その3.認知の歪み
※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。
いきなりですが「認知の歪み」分野の導入時に視聴させたい動画をご紹介いたします。
◎【漫画】サクッとわかる「行動経済学」をわかりやすく解説【要約/阿部誠】
フェルミ漫画大学 2021/09/15 11:56
◎【誹謗中傷する人の心理】脳を惑わす3つのバイアス/SNSはロジックのズレだら
け/ハーバード大学と日本の違い/脳は省エネモードで動く/違和感に向き合え
PIVOT 公式チャンネル 2023/05/20 35:51
※参考記事
◎新たな戦場は「人の脳」 ディープフェイクで対立あおり分断 国が不満や不公正を放
置すれば「弱点」に 東京新聞 2024.7.14
国内の不公正、格差問題を放置していると外国から世論の分断や対立を目的とする
情報戦の餌食になりかねない、との指摘は重要。対立する外国からのデマにかく乱
されないよう、政府は国民の不満にもっと耳を傾ける姿勢を打ち出し、知る権利を
十分に保障すべきだろう。外交や軍事を巡る国家機密の多さは国民の分断を招く危
険因子の一つであり、一定の期間を過ぎた過去の出来事については積極的に情報公
開をすべきだと考える。
〇【毎日書評】自分の不合理さを知れば、もう悩まない。働く人すべてに「行動経済
学」が必要なわけ ライフハッカー・ジャパン 印南敦史 の意見 2024.4
自分たちを攻撃してくる中傷や暴言、反論に対してどう立ち向かうのか、心理学、
脳科学の知見を応用してそのロジックに迫る。イジメや差別とどう向き合い、闘っ
たらよいのかを考える上で大変重要なヒントを与えてくれる動画。イジメ問題でも
非常に役立つ観点が得られる教師必見のオススメ動画である。
動画で紹介されている三つの中傷の戦略(「whataboutinsm」「strawman
strategy」「gaslighting」)を理解するだけでも十分役立つだろう。
さて前回に引き続き、心理学ネタをご紹介いたします。今回のテーマは認知の歪みです。一回目に取り上げた「錯視」は知覚の歪みと表現することも可能でしょう。物事の認識は視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚などの五感から入る情報が土台になります。たとえば視覚の場合には目から入った光刺激が眼球内の網膜にある視細胞で電気信号に読み替えられて視神経により脳内に送られます。送られてきた電気信号は後頭要の視覚野を中心にして記憶情報などを元に瞬時に解読され、脳内のスクリーン上に外界があたかも「見えるまま」のように映し出される事になります。感覚受容体の一つである視細胞での光刺激の受容と電気信号への変換を中心とするプロセスを「感覚」、そして後頭葉での電気信号の解読作業は「知覚」、さらに知覚された映像に対してどう反応すべきか、一定の判断が施されるプロセス(ライオンが近づいてくる。逃げよう!等)を「認知」と捉えると一連の言葉が整理できるでしょう。
錯視現象のように知覚は基本的に歪んでいるのですが、認知も負けず劣らず歪んでしまいます。ですから人の判断に錯誤は不可避とも言えるのです。用心、用心。
なお今回の内容の多くは池谷裕二氏の「脳には妙なクセがある」(2013 扶桑社新書)と「自分ではきづかない、ココロの盲点」(2016 講談社ブルーバックス)の二冊に基づきます。他にも行動経済学や認知心理学関係の本は沢山あるのですが、お手軽で分かりやすい、面白いという2点で池谷氏の著作に勝るものは今のところ無いと感じております。皆さんも是非、ご一読下さい。
ア.おとり効果
