その6 .教師の下位文化に関する私的考察(中編)
※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。
④ 学級運営の基本~学校や学年の違いを考慮した重点目標の設定~
学級運営もまた学校間格差と教師の準拠集団の違いに大きく左右される。ここでは最も数の多い、しかも意外なほどに煩雑で勤務条件が厳しい進路多様校を前提に学級運営のあり方を考えてみたい。学校が学年室常駐体制ではなく、教科準備室体制であるとした場合、学級運営はかなり教師の個性が反映されやすくなる。初任の場合、今は皆、原則として副担任なのでベテランの担任の学級運営をじっくり観察できる機会は十分にあるだろう。ベテランの先生が何をどう話すのかも重要ではあるが、何をどういう手順で進めているのか、そのために最も心を砕いているのは何なのか、観察してみよう。
以下、クラス担任となった高校教師が実際、どのタイミングでどんなことに心を砕き、どんなクラス経営をしているのか、学校関係者でない方でもある程度はイメージできるよう、ベテランのクラス担任目線で記述してみよう。
ア.新入生を迎える際の心構えと1年生の学級運営
新入生は入学したての頃、期待と不安で一杯であり、しばらくの間は緊張で疲れてしまうことが多い。当然、クラスの人間関係はまだまだぎこちない段階。そうした中での最初のホームルーム。初対面の印象はもちろん重要。ここで1年生の担任にまず必要とされるのは段取りの良さである。やるべき事、伝達すべき事が目白押しなのでテキパキと作業をこなしていかないと新入生の混乱と不安はなかなか解消できない。ただでさえ不慣れな環境で次から次へと課題、配布物が配られ、緊張の連続となる。当日のきめ細かな指示が口頭だけでなく、予めわかりやすく整理されて板書されていると生徒は動きやすい。また当面の日程や提出物、座席表、時間割表、掃除分担表などをコンパクトにまとめ一枚のプリントにして生徒に配布すると共にクラス掲示しておく。時間割表は特に別途、大判の紙でクラス掲示しておく。中学時代の級友がどのクラスにいるのか分かるように学年名表も掲示しておくとかなり喜ばれる。また学校全体の年間計画も掲示しておこう。先の見通しを少しでも明示しておけば新入生の不安は多少なりとも軽減される。
遠足や文化祭の日程は4月早々から告げておくと生徒に目標を持たせやすくなる。クラスを活性化させる上で4月の中頃までには文化祭の企画を大雑把で良いから話し合いを通じてまとめてしまうのも有効。楽しい行事を待ち遠しくさせるとともに、クラス全体に今後の学校生活への期待感をもたらし、不安と緊張に満ちた雰囲気を一気に軽くすることが出来る。新入生は多くの場合、お互いの様子をうかがって言動が慎重となっており、なかなか率先して動こうとはしない傾向がある。文化祭の話し合いを通じていち早くリラックスさせ、生徒の自主的な動きを自然に誘い出すこともできよう。
ただしリラックスさせすぎてしまい、ケジメがつかずにだらしないような状況を作り出してしまうのはもちろん良くない。そこで多くの生徒達がサボリがちな掃除に関しては予め出欠表を作っておくなど、最初からキッチリとやらせる工夫が必要。担任も教室掃除はテキパキと指示しながら、黒板と教壇だけは自らの責任で常にきれいにしておく。ずるい生徒が楽をして威張り散らし、真面目な子ばかりが損をする・・・といった最低のクラスにしてはなるまい。
経験上、朝のホームルームの時から黒板や教壇がチョークの粉などで汚れているクラスは授業でも反応がイマイチのクラスになってしまう。また座席が始終、縦横乱れているクラスは生徒間にやがて不公平感が醸成されのか、人間関係のもめ事が多いクラスになりがちであるという印象が個人的にはある。折り目正しさと清潔感と公平感を演出するのはあくまでも清潔できちんと整理された教室であろう。教室の環境と担任の普段からの言動は生徒たちへの影響力が決して小さくないことに留意すべき。そのどちらも欠けていてはダメ。教室が雑然としている中で担任が生徒に向かってどんなにきちんと勉強しろ、きちんと掃除しろと怒鳴っても大した効果は期待できまい。口から発せられる言葉よりも無言の行為と無言のモノたち、つまり教師の背中と教室自体に語らせる方が生徒達への説得力ははるかに勝ると私は考える。
