黒猫絵本「BLACK CATS STORY」から抜粋「No.7ハリーとケーン」の巻 | チンピラ詩人カオルの戯言

チンピラ詩人カオルの戯言

新しい可能性のために

レインハウスという場所で詩人と黒猫レインは楽しく暮らしていました。

ひなたぼっこをしたり。ふざけっこをしたり。同じ夢を見たり。

ところがある日。レインは窓の外に飛んでいるシャボン玉を追いかけて

そのまま詩人に内緒で冒険の旅に出かけました。

目が醒めて詩人はビックリ。

心配になった詩人はたくさんの探偵を雇い世界中にチラシを配りました。

 

 

「黒猫レインを探しています!!

 体重4kgのグリーンの瞳の黒猫です。

 発見者にはビッグな謝礼を。

 またひとりでは寂しいので

 なにか事情があるワケありの黒猫さんも大歓迎です。

 カツオフレッシュパック食べ放題です」

 

これはレインハウスを訪れた「ワケありの黒猫たち」のお話です。

 

 

No.7 「ハリーとケーンの場合」

 

ハリーとケーンがレインハウスにやって来たのは大雨の夜でした。

「おーい。詩人っているかー?」

「よーい。黒猫ハリーと黒猫ケーンがやって来たぞー」

 

詩人は門を開けました。

「どうした?こんな大雨の日に。

 ずぶ濡れで風邪をひくから早く中に入んな」

「ふん。こんな雨ぐらいどうってことないぞ。

 オレたちは嵐の夜に生まれたんだ」

「そうだよ。大雨なんてへっちゃらだよ」

「そうか。オマエらすごいんだな」

「なあ。詩人てアンタか?

 カツオフレッシュパック食い放題なんだろ?」

「20億円も食べ放題なんでしょ?

 張り紙に書いてあった」

「ああ。でもオレが探しているのは黒猫レインなんだよ」

「レインもハリケーンも雨降りという点では同じさ」

「そうだよ。おんなじ黒猫だしね」

「ふむ。オマエらは女の子かい男の子かい?」

「オレたちはオトコだよ」

「そうだよ。僕らはオトコの中のオトコだよ」

「はははは。そうか。レインは女の子なんだぜ。

でもいいよ。かまわないよ。ずいぶん強そうな黒猫兄弟だ。

いっしょに暮らしたら楽しくなるだろうさ。

ようこそレインハウスへ。みんなに紹介するよ。大歓迎だ」

 

 

ハリーとケーンは嵐の夜に生まれたせいか

大雨なんてへっちゃらでワクワクします。

水たまりで泥遊び。泥だらけの脚でピカピカの外車の上をトコトコ。

「あー。悪い黒猫め。またオレのベンツを汚したな!」

 

ある金曜日の夜。

「ねえケーン。あそこのマンションがもうすぐ完成するよ」

「そっか。セメントがちょうどいいかもな」

「今夜は僕が先にセメントぷにゅぷにゅしてもいいかなあ?」

「もちろんだよハリー。この前はオレが先だったからな」

3日後の月曜日。

すっかり固まった猫の足跡コンクリートを発見して親方はカンカン。

「ったく悪い黒猫兄弟め。仕事が増えて困るじゃないか!」

 

「ねえケーン。夢川さんちの軒下にでっかいお団子があったよ」

「それは妙だな。夢川のジジイは大の猫嫌いだ。罠だよ。危ないぜ」

「そうかなあ。おいしそうなお団子なのに」

「ハリー。オマエ先週さ。夢川のジジイの盆栽で爪ガリガリしただろ?」

「うん。見つかって将棋の駒投げられた。よけたけど」

「それだ。きっと毒入り団子だぜ」

「じゃあおいしくても死んじゃうね」

「そうだ。ヤバイよ。絶対に危険だよ」

 

「ねえケーン。最近エサくれる人が減ったね」

「そうだな。猫嫌いの夢川のジジイが町内会長で地主だろ。

野良猫撲滅運動にはりきっているからな。

みんな頭があがんないんだよ。逆らったら立ち退きだからさ」

「お腹すいたね」

「オレたち悪さばっかしてるからしょうがないよ」

「どっか別の町へ行かないとダメかなあ」

「そうだな。潮時かもしんない」

 

ある大雨の夜。電柱の張り紙をふたりは見つけました。

「黒猫レインを探してます。レイン発見者にには20億円の謝礼。

 また情報提供者にはカツオフレッシュパック食べ放題。

 レインハウスの詩人へ連絡ください。

 ワケありの黒猫も大歓迎です」

 

「おいハリー。ここへ行こうぜ」

「うん。行こう。20億円が食べ放題だね」

「フレッシュパックも食べ放題だしな」

「でもレインじゃなくてもいいのかなあ?」

「いいんだよ。オレたちは黒猫だから」

「詩人てどんな人なのかなあ?」

「詩人ってのはどこの世界にいっても変人て相場が決まってる。

でもな。詩人てのはなぜか猫が好きなんだよ」

「じゃあだいじょうぶだよね?」

「たぶんな。もし猫嫌いの詩人だったら」

「だったら?」

「そいつはニセモノだ」

 

そんなこんなでハリーとケーンはレインハウスで暮らすようになりました。

ふたりは用心棒のようにレインハウスをパトロールする仕事をやりました。

「おーい。ゼリー。泥んこ遊びのあとはちゃんと脚を洗うんだぞー」

「よーい。ロボくん。セメントぷにゅぷにゅしたら親方が困るからダメ!」

 

ふたりが「20億円というのは食べ物じゃない」と知ったのは

レインが帰ってきて黒猫が100匹になった後のことです。

 

おしまい。

 

 

こんなお話が7話収録されています。

この絵本が欲しい人は3つの方法があります。

 

1 カオルに注文メール。送料税込1500円。

  kaoxrain@gmail.com

 

2 世田谷区の猫店員のいる猫本専門店。

「Cats Meow Books」で購入。ぜひご来店ください!

  https://twitter.com/CatsMeowBooks

 

3 福岡の猫絵本専門店「吾輩堂」で購入。

  web https://wagahaido.com/

 

売り切れ間近! 再販予定なし!

 

絵をもっと見たい人は↓

 

 

 

ヨロシコ。