たとえば脳は無意識のうちに判断ミスをしてしまうことがあります。決してわざとではなく自動的で反射的に生じてしまう脳のクセなので、多くの人がこのミスを犯してしまいがち。こうした脳のクセを「認知バイアス」と呼びます。
脳のクセを逆手にとって商売に生かすと・・・(行動経済学より)
・「おとり効果(極端回避性)」の利用例
カレー店の価格戦略
・普通カレー 1000円・・・利益率低い
・特製カレー 1500円・・・利益率高い
利益率の高い特製カレーの注文数を増やしたい時は選択肢を一つ増やして
・普通カレー 1000円
・特製カレー 1500円
・極上カレー 3000円
追加された「極上カレー」はあくまでも「おとり」のメニュー。お客はこのおとりメニューのせいで特製カレー1500円が相対的に安く感じられるため、特製カレーの売り上げはなんと40%程度も増大。
イ.「選択肢過多効果(決定麻痺)」に注意
「おとり効果」があるからといって闇雲にメニューを増やすと今度は逆効果。
例:ジャムの試食販売
A店では6種類のジャムを販売
B店では24種類のジャムを販売
→A店の方がB店の7倍もの売り上げを記録
※認知的不協和理論による説明:選択肢が多いと人は選択ミスによる損失を恐れるようになり、選択
そのものを止めてしまう傾向が出てしまう。従っておとり効果が生ずるためには選択肢の数はやや
少な目である必要があります。
ウ.プライミング効果:「先に行なったなんらかの処理が,次に行なう他の処理に促進
的な効果を及ぼす」現象を指す。ある実験ではコンビニ強盗の映像を見せた後、事件とは無関係の人物の写真を6人分見せて「このなかに犯人はいるか」ときくと40%程の人は無関係な人を指差してしまうそうです。
また別のパターンで「ある証言により犯人と思しき人物を特定したので確認してほしい」という言い方をすると何と70%の人が無実の人を犯人であると証言してしまうといいます(誘導尋問による冤罪の恐怖は誰にでも)。
エ.記憶の不確かさ・・・作話の例
人の記憶は曖昧なのですが、他方で海馬(記憶中枢の一つ)がダメになった人でも本質的な記憶は残るそうです。手に電気ショックの刺激装置を隠しておいて海馬がダメになった患者と握手します。患者はその場では怒りますが、海馬が働かないのですぐに忘れてしまいます。
でも翌日、同じように「今日も握手して下さい」というと患者は「トイレにいって手を洗ってこなかったので…」といった作話をして握手することを断るのだそうです。作話をしている時は本人には嘘をついている自覚はまったくなく、OFC(眼窩前頭皮質:矛盾を検出する部位)の活動が低下していることが確認されています。催眠でトランス状態になるとやはりOFCの活動が低下するといいます。
日常生活は作話に満ちていることになります。人は無意識の内に主観経験の原因を探索し、場合によってはその原因を適当に作り上げるのです。右脳と左脳をつなぐ脳梁(何億本もの神経線維で構成)を切断すると言語野が左脳にあるため、右の視野では文字を読み取れますが左の視野では読み取ることはできなくなります。
ところが見えた文字の物体をつかむ課題では、左の視野に「ペン」という文字を見せるとペンをつかむことができるそうです。つかんでしまった後から見せられた文字が「ペン」であったことに気付くというわけです。同様に左の視野に「笑え」と示すと笑ってくれます。なぜ笑ったのか問うと「あなたが面白いことをいうから」などと真剣に答えるといいます。
人は根拠があいまいな行動をとった場合、その行動の意味を勝手に作り上げておきながら、それこそが真の理由だと信じて疑わないのです。根拠が無い、理由が見いだせないことに人は居心地の悪さを感じ、いつの間にか無意識の内に適当な根拠、理由をでっちあげてしまうのでしょう。
