㉓イジメ事件隠蔽の裏側

※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。

 

参考記事

「なんだこりゃ?」三千字超えの遺書に抱いた違和感…愛知県西尾市中学生いじめ

    自殺事件を描いた「924ページの大著」を読む

    現代ビジネス 仲野 徹(大阪大学名誉教授) 2025.8.27 

    学校の味方となるような内容でなければ取材には応じない…と語った取材時の校長の発言に、学校の隠蔽体質があからさまに露呈している。かなり昔の事件だが、学校の体質に大きな変化はあるまい。

子どもの「ネットいじめ」過去最多 いじめるのはジャイアンではなく「しずかちゃ

   ん」タイプのワケ AERA dot. 野村昌二 の意見 2024.6.26

 面白い指摘であり、授業で紹介すると議論が活発化するかもしれない。近年、ネットイジメが激増していることで「しずかちゃん」タイプがイジメ加害者となりやすくなっているとのこと。また学校でのクラスは「関係流動性」が低く、同調圧力が高いため、イジメを見て見ぬふりをするなど、イジメの歯止めがかかりにくい状況を生み出しやすい集団だという。ぜひ生徒たちの意見も聞き出したい。

「カスハラ」連発の今の日本は「優しい国」じゃない…海外の人が抱いている「正

 直な感想」現代ビジネス 片岡 亮(フリージャーナリスト) の意見 2024.6.15

 人助け指数が昨年度ランキング(2023年度)で、日本は142カ国中139位であること、「日本は社会主義的に、集団の調和を重視する傾向が強く、個人の問題に対する配慮が後回しになりやすい。以前、電車やバスでのベビーカーを邪魔だとする人々が結構いるという話があったが、ベビーカーを押す母親の大変さより、その場にいる人々への配慮を優先して考えた意見がたくさん見られた」という指摘はイジメ問題を考える上でも大いに参考になるだろう。これらが日本社会の随所でイジメとその隠蔽がはびこる背景にあると思われるが、いかがか。

参考動画

【坂井風太】「生存者バイアス問題」と若手の不本意離職を防ぐには

 ReHacQハック−【公式】  2024/01/17  52:35

 組織マネージメントの専門的見地を学校組織に当てはめると、学校での不祥事、隠ぺい事件の背景にどのような組織文化があるのか、探っていく必要があるだろう。坂井氏の指摘には非常に有意義なポイントが数多く含まれているようだ。特に「生存者バイアス」は極めて重要な観点で、学校をダメにしている大きなポイントではないだろうか。新人教師の教師としての自己効力感を高めるマインドセットをどう創り出すのかを探ることは大学での教員養成教育においても必要不可欠なはず。

 

・町田小学生イジメ自死事件

「学校配布タブレットでいじめ」 小6女児自殺で両親が訴え

   2021/09/13 TBS NEWS 1:24

東京・町田 小6女児自殺 文科省が市の教育委に指導

   2021/09/15 TBS NEWS 0:43

東京・町田市 いじめ訴え女児死亡 遺族「教育委の調査は一方的」

   2021/11/04 TBS NEWS 2:17

参考記事

町田12歳女子イジメ自殺》「目をえぐる」「さいごに包丁でめったざし」 小学生

 が作ったとは思えない「ころしかたノート」の“残虐すぎる内容” 

 文春オンライン 渋井 哲也 によるストーリー 2024.3.23

 まだ事件の全貌は明らかにされておらず、結論めいたことは言える状況にないが、これまでに判明した分だけでもこの事件の闇深さは十分、伺えよう。イジメ事件隠蔽を考える上でその導入部に使えば生徒たちの関心はかなり深まっるに違いない。

遺族「なぜそういう結論に」“いじめ”訴え小6死亡 調査委「原因特定できず」

      テレ朝news  2024.3.29

    第三者委員会には警察のような強制的捜査権は無く、元来が限界の多い組織に過ぎないことは予め理解しておくべきだろう。事件が表面化してから3年近く経っているにも関わらず、何一つ、事態は進展していないように見えるが、いくつかの案件に関してはイジメとの認定を受けている。また一般的には自殺の原因を特定すること自体、極めて難しいのも事実であり、捜査権の無い組織が確たる証拠もなしに断定的なことを言いにくいのはまさに第三者的には理解できなくもない。どんなメンバーだったのか分からないが、町田市の第三者委員会としてはこれが能力面での限界だったのかもしれない。

 とはいえ相当ひどいイジメがあったことは確認されており、今後、そのことに対して学校側や教育委員会側がこれまでの期間も含め、どのような取り組みを行って事件の再発防止と加害者側の反省、他の生徒たちへの指導が出来るのか、その実際のプロセスが改めて問われてくるだろう。

 ただし、これまでの流れを振り返るとおそらくそれすらもきちんと行われてきたとは到底、思えない。ひどく不誠実な動きが学校や教育行政側に目立つ案件ではある。

 もしかすると事件の解明に関して遺族側は町田市及び町田市教育委員会、学校側のメンバーに対して今後一切、期待すべきではないほどに困難な状況に直面しているのではあるまいか。そうであるとすれば遺族側が自殺とイジメとの因果関係をはっきりさせるためにはおそらく裁判に持っていくほかに手立てはあるまい。裁判になれば学校や教育委員会にも警察の強制捜査が入り、当時の関係者たち全員にイジメへの対応の是非、さらには事件の隠蔽や虚偽の説明の有無がそれ相応に厳しく司法の場で問われていくに違いない。

 そもそも学校や教育委員会のような、ブラックボックス化して自浄能力に欠ける組織に真摯な反省を求めるのは土台、無理な話であり、町田市の場合、遺族は裁判に訴えるほかに有効な手立てはどこにも見当たらないように思えるのだが、いかがだろう。

「校長が言えばまず『分かりました』と答えろ」「最低の教頭」などと叱責 堺市立

 学校の校長をパワハラ行為で懲戒処分 ABCテレビ   2023.11.17

 大阪や兵庫で続発する学校関連の事件のレベルの低さを眺めると教員養成のみならず、管理職養成とその採用基準に大きな疑問を覚えざるを得ないだろう。同じ管理職ではありながら校長と教頭との上下関係はほとんど封建的主従関係に近い。ならば平教師、とりわけ講師の立場がどんなものなのか、推して知るべし。

