その3.お金から見た戦争・ひめゆり学徒隊
※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。
・沖縄戦:紙幣及び硬貨から見た戦争
左が戦時中に発行された紙幣でデザインも楠木正成像や八紘一宇、靖国神社といった戦時色の強いものが使われている。一方、右は戦後間もなく発行された紙幣で、平和のシンボルのハトや議会制民主主義のシンボル的存在である自由民権運動の指導者板垣退助、国会議事堂が使われている。いずれにせよ紙幣発行当時の政治情勢が露骨なほどにそのデザインに反映されている。また左右双方に共通する点としてどちらも低額紙幣であること。すなわち敗戦を挟んだ時期は戦争のために深刻な金属資源の不足に直面し、十分な量の硬貨が発行できなかったため、紙幣で不足分を補おうとしていたのである。
戦況の悪化に伴い、物資の欠乏が表面化してくる。硬貨の素材も劣化を余儀なくされた。同じ1銭玉でも銅の含有量が減っていき、サイズも小さくなっていく。日の目は見なかったものの、敗戦間際、日本はかつてのドイツを真似て陶貨の試作を行っている。「欲しがりません 勝つまでは」と勝利を信じて耐え忍んできた国民は圧倒的な物量に物言わせたアメリカ軍の攻勢の前に大戦末期、ひたすら無防備な姿をさらけ出すことになる。
参考記事
〇約50万枚の1銭陶貨見つかる 京都市の会社倉庫から「幻の貨幣」
朝日新聞社 によるストーリー 2024.10.9
第一次世界大戦中のドイツも末期は金属不足により陶磁器の貨幣を発行していた。かつて江戸時代には伊万里など、大量の陶磁器がヨーロッパに輸出されていた。皮肉にも第二次世界大戦末期、かのドイツをお手本にして日本でも陶貨の発行を試みようとしていた。この貨幣の歴史的資料価値は資源の勝る国を相手に無謀にも戦争を挑んでしまった国家の末路を知る、という貴重な教訓を教えてくれることにあるだろう。
・ひめゆり学徒隊
参考記事
〇「軍隊は住民を守らない」沖縄・久米島の住民虐殺事件、戦後80年 歴史の事実に向
き合う“日本軍が民間人にしたこと”【報道特集】 TBS NEWS DIG 2025.6.28
もちろん日本軍がすべてこのような虐殺を行ったわけではない。住民を守ろうとした日本兵もいたはずである。ただし、兵士個人ではなく軍隊という組織として見れば総じて沖縄の住民を十分に尊重していたとは思えない。この問題の核心は、軍事機密の保持を名目にして沖縄の人々をスパイと見なしがちな日本軍の体質があった、という点に潜んでいるだろう。
とは言え、本土決戦が行われていれば、沖縄の人とほぼ同様のレベルで日本各地の人々が軍からスパイの嫌疑をかけられたと思うが、いかがか。
皇軍が最優先に守るのは間違いなく臣民ではなく天皇であり、天皇制…すなわち「国体」であった。国体護持こそが大本営および皇軍の死命であり、それが敗色濃厚な状況下でも無謀な戦争を続けてしまった根本原因であった。したがって国体護持のためには最悪、天皇の臣民すべてが「一億玉砕」をも覚悟すべきであったのだ。
問題の核心を掘り下げると、次の疑問に行きつくだろう。なぜ日本人の多くが、いつ、どのようにしてこのような考えに取りつかれてしまったのか…近代以降、徹底されていった「国民皆兵」「国民皆学」の下での軍隊と学校、そしてマスコミの果たした責任は、やはり極めて重大なのである。
戦後80周年を期して放映されているNHKの朝ドラ「あんぱん」が執拗に描き出してきたのは決して主人公「のぶ」の教師としての戦争責任だけではあるまい。主人公が敗戦後、教職を辞して地方新聞の記者となった、というドラマの筋書きは多少のフィクションを交えてのものではあるが、それは敢えてNHKが学校とマスコミ双方の戦争責任を厳しく問い直すための設定でもあると考えるが、いかがか。
〇沖縄戦司令官の「辞世の句」は本当に「平和への願い」? 自衛隊が地元の反発を無
視し、HP掲載を続ける理由は 東京新聞 2025.5.8
このままでは沖縄の米軍基地を減らす代わりとして自衛隊基地を置き、中国の進出に対抗する動きは取れないままだろう。大多数の沖縄県民の理解が得られないからである。皇国史観に基づく旧日本軍の発想を未だに引き摺る自衛隊であるならば、決して沖縄県民の協力は期待できない。文民統制の理念にも違反しかねない辞世の句を自衛隊のHPに掲載し続ける自衛隊幹部の厚顔無恥さ、鈍感さに呆れるほかない。西田氏と同様の悪質さを感じるのは私だけではあるまい。
〇「ひめゆり発言」自民・西田参院議員 寄稿で「展示があったのは事実」と改めて主
張 ABCTV NEWS 2025.6.1
幹事長が党を代表してわざわざ謝罪を表明しているにもかかわらず、党の所属議員がそれを無視するかのようにふてぶてしくも問題発言を続ける。自民党はこのまま西田氏を放置していて良いのだろうか?