オ.正と負の連合記憶
「正と負の連合記憶」実験も記憶や判断に関して興味深い知見を与えてくれます。被験者に新製品のヘッドフォンに関するモニタリング(商品として売れるか売れないかを消費者に判定してもらう事前調査)をしてもらい、アンケートをとります。ペンを渡して答えてもらって実験の第一段階終了。
次にアンケートを書く時に使用したペンの使い心地を答えてもらいます。するとヘッドフォンに対して高評価した人はペンの使い心地も良いと答え、ヘッドフォンを低く評価した人はペンも使い心地が悪いと答える傾向が見られるのだそうです。
人間の記憶や判断は状況次第であり、実際、かなり「いい加減」なのです。
カ.平均以上効果と総意誤認効果
人はまた自分の信じたいこと、望んでいることを確認したい欲求も強いようです。人々の大半は自分が平均以上に知能が高く、平均以上に公平であり、平均以下の偏見しか持っていないと思ってしまいます(=平均以上効果)
その一方で「自分は周りの人たちと同じだ」とも思いがちです(=総意誤認効果)。ですから大多数の人々は自分と同じ判断をすると思い、自分の行動を支持してくれることまで期待してしまうようなのです。したがってそうした欲求に反する都合の悪い事象は見過ごしてしまう傾向が強いといいます。もともと周囲は本人の傷つくようなことは言わないようにするため、本人の喜ぶような言動ばかりが目立ってしまうこともあって以上のような錯誤が生じてしまうようなのです。
キ.認知の錯誤に共通する点
認知の錯誤に共通するポイントは以下の二点に集約されるといいます。
1.だいたい誰でも同じように間違う
2.正しい知識を与えられてもまた間違えやすい
これは錯視を代表例とする知覚の錯誤と同じです。
では錯誤発生のポイントは何でしょう?
1.正解に至るための情報が決定的に不足
2.正解が存在するとは限らず、正解が一つとも限らない=「不良設定問題」
3.検討すべき要因が多すぎ、また複雑すぎる。時間も不足。
知覚や認知の錯誤はある種の「ヒューリスティック」(認知心理学者のカーネマン、トウヴァルスキの用語で直感的判断をする際に人々が暗黙のうちに用いている簡便な解法、規則)によって生じているといえます。
ク.ポジティブ・イリュージョンとウツの現実主義
うつ病の患者は現実を悲観的にゆがめて見ているというよりもむしろ現実を正しく捉えている場合があるそうです。逆に精神的に問題の見られない人々は多くの場合、都合のよいことばかりを覚えていてかえって記憶はゆがんでいるのだそうです。
心理学者のシェリー・テイラーは普通の人が
1.自分を現実よりも肯定的に捉えている
2.周囲の状況を実際以上にコントロールする力があると信じている
3.将来に対して非現実的な楽観主義を持っている
としてこうした認識のゆがみを「ポジティブ・イリュージョン」と呼びました。ヒトはあらゆる情報を自分の都合で勝手にえり好みし、適当に歪め、先入観から補完し、自ら作り上げた世界像を認識しています。ですから人の認識はある程度歪んでいる方が正常なのです。
ヒトの情報処理過程は大きく二つに分けて考えられます。一つは早期に無意識的に働く過程。もう一つは遅れて意識的に働く過程。無意識的な情報処理では情報の一部を強調したり、歪曲したり、足りないところを補完したりする操作が行われます。ヒューリスティックスや錯視現象も多くはこの過程に属します。
ケ.カクテル・パーティ効果
ちなみに会議を録音して再生すると、それまで気付かなかった様々な雑音が数多く聞こえ、会議場での意見は意外なほど小さくしか聞こえません。ヒトは自分が注意を集中して聞いていること以外の雑音を自動的にカットする処理を行っています。この現象は「カクテル・パーティ効果」と呼ばれるものです。