 これまでひたすらに正教諭の数を減らして講師や非常勤の数を増やしたのは決して人件費を減らすという経済的目的だけではなかった、ということ。学校のブラック化、ブラックボックス化にはこうした側面も大きく関与していることに気付いていただけるとありがたい。

なぜ日本人は「理不尽」を受け入れてしまうのか…学校から「いじめ」がなくなら

 ない理由 現代ビジネス 現代新書編集部 の意見 2023.10.30

 学校の閉鎖的村社会化、ブラックボックス化、ガラパゴス化がイジメを広範にはびこらせ、各種事件の隠蔽を促す要因の一つとなっていると考えられよう。

日本と大違い…フランスで「いじめ」が犯罪行為とみなされる「納得の理由」 新法 

  成立の背景 現代ビジネス A4studio の意見 2023.12.1

   集団生活を身につけさせることを教育目標のメインにしがちな日本の学校と個々の学習をメインにおくフランスとの違いがイジメ問題への対応の違いになって表れてくるという指摘に納得させられる。個の人権や多様性よりも集団社会への適応を優先させる「滅私奉公」的価値観がいまだに日本の学校には浸透しているようなのだ。そしてそのことが学校によるイジメ事件の隠蔽や教師たちの対応の鈍さとなって表面化しているのだろう。すなわち個々人の学びよりも集団主義的洗脳を主眼とする日本の学校教育は今やその根本から見直しを迫られていると考えるが、いかがか。

日本で「いじめ」がなくならない「本当の理由」…子どもから自由を奪う「学校」

 という病 現代ビジネス 現代新書編集部 の意見 2023.12.26

日本人は「世界一礼儀正しい」が「世界一イジワル」だった…「自分の利益より他

 人の不幸を優先する度合い」を測る実験で「日本人ダントツ」の衝撃結果 

 現代ビジネス 週刊現代 の意見 2024.1.2

 非常に興味深い指摘であり、アンケートなどを使って生徒たちの意見を募いたい。

 日本社会に蔓延する「生きにくさ」の正体は日本人特有の集団心理にあるのかもしれない。規律正しさ、礼儀正しさ、おもてなし文化…これらは同調圧力の強い日本社会が生み出した強みでもあり、これまでの日本の工業化を支え、観光業の発展をもたらした長所ではあったが、同時に「出る杭は打たれる」、場の空気を読めない「KY」を排除する集団的イジメを学校などにはびこらせてきた側面があることも否めないだろう。

 単純に集団主義的な心性を批判し、個性や多様性の尊重を謳うだけでは日本人の長所を損なう恐れもあると考える。要は行き過ぎた忖度を見直し、個性や多様性の価値を認めつつも、規律正しさ、礼儀正しさを出来るだけ失わないような工夫と絶妙なバランス感覚が求められているのだろう。

【緊急保護者会】大阪中1女子自未遂!全音声公開74 分  

 2022.6.5 加藤秀視 26:26

 これも学校の隠蔽体質が露見したケース。ただし行政のバックアップも乏しい中で現場の教師が抱えている膨大な仕事量と苛烈なストレスへの理解は学校が頑固な隠蔽体質を持つに至った背景を知る上で欠かせまい。学校現場への理解を欠いたまま、学校や教師を一方的に断罪するだけでは教育現場の絶望感を深めていくだけであり、教師志望者をさらに減らしていくだけとなりかねない。

 もちろん学校の伝統的な隠蔽体質が学校教師への世間による共感的理解を妨げてしまい、それがまた隠蔽に走る学校や教師に対する厳しい批判を招いてしまう一因ではあるだろう。加藤氏らにバッシングされている学校の惨めで情けない現状は厳しく言えば自己防衛ばかりに腐心し、自己改革をサボってきた学校側の自業自得と言えなくもない。これからは学校をもっともっと大胆に世界や世間に向けて開いていく努力をしていかなければならないのは確かであろう。さもなければ日本の学校は児童生徒および教師にとってさらに辛い場所になってしまうに違いない。

 加えて何よりも重大なのは教師及び管理職の採用条件であろう。たとえばこれまで日本の教育行政のあり方に批判的な意見を面接試験の場で一度でも表明した人物は教員採用試験や管理職登用試験で必ずと言って良いほど落とされ続けてきた(場合によっては永遠に正規雇用されない)と考えられる点である。学校の現状に批判的で学校改革を進めていけるだけの意欲と可能性を秘めた人物を予め現場から排除しようとするような、閉鎖的で変革を好まない村社会的人事を教育行政側が続けている限りは、教育委員会や管理職が「いじめ問題」の隠蔽をやめることはまずないだろう。

 これまでの教員養成教育や教科書検定制度を含めて学校教育をあらゆる角度から根本的に見直さない限り、日本の保守的で閉鎖的な学校体質に何一つ変化は訪れないと考える。実際、悲惨の極みに思えたあの大津イジメ事件からですら、多くの管理職や教育委員会、一般の教師たちがほぼ何一つ学ぶことの出来ていなかった証拠が、大津以降、流山、西宮、堺、名古屋、酒田、静岡、川口、旭川、尼崎、町田などでの出来事で立て続けに露呈してきている。おそらく根本的な見直しがされないままでは同様の事件が今後も各地で続発していくに違いない。

 加藤氏らの挑戦が請願権を楯に大きな燎原の火となって政治を動かし、法制度を変えていくまでにはやはり相当の困難と時間を要するだろう。つまり学校教育の現場と行政側はとっくの昔に自浄能力を無くしてしまい、ほとんど自己変革を期待できないほどに組織の腐敗と衰弱が進んでいると思えるからである。学校現場の関係者に「イジメ」事件を円満に解決する能力や時間的余裕が残されているとは最早、到底考えられない。

 逆にこうした事件が明るみに出れば出るほど学校では「やってる」感を演出するための体裁作りばかりが増えていき、教師達は体裁作りに追われていよいよ疲弊していくに違いない・・・これが教育現場に携わる人々の大方の実感ではあるまいか。

 元教師という立場からは余りにも情けない言い草なのだが、正直なところ、日本の学校を変革するためには教育行政や学校関係者以外からのさらなる強烈な「外圧」を必要としていると個人的には感じている。

 今、BBCがジャニー氏の性加害報道をしたことが一つの突破口となり、これまで幾度も性加害の告発があってもほとんど動こうとしなかった日本のマスコミや芸能界がとうとう動き始めざるを得ない状況に追い込まれている。

