41. 市内の狛犬一覧

 

市原の名工、川岸の根本甚太郎によるもの。

 

 神社の石造物(宮物と呼ばれていた)には石工の名前が刻まれていることが多く、石造物調査には必須の調査対象です。以後、鳥居、石灯籠、石段塔、手水鉢などもご紹介していく予定です。お楽しみに。

 

・市原市内の江戸期の狛犬一覧(カッパ調査:古い順)

所在地・寺社名

元号

西暦年号

特記事項

大厩駒形神社

元文5年

1740

 

郡本八幡

延享5年

1748

石工 江戸八丁堀和泉屋久兵衛

高滝神社

寛延元年

1748

石工 江戸の弥八

原田諏訪神社

明和3年

1766

石工 江戸八丁堀の権六

金剛地熊野神社

安永2年

1773

 

姉碕神社

文化6年

1809

石工 大嶋久兵衛・辰右衛門

不入斗小鷹神社

文政2年

1819

石工 江戸の萬吉

岩崎稲荷

文政4年

1821

 

嶋穴神社

文政8年

1825

 

畑木神社

文政10年

1827

 

石塚白鳥神社

文政13年

1830

石工 平岡の萱野犬吉

能満釈蔵院

天保2年

1831

郡本八幡から移したらしい

勝間日枝神社

同上

同上

 

川岸富貴稲荷

天保4年

1833

 

根田神社

天保8年

1837

 

深城熊野神社

同上

同上

 

寺谷大宮神社

天保12年

1841

石工 五井(川岸)の根本甚太郎

瀬又八幡

天保15年

1844

 

松崎春日神社

同上

同上

 

惣社戸隠神社

弘化4年

1847

 

青柳若宮八幡

弘化5年

1848

石工 江戸深川の源兵衛

安須日枝神社

嘉永2年

1849

 

高坂玉前神社

嘉永3年

1850

 

山倉春日神社

嘉永5年

1852

 

荻作神社

嘉永7年

1854

石工 八幡の安藤佐平治

犬成神社

同上

同上

石工 八幡の安藤佐平治

今津朝山飯奈里

安政3年

1856

 

廿五里若宮八幡

同上

同上

 

高滝青年館裏不動尊

元治元年

1864

 

海保神社

慶応2年

1866

石工 青柳の佐七

鶴舞神社

慶応3年

1867

 

計31件

※「市原の狛犬」(市教委 平成6年)によると市内の江戸期狛犬は40点+推定9点。

 

 狛犬は神社に限らず、寺院にも置かれています(府中釈蔵院)。まずは獅子像が仏教と共に中国から伝来しました。日本で最古のものは法隆寺玉虫厨子に描かれたもの。狛犬は獅子から派生したようで図像的にはそっくりです。

 平安時代になると獅子と狛犬が御所の置物として左右一対で飾られました。なお狛犬には角がありますが、おそらく伝来の過程で「仁獣」とされた麒麟と習合したのかもしれないといいます。

 江戸時代、狛犬を神社に寄進することが流行し、多くの神社に置かれることになりました。通例、お寺の山門の仁王にならって「阿吽」の一対とされます(古くは東大寺南大門の有名な仁王像の裏側にほぼ同時期、宋の石工達が造った狛犬が置かれている)。県内最古の石造狛犬は長柄飯尾寺の寛文10年(1670)、市内最古は大厩駒形神社の元文5年(1740)。

 

 なお日吉(日枝)神社は狛犬のかわりに神使の猿、稲荷神社は狐、天神社は牛、三峰神社は狼が置かれます。 

 市内で最初に狛犬を彫った石工は姉崎の大嶋久兵衛です。その出来栄えは江戸の石工に負けてたまるかといわんばかり。地方の石工の意地が感じられる秀麗な狛犬です。江戸末期には毛の長い、目の小さな狛犬が流行しましたので、見慣れてきますと一目で判別できるようになるでしょう。

左右を見比べると尾が立っている方(左)が古く、毛並みが長く伸びている方(右)が新しい。

 

右の方が明らかに毛並みが長い。