しかしすべての雑音をカットしてはおらず、自分の名前などは突然、聞こえたりします。自分に重要な情報であるかどうかは無意識のうちに、瞬時に判断されているのです。
コ.無意識の情報処理システムの原則
無意識の情報処理システムの原則には以下の三つが挙げられます。
1.生存に有利になる情報に敏感:厳しい環境を生き抜いてきたなかで身につけてき
た早期警戒システムのようなもの。たとえば普通とは違う何らかの変化には敏感に
反応。
2.認知的節約の原理:少ない資源をできるだけ効率的に使ってスピード重視の情報
処理。さほど重要性がないことはできるだけ手抜きをしてある程度不正確でいいか
らほどほどの正確さで処理する。たとえば相手を見かけだけでとりあえず判断。
3.快感原則:自分が気分よくなるように情報を選択し、解釈し、評価する。たとえ
ばポジティブ・イリュージョン。平均以上効果。
サ.日本人の自己評価の低さの背景
一見すると日本人はポジティブ・イリュージョンが苦手のように思われがちです。確かに傾向としては平均以上効果が目立たず、自分の能力は劣ったものとするネガティブ・イリュージョンすら認められます。
しかし相互協調性を大切にする伝統的心性から自己の能力を誇るよりも謙遜し、自己批判する人間の方が社会的にも好ましいという価値観から自己卑下するのではないでしょうか?むしろ自己卑下したほうが相手に好印象を与えるという計算が働いており、これも一種の情報戦略といえます。
個人主義的な欧米や中国、韓国では成功やポジティブな出来事を自分自身に帰属させる傾向が強いですが、日本では極端に弱く、ときにはマイナスでさえあります。日米中三カ国の高校生約3400人を対象にした調査でも(「自分だましの心理学」菊池聡 2008 より)・・・
「私は他人に劣らず価値のある人間である」という質問に肯定的に答えた高校生はアメリカで89%、中国では96%に対して日本は38%。同じく「私は人並みの能力がある」アメリカで91%、中国94%、日本で58%。「計画を立てるときはそれをやり遂げる自信がある」アメリカ87%、中国73%、日本38%。逆に「自分にはあまり誇りに思えることはない」アメリカ24%、中国23%、日本53%。
ただしこれも「出る杭は打たれる」といった自己保全からくる自己卑下だけではなく、自己の弱点や問題点を能動的に受け入れて自己の向上を目指す傾向の賜物とみる見方もあります。よくいわれる日本人の自虐史観もネガティブなことの責任を自分に帰するのが美徳とされてきた伝統的心性の産物なのかもしれません。しかし・・・他者と比べての自己評価を見る大学生対象の調査では「社交性」「容貌」「経済力」「スポーツ」などの側面ではやはり過小評価する傾向が見られましたが、「優しさ」(7割以上)「まじめさ」「明るさ」「誠実さ」(6割以上)といった項目では自分が他の大学生よりも優れていると考える傾向が見られました。
さらに夫婦間の調査でも夫は妻を、妻は夫を自分よりも高く評価する傾向が見られました(特に夫側)。この相対的自己卑下は友人関係でも見られましたが、これは自分たちの夫婦関係や友人関係は他の平均的なそれよりも素晴らしいものだという「関係性高揚」のイリュージョンが見られるということでもあります。
つまり日本人のポジティブ・イリュージョンは自分自身を直接持ち上げるようなものではなく、人間関係を仲介として自分自身を高く評価する傾向があるということ。ここにも集団主義的心性が潜んでいそうです。
楽観的であればそれで良いというわけではありません。小学生対象のある調査ではストレスの高い子どもにはポジティブ・イリュージョンが基本的に好ましい影響を及ぼすが、子どもの攻撃性が高い場合にはかえってその攻撃行動をエスカレートさせる傾向が指摘されています。