 昨年、マスコミや芸能界が外圧によってにわかに動き始めたように、日本の学校にも新たな「黒船来航」が必要となっているのかもしれない。それほどに日本の教育行政は学校現場を含めて長い間、ひたすら一部の政治家の道具として使いまわされ、使い倒されてきた結果、もはや、自らを変革するだけの主体性と柔軟性をゴッソリと失ってしまっているのではあるまいか。

 

いじめ再調査委答申、父親「納得いかない」提訴の構え 千葉県市原市立中 

 産経新聞 2023.11.22

市原市の中2いじめ問題で、新たに2件を認定 被害生徒側は「不服」 

 朝日新聞社  2023.11.22

【独自】「お聞きはしてない」再調査委 いじめ隠ぺいの証拠音声聞かず最終報告

 書 千葉・市原市「いじめ重大事態」 FNNプライムオンライン   2023.11.23

 …再調査の過程で生徒側は、学校で関係者が話し合った音声データを「いじめがあった証拠だ」として提供する考えを再調査委に示していた。だが、再調査委側は「音声は取り扱いが難しい」「失念していた」などとして、受け取らないまま事実認定を行っていた

   これだけの大失態を犯しながらのうのうと答申を提出する「いじめ再調査委員会」とは一体、どんな組織なのだろう?しかも音声データには市教委による隠蔽の証拠とされる箇所があったというから驚きだ。これは再調査委による第二の隠蔽、と疑われてもやむをえまい。誰がどう見ても本気で実態を把握しようとは考えていないことがバレバレではないか。これまでさんざんもめてきた経緯があるにもかかわらず、この杜撰な対応ぶりは決して許されるものではあるまい。

 

担任のいじめ問題 県教委に報告促されたのに野洲市教委対応せず

 毎日新聞 2022.12.14

 大津市イジメ事件で話題となった滋賀県ではあるが再び、残念な事件が野洲市で発生している。今回も学校や市教委による隠蔽とも受け取られかねない事案である。教師が特定の児童をいじめるという大問題に対して校長や市教委の不誠実な対応は確かに許容できないだろう。

 しかし、こうした問題が各地で続々と生じてしまう背景に教師や教育委員会の人手不足および過重労働の深刻さが背景にある事が予想される。確かに教師や教育委員会、学校への批判も必要ではあるが、人員及び予算不足の深刻化と同時にそれと反比例するような仕事量の激増が一気に学校教育界隈を追い詰めている感は否めない。

上級生からのいじめを担任が容認…いじめ受けた生徒の尻を複数回蹴る 教諭ら懲戒

   処分 毎日放送 によるストーリー 2023.12.26

 大阪府摂津市での事件。校長による犯人隠匿に近い隠蔽工作が発覚している。これだけの事件を校長減給一か月、担任減給六か月という処分で本当に良いのだろうか。こういう事件を続々と生みだしている学校教育の風土が大阪府や兵庫県に蔓延しているように感じられてならない。

 

・大阪府門真市中3イジメ自死事件

中3男子生徒いじめ 遺族が会見で「加害者たちを絶対に許しません」吉村知事に「厳罰求める」手紙送付を明かす 毎日放送  2024.2.15

高校合格を報告した夜に…中3男子がいじめを苦に自殺 「絶望と無念な気持ちを抱

 えながら死を選択せざるを得なかった」と第三者委は指摘  

 FNNプライムオンライン によるストーリー 2024.2.15

【速報】SNSで繰り返された誹謗中傷中学3年の生徒がいじめを苦に自死門真

 が第三者委の報告書公表「いじめと自死との因果関係認める」教育長らが謝罪 

 毎日放送 によるストーリー 2024.3.19

いじめで息子を亡くした母親 加害生徒側から"謝罪の手紙"が届くも不信感「本当

 に 悪いと思っているなら、もっと早くに自宅に来るはず」 匿名SNSで誹謗中傷・

 LINE陰口で中3男子が自死   毎日放送  2024.8.6

   2年前に大阪府門真市の市立中学校に通っていた3年生の男子生徒がイジメを受けて自殺した件で遺族が学校や教育委員会の対応に不満と不信を募らせ、ついに府知事に直訴したが、「厳罰」に関しては軽く一蹴されてしまったようだ。

 確かに公教育への政治介入は本来、好ましくない。しかしこれだけイジメ事件の隠蔽が繰り返される状況下ではもはや文春などのマスコミを通じて世論に、あるいは裁判所に訴えるしか遺族に残された手段はあるまい。もちろん、これらも辛い作業となり、かつ生活に時間的、経済的余裕がなければ無理。多くの遺族が実質的には「泣き寝入り」状態に置かれている現状をどうすべきなのか、腰を据えてじっくりと考える必要がある。

 同様の悲劇が繰り返されないことこそ遺族側の一番の願いとなるだろうが、どうみても悲劇は執拗に繰り返されており、むしろ事態は悪化しているかもしれない。学校も教育委員会も、イジメ問題に対してはその無能さ、無責任さをいよいよさらけ出してしまっている。警察だってこの問題に深入りするだけの余裕は無いだろう。

 まずは教師の仕事を精選して負担の軽減を大胆に進めた上で画一的、管理主義的指導を改め、児童生徒集団の同調圧力を弱めて学習の個別最適化を図る。同時に教師養成教育の内容と教員免許の基準や教員採用、管理職採用のあり方を見直す。より個性や多様性を尊重し、協働の学びを追求する授業の在り方を目指す…非常に遠回りで内容が多岐にわたり、いずれもかなりの時間を要するが、根本的にはこれしか方法はあるまい。

 とはいえ、隠蔽、隠匿した側が厳しく罰せられないまま、ただ口先だけの謝罪で終わっているケースが多すぎやしまいか。これではやはり事件の連発に歯止めがかかるまい。責任を感じているのなら、謝罪だけではなく、教育委員会や学校側にはそれなりの誠実な対応が求められているはずなのだが…

 

 教職員の待遇改善と教師の質の向上は同時進行であるのが望ましいのだろうが、残念ながら以上のような報道が続くと若者の教師離れがさらに加速し、教師の質の低下に歯止めがかからなくなるおそれも出てくる。そうなってしまってはかえって教師や学校、教育委員会の不祥事を多発させる最悪の事態を招き寄せるだろう。

