外国人に人気の観光名所

 

 今回も20年近く前に作成した授業プリントのご紹介。データが古いですが悪しからず。また空欄はご自分で埋めてください。

 

・日本らしさの文化史より

  )組(  )番(         

§1.外国人は日本のどこに興味を持つか?

 まずは以下の空欄に適語を埋めていきましょう。

1.ハーバード大学大学院生の注目点

 2016年3月にハーバード大学大学院ケネディスクールの学生48人(米国、フランス、ロシア、リトアニア、ガーナ、スーダン、ブラジル、チリなど計20カ国出身、年齢は20代から50代まで)が訪日した。実はハーバード大学での日本の印象、存在感は薄れつつある一方で、(   )や(    )の急速な台頭ぶりが同大の学生数にも表れている。ハーバード大学全体の学生数は日本人が88人なのに対して中国は

    )人、韓国は(    )人、インドは(    )人、ASEAN諸国全体で254人という。

 今回の訪日の動機を学生に尋ねると「   と復興」「       化」「最先端の       技術」「    と日本酒」「    の古い町並み」「迷路のような東京の     」などといった幅広い回答が得られた。実際に日本を訪れた学生たちが食いついた疑問点は「なぜ日本人は    を使う機会が少ないのか?」「日本はなぜ高齢化の対策として    を受け入れないのか?」「なぜ日本人は全員が    を守れるのか?」等。特に訪日して最初に驚くのが朝の東京駅での通勤、通学風景だったという。日本人からすると見飽きた毎朝の通勤風景が彼らにとっては新鮮そのもの。「ここまで多くの人が    正しく整然と歩く姿を、今まで見たことが無い!」特にメキシコ人には驚きでiPhoneを取り出し、その光景を何枚もカメラに収めたという。中には「渋谷駅前の        交差点で青信号の際に一斉に歩行者が動く様をこの目で見てみたい」という願望を持って訪日した学生までいたらしい。

 

 数多くの学生が支持した日本の特色は「      の質の高さ」だった。企業訪問で訪れたJR東日本テクノハートTESSEI(この企業を紹介したハーバード大学の授業は有名)では新幹線の停車時間7分間で全車両の清掃と点検をこなす職人技に感嘆。飲食店では(    )無用で「      」等の気の利いたサービスが施される。日本社会全体に行き渡っているきめ細やかな「       」に多くの外国人は感動するのである(東京オリンピック誘致の際のIOC総会での「おもてなしスピーチ」は絶大な効果)。ただし(    )系の学生からは「質の高さを求める代わりに日本人は何か大切なものを犠牲にしている」「あまり細かいことを心配しないで。もっと肩の力を抜いて、どうにかなるよ」と日本人がアドバイスされることもあったという。

 何を犠牲にしている?                       

 

 日本の「おもてなし」が海外で高く評価されていることはご存じでしょう。しかしそれが「過労死」やブラック企業を生み出す土壌ともなっている可能性についてしっかりと考えておくべきなのです。

2.外国人に人気の観光名所トップ10(2016年度)

