その1.修学旅行と沖縄観光(後編)

※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。

 

洗骨とユイマール

 

 ウチナーグチで歌われるBIGINの名曲「島人(しまんちゅ)ぬ宝」とは何を意味するのだろう?ヒントとして次の動画(洗骨 予告編)を視聴させてみよう。次に「洗骨」に先立つ2016年に収録された作品を視聴させたい。

【映画 予告編】 洗骨 2019/01/29 KINENOTE映画ライフログサービス  

 2:01

born,bone,墓音。ー born bone boonーwith English subtitles

 OCVB 沖縄フィルムオフィス Okinawa Film Office 20:16

 洗骨という儀式にはどんな意味が、どんな願いが込められているのだろう。沖縄の 人々の心に少し

 でも触れるためにはこの儀式を知らなければならないのかもしれない。視聴時間は少し長いが「洗骨

 は自分自身を洗うこと」というセリフの重みを是非、しっかりと受け止めてみたい。

やっぱり沖縄!お墓で楽しむシーミーとは!?【秘密のケンミンSHOW極公式|

 2019年5月30日 放送】 2023/05/07  13:38

 

 

今帰仁ベンチ 2015/12/24 今帰仁村観光協会 13:21

今帰仁村(なきじんそん)は沖縄県本島北部、美ら海水族館から車で15分程の場所にある、人口約9600名の小さな村です。日本で一番所得の低い沖縄県の中でも、さらに一番所得の低い「日本一所得の低い村」ですが、村民の「自分は幸せだと感じる」という幸福感がとても高い村なのです。

本作品「今帰仁ベンチ」は「今帰仁村大学生アンバサダー事業」の一環で、制作されたショートドラマです。沖縄今帰仁村の人々は、素朴で、温かくて、優しい。このショートドラマのテーマは、そんな今帰仁村の人々にフォーカスしています。都会で働く主人公の「ミサ」はなぜ、遠く沖縄の 今帰仁村へひとりでやって来たのだろうか?そして、ミサはこの今帰仁村で何を感じたのだろうか・・・?

このショートドラマを見たことで、今帰仁村へ行ってみたいな・・と感じていだければ幸いです。」 一般社団法人・今帰仁村観光協会より

https://www.facebook.com/nakijin.tour...

※移住を考えるほどに沖縄大好きなヤマトンチュがいる一方で沖縄から離れる若者も多い。戦前は安価

 な工場の労働力として沖縄の若者が大阪、尼崎、川崎、鶴見などに出稼ぎに出ていて、多い時には年

 間2万人もいたらしい。特に女性は紡績工場の女工として島を離れ、沖縄は「女工王国」と呼ばれて

 いたという。移民に関しては【琉球サウダーヂ】移民の追憶 第一話「移民県沖縄」~第五話「写

 真結婚」(RBCチャンネル 【琉球放送】 2021.11.09)が参考になる。

 

 沖縄の若者の島離れ、特に夫婦や家族、ニービチ=結婚、あるいは沖縄の風習という観点からオススメの動画が短編映画『ニービチの条件 Mother of the groom』(監督:岸本司 沖縄映像コンペティション 2013/06/12 25:49一般財団法人

沖縄観光コンベンションビューロー)。「洗骨」、「今帰仁ベンチ」などとともに沖縄の女性の逞しさと優しさが伝わってくる。

 蛇足になるが沖縄には「さようなら」にあたる言葉が無いという。あるとすれば「またやーさい」(女性は「またやーたい」=じゃあまたネ)。沖縄の人が概して陽気で楽観的であることは間違いないだろう。いずれにせよ、ウチナーの人情は都会の人からすれば暑苦しいほどに濃いし、人と人との間の距離感も鬱陶しいほど近い。

なお今帰仁村は「何もないが・・・」というフレーズを逆手に使って情に厚いウチナーを浮彫りにすることで観光客の目を惹こうという観光戦略をとったが、今や大人気の古宇利島や世界遺産の今帰仁城を擁する沖縄有数の観光地となっている。言うまでもないが今帰仁村に「何もない」わけではない。