 すなわち大学での教師養成の在り方を根本的に見直しつつ、教師の待遇改善と採用基準の見直しを同時進行で可及的速やかに実行していく事が日本の教育界の喫緊の課題ではあるまいか。

 ただし現政権は教師養成という大きな問題には頬被りして、教師の待遇改善と教員採用試験のハードルを下げるという対応しか試みるつもりは無いようだ。教師の待遇改善はもちろん急ぐべきだが、まだ具体策が見えてこない。しかも採用試験のハードルを下げることの弊害は極めて大きいだろう。

 

「いじりといじめの違いって何?」いじめ被害者による予防授業 小学4年生の答え

   は?【news23】 TBS NEWS DIG_Microsoft によるストーリー 2024.3.30

  議論のたたき台として活用すると面白いだろう。アンケートと討議との併用ができれば最高の題材に化ける可能性が有る記事。うまく展開できればイジメ予防にかなり役立つ授業が出来そうだ。

   まずは「いじめ」と「いじり」との境界線はどこか…結論を急がずに対話的議論を続ける方法には学ぶべきことがあると思われる。多様な意見の存在を知り、自分の考えを深めていくことに議論の目的があるとすれば、この方法はかなり有意義な議論につながると期待できるだろう。

   次に注目されるのは、NEWS DIGアプリで『いじめの予防』などについて「みんなの声」を募集したところ、いじめ予防で重要なこととして半数近くが「加害者への厳しい措置」を選んでいるという点だろう。このところイジメ加害者への対応が不十分と思われる事案が数多く報道されていることへの

反発がこの結果の背景にあると思われる。もちろん加害者側の人権を無視した厳罰を人々が求めているわけではあるまい。ただ大津のイジメ事件のように加害者側にきちんとした反省が見られないケースに多くの人が苛立ちを覚えるのは至極当然である。

 イジメ加害者への指導として大切なのは本人が真剣に反省し、二度とイジメを繰り返さなくなることなのだが、これは決して簡単なことではない。大人でも刑務所を出るとたちまち再犯を繰り返す者が少なくない中で、ただでさえ忙しい教師たちが刑務官ほどの経験と専門的知識、及び強い権限を持ちあわせていないにもかかわらず、理解力に相当の問題があるかもしれない児童生徒たちに対して果たしてきちんとした指導ができるのか、否か…どう見ても現実的には無理筋ではあるまいか。

 学校は「教育的指導」という曖昧な枠組の中でイジメを捉えるから加害者側への指導がどうしてもぬるくなりがちなのだろうが、とはいえ学校は所詮、刑務所や少年院ではない。学校に出来ることは余りにも限られている、という謙虚な姿勢がまずは教師たちに求められるのだろう。

 したがって仮に教育委員会から重大事態と判断されたなら、事件の解決を警察や司法の手に委ねる判断も有り、とすべきである。これは必ずしも教育の放棄ではなく、「出来ないことはやるべきではない」という当然の現実的判断に基づくはずのもの。そもそもイジメは刑事罰の対象ともなりうる犯罪行為である、との認識が教師間にもしっかりと共有されるべきなのだ。そして刑事事件に対して教師が深く介入すべきではないのは論を待たない。

 ところが学校に警察を入れることを「学校教育の敗北」と捉えて極端に嫌う風土が多くの学校に存在している。この風土が解決を遅らせてしまい、事態をより悪化させるとともに、事件の隠蔽をも生み出している一因なのではあるまいか。また警察を入れた学校長の判断を教育者としてマイナスに評価するような、減点主義の教育委員会も少なくないのでは…

 イジメ事件への対応に苦慮する学校は多いだろうが、学校はそもそもこの問題にしっかりと対応できるだけの資源、権限に欠けている、極めて脆弱な組織なのであり、教育問題だから…といって学校が丸ごと抱え込もうとするのは極めて危険な事なのかもしれない。むしろ他機関との連携を積極的に推進することこそ、イジメ問題への現実的対応策と考えるが、いかがか。

国家権力を介入させない『私学の自由』と『いじめ対応』苦悩する生徒や保護者

  「行政機関なり役所なりが助けてくれると思っていた」学校に不信感...でも行政は指

   導できず 毎日放送 によるストーリー 2024.4.1

   イジメ問題に関しては日本の場合、教育機関として対応するには大きな限界があるようだ。法的な対応をとることを前提に弁護士等に相談するのがおそらく被害者側が最も納得できる方策なのだろう。今後は被害者側が加害者側だけではなく、学校や教育委員会側を訴える事例が増えてくるように思える。

いじめ申告に“警察じゃない”学校が調査拒否 自殺示唆ノートには花丸 母親「シャッ

   トアウトされた」読売テレビ によるストーリー 2023.12.7

 奈良市ではもはや隠蔽しようという恥や罪の意識すらない、ただの開き直りとも受け取れる凄いケースが報道されている。深刻なイジメが疑われるケースが表面化しても「学校は警察じゃない」と言い張り、ひたすら放置する…というありえないほどの厚顔無恥な学校側のスタンスで事態をこじらせてしまった驚愕の事件である。

 おそらくこのスタンスは校長を始めとする学校全体の方針なのだろう。だからこそ児童が自殺したいと記したノートに花マルをつけ、「You can do it」と児童に自殺を促すようなひどいセリフを平気で担任が記せるほどに、学校内にはイジメ案件に対して相当ヤバイ空気が漂っていたに違いあるまい。

 ついに学校は来るところまで来てしまった…問われるのは担任の非常識な対応だけではない。この担任の行動を助長したに等しい校長らの怠慢極まる無責任な学校経営の罪は一層、重いだろう。さらにいえばこうした担任を採用し、こうした校長を登用してきた奈良市教育委員会の人事における深い闇をも感じさせる一件であろう。

鴻巣・中学生いじめ 調査委議事録 確認できず 文科省指針、市規則違反か

   東京新聞 2023.12.15

   意図的な隠蔽なのか、ただの公文書管理の杜撰さなのか…いずれにせよ鴻巣市教育委員会のいい加減さ、だらしなさに呆れるほかない。

 