昔から反社会的な生徒は教師の目を引きがちだが、今や非社会的生徒への気配りは極めて大切である。中学校で幾度もイジメを目撃し、自らも体験して憂鬱な気分を散々味わってきた生徒たちは、その存在感が控え目であるせいか、教室では大勢に埋もれてしまったようで目立たない。しかしその数は実際にはかなり多いと感じてきた。察するに多くの生徒達は立場の弱い生徒への気配りを担任の教師が行えるのかどうか、密かに、しっかりと観察していると思われる。だからこそ担任は無口で孤立している生徒への意識的な働きかけが上手に出来なければならない。遠足でのバスの座席決め、文化祭での役割分担でなかなかグループに入れない生徒へのフォローが上手に出来ないと、本来、クラスの役に立とうと思っている真面目な生徒の心までもが担任から離れていってしまうかもしれない。逆に目立ちたがり屋で弱者への思いやりに欠ける生徒達がその派手な積極性でグループを形成し、いつの間にか遠足や文化祭などの主導権を握ってしまうと、クラスは学年の後半、まったく収拾がつかなくなるほどに乱れ、挙句の果てに不登校の生徒を複数生み出してしまうかもしれない。
1年生の文化祭では初めての体験が多いため、なかなかスムーズに事は運ばない。最初から最後までギクシャクしがちである。意欲のある生徒、真面目な生徒を腐らせないためにも担任のリーダーシップ、テコ入れが1年ではどうしても必要である。自主的な行事だからといって何でも生徒任せにすると大変な事態を招きかねない。1年生の場合、大成功する必要はまったく無い。逆にやや悔しい思いで終わる方が次年度につながる、と思うべきだろう。重要なのは結果以上に文化祭当日に至るまでのプロセスである。実際、文化祭終了後に「先生、来年はもっと楽しい、凄い企画をみんなでやりたい!」と生徒達が声をそろえて言ってくれれば1年生としてはむしろ大成功の部類なのである。
繰り返しになるが、大切なのはずるい生徒が楽をして真面目な子ばかりが損をする・・・という最悪の不公平感を出来るだけ生み出さない工夫。部活や塾を理由にしてろくろく手伝わず放課後すぐにいなくなる一定数の生徒、放課後は残ってくれるが無駄話ばかりしていて教室に居残ること自体を目的にしてしまっている女子、無意味に外出し徒にダンボールだけ集め、それで事足れりとばかりに教室で遊んでばかりの男子、無謀な企画を押しつけておきながら思い通りに動いてくれない生徒達にイライラを募らせているクラス代表、文化委員・・・そのどれもが1年生にはありがちな光景である。
彼らをまとめ上げてチームワークを作り、できるだけ多くの生徒を巻き込んで生き生きと動かしていけるかどうかはひとえに担任の力量にかかっている。まずは文化祭の楽しさを4月早々からアピールしておくこと。折に触れてはこれまでの楽しかった様々な文化祭での経験を担任が目を輝かせて語る必要がある。役割分担とそれぞれの責任を早めに明確にしておこう。文化祭が近づいてきたら班ごとに「本日のスケジュール」を印刷し、こまめに配布して一日の目標と作業手順などを簡単に示してあげるとクラス代表、文化委員のイライラは多少なりとも解消されるはずである。
文化祭の出来不出来は年度の後半、クラスの雰囲気を一変させてしまうことがある。文化祭を軽く見てはなるまい。一見、文化祭に対してクールで協力的に見えず、やる気も無さそうな生徒達ほど、実は心の中で文化祭の盛り上がりに期待していたりする。多数派でもあるそのような生徒達の期待が裏切られたとき、今まで真面目だった生徒、協力的だった生徒までもが根こそぎ、クラスや担任に背を向けてしまうかもしれない。