ムードメーカーや営業などには楽観的な人が向いていますが、リスク管理のような公正で、冷静な判断力が問われるポジションには「防衛的悲観主義」のタイプがふさわしいのだそうです。
「防衛的悲観主義」は悪い状況を想定することで不安を制御し逆境に備えるタイプ。病的なうつとは違い、適応的な悲観主義のことです。一人の人間の中でこの二つを使い分けられるようになることが理想でしょうか。
人には一歩引いて冷静に観察できる「メタ認知」が必要なのです。やたらにポジティブ・シンキングに走るのはむしろ間違いでしょう。不安や恐怖といったネガティブな感情にも適応的な意味があります。これらの感情は周囲の環境が望ましくない状態になっていることの反映であり、認知システムとして脅威や危険を見逃さないように分析的でシステマティックな思考方略を採るのが必然であり、「ウツの現実主義」もこうした原理によっているのです。
客観的に物事を眺めるべき時点で単純にポジティブ・シンキングに走ればむしろ不適応状態を招く(・・・太平洋戦争末期の日本?)ことすら起こりえます。新興宗教や自己啓発セミナーの危険性はまさにそこにあるといいます。
日本人は伝統的に均質で固定的な共同社会を営んできたために「だまし」の文化が欧米に比べて未成熟だそうです。ある犯罪学者は日本人が情報を鵜呑みにしやすく、それらへの警戒感も、確認作業の習慣も不足していると指摘しています。
この回のまとめとカッパの感想
~日本人の同調性と集団主義、「空気を読む」文化の裏側についての考察~
日本人には関係性高揚のイリュージョンが見られるという認知心理学の知見は極めて重要だと考えます。控え目で自己主張に乏しく、「空気を読む」ことが大切とされる日本社会独特の息苦しさも日本人の伝統的心性にこびりついている集団主義に基づくものと考えられます。質問紙調査の結果でも分かるとおりに欧米や中国のような、個人主義が伝統的に根付いている社会と集団主義的な日本とでは決定的に違うものを感じます。
よく海外向けに「おもてなし」が日本の美徳として宣伝されますが、それは日本のブラックな体質のサービス産業が演出している側面もあって、「お客様は神様」だとする裏側に「過労死」や「社畜」と呼ばれるような労働世界の過酷さが横たわっているのではないでしょうか。
変に「空気を読む」延長線上に成立する、働く人の「滅私奉公」に支えられた「おもてなし」であるのならばそれは厳しく見直すべき「美徳」でしょう。また日本人は情報を鵜呑みにしやすく、だまされやすいのでは・・・という犯罪学者の指摘も頷けます。他者への肯定的で積極的な関心に裏付けられた「空気を読む」社会であるならばもう少し他者への思いやりがある社会になっていたはず。きちんと空気が読める社会ならば自殺や孤独死が横行するはずはありません。
同質性を重視する傍ら異質なものを排除し、個性を軽んじてきた日本の集団主義的心性は相変わらずファシズムに転化しやすい危険性を抱えていると思います。
今、日本はオリンピックを機に「素晴らしいおもてなしの国である」と自負する余り、近隣諸国を見下す傾向がネット上の言論の一部に感じます。またコロナ禍を巡る騒動を通じて、上から強制されなくともマスクを着用している日本人と強制されなければマスクを着用しない欧米の人々とを比べ、日本人の優位性を説くような言論もチラホラ出てきたようです。
欧米の個人主義をただの「ワガママ」という言葉で一方的に見下すような一部の日本の風潮は明らかに変です。どうやら日本人の中で他者への積極的な関心に基づいた、共感性豊かな「メタ認知」とはほど遠い言論が目立ってきたように思いますが、皆さんはどのように考えますか?