・横浜市教委の隠蔽体質

いじめ自殺の疑い、弁護士検証で新たに3件 横浜市立校で過去10年 

 朝日新聞社  2024.7.26

 教育者として、こんな姿勢でよくこれまで勤まってきた…と驚きを隠せないほどの無責任体質が横浜市ではきっと学校教育界全体に広く、長く染みわたってきていたのだろう。しかしこの「事なかれ」体質は教育界にとどまらず、日本社会全体にも深く浸透していたような気もしてくるが、いかがだろう。個々人の正義感は抑圧され、集団の安寧を優先する「忖度社会」、「和をもって貴し」となす日本的な集団主義の再生産装置こそ、日本の学校が果たしてきた社会的機能の中核的役割なのではあるまいか。

 日本の近代化において学校が連綿として果たしてきた国家主義的な役割への根本的な見直しが、あの敗戦後に至ってもほとんど進んでいない…息苦しくなるほどのもどかしさを感じてしまう一件である。

横浜の中2自殺 市教委が「いじめ」表記の削除要請、第三者委が指摘 

 毎日新聞 によるストーリー 2024.3.8

  全国各地で手を変え品を変えて執拗に繰り返されるイジメ事件の隠蔽。文科省を頂点とする教育行政のあり方、とりわけ人事政策に大きな問題を感じざるを得ない。

横浜市立学校で生徒2人が連続自殺遺族は「背景にいじめ」訴え、対応後手に 

   カナロコ by 神奈川新聞 によるストーリー 2024.4.24

   横浜市の教育委員会にも大きな闇がありそうだ。

横浜中2自殺、重大事態の認知遅れる 市教委、いじめ防止法違反の認識示す 

 産経新聞 2024.3.19

 「…平成26年度以降、同市で自殺した児童・生徒のうち、詳細な調査をしなかった38件について状況を確認する方針。」箇所に戦慄を覚える。そもそも児童生徒の自殺件数は義務教育段階では極めて少ない。市教委が関わるのは数の少ない市立高校を除くと90%以上は小中学校と考えて差し支えないだろう。ということはここ10年ほどの間に横浜市では詳細な調査が行われていない小学校、中学校での児童生徒の自殺が少なく見積もっても30件近くあったということ。もちろんこの数字自体、必ずしも信用できないのだが、それにしても…言葉に詰まるほどの酷さではあるまいか。

 これまた必ずしも信用できないが、とりあえず文科省の全国統計を確認してみよう。令和4年度の小学生と中学生の自殺者総数は全国で150人。横浜市の人口は日本の総人口の約3%に相当するので、かなり乱暴だが、割合的に見れば横浜市の小学生、中学生の自殺者数は年間4~5人が平均的数字と一応

推量されよう。したがって10年間では40~50人が横浜での小中学生の自殺者数という単純計算になる。そのうちの半数以上は何としたことか、詳細な調査がなされていない…実に驚きの数値ではあるまいか。

 教育界の根深い隠蔽体質が災いしてこの手の調査の数字がかなり怪しいことはこれまでも繰り返し触れてきた。にもかかわらず、こんなに悲惨であったことが白日の下にさらされてしまうほど、もはや隠しおおせないほどの凄まじい酷さが横浜市の教育界に蔓延している…違うだろうか。

 自殺の原因は児童生徒の場合も含めて多岐にわたるだろう。ただし全日制の高校生の自殺では男女とも学校関連の問題がトップにきている。もちろんこれすらもかなり信用できないデータではあるが、一応、学校関係では学業不振や人間関係、進路の悩みなどが主因となっている。つまり学校側の対応いかんでは自殺を防げるケースが多い、ということなのだ。

 近年、日本の若者の自殺増加は国際的にも知られている周知の悩ましき現象であり、当然、自殺防止対策は学校においても急務の課題であるはず。そして自殺防止策を有効にしていくには個々の自殺の原因、自殺に至る経緯を詳しく調査する必要があるのは論を待たないだろう。にもかかわらず、このていたらくなのだから、もはや絶望的状況というほかないのだ。

 ではなぜ学校や教育委員会はこうまでして自殺の原因究明をさぼるのか、その理由はこれまた多岐にわたるだろう。大きい原因としては第一に繁忙を極める教育現場のブラック化、第二に伝統的な教育界のブラックボックス体制=隠蔽体質。さらに教職員の自殺やイジメ事件への無関心、ないしは無知、鈍感さが挙げられるのではないか。これは大学における教員養成講座のお粗末さが背景の一つにあるだろうし、現在の教師たちがかつては「イジメ世代」と呼ばれた世代に属していることも多少は関連しているのかもしれない。

 どれも一朝一夕に解決できる問題ではないが、子どもたちの命を優先できていない今の日本の学校教育の存在価値自体が根本から疑われ始めている、という深刻な危機感だけは何とかして教育関係者の間で共有していかなくてはなるまい。

横浜市教委 いじめ重大2事案認定 小中学校「特性理解、配慮不十分」 

 東京新聞 2025.2.22

   学校教育界隈ではすっかりおなじみの横浜市である。児童生徒の発達特性の違いについて、単純に「遅れている」、あるいは「親の躾がなっていない」との判断からだろう。教師の不勉強、無理解によってイジメが放置されてしまうケースの典型であろう。そしておそらく、この教育委員会は自分たちが引き起こしてしまった不祥事を棚に上げ、「教師どもはケシカラン、厳しく指導・管理すべきだ」とこの事態を受け止め、教師たちへの研修を増やして管理・監督の目を光らせるに違いあるまい。

 結果的には横浜での学校のブラック化が進み、教員の病休や中途退職を増やす、教員志望者数はさらに減少する、学校のブラック化が一層加速する、といった悪循環の方向でしか、横浜市教委は対応できないと予想するが、いかがか。つまり問題は大学での教員養成教育の欠陥と学校のブラック化にあるのであって、この二つを同時進行で改善していかなければ事態はいよいよ悪化すると考える。

 

「どういうつもりなのか」同級生から「ばい菌」扱いのいじめ…女子児童は100日

 以上欠席 急きょ「重大事態」認定に不信感 京都市 別児童のいじめでも一転し重大

 態を認定 毎日放送   2024.7.24

 2020年から始まっていたイジメを今頃になって重大事態に認定する背景に一体何が考えられるだろう。いじめ防止対策推進法に対する理解の程度が各地の教育現場ではかなりマチマチとなっており、殊に管理職によって大きな差異があることは容易に推察できるだろう。今回の件も担当者が新旧入れ替わったことでようやく表面化してきたと考えられる。

