⑯高校野球の裏側

※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。

 

・「大谷のグラブ」対応から見える学校教育と日本の野球界の問題点

参考記事

「早くウチの子供に使わせろ!」“大谷グローブ”を巡って教育現場が頭を悩ませる

 ワケ 日刊SPA! の意見 2024.5.13

大谷選手の寄贈グラブの活用は難しい?「キャッチボールもしていません」 校庭で

 野球禁止の学校も AERA dot. 米倉昭仁 によるストーリー 2024.2.3

大谷翔平の小学校寄贈グローブが「10万円転売騒動」「屋外使用厳禁」剥き出しに

 なるオトナたちの醜態 アサ芸プラス によるストーリー  2024.1.23

大谷翔平の『寄贈グローブ』で全国の小学校に広がる混乱 使用ルール”決まらない

 なか、保護者からの要求がエスカレートすることも

 NEWSポストセブン の意見 2024.1.25

 こうした醜い状況が生まれてしまった原因はどこにあるのだろう。グローブを受け取った学校側の対応にはもちろん大きな問題が少しずつ露見してきている。相当程度ブラック化している小学校にとって12月から順次寄贈されるグローブへの対応は頭を抱えるレベルの難問であるはず。「10万円転売」問題は早くから予想できたことであり、そうならないためにはどうしたらよいのか…まさか校長室に飾るだけでは大谷選手の意向を無視することになりかねない。

 おそらく有効な活用方法は簡単には見いだせないだろう。寄贈されたグローブをどのように扱うのが理想的なのか、生徒たちに提案してもらうと議論がはずむかもしれないが、じつは学校長以下、ベテランの教師たちであっもこれはかなり難易度の高い課題。今は学校の繁忙期。こんな時に奇妙な難題を吹っ掛けられてしまった小学校の方こそ困惑するばかりで、学校によってはまさに「有難迷惑」そのものに違いない。

 当然、グローブを寄贈した大谷選手側にもかなり問題がありそうだ。日本での野球人気を少年野球の段階から盛り上げることが大谷選手の狙いのようだが、このやり方で本当に良かったのかどうかは疑念が残る。ただでさえ、大型の寄付は難しい。マイクロソフトの創設者ビル・ゲイツは寄付をするためだけの財団を立ち上げて大勢の検討のもとに寄付を行っている。大谷選手側にそうした熟慮があったとは思えない。

 大谷選手側のどこに問題があり、野球人気回復の方途はどうあるべきなのか、についても生徒から意見を募りたい。もちろん、野球人気の回復など学校側が特にする必要は無い、との意見が出るかもしれず、その場合はぜひ賛否を問いたい。

 

・野球離れの持つ意味

参考動画

【野球離れ】甲子園は高校生にとってベストなのか?20年で部員半減の厳しさも?

   スポーツ業界における野球の役割|《アベマで放送中》2022/05/14 12:43

【指導】「チームを強化するために」パワハラ解任の横浜高校元監督の失敗とは?

 安藤美姫が明かすコーチとの信頼関係と罵声?スポーツと体罰|2021/11/12 

 ABEMA 変わる報道番組#アベプラ【公式】 29:36

 安藤氏や夏野氏の意見に注目したい。頂点を目指すトップアスリートの世界では厳しい指導と暴言や体罰は紙一重であり、その場の状況や指導者と選手との信頼関係が問われてくる。必ずしも一律に外部から体罰や暴言が適用されるとなれば指導者側だけでなく選手側まで困惑しかねないだろう。しかし学校の部活動においては生徒達に退部の自由があるとは限らず、もはや指導者による暴言や体罰が許される余地はコンプライアンス重視の現在、ほぼなくなってきていると見て良いだろう。

参考記事

私立高校の野球部で監督らが暴言や暴行か…保護者会で謝罪 バドミントン部でも

 長崎市 日テレNEWS 2022.12.16

 スポーツ強豪校ではありがちな事件。1970年代に全盛期を迎えたスポ根アニメ、青春ドラマ、ホームドラマなどにつきものの体罰やしごきは今の60歳代の教師、さらにはその教え子の世代である50歳代、40歳代にも連綿として受け継がれている。結果を出さなければならないスポーツ強豪校にとっては極めて克服が難しい問題であろう。中学だけではなく高校でも運動部指導の民間委託を徹底させる方がこの問題をスピード解決するには最適なような気がするが、いかがだろう。