西田氏が「事実」を主張したいのなら、その客観的な根拠を詳細に示すべきだろう。主観的であいまいな自分の記憶だけでひめゆりの展示を批判し続ける強弁を、自民党として許していいものなのか…党の規律が問われる。
〇「トラウマになっていることを痛切に感じた」自民・西田昌司議員“ひめゆり言”を
謝罪「本当に耐え難い大きな苦しみの歴史」 FNNプライムオンライン 2025.5.9
国会議員としての見識が根底から疑われるほどの勉強不足の人物が、いかにも得意げに根拠の疑わしい自説を展開し、批判されると開き直る…老害議員たちのレベルも地に堕ちたものだ。
以下、6つの記事が西田発言を考える上で大いに参考となるだろう。
◎県民の4人に1人が犠牲になった沖縄戦から80年。ふたたび沖縄が“要塞化”される
今、「自分の街が戦場になる」とはどういうことか考える
集英社オンライン 2025.06.04
◎米軍はなぜ沖縄をねらったのか…大本営に本土防衛の捨て石として利用された事実
と米軍の作戦との乖離〈沖縄戦から80年〉 集英社オンライン 2025.06.19
◎「家畜を無断で食べる」「強盗」そして「強かん」…戦時中に一部の日本軍兵士たち
が現地住民に犯した罪と罰〈沖縄戦から80年〉 集英社オンライン 2025.06.20
◎「アメリカが来たら手をあげなさいよ、そしたら助かるからね」と話した人が日本
兵に殺された「一度米軍に捕まった者はスパイだ」と〈沖縄戦の住民虐殺〉
集英社オンライン 2025.06.21
◎沖縄戦での日本軍の行動を美化しようとする政治家の発言の背景には「根拠がなく
ても堂々と主張すれば騙せる」という“悪しきトレンド”がある
集英社オンライン 2025.6.22
◎〈沖縄戦から80年〉国を守るとは? 沖縄戦では「天皇制国家」を守るために沖縄の
人々と日本軍の兵士が、降伏することも捕虜になることも許されず死を強いられた
という事実 集英社オンライン 2025.6.23
「国を守る」とは「国体・国の機構を守る」ことであって「国民を守る」ことではない…との指摘はこの問題を考える上で最も重要で本質的なポイントの一つだろう。
参考動画
・【完全ノーカット映像】 “ひめゆり” は「歴史の書き換え」 自民党・西田昌司参院
議員発言の真意は 【琉球放送】RBC NEWS 2025/05/09 42:08
ただの切り抜きを元にした批判では説得力が無いので、教師としては一応、最後まで視聴しておくべきだろう。西田氏の論点はまず11月3日を現憲法の公布日としたのはアメリカの差し金である、という指摘が土台となっているが、これは本当だろうか。むしろ吉田茂らは公布日を敢えて明治節にすることで、まがりなりにも天皇制存続を実現したと国民にアピールしたかったのではあるまいか。こちらは西田氏の見方とは完全に真逆の結論を導くだろう。
また教育勅語は日本の伝統の神髄であるかのように論じられているが、本当だろうか。たとえば9条改正に賛成であっても、「一旦、緩急あれば義勇、公に奉じ、以って天壌無窮の皇運に扶翼すべし」という文言を現代の学校教育にそのまま復活させることには抵抗感のある人が少なくないと思うがいかがだろう。
さらに東京裁判がアメリカ主導で行われたものであることは明白だが、東條らが死刑となった一方で731部隊や天皇、岸信介、正力松太郎らは基本的に罪を問われなかった。これもまたこの裁判がきわめて片手落ちで偏向したものであったことを示している。特定の人々への免罪が日本の戦争に対する反省を不十分とした原因を創り出してしまったとも考えられるだろう。そうした視点からも、この裁判は厳しく批判されるべきである。