文化祭に消極的な彼らを他力本願の「自己中」と馬鹿にしてはいけない。進路多様校での生徒は中学校時代、リーダーシップを発揮した経験を持つ子の数が限られている。基本的にはフォロワーだった生徒が多いだろう。そもそも仲間から叩かれるのが怖くて目立ちたくない生徒が圧倒的に多い。面倒くさそうな事には大抵腰が引けている。そうした生徒達をもグイグイと巻き込んでいく、担任のアイデアと情熱が問われている。
イ.2年生の学級運営
2年生になると生徒達は学校生活にも慣れてきてある程度まで自主的に動けるようになってきている。1年生の時と違って手取り足取りの指導は不要となってくるだろう。しかし多くの学校は2年の秋に体育祭(球技大会)、修学旅行が連続する。さらに部活動の大会(新人戦)も重なってくるので担任にとっても過密なスケジュールになることを見越した、早めの計画性が必要とされる。2年生もまた文化祭の準備は4月早々から始めた方が良い。
大抵は学年の前半に楽しい行事が続くのでクラスの雰囲気が暗くなる心配はほとんど不要。1年生の時の経験が活かされれば行事は大きな失敗をしない。だからこそ1年生での文化祭の体験は貴重であり、1年での担任の役割も大きい。逆に1年生の時に文化祭などがイマイチの結果に終わり、ギクシャクしてしまったクラスの生徒が多くいる場合、担任は1年生の時と近い働きかけをする必要が出てくる。3年間の文化祭の成否は1年生での体験にかかっていると言っても過言ではない。学校生活の一番の楽しい思い出として生徒達が挙げるのは何と言っても修学旅行や文化祭、体育祭、そして部活動である。その中でクラスの雰囲気を決定的に左右するのはクラス単位で行われる学校行事。クラスを協力的でイジメの少ない、明朗快活な雰囲気にしていく上で文化祭などの学校行事が果たす役割は極めて大きい。
問題は修学旅行を終えた後半戦。楽しい行事が続いたのでクラスの雰囲気は明るいだろうが、そろそろ進路という厄介で大切な課題に目を向けさせる必要が出てくる。2年の11月に就職指導を始める学校があるくらい、この時期はあらゆる面で大きなターニングポイントになる。就職する生徒はあと一年半ほどでそれまで長かった学校生活に別れを告げて社会に出て働く・・・経済的自立という人生上の大きな飛躍が課されるのだから、気持ちの面でひるんでしまう生徒は多い。しかし学校生活と労働社会とは連結する要素が沢山あったことにまずは気付かせたい。遅刻せずに通学する、部活で心身を鍛える、多少退屈であっても授業などでの学習を地道に重ねる、学校行事でチームワークを作る・・・これらの経験はすべて社会に出て働いていく上でも役立つ事である。
まずは2度経験してきた文化祭での共同作業を出来るだけアリアリと思い出させてみよう。それぞれの個性を活かした役割分担、作業の手順、共同作業の難しさ、必要とされるコミュニケーション能力、装飾やプレゼンの工夫、接客や会計の煩雑さ等・・・「働く」ということを文化祭での体験を通じて出来るだけ具体的にイメージさせ、箇条書きでまとめさせたい。この課題は就職希望者に限らず3年生でのAO入試や推薦入試での面接対策にもつながる。もちろん就職試験での作文や面接に向けての準備にもなる。できれば成功体験だけではなく、失敗した、苦労した、反省したこともしっかり思い出し、その時にどのようにして困難を乗り越えようとしたのか、時間をかけて考えておくことは極めて重要である。進路を考えるための材料はまず身近な事柄、自分の経験から探し出すことが肝要。これが十分に出来ていないと後々、面接試験の際に具体的で説得力のある話が出来ずに困るだろう。
※面接試験では抽象的なきれい事を暗記してスラスラ話せる生徒が必ずしも高い評価を得られるわけで
はない。自分の体験に根ざした、具体的で説得力のある話が生き生きと語れるかどうかが合否の分か
れ目になることも多いと考える。
