。そのための制度的見直しは大いに必要だ。しかし制度面の見直しに関しては現場の教師が出来ることは極めて限られている。せいぜいSNS上で学校の実情を訴えるべく、「先生、死ぬかも」といった苦痛に満ちたうめき声を上げるくらいしか出来ることはないのである。ただし折角勇気を絞り出して教師が「死ぬかも」とまでつぶやいたにも関わらず、文科省は一切聞く耳を持たないまま、例の「教師のバトン」の炎上騒ぎを引き起こしているのだから教師側としてはもう、どうしても憤懣やる方ないのだ。
2.学校のブラック化
※カッパの伝言板でも詳しく紹介されている。
・教師も生徒も息苦しい学校という空間
〇元気な小学生が中学生になると面白みのない生徒になる…「みんなも我慢している
んだから我慢しろ」無能教師がはびこる日本の同調圧力教育
集英社オンライン 2023.08.07
〇なぜ多くの日本人は昔から、同調圧力が「好き」なのか…自由を「わがまま」や
「自分勝手」ととらえ、厳しい校則で圧をかける教師もいる
集英社オンライン 2023.8.8
◎日本はなぜ幸福度が低いのか? キーワードは「寛容さ」
世界経済フォーラム ForbesJAPAN 2022/10/20 09:30
人生における選択の自由度の低さと他者への寛容性の低さが日本人の主観的幸福度を先進国最低のレベルとしている原因・・・だとすればその原因に大きく関わってしてしまっているのが多様な価値観を認めようとしない日本の画一的学校教育であろう。
参考動画
◎【教育】日本の教育現場、問題点山積み…
2020/02/24 たかまつななチャンネル 4:39
日本の学校での授業の問題点が短時間で整理されている。導入時に「授業への不満、要求アンケート」をとり、その分析を行う際に利用できるだろう。
◎【給特法】「むしろ残業を増やすかも」定額働かせ放題?教師の仕事はどこまで?
田村淳と議論
ABEMA 変わる報道番組#アベプラ【公式】 2022/08/03 15:02
◎【多忙な先生】「休むのが逆に違和感あるくらい」朝から晩まで多忙な教員の1
日...一方で府を訴えた教員は完全勝訴「自主性の一言で片付けていいものなのか」
2022/06/28 MBS NEWS 10:46
教師の「やり甲斐搾取」、「定額働かせ放題」の側面についてアンケートをとっておくと良いだろう。特にどのような教師が生徒にとって理想なのか、どのような授業が良いのか、さまざまなアングルから質問してみたい。
◎【給特法】月4%上乗せで"定額働かせ放題"に…法律が残業増加の温床に?教育現
場の働き方を考える ABEMAニュース【公式】2022/08/02 18:52
◎【ブラック教師】「残業はしてないコトに‥」教師の"定額働かされ放題"の実態と
は|#アベプラ 2020/03/18 38:35
◎【#先生死ぬかも】現役教師「過労死でも好きで働いただけとされる」ブラックな
教育現場の背景にある給特法とは?コロナ禍で業務量が膨大に|
#アベプラ 2020/08/19 15:52
◎【#教師のバトン】現役教師「閉鎖的な組織」先生たちがブラック労働をTwitterに
暴露?前川喜平元文科事務次官と考える教師の働き方改革【EXIT】|
#アベプラ 2021/04/10
◎【#教師バトン】悲痛の叫び…なぜブラック労働?橋下徹「チームで分業でやらな
きゃいけない」『NewsBAR橋下 #116 』2021/04/18 6:02
○【ブラック労働】教員不足を加速させる部活の負担 外部の指導員を雇う学校も‥ひ
ろゆき「教育に専念すべき」教師&先生の仕事って何だ?【働き方】|#アベプラ
《アベマで放送中 2020/12/06
○【内田良が語る】『ブラック部活動』 2018/10/28
○【教育対談】苫野一徳 × 内田良『みらいの教育』を語る 2018/10/17
○教員の”ブラック勤務”問題【報道特集】
2022/02/20 TBS NEWS 22:23
○「先生は、読み・書き・そろばんのみを教えれば良い」たかまつななが宇野常寛に
聞いてみた #うのなな 2019/10/11 8:53