 しかし重大な案件に関しては統一的基準に基づく迅速な対応が求められるはずだ。法の規定に基づかない、現状の属人主義的な対応ぶりにはどうしても大きな危険を感じる。管理職の世界における年功序列、先輩後輩関係のあり方に深くメスを入れない限り、こうした事はいつでもどこでも起こり続けるだろう。

 とりあえず、今回の件ではこれまで重大事態としての認定を行わなかった当時の管理職、及び京都市教育委員会の担当者への厳しい処罰を下すべきである。後輩でも間違っている先輩を厳しく処断できないようでは教育行政への市民の信頼は崩れる一方となるだろう。

久喜市立小 重大事態判断に半年、いじめ10件に拡大 保護者「被害悪化させた」 

 東京新聞 2024.3.30

 特に問題視すべきは次の二件だろう。まずは不用意に被害者側と加害者側との話し合いの場を設けてしまったこと。…学校が設けた児童への謝罪の場で同級生の保護者が「自分の子どもと児童はお互いにいじめているのでは」と主張…とあり、かえって被害者側が不登校状態に陥ってしまった可能性は拭えまい。実に間抜けな対応というほかない。

   安易に被害者側と加害者側とを同席させてはいけないことぐらい常識ではないのか。あたかも「喧嘩両成敗」かのような扱いをすることは多くの場合、被害者側を傷つけるだけになりがちで、イジメ案件では絶対に許されない対応である。実際、同様の対応をしてしまい、学校と被害者側との関係が決定的に悪化してしまったケースは他にも数多く存在している。もしや、イジメとケンカを同列の問題とするような、ありえない思考がはびこってしまった学校ならば、もはや学校として完全に終わっているであろう。

 さらに呆れるのはいかにも不慣れな新任教師に問題を丸投げしているとも受け取れそうな学校側の動き。だからこそ「…いじめに対する初期対応の記録も学校に残っていない…」という、不登校の重大事態と認定していながらの記録保存に対する深刻なレベルの杜撰さなのだろう。

 今や、イジメ案件は「重大事態」に至らずとも裁判沙汰に発展する可能性を十分秘めている。当然、管理職は事態の把握当初から関係する担任や児童、保護者からの聞き取り内容や教師たちの指導の記録を提出させ、自ら保管すべきなのは言うまでもあるまい。裁判に発展した際の資料として役立てる心構えが無い人間にこの時代、管理職の資格があるとは到底思えない。これでは学校側が初期対応の杜撰さを隠蔽すべく、本来、あったはずの記録を廃棄したのでは、と学校側の証拠隠滅を疑われても仕方あるまい。

 

・札幌市教委の隠蔽体質

【札幌で”性的いじめ”】「本当につらかった」と被害に遭った男児 「子どもたちの

 声を聞く気がない」と母親は "教育現場の不作為" 小学校・中学校・市教委の対応を

 非難 第三者委員会が調査報告書を公表へ 北海同ニュースUHB  2024/10/04 

 札幌市教委の動きの鈍さは神戸市や横浜市などの、他の政令指定都市における教育委員会と同じ種類の問題を抱えている可能性がある。すなわち人員不足に加えて手に負えないレベルの数の学校を一手に抱え、かなりオーバーワークに追い込まれてしまっているのではあるまいか。であるならば多少、同情すべき点があるのかもしれない。

 とはいえ、市教委だけでなく被害者のいる小学校、加害者のいる中学校の対応もまた法に則った動きとは言えず、やはり札幌市の義務教育会全体に旭川市と同質の、好ましくない「学校文化」が共有されていることを疑いたくなる。たとえば児童生徒やその保護者達に親身になって寄り添う姿勢の欠如がこうした地域の学校文化として共有されてしまっているのではあるまいか。そうした文化が仮に北海道全体に広く見られるとしたらならば、大学における教員養成教育にも大きな欠陥があるに違いない。

 教育委員会も含めた人手不足の解消と仕事の削減を柱とした働き方改革を進める一方で、教員養成教育の根本的な見直しを検討すべき時に来ているのかもしれない。

札幌・中1女子のいじめ自殺、市教委が報告書の公表まで10か月…「黒塗り部分

 を決めるのに時間」 読売新聞  2023.12.22

 旭川で起こった悲劇が悪い意味で参考とされたのだろう。報告書の公表まで10か月もかかってしまったのは「墨塗り部分を決める」のに時間を費やしたためという。関係者が特定できないように工夫したとのことだが、生徒や保護者のプライベート情報を保護する、という名目で実際には学校側の責任が問われないようにするための様々な隠蔽を行ったに過ぎないのではあるまいか。何を隠蔽すべきかに時間がとられてしまった、という事ではないのか。

   …小学校の校長について「組織的対応の意義やその必要性についての理解が全くない」とし、対応が不十分だった点を列記した…という。でありながらも市教委は校長らへの処分は考えていないという、実に驚くべき意見を開陳している。

 つまり校長らへの処分をしない、という結論は最初から決められていて、その結論を正当化するための「墨塗り」であることが濃厚に疑われる案件。この校長らの出身校が旭川と同じ北海道教育大であるとするならば、兵庫教育大を含め、地方の国公立教育大や教育学部の教育レベルまでもが疑われることになろう。

札幌・中1いじめ自殺 報告「黒塗り」見直しへ 市長、市教委に指示 

 毎日新聞   2023.12.27

 市長の判断は正しいだろうが、情けないのは当該学校の校長と市教委。なぜ遺族の意向に反してまで報告書の黒塗りに拘るのか、勘繰りたくなる。もちろん加害者側のプライバシーへの配慮は必要だが、これは刑事事件に発展してもおかしくない案件。市教委への報告が遅れた校長、報告書の公開を遅らせた市教委ともに処分の対象とすべきだろう。

 どうやら旭川の事件が市教委や管理職たちをビビらせてしまい、より一層学校の隠蔽体質を強める方向で作用し始めているようだ。そろそろ北海道全体の学校教育風土をしっかりと検証すべき時ではないか。

批判受け報告書の黒塗り部分見直し再公表へ 札幌市中1いじめ自殺 

 朝日新聞社  2024.1.27

 外部から批判されないと気付くことが出来ない札幌市教育委員会のふがいなさ。もはやこの組織に自浄能力を期待する方が間違っているのだろう。校長以下を罰するのは当然として、教育委員会の担当者こそむしろ厳罰に処すべき案件だと思うが、いかがだろう。責任官庁が責任を負わず、責任者も罰せられないまま、末端の部下だけを罰する、という教育行政の仕組み自体、噴飯物であるはず。