参考動画
◎【漫画】脳のバグらせ方 脳がわかれば恋は作れる【要約/世良サトシ】
2021/10/15 フェルミ漫画大学 23:42
◎ゲーム理論の基本 予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」
2021/02/18 29:01
数学的思考が心理学、社会科学に必要不可欠であることが分かる。
参考記事
◎有名人を誹謗中傷してしまうのは「脳の構造」に原因があった…脳科学者が語る、
コンプライアンス中毒に陥る理由
現代ビジネス 中野 信子 によるストーリー 2024.3.14
SNSの発達もあって他人への誹謗中傷がはびこっている。特に有名人へのそれは過酷さを増してきているようだ。その背景に何があるのか、科学的な立場から説明を試みていて、イジメ事件の原因追及にも役立つ内容。
◎ハーバードで教えた心理学者が伝授、「同調圧力で外せない」日本人のマスクを外
す方法 ダイヤモンド・オンライン トッド・ローズ の意見 2023.8.15
ソーシャルメディアによって強化された同調圧力に対抗するには「なぜ?」と理由を問い続ける努力
が有効だという。また「少数意見でも何回も投稿される意見が、多数派とみなされ、今目の当たりに
しているのは、少数派が多数派を黙らせている状態です。政治家はこのことを熟知しており、うそで
あっても何回も繰り返して“真実”にしているのです。」という指摘はSNS上でのフェイクニュース
と誹謗中傷、偏った意見の横行を説明してくれる。
○「自分のことは自分が一番知っている」という人の思考が浅い、決定的な理由
植原亮,山本健人 DIAMOND Online 2022/11/06 06:00
◎「自分は客観的」自負する人に教えたい残念な真実 体感して理解!脳は現実を誤って
解釈する 東洋経済オンライン トッド・ローズ の意見 2023.6.15
〇言った言わないの水掛け論…悪いのは相手ではなく、脳のしくみだった!?【脳科学
者が解説】All About 阿部 和穂 によるストーリー 2023.6.17
◎人間は「現実には起きなかった架空の事件」を自分がやったと思い込んで自白をし
てしまうという研究結果 GIGAZINE 2023.6.20
その3における主な参考文献
・「影響力の武器~なぜ、人は動かされるのか~」
ロバート・B・チャルディーニ 誠信書房 1991
・「影響力の武器 実践編 ~イエスを引き出す50の秘訣~」
R.B.チャルディーニ他 誠信書房 2009
・「ウソの記憶と真実の記憶」中島節夫 KAWADE夢新書 2000
・「記憶力を強くする」池谷裕二 講談社ブルーバックス 2001
・「進化しすぎた脳」池谷裕二 講談社ブルーバックス 2007
・「自分だましの心理学」菊池聡 祥伝社新書 2008
・「サブリミナル・インパクト」下條信輔 ちくま新書 2008
・「単純な脳、複雑な『私』」池谷裕二 朝日新聞社 2009
・「謎解き・人間行動の不思議」北原義典 講談社ブルーバックス 2009
・「ねじれ脳の行動経済学」古川雅一 日本経済新聞社 2009
・「和解する脳」池谷裕二・鈴木仁志 講談社 2010
・「脳と心」ニュートン別冊 2010
・「錯覚する脳」前野隆司 ちくま文庫 2011
・「脳には妙なクセがある」池谷裕二 扶桑社新書154 2013
・「脳が認める勉強法~学習の科学が明かす驚きの真実!~」
ベネディクト・キャリー ダイヤモンド社 2015
・「マンガでわかる行動経済学」ポーポープロダクション
サイエンス・アイ新書 2014
・「自分では気づかない、ココロの盲点 完全版」池谷裕二
講談社ブルーバックス 2016
・「認知バイアス 心に潜むふしぎな働き」鈴木宏昭
講談社ブルーバックス 2020
・「寝る脳は風邪をひかない」池谷裕二 扶桑社 2022
・「バイアスの心理学~認知のメカニズムと心のクセに迫る~」
Newton別冊 2023
・「思い出せない脳」澤田誠 講談社現代新書 2023
最近の本では「思い出せない脳」が突出して分かりやすく、抜群に面白い。記憶だけではなく、最新の脳科学の成果を踏まえた著作なのでこの分野や「その5」で紹介している内容とも大きく関わる、カッパ一押しの本。随所にちりばめられたSF仕立てのストーリーの出来も素晴らしく、好奇心がくすぐられ、ワクワクさせてくれる。