伝統的な日本的美意識・日本らしさとは?

 

   今回も20年近く前に作成した授業プリントのご紹介。データが古いですが悪しからず。また空欄はご自分で埋めてください。

 

伝統的な日本的美意識とは?

  )組(  )番(         

第1章:古典文学に見られる日本的美意識

 古い和歌や随筆(「枕草子」や「徒然草」など)には当時の人々の美意識が色濃く反映されている。国語の時間でも触れられる内容ではあるが、「日本的美意識」とは何かを理解するうえで欠かせない部分なので今回は代表的なものに限定して、ざっと紹介してみよう。

※参考文献;「日本の美の形」神林恒道編 世界思想社 1991

1.歌論

 日本的な美意識を正面に据えた芸術論として最も古く、かつ有名なものは最初の勅撰和歌集「    和歌集」(905年)の序文(仮名で書かれた「仮名序」と漢文で書かれた「真名序」とがある)である。(     )らが書いたとされるこの序文では「やまとうたは、人の心を種として、万の言の葉とぞなれりける」とある。ここには外在する世界の物象に美があるとして客観的にその美を追求しようとする西洋とは少し異なる考えが示されている。つまり日本では美は外の世界にあるのではなく、人の心の内にあるという(    )、主情的観点が強く見られるのである。したがって外界を表現するよりも、外界の移ろう様を見て動かされる心の方を表現するのが日本の伝統的芸術ということになる。この心を言葉で十全に表現できている歌こそ「よき歌」と貫之らは考えた。

 この表現における主観的、主情的傾向は次の「     和歌集」の時代に入ると一層強まる。鴨長明は「無名抄」の中で「詞に現れぬ余情」、つまり言葉では表現しきれない情趣こそ「   」の美であり、最高の美であると説く。とすればもはや貫之らのように心を言葉で十全に表現する必要はないし、そもそもそれは不可能だ。むしろ表現は控えめにして、奥ゆかしく深い心=幽玄の美をそこはかとなく伝えられる歌こそが最高のものとされる。(      )も「毎月抄」で「心のかけたらんよりは、詞のつたなきにこそ侍らめ」と述べ、言外に感じられる、深い情趣を尊重していた。さらに(    )法師ともなると「      」で「花はさかりに、月はくまなきをのみ見るものかは」と述べ、整った完全なものよりも欠けていて不完全なもののほうがよりすぐれた高度な美であると強調するまでに到っている。

 こうした美意識は後代に連綿と伝えられ、一層洗練されたものとなっていった。たとえば心敬は「ひえさびたる」「枯れる」などの言葉で「幽玄の美」を説明し、能役者(     )も「     花」と言い、「しおれたる」「さびさびとした、ひえたる」美を追求した。この流れは茶の湯にも受け継がれ、侘び茶を唱えた武野紹鴎は侘び茶の心を藤原定家の「見わたせば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮れ※」(「新古今和歌集」)にこそあるとしている。これに対して弟子の

     )は藤原家隆の「花をのみ待つらん人に山ざとの雪間の草の春を見せばや」(「新古今和歌集」)をもって茶道の心とした。

※名高い「三夕の歌」の一つで、参考までに他の二首を紹介しておく。

 寂蓮「さびしさはその色としもなかりけり 槙立つ山の秋の夕暮れ」

 (     )「心なき身にもあわれは知られけり 鴫立つ沢の秋の夕暮れ」

 

 茶の湯の二人がいずれも「     和歌集」の美意識に拠っている点が興味深い。そこで次に「新古今和歌集」が作られた時代背景を探って、日本的美意識の根源に迫ってみよう。

2.「新古今和歌集」の時代

 日本的美意識を探る上で、大きな鍵を握っている「新古今和歌集」とはどんな時代の産物なのか?ほぼ完成したのが1210年頃のことで、中心となったのが承久の乱をひき起こした(     )院である。主な歌人として先ほどの藤原家隆・定家父子に加え、(    )や寂蓮らがいる。いずれも貴族政治が終わり、武家政権が登場するという大きな時代の変わり目で源平の争乱などの戦乱が続き、浄土信仰の広がりとあいまって人々の間に「    観」がことさら強まっていた頃の歌人である。