【沖縄の風景】沖縄北部!沖縄時間が流れる今帰仁村の共同売店をご紹介 

 2021/05/05 ミス沖縄のおきなわ観光TV「かな散歩」 6:02

 集落が共同出資して営む、「ゆいまーる」の精神に基づいた沖縄特有の売店。特に過疎化、高齢化が進む北部では「買い物難民」問題の解消にも貢献。「ウチカビ」と呼ばれる先祖供養に用いられる冥銭(あの世で通用するお金。中国や台湾でも見られる)が売られている点に沖縄らしさが見られる。こうした地元密着の視点で散歩出来るのが「かなさんぽ」の大きな魅力。

 共同売店について詳しく知りたい方は琉球大学の学生が制作した動画「わったー共同売店 〜100年続く地域の絆2015/08/29 kyodobaiten 13:51」や【琉球サウダーヂ】共同店と集落 第1話~第5話 2021/02/18~ RBCチャンネル 【琉球放送】 各2:30が参考になる。

 なお「琉球サウダーヂ」シリーズは一話が2分30秒という短過ぎる番組構成と動画の間に沖縄トヨタ自動車のCMが入ってしまうため、授業ではまず使えない。しかし史跡と戦争、迫り来る西洋、橋巡り、伊波普猷、沖縄戦海軍の足跡、島々の神たち、移民の追憶・・・といった魅力的なテーマのシリーズがズラリと並ぶ。沖縄を多角的に知りたい教師には必見の番組。2分30秒刻みの番組を次々とつなげて視聴するのはやや苦痛だが、映像や構成は申し分の無い出来であろう。沖縄を多角的に理解したい社会科教師向けとしてはイチオシの動画。

ウェルカムんちゅになろう。/ 「いちゃりば結」

 2015/03/06 一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー 4:49

沖縄県・沖縄観光コンベンションビューローは沖縄を訪れる観光客の皆様をあたたかいおもてなしの心でお迎えしよう!と沖縄県民の皆様へのよびかけとして「ウェルカムんちゅになろう」をキーワードに楽曲を制作しました。

 国内外から訪れる観光客の皆様をうたでウェルカムしようと制作された楽曲『いちゃりば結』 音楽制作プロデューサーは、BEGINの比嘉栄昇氏。幼稚園から小中学校、沖縄古典音楽に携わる方々まで、多くの県民の皆様から沖縄を表す言葉やメロディーを頂き、その思いを紡いでひとつの音楽に仕上げました。

みんなでうたってウェルカムんちゅになろう。」(OCVBより)

 「いちゃりば」は「出会えば」、「結い」は「仲良しになる」の意。「結うた」とは比嘉氏の作った曲に合わせて「○○」とかけて「××」と解く・・・その心は(「しーあん はってい?」)・・・と掛詞を使って即興で皆の力により一つの唄を創り上げる、遊びの要素に満ちた共同作業のこと。一番目を比嘉氏が歌い、二番目以降を4人で歌い繋いでいる。いかにも「いちゃりばちょーでー」の沖縄らしさに満ちた曲。撮影された居酒屋(那覇市牧志の「島唄ライブ鳩間島」)には様々な出自、人種、民族、年齢層の人々が入り混じり、まさに「カチャーシー」「チャンプルー」状態の中で見事な「ユイ」、一体感を醸し出しているのが分かるだろう。以下、一番の歌詞の一部を紹介しておこう。

・・・いちゃりば結やっさ (出逢えば繋がるのですよ) しーゆい、ゆい

結うたさびら    (結うた、しましょう)    はい どうぞ

一年中 うたの島と 

回る宇宙の土星は 結      しーあん はってぃ? (その心は?)