札幌中1自殺、小6当時の校長を懲戒処分…いじめ被害の訴えに組織的対応が不十

 分 読売新聞  2024.2.14

 世論の高まりに慌てた教育委員会が形だけの処分を当時の校長と担任に下してしまった。担任への文書訓告、それに減給一か月という校長への処分が適当なのかは大いに議論が分かれるだろう。とりわけ担任の場合、既に辞職しているとは言え生徒は自殺している。結果の重大さと元担任への文書訓告という処罰は誰がどう見ても不釣り合いである。

 しかも教育委員会自身の組織的対応が不十分であったことへの反省と処分は一体どうなったのだろう。それこそが最も厳格に行われるべき対応であるにもかかわらず、何ら音沙汰無し。ただの「トカゲの尻尾切」としても不十分であり、教育への責任感どころかやる気まで完全に喪失しているようにしか見えてこないのだが…この組織はもはや表面を取り繕う力すら無い無能さ、無気力さをさらけ出してしまっている…まさに恥知らずの集団といっても過言ではあるまい。

 もっと恐ろしいのはこの先、この組織の中から市内の小中学校に教頭や校長となって赴任してしまう人物が複数、出てくるという事だ。この人たちが今後どんな学校経営をしてしまうのか、末恐ろしいにもほどがあるだろう。

 札幌もまた既に旭川市や神戸市と同様、市長を先頭とする強力な政治介入が一刻も早く必要となっていると思うがいかがだろう。もちろん公教育への政治介入は最大限避けるべきではあるが、このままでは子供たちの命すら守れないのでは…

札幌・中1いじめ自殺 黒塗り報告書を見直し 教育長・校長ら処分 毎日新聞 によるストーリー 2024.2.15

 一日遅れで市長による教育長への口頭厳重注意がされたという報道。また監督責任のある市教委の局長職ら4人が口頭厳重注意や口頭訓告を受けたという。市長側としてはこれが精一杯の対応なのだろうが、そもそも「口頭厳重注意」にどれほどの効果が期待できるのかは怪しいというほかあるまい。

 本質的には教育委員会の自浄能力の無さが問題なのであり、市長から指導されるはるか以前に自らを処すことが出来なかった教育委員会側の判断能力の低さと無責任さにフォーカスして今後の対応を考えるべきだろう。つまり、教育委員会における教育長ら担当責任者の降格処分こそが真っ先に教育委員会内で検討されるべきであった。

 「いじめに関連し、札幌市教委が教職員を処分するのは初めて。」という記事にも驚かされた。政令指定都市の札幌である。深刻なイジメ案件を抱える自治体が多い中で数多くの学校を抱える札幌だけが平和だったのだろうか?もちろん、そんなことはあろうはずがない。むしろ身内をかばうためにはどんな非道なイジメ案件でも証拠隠滅を平然と行うヤバイ体質が札幌ではしっかりと蔓延しているに違いない。

 第一、学校が特定されるのを恐れて報告書にマスキングを施した…との言い訳が果たして学校教育村の外で通用するのだろうか…世間知らずもほどほどにすべきだろう。わずかに公開されたイジメの内容からだけでもこれは児童の年齢を考慮しなければ明らかに刑事事件レベルであり、本来、刑事事件にズブの素人ばかりの学校や教育委員会ごときが勝手に判断できる案件では無い。せめてスクールロイヤーあたりの助言がまず必要だったはず。当然、事と次第によっては学校名が公表されても仕方あるまい。いや、学校の強固な隠蔽体質を壊すには校名を公表すべきかもしれない。

 イジメた側の指導を教育委員会はどこまで把握しているのかも疑わしい。イジメた側の追跡調査が行われるべきであり、行われているならばその概要が被害者家族に伝えられていてしかるべき。二度と繰り返すことがあってはならない、自殺者を出した陰惨な事件なのである。

 もちろん報道する側もそれなりに深く突っ込んだ取材をすべきだろう。公表された事実関係を淡々と報道するだけでは現在の学校教育の深い闇を暴くことはできない。すっかりブラックボックス化した学校をこじ開けるには相当の取材能力と根気が必要なのである。

 守秘義務とプライバシーの保護を盾にとって学校教育村に閉じこもり、教育の名のもとに何もかもウヤムヤにしてほとぼりが冷めるのを待つ…そんな不誠実な教育者たちに児童生徒の前に立つ資格などあろうはずがない。

 いじめ対応の怠慢も教職員の懲戒処分対象に 中1自殺で札幌市教委 毎日新聞 によるストーリー  2024.2.27 

 ようやく少しはまともな対応が始まったが、相変わらず、教育委員会自身の責任問題は宙に浮いたままである。どう見ても黒塗りを指示した教育員会の担当者は降格処分が妥当である。教育長は減給処分とすべきだろう。

 責任をとるべき者が責任をとらず、いずれ校長になってしまうこの人事考課のあり方自体が学校教育をゆがめてきた本体なのではあるまいか。

 

いじめで不登校、重大事態認定に7カ月 芦屋の学校、第三者委が批判 毎日新聞   2023.12.22

   兵庫県も大阪府や北海道と同様に学校教育界隈に大きな問題を抱えている地域である。これらの地域は市町村教育委員会レベルの取り組みでは功を奏しない可能性が高いに違いない。また道府県教育員会レベルでの強力な取り組みですら効果は小さいだろう。学校の隠蔽体質を改革するためにはやはり知事、市長、マスコミを巻き込んでの総力戦体制の構築が必要なのではあるまいか。

・泉南市中一イジメ自殺事件

いじめを苦に少年が自殺 SOSあるも行政が甘い対応「人道において恥ずべき行為」第三者機関が批判 

 読売テレビ  2024.1.15

【独自】中1自死…第三者委はいじめ認定したうえで「教員への不信などが背景となった」約半年間クラスメイトらに自

 殺公表しない学校側対応も問題視 MBSニュース 毎日放送 によるストーリー 2024.5.29

「死ね」「障害者」「少年院帰り」浴びせられた暴言を苦に大阪の中1男子が自殺教師の“信じがたい対応とは「お前の言

 うことは信じない」《第三者委が報告書を公表》文春オンライン 渋井 哲也  2024.6.12

   大阪府泉南市の事件。学校、教育委員会、泉南市の市役所すべてが腐敗し、機能不全に陥っている中での事件であり、その悲惨さは神戸市や旭川市の事件と比肩するレベル。日本の学校教育や行政に、一体どんな欠陥が生じているのか、しっかりと検証すべきであろう。