10位:(     )寺・・・京都東山にある舞台造りで有名な寺。東山は京都観

 光のメッカだが、その終点に位置する。

9位:アキバフクロウ・・・東京にあるフクロウばかり飼っているコーナーが今、ブ

 ーム:フクロウに癒される、ユニークな体験ができると好評。

8位:(     )寺・・・京都北山にある寺。(    )幕府三代将軍足利義

 満が創建。ゴージャスな建物と池泉回遊式庭園が見事に調和。

7位:(     )公園・・・有名な寺社の中でたくさんの鹿に出会える。

6位:(     )御苑・・・大都会の中の静けさ。観光スポットの多い東京には

 多くの外国人が殺到するが、ここは別格。

5位:(       )剣舞シアター・・・日本の古典的なイメージ「フジ

 ヤマ、        、サムライ、       」は外国人の間では相変わら

 ず健在。

4位:(     )寺・・・奈良公園の一角にあり、巨大な大仏に驚く。

3位:安芸の(    )・・・広島にある世界遺産の一つで、神社特有の厳かな風

 情に魅かれる。(     )とも呼ばれる。(     )らが納めた豪華絢爛

 なお経は「平家納経」と呼ばれ、平安時代末期の美術工芸品として名高い。海の中

 に建てられた朱色の鳥居がここのシンボルとなっている。

2位:(    )平和祈念資料館・・・(          )として有名

 な(    )ドームを擁し、2016年夏に(     )前大統領が史上初めてア 

 メリカ大統領として訪れた。その際、彼は被爆者をハグしただけでなく自分で作っ

 た(      )を広島にプレゼントして話題に。実は外国人が日本人からプレ

 ゼントされて最も喜ぶ土産としてトップ10に入るのが折り鶴などの折り紙製品。

1位:(       )神社・・・京都の神社で特に朱色の(    )が山上ま

 で連なる光景は幻想的でさえある。ちなみに稲荷とは「稲なり」、すなわち稲を実

 らせる穀霊を祀った神社ということ。江戸時代最も信仰を集めた神社で系列の神社

 数は全国で一万を超える。この山には昔から落雷が多く、古来、神聖な山と仰がれ

 てきた。雷は「     」であり、雷の落ちる場所に神霊は宿るという考えに加

 え、雷=(    )であり、稲妻はズバリ稲を実らすものという意味。コメ作り

 を基本とした江戸時代の農政もあって※2017年のデータでは新たに9位に箱根彫刻 

 の森美術館、10位に高野山奥の院が入り、奈良公園が11位。

 ※2017年のデータでは新たに9位に箱根彫刻の森美術館、10位に高野山奥の院が入り、奈良公園が11

  位、サムライ剣舞シアターが15位となっている。

 

 なおかつては外国人観光客の伸び悩みに直面していた日本でしたが、特に中国からの「爆買い」を目的とした観光客の激増によってここ数年は驚異的な増え方を続けています。1964年にはわずか35万人だった訪日観光客数は1994年には346万人、2004年には613万人、2014年には1341万人。それまでは隣国の韓国やアメリカからの観光客が多かったのですが、2015年度からは中国人が最も多くなっています。そして2016年度は中国人観光客の急増によって何と(     )万人台に達しました。ようやく日本は観光面でも世界の上位をうかがうところまできています。しかし観光大国と言われるフランスは年間8千万人以上、2位のアメリカが7500万人近くを受け入れており、その格差はまだまだ大きいと言えましょう。

 

 同じような内容のものをあと二つ、見てみましょう。

3.「お客は二の次」の(      )から日本が学ぶべきこと

 国末則子(フリーライター)

 日本は何から何まで(      )の行き届いている国として外国からは高く評価されている。特に中国人観光客は日本人の(        )と心のこもった

        」に感動するという。日本人からすれば自明すぎるほどの各種サービスなのだが、外国人から見るとかなり(     )なレベルのようだ。特に

     )系外国人観光客は日本のサービスの徹底ぶりに驚嘆し、絶賛することも多いという。

 しかしまったく別の観点から日本のサービスを(    )であり、行き過ぎであると批判的に捉える外国も少なからず存在する。フランス、イタリア、スペイン、中南米諸国の人々。すなわち(     )系の人々である。ここではフランスの事例を取り上げ、日本が無自覚に自慢してきた「おもてなし」文化をやや冷ややかな目で客観視してみよう。

 フランスでは「お客様は    である」という価値観は存在しない。このため日本人がフランスに行くと随所で不便を感じてしまう。しかしその一方でお客よりも

     )を優先する価値観が共有されている。働く人の権利が十分、守られているのである。実際、働きやすさが手伝って(     )は日本よりも7.5%多い82.7%である(2015 OECD)。日本の(    )問題を考える際、フランスの働き方や価値観は大いに参考になるだろう。

①   パリの地下鉄(メトロ)