  (      )の日記「明月記」には「紅旗征戎(こうきせいじゅう)、吾が事にあらず」という有名な一文がある。そこから政治的には没落の一途をたどっていった(    )が政治の世界から離れ、生き残るすべとして和歌などの芸術や学問の世界に一族の命運をかけて専門化していった状況がうかがえるのである。もはや貴族の天下ではなくなった。武士が大手をふるって歩く時代、中・下級貴族が生きていくには学問・芸能事を家業、家学として独占し、そこから収入を得るしかなかった。宴の余興レベルでも許された「古今和歌集」の優雅な時代ではない。作品の出来具合に生活がかかってくる。勢い、作歌に臨む姿勢は真剣で研ぎ澄まされたものとなろう。作品に高度な技術と芸術性が求められてもくる。

  (   )信仰の広がりと打ち続く戦乱がもたらす(   )観、そして芸術性を高めさせようとする時代の要請、この二つが没落してゆく貴族達の心を唯美的で幽玄な世界へと向かわせ、後の人々の美意識をも左右するほどの作品を生み出したのだと考えられる。

 しかしやがて茶の湯に受け継がれていく「新古今和歌集」の美意識=幽玄の美は日本の美意識すべてを代表するわけではなかった。貴族を退けて時代の表舞台に躍り出てきた武士の質実剛健で(   )的な表現世界、武士の後を追いかけるようにして実力を蓄えてきた町人らの華麗な(   )的表現。時代と芸術の担い手の違いによって日本の美意識も多様な展開を見せたのである。

 

倫理「日本らしさとは?」NO.1

  )組(  )番(        

 下表に見られるとおり、近年、来日する外国からの観光客が急増している。少子高齢化によって内需がしぼみがちな日本において外国人観光客の急増は経済的には大歓迎。特に中国人の「     」は停滞気味の日本経済にとっておおいにカンフル剤の役割を果たしつつある。

 

10年おきに見た訪日外国人観光客数(千人以下は切り捨て)

年度

客数

一番多い国

2番目に多い国

3番目に多い国

1964

35万人

 

 

 

1974

76万人

 

 

 

1984

211万人

 

 

 

1994

346万人

韓国

台湾

アメリカ合衆国

2004

613万人

韓国

台湾

アメリカ合衆国

2014

1341万人

アメリカ合衆国

韓国

中国

国土省観光庁統計

 なお2015年度はダントツで(    )が訪日観光客数一位(約500万人)。では日本のどんな観光スポットを外国人は好んで訪れるのだろう?旅行・観光業界の調査結果を下表に示してみよう。

 

外国人が訪れて印象の良かった観光スポット トップ20

順位

人気の観光スポット

所在地

順位

人気の観光スポット

所在地

(         )

広島

11

(     )寺

東京

広島(     )記念資料館

広島

12

(     )城

兵庫

松本城

長野

13

清水寺

京都

東京(       )

千葉

14

新宿御苑

東京

美ら海水族館

 

15

明治神宮

東京

伏見稲荷大社

 

16

(     )山

山梨・静岡

地獄谷野猿公苑

長野

17

東大寺

 

金沢兼六園

 

18

嵐山モンキーパーク

京都

六本木ヒルズ

東京

19

金閣寺

京都

10

三十三間堂

京都

20

海遊館(水族館)

大阪

  ※7位と18位は日本人からすると意外性あり。「ニホンザル」好き?

  ※逆に日本人が最も多く観光に出かける外国・地域は2010年の統計では

  1位(    )、2位(    )、3位(      )合衆国本土、4位香港、

 5位ハワイ、6位台湾、7位タイ、8位グアム、9位(     )、10位フランス

 

 次に世界で最も外国人観光客数が多い観光大国はどこだろう。2014年度の統計を示した下表の空欄を埋めてみよう。

 

外国人旅行者受け入れ国・地域ベスト10(2014年度)

順位

国  名

人数(千人以下切り捨て

1位

(        )

8370万人

2位

(        )合衆国

7475万人

3位

(        )

6499万人

4位

(          )

5562万人

5位

(        )