 

鴻巣市、いじめ調査報告書を被害者側の意向に反して非公表 事前に確認すらとらず、政府指針にも逆行 

 東京新聞 2024.3.20

 ここまで市が平気で政府の指針を無視し続けている例はさすがに珍しいだろう。どうみても市長の責任は重大であり、謝罪で済むレベルを完全に超えてしまっている。そもそも全国でイジメ事件の隠蔽が繰り返しマスコミに取り上げられ、学校や教育委員会などが厳しく糾弾されてきたにもかかわらず、そうした風潮にあえて挑戦するかのような対応ぶりに驚く。鴻巣市に一体、何が起きているのか、ある意味で興味深い。また本来、批判の矢面に立つはずの学校や市教委の影が妙に薄いのも気にかかる。市長と市教委との関係にも何かありそうである。

「いじめ防止法」改正の署名活動する遺族の思い 被害者を追い詰める学校の対応に罰則規定を 

 東洋経済オンライン 石川 陽一   2024.4.14

 未だ係争中で事実関係がはっきりとしていないため、学校側の対応も含めて授業で議論するのは時期尚早だが、いじめ防止法の緩さは明らかな問題であろう。イジメ加害者に対してどのような指導が適切なのか、事件を隠蔽しようとした学校や教育委員会への罰則規定はどうあるべきか、問いかけたい。

 

退学のバレー部員へのいじめ認定 学校側が当初いじめ否定、再調査で 朝日新聞社 によるストーリー 2024.8.10

 非常に悪質なケースで驚かされる。これだけ世間を騒がせてきたイジメ問題に対してまったくの無関心、無知厚顔ぶり。イジメられる側が悪いかのような学校側の対応に呆れるしかない。あたかも下級生をしごき、イジメることでしか上級生側のチームワークが生み出されていないようで、この学校の体質に気味悪さを感じないわけにはいかない。

 

 以上、イジメ事件隠蔽の裏側に何が潜んでいるのか、いくつかの事例を通じて自分なりに考察してきた。まずその根底には歴史を隠滅し、都合よく改ざんすることに異様なほどまで抵抗感の少ない日本人の伝統的な歴史認識のあり方が横たわっているように思える。それは特に敗戦後の日本政治、学校教育の歩みを振り返れば歴然たる事実だと思うがいかがだろう。

 加えて日本の近代以降の学校教育が伝統的に抱えてきた頑固なまでの隠蔽体質の存在。戦後は特に守秘義務とプライバシーの保護を悪用して自己保身を図る教職員、とりわけ管理職の意識のあり方が問題視されよう。その背後には管理職を含めた教職員への評価のポイントがどうやら減点方式に偏ってきた残念な歴史があるように思えるが、いかがだろう。実際、これまでに紹介した記事では学校での不祥事による減点を恐れるあまり、部下や同僚を守るという美名に隠れ、管理職が率先して不祥事隠しを組織的に行ってきたと思われるケースが極めて多いように見える。

 学校の隠蔽体質は学校教育村の外から学校の実態が次第に見えにくくなってきている、といったいわゆる学校の「ブラックボックス化」の進展も少なからず関わっているだろう。このブラックボックス化は「学校改革」や「教師改革」という美名に隠れてここ30年近く急激に進展してきた教師たちの過重労働、すなわち学校のブラック化もまた極めて大きな要因となっていたと考えられる。現役の教師たちによって学校教育の実態を世間に訴えるような著作が激減する状況と平行して学校のブラックボックス化が進んできたと私は思うのだ。

 もはや今の教師たちには世間に向かって学校の実情を理解してもらうよう、何らかの手段を講ずるだけの時間的、体力的、精神的ゆとりがほぼ無くなってきているのではあるまいか。また本来、こうした問題に大きな役割を果たすべき教職員組合の弱体化が学校のブラック化とブラックボックス化に歯止めをかけることに失敗してきたことも見逃せまい。

 そして学校や教育の研究者たちも教育社会学者の内田良氏ら一部の学者を除くとその多くは以上のような学校の劣化、疲弊ぶりに概して無頓着であったと思うがいかがだろう。むしろ政府の繰り出すあざとい「学校改革」、「教育改革」の掛け声に乗じてスクラップアンドビルドの原則を無視し、ひたすら学校現場を疲弊させてきた「…改革」の連打に積極的に加担し、政府のお神輿を担いできた無責任な文科省の官僚と御用学者は少なからずいたように記憶しているが、いかがだろう。

参考記事

実際に日本の学校で起きた「葬式ごっこ」の壮絶実態…いまだ変わらない「いじめの構造」 内藤 朝雄  2024.4.23

 今や大津の事件と並んでイジメ事件の古典となっている中野区冨士見中の「葬式ごっこ」事件であるが、ここで分析されている「いじめの構造」において日本の場合、40年近く経ても本質的にはほとんど変化が見られない。そのおぞましさ、頑強さに改めて驚く。日本の学校が本当は日本社会にどんな役割を果たしてきたのか、その明と暗をきっちりと把握しようとする努力は今後も欠かせないだろう。

加害者の今を知ってしまった…「娘の未来は絶たれたのに」中2いじめ、遺族の憤りと煩悶 学校推薦で高校進学、実業団

 選手に。謝罪はないまま 47NEWS によるストーリー 2024.6.28

 …「いじめた側」に認定された12人のうち、弔問に訪れたのは2人だけだ。両親によるとその2人も自身の行為について謝罪の言葉はなかった。その他の生徒とは直接面会していない…しかもそのうちの一人はスポーツ推薦で高校に進学し、さらに実業団でも活躍していたというのだから遺族としては切ない。

 もちろん加害者側には未来があり、その未来を奪うような事は避けるべきだが、何はともあれ被害者の未来が奪われてしまった事実だけは動かない。せめて加害者側にはその辛い事実と向き合い続ける義務があるはずだ。謝罪の言葉すらなく、言い訳がましい言葉だけで弔問すらしていない加害者たちの現状を教育者としてどう判断しているのか、当時の学校関係者に問い質したい。