学校行事への取り組みは高校生活の前半を振り返り、良かったこと悪かったことを整理して他人に説明するための重要な土台となる。面接試験で頻出の「あなたが高校時代に最も力を入れて取り組んだことは何ですか?」、「あなたの高校生活で最も印象に残ったことは何ですか?」、「あなたの長所と短所を教えてください」といった質問への具体的で個性的な答えを用意することにもつながる。進路を決めるという人生の重大な岐路に差し掛かる生徒達にとって高校生活の意義を2年生の後半でしっかりと見直しをさせることは残り一年余りとなった高校生活をより一層有意義なものにしたいという意欲をもかきたてる事につながるだろう。よく言われる「中だるみの2年生」と形容されるような状況が年度末まで続くようでは自他共に納得できる進路決定は難しくなる。2年の後半は冬休み、LHR、総合学習の時間等をフルに使い、じっくり時間をかけて真剣に自分の進路を考えさせておきたい。
ウ.3年生の学級運営
学級担任としては進路希望の実現が3年生における最大のテーマとなる。もちろん部活では最後の大会で最高の結果を出すという、大きな目標がある。多くの生徒は最終学年として総体、夏の大会までは部活に専念したくなるだろう。しかし進路決定は確実に人生の岐路となる。夏まで進路のことには見向きもせず、準備不足のまま部活動での引退の時を迎えてしまい、とどのつまり保護者や部活の先輩のアドバイスを鵜呑みにして進路を決めてしまう残念な運動部員をこれまでに沢山見てきた。浪人覚悟の四大進学希望者ならば多少の出遅れも許されるが、就職や専門学校進学、現役での四大進学となるとそうはいかない。特に野球部で就職を希望する生徒は夏の大会と就職準備が重なる点(どちらも7月が最大のヤマ場となる)は早めに予告しておくべき。就職試験で野球部が有利なのは事実だが、野球部員であるが故に自分の個性と合わない職場、職種になまじ内定をとれてしまう事は後日、本人にとってむしろ大きな悲劇となりかねない。
実は3年生になってから就職指導を始めても遅すぎる。遅くとも部活の最後の大会までにまだ間がある2年生の1月から就職希望者への手厚いガイダンスが数回分は用意されているべきである。その段階から7月の日程の厳しさは周知徹底させておきたい。そもそも進路決定の歩みは部活動と違って、孤独な歩みである。どんなに親しい友人であっても同じ職場、同じ大学、同じ専門学校に行ける事はほとんど無い。しかし同調圧力が基本的に強い日本の部活では自分だけが進路に向けて動き出すわけにはいかないと感じてしまう。お互いに様子をうかがいながらも結局は進路を二の次にしてチームワークを盾に部活に専念してしまうのは自然の流れであろう。ここでも教師の果たす役割は大きい。まず部の顧問の協力が無ければ放課後の就職ガイダンスは成り立たない。さらには学年団が一致団結して進路指導に邁進する必要がある。
高校生最後の体育祭が秋に行われる場合、9月から10月にかけては就職試験や推薦入試のシーズンと重なる点も早く予告しておくべきである。運動部顧問の担任であるならばさらに新人戦の予選まで重なってくる。生徒側も3年生として学校行事で「最後の花道」を飾りたいのはよく分かるが、運の悪い人は就職や推薦入試の試験日などと重なり、そもそも最後の花道を飾れない場合もあることは予め覚悟させておく必要がある。3年では進路希望の実現が何よりも最優先されなければならない事を早めに生徒に周知徹底させておくべきだろう。
確かにAOや一般入試で四大にチャレンジする生徒の合否はかなりの部分、自己責任が大きい。学校以外でも塾や予備校などがある程度は受験指導してくれる。しかし専門学校への進学や推薦入試、とりわけ就職は生徒個人の資質や努力ばかりに責任を転嫁できない要素がかなり多い。どうしても教師によるテコ入れがものを言う。ほとんどの教員は高卒で働いた経験が無いため、自分の大学進学時の体験をベースに進路指導を捉えがちである。しかし高校生の就活は世間の常識とはかなりズレており、通常では受け入れがたいほどの特殊ルールがある。就職指導を経験したことのない教師と就職指導のベテランとの認識の差はこの点でかなり大きい。就職指導したことのない教師が3年生担任になった時、下手をするとそのクラスの生徒は大きなハンデを背負ってしまいかねない。進路指導は生徒の人生を左右しかねない、重大な案件であることの共通理解がまずは3学年職員全員に必須となる。