甲子園で長髪旋風! 非丸刈りチームの決勝進出が確定 「高校生らしくない」に著

 名人が反論「時代は常に変化」 ENCOUNT によるストーリー 2023.8.19

 この話題から入ると高野連や運動部の抱えてきた問題点を浮き彫りにしやすいだろ

う。まずは高校野球での「丸刈り」に対して賛否を問い、それぞれの理由を挙げさ

せてみたい。

高校生3人に1人、部活の大会で髪形注意された経験 「前髪上げろ」

 毎日新聞 によるストーリー 2023.12.15

 部活動の隠れた役割にも注目したい。

高校野球で「そんなの認めない」 ペッパーミルだけじゃない、審判の怒りを買っ

 た球児の行為  AERA dot. 2023.4.5

 討論のテーマとして格好の素材になるだろう。

球児よりヤバいのは審判・チアガール・吹奏楽・観客…夏の甲子園でバタバタ倒れ「熱

 中症死」が出る日 プレジデントオンライン 酒井 政人  2023.8.8

【甲子園】6回に土浦日大、上田西の両チームの選手が動けなくなりベンチに運ば

 れる 今大会から暑熱対策を実施 報知新聞社 によるストーリー 2023.8.6

もう夏の甲子園はやめませんか?高校野球を巡る諸問題はやめれば解決する

 Bpress 関 瑶子 によるストーリー 2023.8.5

 児童、生徒の野球離れに危機感を持つ野球関係者は多い。大リーグでの大谷翔平選

手の活躍はあるものの、ひと頃に比べれば日本の野球への関心は確かに低下しつつあるだろう。野球部員の人数がそろわずに他校との合同チームを組むことを余儀なくされ、ついには廃部に追い込まれる、などといった残念なケースが少子化の進展も手伝って徐々に数を増しているという。

 しかし高校教育における野球の問題点はそうした野球人気の陰りとは別の観点からもこれまで数多く指摘されてきた。高校にはスポーツ指導者の団体として体育科の教師を中核とする「高体連」があるが、なぜか野球だけは別格扱いで「高野連」という野球部顧問中心の教科枠を超えた組織が高校野球を仕切ってきた。

 そして野球部員たちにかつて丸刈りを事実上、強制してきた厳格な高野連ルールはこれまでも幾度か物議をかもしてきている。いわゆるブラック校則を側面から支えてきた高野連の体質には昔から多くの根深い問題があったとみられるのだ。

 実は高校教師の異動に際して高野連が介入する「高野連人事」がかつて普通に見られた。もちろん「高体連人事」もあるにはあったし、種目によってかなり事情は異なるだろうが、多くの場合、高野連ほど露骨ではなかったという個人的印象がある。皆さんの場合、いかがだろう。そこそこ有名な野球監督であるならば自ら望まない限り、野球部の存在しない女子高や定時制、通信制に異動することは私の記憶では一度も無かった。

 他方で私生活を犠牲にして野球指導に専心する顧問の負担は極めて過酷であり、自身の家庭生活や心身の破綻を招くことも少なからず見られた。すなわちブラック校則のみならず、職場としての学校のブラック化を側面から支えてきたのも実は高野連であったといえよう。

 ただの「野球バカ」が礼賛される時代はとっくの昔に終わっているのだ。野球人もまた「献身性の沼」にはまり続ける事の罪深さについて、少しは思いを巡らす時期に来ている。

 部活動過熱化の核として甲子園を頂点とする高校野球の勝利至上主義的あり方があったことは否めない。テレビ放映が地方大会レベルから行われ、高校野球の熱狂的なファンは全国に大勢ひしめいていた。

 野球人気が過熱する陰で根性論、鍛錬主義に基づく体罰や暴言、先輩による後輩へのしごきなどが当たり前のように繰り返されてきたのも間違いなく野球を始めとしたスポーツの世界である。50年以上前のアニメ「巨人の星」を見て育ったカッパたちはとりわけ、今となってはあまりにも行き過ぎた、アノ熱血指導をどうしても賛美しがちな世代であったと思われるが、皆さんはいかがだろう。

 夏の甲子園、春の選抜はそれぞれ朝日新聞と毎日新聞が高野連と共催し、ほとんどの試合は予選の地方大会も含めてNHKによってテレビ放映されている。予選を含めた試合での全校応援もまた多くの高校で見られた。まして甲子園出場ともなれば学校側は大規模な応援団を編成する必要に迫られる。当然、勝ち続ければ一千万単位の予算が必要となり、関係者は卒業生などに寄付を募るなど、甲子園大会は周囲の人々に様々な労力と金銭面での大きな負担をも強いてきた。

 他のスポーツではサッカーを除くと全国大会ですら学校が組織的に応援団を送ることは稀であり、テレビ放映もかなり限定的。高体連の各専門部の資金力も多くの種目では高野連とは比較にならないほど貧弱である。様々な面でのスポーツにおける種目間格差が、特に野球と比べた際の格差の大きさが教育における公平さを欠くのでは…などとかねてから学校現場では指摘されてきていた。近年は多少の改善が見られるものの、いまだに格差解消には程遠いのが実情である。

 マスコミ各社にはぜひこうした問題にも言及していただきたい。

53日間で休み1日だけ中学教諭の「過労死」 訴え認め約8300万円の支払い命

   じる 遺族の思いは 日テレNEWS によるストーリー 2023.7.6

日本の部活動は「滅私奉公」サラリーマンを育てる隠れカリキュラム

   ニューズウィーク日本版 によるストーリー 2024.5.30

 

 ふと気づくとそういえば一か月間、一日も休んでいなかった…若いころは疲れ気味の自分自身に対する思いやりなど持てず、有給休暇を一年間で一度もとっていないことを武勇伝であるかのように自慢する傾向が自分にもあったことは否めない。文化祭の準備でさえ午前様になることは珍しくなかった時代があったのだ。

   こうした先輩教師たちの武勇伝は美談化されることでおそらく後輩たちを相当追い詰めていただろう。無謀なまでの精神主義的根性論を柱とする心性は子供時代、「スポ根アニメ」の洗礼を浴び続けて育った、今や60代となっている元教師に多く見られたように思う。

   私などは間接的にではあるが、こうした過労死事件に心ならずも加担してしまった一員として深く反省しなければなるまい。