 まず(     )で駅員を見かけることが滅多にない。「まもなく電車が参ります・・・」の(       )もなく、(       )も鳴らない。いきなりドアが閉まって発車してしまう。駅名を示すパネルには前の駅や次の駅名はなく、そこの駅名しか表示していない。車内でも(      )を知らせるアナウンスがながれることはほとんどない。路線バスの時刻表もかなり手抜きで、「何時から何時までは~分間隔」とのみ記されていて当然、次の停留所のアナウンスもほとんどない。

②   (    )が働くフランスのスーパー

 スーパーのレジでは客がベルトコンベアーの上に購入する商品をカゴから出して置いていく。すべての商品を並べたら「次の客」と記された仕切りを台に置き、素早くレジに隣接した袋詰めのスペースに移動してスキャンの終わった商品を持参の袋などに詰める。レジ係は品物をスキャンして袋詰めのスペースに置いていくだけ。もちろんほとんどのスーパーは他の店と同様、(  )曜日がお休みである。また開店が10時であってもお客が現れるまではどの店も開店しないのが普通。また商品の品揃えに変化は乏しく、「     」や「季節限定品」などと銘打ったものはほとんど見当たらない。お客の立場からはフランスは不便であるが(     )にとってはとても居心地の良いシステムなのである。

 15歳~34歳の若者の死因のトップが(    )であるのは日本ぐらいなものであり、若者の(        )に至っては日本がダントツの1位である。そんなことを考えると一見いい加減で怠け者に見えるラテン系の人々だが、飛び抜けて

        )そうな暮らしぶりは今の日本の若者から見たらうらやましく思えてこないだろうか?

 フランスのサービスに対する姿勢を日本は学ぶべきかもしれません。日本の「おもてなし」文化をそろそろ批判的に捉え直すべき時でしょう。

4.似ているようで違う日本とドイツ ―来日したドイツ人が驚く日本―

1.どのレストランもおいしい

 ドイツ人は特別な場合を除き、食事に対しては「必要な栄養素を摂る」という感覚でそれほどのこだわりはない。日本は和食のみならず世界のあらゆる食事をとることができ、しかもすべてハイレベル。(       )の星の数が世界で最も多い都市が東京であるように、日本人の食事に対するこだわりは(      )の良さも加わって世界でもトップレベルにある。

2.「      」負けを気にしない

 日本ではグループで飲食する場合、全体の会計を頭数で割り、全員が同額を払うことが何の疑問も持たれずに行われている。しかしドイツでは人によって飲食の量や質に差が出ているにもかかわらず、均等割で支払う・・・ということに抵抗感が強い。

3.自然の豊かさ

 ドイツの自然は日本と比べて単調で海岸線も短い。しかも日本へのイメージはハイテク(     )社会の側面が強いため、実際に日本に訪れたドイツ人は日本の自然の豊かさ、多様性に驚く。

4.お(    )まで親切

 ドイツではサービスを与える側と受け取る側を(    )の関係と見なすため、「お客様を敬う」という発想は無い。レストランなどではチップ(サービス料)が当たり前であり、「サービスは有料」というのが基本的スタンス。特にドイツではお役所を杓子定規の官僚主義の塊とみなして毛嫌いしている。

5.(     )が信用できる

 生真面目で時間通りに動く印象がドイツにはあるが、鉄道に関しては遅れが出るのが普通。このためドイツ人は鉄道を悪口の対象にすることが多い。

6.街がきれい

 意外にもドイツでは観光地や田舎町を除くと(    )の場所は汚く、たばこの吸い殻が散らかっていたり、落書きが目立つ。ドイツ人の多くは確かにきれい好きだが、それはあくまで(    )の住居に限られたものである。

7.(    )のファッションが全く違う

 (     )を重んじるドイツでは女性も(        )でスカートよりもジーンズやスキニーパンツが目立ち、色合いは黒やグレーなどの地味なものが多い。クツはスニーカーやヒールの無いブーツ。日本の女性の方がはるかにカラフルな色使いでエレガント。メイクにも余念が無い。

 

 日本とよく似ているといわれるドイツですが、けっこう違いがあるのです。欧米と比較しますと日本の特殊性がくっきりと浮かび上がってくるでしょう。

 いかがでしたか?異国の視点から日本を眺めてみると、自分たちを相対化出来るはずです。もちろん他者の視点で自分という人間を眺める訓練も必要なのです。自分や自分たちを客観視できることは重要な成熟の条件ですから、こうしたデータを時々、気にしてみましょう。