担任への精神的プレッシャーは3年間を通じて3年の秋が最大、最強となる。秋は学校行事が目白押しで極めて忙しい時期にあたるため、仕事に漏れやポカが生じやすい。担任や進路指導部のちょっとしたミスから法的、民事的な責任を問われるような深刻な事態に発展するケースもある。特に就職と推薦入試、AOが重なる9月から10月にかけては推薦書と調査書の発行手続き、面接指導の希望が各担任のもとへと殺到する。
進学用の調査書と就職用の調査書では書式が違うので取り違えは許されない。推薦入試の場合には字数400字を超える推薦文をほぼ同時に何枚も書かなければならない。進学用の調査書の場合、数値等の間違いは命取りになりかねないので学年、進路指導部、教頭と、最終的に職印が捺されるまでに何度もチェックが行われる。印鑑漏れはもってのほかである。もちろん生徒から預かった推薦願いを一旦引き出しにしまったことでうっかり出し忘れ、受験先への提出が出願期間に間に合わなかった・・・といった教師側のミスはあっという間に裁判沙汰、新聞沙汰となりうる重大事。担任や進路担当者にとってまさに薄氷の上を歩くような慎重さが受験手続きには求められるのである。
誰の何を何日までに担任に提出させ、担任は何を何日までに本人に手渡すべきなのか、本人は何日までに出願書類一式を受験先に送らなければならないのか・・・逐一クラス名表を使って一覧表にして整理し、常に自分の目の前にさらしておく位の工夫を担任はすべきだろう。残念ながら生徒の一部はこちらから繰り返し声を掛けないと期限通りに推薦願いや調査書発行願いすらなかなか担任に提出してくれない。しかも締め切りギリギリで提出してくる生徒はかなり多い。様々な理由から出願書類を自力で書き終えてすべて取り揃えることすら危うい生徒、ご家庭も少なからず存在している。
担任はやかましいほど毎日繰り返し、手続き上の見落としはないか、期限は大丈夫か、生徒達に確認させる事が必要となる。特に郵送の際、簡易書留などの説明はしておくべきである。
調査書や推薦書は所定の封筒に入れて緘印を捺すのだが、この封筒をそのまま郵便ポストに入れてしまった生徒が実際にいる。出願手続きに関しては生徒に相応の常識を期待するのはもはや無謀とも言える時代となってしまったのだ。まずは「キチンと出来るわけはない」という教師側の諦めが肝心。生徒が出そうとしていた就職予定の企業に送る郵送物をふと見てみると宛名の住所が何と高校の住所、それも自分のクラス宛であった・・・こうした普通ならあり得ない間違いを見つけるためにも本来、生徒には常識など無いのだからきっと間違えるはずである、と思っていた方が担任の身のためでもある。
以上、強調してきたように3年の担任にとっては秋が正念場。若くして3年の担任となった場合、もしも交代できる人がいるならば運動部の第一顧問をその時(秋)だけは下りた方があらゆる意味で無難である。進路多様校の場合は推薦入試希望者が多く、しかも就職希望者も多いのでとりわけ大変。9月末から10月にかけてはほぼ徹夜状態で推薦書などを書く日があることも覚悟しなければならない。生徒が書いた出願書類、作文等には間違いが多いので念入りなチェックが必要である。たとえベテランであったとしてもこの時期、3年担任でありつつ同時に部活指導に専念するのは相当危険なチャレンジと言えるくらいに責任重大な仕事が山積してくる。多くの場合、仕事の期限も待ったなしである。進路指導に関してはちょっとした油断、うっかりミスが身の破滅につながりかねないことを重々、覚悟しておきたい。
晴れ晴れとした気分で生徒と担任とで喜びを分かち合い、感動の卒業式を迎えるためにも、教え子達の高校生活のフィナーレをしっかりと飾ってあげるためにも、担任は生徒達の進路実現という最大の難所、ヤマ場を細心の注意を払って無事乗り越えていかなければならないのだ。