皇統存続の危機は確かに皇室財産の削減と11の宮家を臣籍降下させたことにも起因するだろうが、そもそも明治期に膨れ上がった皇室の財産は、天皇の戦争責任が免除された分、相当程度まで削減されても仕方なかった…という論法は十分成り立つだろう。当時、国内外から天皇の戦争責任が厳しく追及されていた風潮を視野に入れて考えるべきである。
マスコミや戦後教育、とりわけ沖縄があたかも共産主義に汚染されているかのような指摘もまたファクトチェックが必要だ。日本が共産主義化していたのならば、学校で「君が代」を国歌として存続させている側面を説明できない。確かに戦後の一時期、社会主義思想が隆盛となっていたのは事実である。しかし日本の戦後政治の実態はどちらかと言えば戦前、戦時中へのUターンが目立った。さもなくばA級戦犯容疑者であった岸信介や正力松太郎らが政治家として復帰し、戦後政治に重要な役割を果たせたわけがあるまい。安倍晋三政府の長期政権化も説明不可能な認識だ。
ウクライナを悪者としてロシアを擁護する論点も絶望的にズレているだろう。ロシアはウクライナの前に日本への侵攻を計画していた可能性があるという報道もある。そもそもロシアの日本に対する領土的野心は対馬占領計画を含み、幕末まで遡る。また第二次世界大戦ではヤルタ秘密協定により、北方領土問題が生み出されている。当時、スターリンはカラフトや千島列島だけでなく、北海道や東北侵攻も視野に入れていたのではあるまいか。
そもそもこれまでのプーチンの振る舞いを見ていたのならば、ロシアを擁護する論拠を見つけること自体、極めて難しいはずである。共産主義への脅威を大袈裟に取り上げて針小棒大に煽り、加害者でもあるはずのヤマトンチュがなぜか被害者面して沖縄での学校教育、とりわけ平和教育を「上から目線」でディスる…西田氏の論調はただの誹謗中傷であり、陰謀論そのものだろう。
◎【独自・ノーカット】 "ひめゆり"は「歴史の書き換え」 自民党・西田昌司
参院議員発言の真意は 琉球放送】RBC NEWS 2025/05/07 2:47
◎沖縄戦の女子学徒を慰霊するひめゆりの塔は「歴史の書き換え」 自民党・西田議員
発言めぐり波紋 【琉球放送】RBC NEWS 2025/05/06 4:47
討論のネタとしてはうってつけの動画。ぜひ、視聴させて議論に持っていきたい。
もちろん西田氏が指摘するように、戦後日本におけるアメリカの悪しき影響力は学校教育などにも随所に見られた。それはたとえば、原爆に関するアメリカ軍が行った著作、報道への厳しい検定、監視など、歴史的事実の隠蔽や歪曲などとなって戦後まもなく表面化していた。
戦後日本の新制高校がアメリカのハイスクールをモデルにして構想されていたように、日本の戦後改革は良くも悪くもアメリカの一方的な指導によるものが多かった。とりわけアメリカの占領下に置かれていた時代、憲法制定を中心に多くの政策にはアメリカの都合に合わせて強引に策定されていった側面があることは決して否めない。
戦後80年、確かに日本はアメリカへの屈辱的な従属を見直すべきタイミングに来ているだろう。しかし、だからといってひめゆりの塔の資料館における展示がアメリカ側に寄り添う方向での「歴史の書き換え」と見なすのはいかがか。そこには沖縄の歴史と現状への認識に大きな欠落が感じられるがいかがだろう。
とりわけ他の地域と違い、1972年までアメリカによって占領され続けた沖縄では、アメリカへの従属が長期期間に及んだため、当然のことながら生活・風俗の面にまでアメリカの強い影響が残存している。しかも現在、なお多くの米軍基地が沖縄に集中していることをも考え合わせると、沖縄におけるアメリカの影響力の強さを、あたかも沖縄県民の責任に帰するかのような西田氏の発言は、あまりにも皮相であり、決して許容できるものではあるまい。