やれほんに 大きな輪 (土星の大きな輪と「おきなわ」とを引っかけている)

はい ゆいやさっさであるはず~

 …「いちゃりば結」の世界には「一揆の時代」とも呼ばれた中世において発展した「一座共感の芸能」に近いものを感じる。つまり連歌、それも滑稽や面白味を追求した山崎宗鑑らの世界に極めて近似した試みと言えるかもしれない。

 17年連続1位…!日本一長寿の村「作業が終わったら野外でビール」長生きの秘訣

   は〝ゆいまーる〟精神   FRIDAYデジタル によるストーリー 2024.3.24 

  北中城の取り組みに平均寿命が伸び悩んでいる沖縄の健康問題改善への糸口が見えてくるだろう。

 

 ユネスコの世界無形文化遺産に指定(2010)された組踊りは玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)が清国の冊封使(さっぽうし)を迎えるに当たり、ヤマトの能や狂言、歌舞伎、中国の京劇などの要素を取り入れて創作(1719)したもので、そこにも中世由来の「一座共感」の世界が感じられる。また若者に人気のエイサーは元来、お盆の行事として生まれてきており、ヤマトグチで言うところの「盆踊り」に相当する。そして盆踊りは中世の「念仏踊り」に起源の一つが求められると言われている。

 島人(しまんちゅ)の心は戦乱の世に明け暮れた厳しい時代の中で民衆が連帯して自分たちの村を必死に守ろうとした中世における「一揆」の精神を色濃く受け継いでいるように思えるのだ。それは近世以降、一方的な薩摩藩による侵略と支配、明治以降では日本政府による差別的、植民地的支配、戦後はさらに米軍による苛烈な占領下に置かれるという過酷な歴史の連鎖がもたらしたものなのかもしれない。そうした点では有名な「コザ暴動」(1970:コザ市民による反米暴動)もある意味、現代における「土一揆」あるいは「惣百姓一揆」の再来なのかもしれない。

 沖縄における助け合いの精神は「ユイマール」と呼ばれる。「結」=絆=連帯の精神は那覇と浦添を結ぶモノレールの名前「ユイレール」の由来であり、「いちゃりば結」の掛け声「ユイ、ユイ」も、もちろん「結」に掛けている。そして宴会の締めに欠かせない「カチャーシー」という踊りは老若男女、すべてかき混ぜて一体化させてしまう沖縄の心を体現したものであろう。こうした一座連帯の芸能を通じて沖縄では現在もなお共助、共生のユイマール精神が培われ続け、たとえ深刻な貧困や基地問題を抱えていても高い水準でウチナー達の幸福感を維持してきたに違いない(都道府県別幸福度調査では沖縄が一番、幸福度が高い)。

 さて、ここで改めて比嘉氏の掛詞を振り返ってみよう。「一年中、うたの島」と掛けて「回る宇宙の土星」と解く、その心は「大きな輪・・・おきなわ」。このダジャレ自体は沖縄の大手スーパー「ユニオン」のCMでも使われていて沖縄ではすっかりお馴染みのダジャレ。従って比嘉氏が創作したダジャレではないが、このみんなが熟知しているダジャレを「一年中、唄の島」と「回る宇宙の土星」から敢えて導き出したところに「いちゃりば結」の歌詞としての意義が見出されるだろう。

 長年、苦心して作り続け、唄い続けてきた幾つもの唄で大勢の人々の心を繋ぎ、「大きな輪」=「大きな結」を作ろうとしてきたBIGINの切なる思いがふんわりとユーモアに包まれて見事に表現されている・・・ダジャレとは言えなかなかの傑作。この唄、2015年に発表されているが、もっとヒットさせたい、今後もずっと残しておきたいウチナーポップ(沖縄ポップス)の一曲であると思うがいかがだろう。

※沖縄本島中南部の方言を「ウチナーグチ」と呼び、沖縄県全体の方言を「シマクトゥバ」と呼ぶ立場

 もある。いずれにせよ学校教育によって明治以降、方言札によって一方的に標準語が強制されてきた

 結果、沖縄の若者の間で発音が怪しい人が増えてきたという。確かに時折、唄の発音にも微妙なとこ

 ろが感じられないわけでもない。