 

日本美術の特色について

  )組(  )番(         

始めに

 日本人であっても日本の美術の特色を要領よく挙げ連ねるのはきわめて難しいであろう。そもそも現代の日本人は学校で西洋の美術は習うくせに日本伝統の絵画を習うことはめったに無い。ダビンチやゴッホは知っていても、歌川広重や尾形光琳の名から作風まで知る人は少ないに違いない。日本の美術が西洋のものに比べて劣っているならそれも仕方が無いが、19世紀後半から20世紀初頭にかけてヨーロッパで日本美術が一大ブームを引き起こしたことを考えると、それほど卑屈になることもあるまい。世界のなかで日本の美術が占める地位は決して低くはない。ならば誇りを持って語れるはずの日本美術に対してなぜ、現代の我々はこれほどまでに冷淡なのだろう?

おそらく明治時代に政府から植えつけられた「      」論(アジアは遅れた劣悪な地域であり、日本は一刻も早くそうしたアジアから抜け出して文明の進んだ欧米の仲間入りを果たすべきであるとした       らの考え)の呪縛から基本的にはいまだに抜け出せないでいるからだろう。アジア太平洋戦争での敗戦とアメリカによる占領が日本人の欧米に対する劣等感を一層助長させてしまった。我々の先祖が残してきたものなぞ野蛮で時代遅れのものばかりだ・・・この観念に毒されてせっかく先人達が残してくれた芸術的財産を我々は十分に享受できないでいる。まさに宝の持ち腐れである。

 では本来貴重な財産たる日本美術の特色とは一体何か?ここではよく対照的に語られてきた東洋と西洋との比較から日本美術の特色を浮かび上がらせて見ようと思う。(参考文献「日本美術の見方」辻惟雄 岩波書店 1992年)

1.西洋から見た日本の美

 そもそも日本美術に初めて接した欧米人は一体どのような印象を持ったのだろう?江戸幕府が滅亡した1867年、パリで開かれた万国博覧会で初めて本格的に日本美術が紹介された時、ヨーロッパは新鮮な驚きとともにこれをもてはやした。フランスの美術評論家シェスノーは翌1868年、早速、日本の美術についてこう述べた。まず葛飾北斎などに見られる「強調」の技法(ものの特徴を的確に捉え、際立たせていく)は    )に傾く西洋の画風と異なること、さらに西洋で重視されるシンメトリーからはまったく自由で多彩な(    )的表現に見るべきものがあると。ここにすでに日本美術の特色とされる要素、(    )や(      )的法則性(遠近法、シンメトリー…)に拘束されない、    )性や装飾性などが指摘されている。

2.自然と美意識

 矢代幸雄は「日本美術の特色」(1943年)で日本美術の特性を以下の四項目に分けて論じている。

ア.(     );西洋のように自然の客観的真を写すのではなく、自然から感受さ

 れた(    )的印象を描き出す傾向。

イ.(     );合理的な写実性や遠近感を表現するよりも、装飾的効果を重視し

 て事物の大きさや立体感、色彩などを大胆に変形し、様式化・模様化する傾向。

ウ.(     );水墨画や茶道、文人画などに見られる精神主義的傾向。

エ.(     );「もののあわれ」に見られるような、情緒的、感傷的美意識の傾

 向。

 矢代は以上の特性が生じた要因の一つとして日本の自然と(    )を挙げている。まず過酷な自然との対決から文明を発達させてきた中東や欧米と異なり、比較的豊かな自然に育まれてきた日本は、自然との共存をはかり、    )的作為を排した自然さを好む傾向を発達させてきた。また風景も多彩で変化に富み、四季のうつろいそのものへの敏感な美意識(「あわれ」と「おかし」)を発達させてもきた。ただ同じ東洋といってもスケールの大きい自然をもつ中国と比べると、日本の美術が繊細可憐で情感に満ちている反面、部分にとらわれ過ぎて全体の構造をつかむ構想力や(     )の大きさに欠ける傾向があるという。