加えて薩摩による琉球侵攻や明治期の琉球処分など、いわゆるヤマトンチュによる弾圧と差別にさらされてきた沖縄の歴史をも考慮すれば、西田氏の発言は沖縄県民にとって許容できないレベルの暴言に過ぎない。しかも最近、リニューアルされたばかりのひめゆりの塔資料館を現地に居ながら訪れようともしていないほどに不勉強で不真面目な人物が、昔の訪問時の印象だけを元に「上から目線」の批判的な言動を弄した点も、軽率の誹りを免れまい。
こうした言動はかえって多くの沖縄県民のヤマトンチュへの反感と不信を強めて日本の分断を招き、結果的に中国が付け入るスキを生み出し、習近平を利するだけではあるまいか。とても日本の国益を重視する右翼の立場とは思えない噴飯物の妄言であり、むしろ日本の国益を大いに損ねる言動、と評すべきだろう。
〇自民県連、西田昌司参院議員の発言に抗議へ
沖縄タイムス公式動画チャンネル 2025/05/07 0:57
当然のことながら、西田氏の発言に対して自民党沖縄県連もまた強く反発。
〇琉球新報と沖縄タイムスによる批判記事に反論する!歴史観の喪失は沖縄だけでな
く日本全体の問題である!(西田昌司ビデオレター)
西田昌司チャンネル 2025/05/07 19:36
戦後、アメリカから押し付けられた側面を持っている現憲法を改正すべきなのは確かだろうが、どこをどのように改正すべきなのかは人によって相当異なるはずだ。現憲法に対する評価もまた一律ではない。
西田氏はひたすら憲法の制定過程などを論拠に憲法改正を主張し、その文脈の中で戦後、沖縄における平和教育とひめゆりの塔の資料館の展示を批判しているようだ。しかし憲法改正の主張と沖縄の平和教育の在り方への批判とはいったん、切り分けて考えた方が良いだろう。どちらも相当根深くて複雑な経緯、問題を抱えている。
双方の間に深い関連性があるのはもちろん事実である。しかし双方の問題をたかだか20年ほど前の資料館訪問時の個人的印象、主観を混ぜこぜにしていっしょくたに論じるのはあまりにも乱暴過ぎるのではないか。
アメリカ軍は沖縄を日本軍の支配から解放し、沖縄に民主主義と平和をもたらした恩人である…といったような一面的過ぎる認識を沖縄県民の多くは持っていないだろう。むしろ沖縄を占領したアメリカ軍が「銃剣とブルドーザー」で強制的に住民から土地や家を奪い、基地を建設した事、アメリカ兵による住民への犯罪がやまない事…など、アメリカへの反発を持つ住民は少なくない。
他方で日本軍によって避難先のガマから追い出されたり、スパイとして処刑されたり、集団死を迫られたり、鉄血勤皇隊やひめゆり部隊のように戦場へ動員されて犠牲となった住民も数多くいた。戦後は戦後で、出稼ぎに出た神戸や大阪、川崎などでナイチャーから差別されて嫌な思いをしたウチナーも少なくあるまい。
沖縄県民からすればアメリカ、日本ともに醜悪な加害者としての同じような側面を隠しもっており、どちらに対しても県民は複雑微妙な感情を抱いているのだろう。少なくとも単純に日本軍を美化する、あるいは逆にアメリカ軍に感謝する、といった人々が沖縄県民の多数派だとは決して思えない。
一方で西田氏は中国による尖閣などへの露骨な介入を断固、排除すべく、自衛隊基地を沖縄に増設したいとの考えをお持ちなのだろう。同時にひたすらアメリカに従属してきた戦後日本の現状を批判するあまり、旧日本軍や自衛隊を美化し過ぎてはいないだろうか。ヤマトンチュの視点からだけではなく、沖縄県民の立場から近代以降の日本の政治がどう見えていたのか…そうした沖縄に寄り添う視点を彼が十分に持てていたとは到底、思えないのだが。
この動画も西田氏は醜い自己弁護と沖縄の報道機関への批判に終始しているが、彼の発言に沖縄県民の猛烈な反発を招いた部分があることは決して否定できまい。ただちに問題となった発言を撤回して沖縄県民に謝罪すべきである。
◎阿波根あずさの【沖縄ダークツーリズム】沖縄戦で亡くなったひめゆり学徒隊の慰
霊碑「ひめゆりの塔」を圧倒的な情報量でわかりやすく解説します!