4857万人

6位

トルコ

3981万人

7位

ドイツ

3300万人

8位

イギリス

3261万人

9位

ロシア

2984万人

10位

メキシコ

2909万人

 

 なお日本は急速に順位を上げてきているものの、(   )位にとどまっている。アジアでは8位であり、中国、香港(11位)、マレーシア(12位)、タイ(14位)、サウジアラビア(18位)、マカオ(19位)、(    )(20位)が日本よりも上位にある。急増しているとは言え、日本はまだまだ観光大国にはほど遠い現状であろう。おりしもアニメ、能や歌舞伎、すしを中心とする和食、茶道、座禅、武道、邦楽など日本独特の文化が世界から注目されている。

   2020年には(           )を控える今こそ、日本の良さ(おもてなしの精神・・・)を世界におおいにアピールして外国人観光客をさらに増やす絶好のチャンスである。

 ところが日本側に大勢の外国人を受け入れるだけのキャパシティがイマイチ欠けているのでは・・・という残念な指摘もある。経済力はまだまだある日本のことだから宿泊施設の不足程度なら何とかなるだろうが、問題は日本人の外国人に対する観光案内能力の質と量の不足。日本の伝統文化を外国人にわかりやすく説明し、案内できる日本人は京都や奈良、東京などを除くと極端に少ないという。

   近年、アニメ・漫画に登場する地方都市にも外国人が訪れるようになったらしいが、現地では既に案内人の人手不足が表面化しているらしい。とりわけ通訳なしの英語で流ちょうに案内できる日本人となると決定的に不足しているに違いない。そもそも多少の英会話はできても、日本人自身が今、自国の伝統文化に疎いのだから当然である。最近、刀剣や寺社詣でにはまる女子、「歴女」が話題になるなど、幾分、日本の伝統文化に興味を持つ若者が以前よりも増えてきている気はするが、外国人観光客を案内できる数は特に地方においてまだまだ足りないに違いない。

   そこで倫理の授業はこれから頻繁に見かけるようになるはずの外国人観光客に日本の伝統文化をわかりやすく解説できるだけの基礎知識を身につけることも狙いながら、しばらくは「日本らしさ」をテーマにしていきたい。これは日本に住む限りは必須の教養でもある。

   さて現在の日本人、特に若者は実際、日本の伝統文化をどの程度知っているのだろうか?別紙のアンケートに答えてみよう。

 

「海外から理解されにくい日本人の気持ち」5選

  )組(  )番(         

1.「悔しい」

 意外にも英訳しにくい言葉だという。近い表現としては「I am really    

 frustrated !」(ほんと イラツク)あるいは「So, disappointed」(もうガッカリだよ)。しかし「悔しい」は苛立ちと後悔の入り混じった微妙なニュアンスがあり、どちらの英訳も少しずつ違うような気がする。なかなかしっくりとくる訳語は見当たらない。

2.「もどかしい」

 イライラだけでなく、どうにかしたい・・・というじれったさも混じり合う言葉であり、適訳が見当たらない。「frustrated」ではどうみても強すぎてしまうのだ。「slow going」(じれったい)が最も近いか。「もどかしい」はどちらかというと感情をハッキリと表に出さずに抑え目、控え目な表現を好む日本人の伝統的な心性が典型的に反映している表現である。他方、明確な自己表現を好む欧米の心性。両者の心性の違いは語彙にも大きな差となって表れるのだろう。

3.「ほっとする」

 「feel relieved」が最も近いそうだが、これも場合によっては適訳が難しいらしい。「安心する」と同意のようにも思えるが、もっと安心感が強いニュアンスを感じる。4の「ほっこり」とならんでいわゆるオノマトペ(擬音語、擬態語)なので、適語を見いだすのが難しい。

4.「ほっこりする」

 江戸時代からある表現らしいが、英訳は困難を極める。「ほっとする」よりもかなり陽性の感情であるが、「happy」というほどでもない。欧米の人にこの言葉のニュアンスを伝えるには長文の説明を加えなければなるまい。

5.「感慨深い」

 「moved」は感動することであり、これではやや大げさ。静かに佇むなかでジワジワと生じてくる、しみじみとした感動というほどの意味だろうが、これを表す英語は見つかりにくい。