3.「飾る」美意識と「飾らない」美意識

 歌舞伎研究家の服部幸雄は日本文化の伝統には「飾る」系文化と「飾らぬ」系文化の対極的な二つの潮流があるとして、日光東照宮と(     )をそれぞれの代表例にとりあげている。「飾らぬ」美の系譜は古代の神社建築にさかのぼるが、

    )の「本来無一物」の論理などとも結びついて完成された(     )こそ「飾らぬ」美の極地であろう。

 一見、対極的な両者であるが辻惟雄はこの侘び茶の理念も、裕福な町衆ら贅沢に馴れた者のみに許される、大金を投じて実現した「やつし」=仮構された貧しさの演出、あるいは脱俗の遊戯に過ぎぬ側面があるとし、桂離宮も複雑な技巧をこらして「簡素の美」を演出した人工美の極致であり、決して単純に「飾らぬ」美とは言えぬ複雑さがあるという。むしろ飾り立てた文化に飽きた数寄者が「飾らぬ」美(「簡潔の美、省略の美、静的な美、ぎりぎりのところまで余剰物をそぎ落とし、しぼりにしぼったところに浮かび上がった時空の間を尊ぶ美」服部)をわざとらしく見えないように工夫をこらした点で、「負の飾り」であり「さらなる虚構」であると考えた。 

 「(   )すれば花」(     )とする(    )の美意識もこの「負の飾り」の系列に属すると言えよう。日本美の重要な基本の一つは、「正」から「負」までの振幅があるにせよ、その虚構的(    )性にあると考えられる。

 

参考記事

「日本社会の美しいハーモニーを作っている」 フランス人が絶賛 日本の学校教育で

 「素晴らしいシステム」と感じた時間とは Hint-Pot の意見 2024.4.17

 「訪日外国人が驚くことのひとつに、日本人がルールを守り、他者を尊重しながら社会生活を送っていること」であり、そうした日本人のあり方を支えてきたのが日本の学校教育だとする論調は根強い支持があるのだろう。ほぼ同じ指摘がこれまでも繰り返されてきた。

 確かに日本の治安はずば抜けて良いし、町はかなり清潔に保たれている。物価が安く「おもてなし文化」、礼儀正しさも健在である。電車やバスはほぼ時刻通りに到着し、公共の場での規律正しさは別格だろう。欧米からすれば異国情緒に満ちた、個性的な日本の文化は強く旅情を誘う。日本は外国人観光客からすれば大きな魅力にあふれた国であるのは間違いない。

 その一方で男女平等度の低さと女性や若者の貧困度が高く、学校ではイジメ事件とその組織的な隠蔽が繰り返され、過労死と自殺、引きこもりがはびこる日本社会の歪みも目立ってきている。外国人観光客の眼差しはどうしても日本社会の明るい側面に注がれがちとなり、その暗黒面、特に日本の学校教育の危機的状況ははおそらく視野に入りにくいのだろう。

 観光はあくまでもショービジネスと同様に日本の良さをアピールすることがメインになるのは当たり前の事である。結果的に外国人観光客からすれば学校での掃除や校則の厳しさが日本社会の規律正しさと清潔さに安直に結びついて見えてしまうのも極めて自然なことだろう。しかしだからといって日本の学校教育が今、抱えている問題がとるに足らないものであるとするわけにはいくまい。

 「他人を尊重する」社会がなぜこうもイジメを生み出すのか…ひどく矛盾してはいまいか。徒に同質性を強いて他者との協調を偏重する日本の学校が児童生徒たちの多様性や個性を十全に育てられてきたのかは極めて疑問である。観光客が目にするのはせいぜいが当たり障りのない日本の表層であり、日本社会の深層に潜む腐敗、危機に気付くチャンスは少ないに違いない。

 日本の観光を考察する際、ただの「日本万歳」のお国自慢では終わらせない視点が必要不可欠であることに生徒たちが自ら気付けるか否かが授業の成否のポイントとなるだろう。