沖縄観光/糸満2021/06/27 23:04
◎イラストに描かれた「ひめゆり」 あの戦争の臭い・湿気…届くか
2021/05/13 毎日新聞 3:11
リニューアルされた館内の様子が分かる貴重な動画。
○【ミス沖縄と巡るひめゆり平和祈念資料館】〜沖縄戦を体験した10代のひめゆり学
徒隊〜ミス沖縄のおきなわ観光TV 2021/06/04 14:35
リニューアル後の展示を解説付で確認できる。
◎【沖縄戦】糸満・ふじ学徒隊と「ウッカーガマ」「糸洲第2病院壕」沖縄戦避難壕
(ガマ)をまわる・・轟の壕の後編 2022/03/30 街歩きokinawa 15:07
以下、ウィキペディアの記述などを要約
ひめゆり学徒隊とは、1944年12月に沖縄県で日本軍が中心となって行った看護訓
練によって作られた女子学徒隊のうち、沖縄師範学校女子部と沖縄県立第一高等女学校の教師・生徒で構成されたものの名前。通称としてひめゆり部隊やひめゆり隊と呼ばれることもある。他に白梅学徒隊・なごらん学徒隊・瑞泉学徒隊・積徳学徒隊・悌梧学徒隊・宮古高女学徒隊・八重山高女学徒隊・八重農学徒隊の8つの学徒隊が存在。
ヒマユリ学徒隊の母体となった沖縄県女子師範学校(女師/1943年4月に師範学校教育令の改正に伴って沖縄師範学校女子部へ改組)と沖縄県立第一高等女学校(一高女)は、設立当時の沖縄県の財政事情から併設校とされ、校長および一部の教師は兼任であった(西岡一義師範学校女子部長は一高校長)。そのため、校名は異なるものの、実質的には一つの学校に近いものであったという。
名前の「ひめゆり」とは花の「ひめゆり」ではなく、沖縄県立第一高等女学校(一高女)の学校広報誌の名前「乙姫」と沖縄師範学校女子部の学校広報誌の名前「白百合」を併せて出来た「姫百合」という名称が由来である。元々は安里川にかかる粗末な橋から転落死した一高女生徒を悼み、昭和初期に安全な橋に掛け替えられた橋に「姫百合橋」と名付けられたことが起源で、1940年代には女師および一高女の学舎が「ひめゆり学舎」と呼ばれるなど、両校の通称として「姫百合」の名が定着していたようである。
米軍の沖縄上陸を目前に控えた1945年3月23日、両校の女子生徒222人と引率教師18名の合計240名からなる学徒隊は、沖縄陸軍病院(通称・南風原陸軍病院)に看護要員として動員された。沖縄陸軍病院は沖縄守備軍(第32軍)の直轄で、本部、内科、外科、伝染病科に分かれており、40近くの横穴壕の土壁に2段ベッドを備え付けて患者を収容した。米軍が上陸して前線の負傷兵が増加するのに伴い、内科は第二外科に、伝染病科は第三外科に変更され、那覇近郊の一日橋、識名、知念半島近くの糸数に分室がおかれた。学徒隊は全員が分散配置された。
しかし、敗色濃厚となった6月18日に突然解散命令が出され、翌日の6月19日をはじめとする約1週間の間に多数の犠牲を出した(死亡者のうち実に80%がこの間に集中している)。最終的には教師・学徒240人のうち136人が死亡。そのうちの10人(教師の平良松四郎と9名の生徒)は荒崎海岸で集団自決している(自決の強制性については論争あり)。また隣の洞窟でも米軍の銃乱射で3名が死亡、3名が重傷を負った。
2004年現在、沖縄戦で亡くなった女師・一高女の人数の内訳は以下のとおりとされている。なお、<その他>は沖縄戦開始後に陸軍病院動員以外で亡くなった人(他の部隊に協力中、学徒隊への参加途上、家族と共に避難中など)を指す。
理由 人数 累計
沖縄陸軍病院動員 136 136
対馬丸事件 1 137
弾薬輸送列車で爆死 2 139
その他 80 219
対馬丸事件 1 220
その他 6 226
戦後、最大の犠牲を出した伊原第三外科壕跡に慰霊塔である「ひめゆりの塔」が建立された。これは、ひめゆり学徒隊を祀り、平和を願うものである。