○「学校は、世間・コミュニティを担うべきではない」たかまつななが宇野常寛に聞
いてみた #うのなな 2019/10/14 13:06
◎【毎年5000人が〇〇】日本の教員が「世界一ブラック」な理由
原貫太国際協力師 2021/12/03 16:43
○【教師不足】文科省が全国調査 教頭が担任代替のケースも…
2022/01/31 日テレNEWS 1:13
参考記事
◎日本の小・中学校教員 仕事時間世界最長 学習へのAI活用は国際平均の半分程度
OECD・国際教員指導環境調査 FNNプライムオンライン 2025.10.7
「教員の働き改革は進んでいる」との勘違いが世間でなぜいつまでも払しょくされないのか、その理由の多くが文科省や教育委員会が公表する怪しいデータによるものであることは間違いない。表向きの勤務時間が減少しようとも、それは持ち帰り残業の増加を意味しているに過ぎず、正教員の不足が深刻化するなかで教員の実質的負担はかえって増大している…そうした現場の実態が、このようなOECDのような外国のデータでしか、明らかにされてこなかった点こそ、日本の公教育の最大の病巣であり、恥部であろう。
そもそも学校のブラックボックス化を改善できない限り、学校のブラック化は止まりようがないのだ。
◎現役教員3人に2人が「休憩ない」 勤務実態調査 労基旬報 2025.10.2
小学校現役教員5千人超から回答を得た調査であり、学校のブラック化を裏付けるに十分な量のデータと考えられる。ただし、休日の出勤が月に南海平均あるのか、のデータについては、小学校の場合、部活動指導が多い中学校や高校の厳しい実態とは大きく異なる点があることは留意しておくべきだろう。
政府がこれまで力を入れてきたとされる教師の働き方改革の進み具合を、たかだか表面的な学校での勤務時間の減少だけで自画自賛しようとする文科省の欺瞞、卑劣さも、この調査である程度は明らかにされたと考えるが、いかがか。学校での勤務時間の減少の裏で持ち帰り仕事の増加があることはもはや明白だろう。
・公立高部活動 例外措置に3条件 茨城県教委 新方針巡り個別審査
茨城新聞社 によるストーリー 2023.6.2
・教員不足、ハローワークに求人も…授業できない事態に現場悲鳴「毎日電話で頭下
げてる」- 読売新聞 - 2022年2月1日
・尾木ママが教員不足に嘆き 採用試験の倍率は過去最低「全員合格」「質を保障でき
ない」東スポWeb 2022/02/01 16:52
・「中学の部活動を変えれば日本の学校とスポーツの風景が変わる」改革の現場を取
材 FNNプライムオンライン - FNNプライムオンライン – 2022.2.28
・意外と知らない教師の夏休み事情…「生徒が登校しないからヒマ」は大間違い! 日
刊ゲンダイDIGITAL 2022/08/04 06:30
・「部活の地域移行」成功の鍵はやはりカネか 不安尽きぬ受け皿側
毎日新聞 2022/08/05 06:00
◎あなたの先生は大丈夫?教師の過重労働 その果てに何が
クローズアップ現代全記録 2022年4月27日(水)
○求む!教員免許の保持者 不足深刻、埼玉県教委がセミナー開催へ
毎日新聞 2022/11/15 14:56
労働環境の見直しが不十分なままでは事態の改善は見込めないだろう。
○「教師にも営業時間がある」 現役教員の保護者への投稿が話題、本人が明かす発信
の意図 ENCOUNT の意見 – 2022.11.20 19:28
○東京都、都立学校153校で「部活動指導員」募集
リシード 2022.12.26
教員免許状の保有を条件としている限り、部活指導員不足は解消できまい。
◎あなたのまわりにも?一見優秀だが実は主体性がない「いい子症候群」の若者たち
現代ビジネス 飯田 一史 2022/06/03 05:00
◎今の若者たちはなぜ「絶対に失敗したくない」のか 自己責任論が生んだ「ゼロリスク
世代」の未来像 東洋経済オンライン稲田 豊史,金間 大介 2022/10/28 08:30
参考文献
○「学校ってなんだ!~日本の教育はなぜ息苦しいのか~」工藤勇一・鴻上尚史 講
談社現代新書 2021