◎沖縄戦、閲覧注意 鳥になった少女/山羊になった少女
sanzoku san 2015/08/10 13:58
「動画のなかで記したきっかけで、これは生まれました。インスピレーションから書いたもので、取材や、下調べをした物ではないので、フィクションとして理解してください。ただし、その後の調べで、現実から乖離した物ではない事も確認しました。自分は沖縄の人間ではありませんが、沖縄から沢山の物を貰った恩返しの気持ちも込めてUPさせて頂きました。UPのために、高校生の時からほっといたギターを取り出して練習しました。続編のBGMも自家製です。PS.内地人の自分は,ひめゆりと直接関係は無いと思っていたのですが、師を同じくする大先輩がひめゆりの美術教師をしていた事を知りました。また、ダイビングで偶然訪れた大渡海岸の崖下で戦時中の遺骨を回収する体験もしてしまいました。」と動画の解説欄にある。したがってこの作品は沖縄出身者ではない人が空想して作ったものであるらしい。
しかし「なーんだフィクションなら、視聴するだけの価値は無い…」と作品を視聴する前からその価値を断じてしまって良いのだろうか?ここでは「島唄」に対する一部のウチナーンチュからの反発も踏まえつつ、こうしたフィクションが果たすプラスの役割についても考えてみたい。前半の悪臭漂うガマに潜伏する辛さに対する迫真の描写は臭いが記憶喚起力を刺激することも手伝って忘れがたい印象を残すだろう。
なお、視聴する際にはBGMが邪魔になると感じられる箇所もあるかと思う。音は最初からカットしておいたほうが字幕に集中でき、より一層、想像力を刺激されるだろう。また場面の切り替わりが早すぎて字幕を読むのが間に合わない箇所がかなりある。設定をクリックして再生速度を「0.5」にしておくと良いだろう。標準の再生速度で「12分11秒」あたりで字幕は終了するのでそこで視聴を終わりにしても鑑賞上は何ら問題がない。個人的にはBGMや終わりの1分以上続く沖縄の風景をカットすればこの作品の文章、悪くはないし、多少なりとも迫真的な描写力を感じられるが、いかがか。18万回の視聴回数にはそれなりの理由がありそうである。
ただし字幕には多少の間違いがあり、要注意。「ウグシク」は「グシク=グスク=
城」、「ユイグムイ」は「イユグムイ=魚の住む池=龍潭池」に訂正しておきたい。
なお過去の沖縄修学旅行などでの写真・動画の蓄積があり、パワーポイントの操作にある程度の経験がある教師ならば、こうした作品をいくつか生徒たちとともに制作して次年度の事前学習の利用に供したり、文化祭などで発表することは十分に可能である。また修学旅行で訪れた戦跡や観光地の解説動画を生徒たちに作成させても良いだろう。その際にはグーグルマップなどの機能を駆使して距離や想定される移動時間、ストリートビューのスクリーンショットなどを利用すればたとえ自分たちの写真素材の蓄積が少なくともそれなりに臨場感のあるパワポ資料が出来るはず。生徒たちにとって生涯の記念となる作品ができるかもしれない。
以下に紹介する「ひめゆりの願い」はかなり情緒的な内容でいかにも紙芝居的ストーリーではあるが、フィクションとしての総合的な完成度はそこそこ高く、曲自体は悪くない。人物の名前や髪型は今風のものだが、非常によく考えられ、工夫された動画であり、作詞作曲も悪くない。配信されてから10年以上経っても決して古びない確かなメッセージ性を秘めていると感じる。この動画作成に二人がどれだけの努力と工夫を要したかは以下に示した「祐太郎飯店の円卓」と称するブログによって推察できるが、ブログの記述内容の一部に多少の思想的違和感を感じるかもしれない。
※ブログ「祐太郎飯店の円卓」(2015.7.2「ひめゆり五周年感謝増刊」)
http://taxi-adam30.at.webry.info/2015...
◎ひめゆりの願い -Our memories of lily- YutaroHanten
2010/05/21 9:15
◎戦争からさらに遠くなった世代へ その記憶をつなぐために 「ひめゆり資料館」
展示リニューアルの背景とは 2022/06/28 関西テレビNEWS 8:15
・「ひめゆり看護隊/散華の海」糸満・荒崎海岸~魂魄の塔~ずいせんの塔~平和の
創造の森公園~山城うりぐち・沖縄戦・ひめゆりの塔・ 2022/05/25 街歩き
okinawa 21:59
・沖縄戦を追体験…戦時中の「病院壕」の臭いを再現(NHK,QAB,RBC)
2015/01/23
臭いの記憶喚起力を利用した興味深い試み。
◎戦世から80年 つなぐ記憶 「自分ごと」として継承に取り組む高校生
(沖縄テレビ)2025/6/12 沖縄ニュースOTV 2025/06/13 8:20
自分事として平和学習を成立させる上で必要なこととは何だろう。動画における首里高校の取り組みでイマイチ見えてこない側面がある。80年前の出来事に対して今の高校生が当事者としてどのように行動するのかを問うことは、確かに平和学習を自分事にする上で役立つ側面が少しはあるだろう。とは言え、この想定自体にリアリティが十分あるのか…しっかりと問い直してみたい。多くの場合、今の高校生に80年前の時代をリアルに想像できるほどの知識はまだ無いはずだ。
この取り組みでイマイチ説得力に欠ける点は平和学習をあくまでも過去の出来事の学習に限定して捉えてしまう危険性にあるだろう。平和学習を高校生によりリアルな自分事として捉えてもらうには、過去の問題だけではなく、現在、沖縄が直面している問題をも同時に提起していく努力が欠かせないように思うのだが、いかがか。
たとえば80年前の過去にタイムスリップさせ、アメリカ軍が本島に上陸してきた時に、「あなたならどうする?」と問うだけでは明らかに不十分だろう。続けて、仮に今、中国軍が台湾、尖閣諸島に侵攻してきた、さらには沖縄の各地に侵攻してきたとして、この事態を「あなたならどう受け止め、どう対処するか」をも問うべきではないのか。この二つの問いがセットとなって授業で提示された時に初めて高校生はリアルな自分事として沖縄の平和を考え始めることができるのではあるまいか。
◎[セリフ入りMAD] [cocoon~ある夏の少女たちより~] [W/X/Y]
セナ 2025/05/16 4:33
◎【MAD】『 解 散 命 令 』「 cocoon~ある夏の少女たち~ 」×「 果たせぬ夢 」かた
まゆ 2025/06/18 1:15
上の二つの動画はジブリ出身のアニメーターが中心となって制作されており、様々な場面でジブリ風の描写が伺える。ひめゆり部隊を強く意識して制作されているが、残酷な場面は決してダイレクトに描かれておらず、象徴的な表現にとどめられている。あくまで視聴者の想像力に委ねる展開である。残酷な場面に抵抗感の強い生徒たちには比較的、受け入れやすい内容と手法であろう。解説が必要な箇所は多いので、教師側に知識がある程度は必要となるが、ぜひ授業で視聴させたい名作。
※参考記事
〇少女たちがみた沖縄戦の地獄絵図……衝撃の戦争マンガ『cocoon』で描かれた“想像の繭”というテ
ーマ Real Sound ブック 2025.7.3
〇外国人さん「スタジオジブリ出身のアニメーターが作品を公開したぞ!」→なぜか
大荒れしてしまう...【海外の反応】 ずんぴっく 2025/04/07 9:25
動画視聴後、討論に持っていくなら、この動画が役立つかも。