借りました。短編集でした。
タイトルは逆だけど「毒親」がキーワードなのかなぁ? と思いながら読みました。
マイディアリスト
親愛なるあなたへ、と言う意味だそうです。
淑子が妹の有紗についての語り。どうやら妊婦の妹が殺されて警察での事情聴取のようです。
これがまた、なんとも、悲しい。
母親が妹を贔屓しまくって姉に辛く当たるんですよ。そして妹も姉を馬鹿にする。この母親が毒ですね。ひどいわ。これは姉も歪むわ。
大学卒業して就職したけど無職になってしまった淑子。出産のために里帰りしてきた有紗のために運転手をしたり買い物に付き合ったりしてあげたのに、有紗は40過ぎても処女の姉を小馬鹿にして、とうとう淑子に撲殺されてしまいました。
他の2人の妊婦を殺したのも淑子なのかな。そして淑子は自分が罪を犯したことを自覚してないようなので、逮捕起訴されても精神疾患有りになりそう。
親愛なるあなたって、誰から誰へ?
ベストフレンド
脚本家を目指す漣(さざなみ)涼香の語り。とある賞で最優秀賞をとった大豆生田(まみゅうだ)薫子と、優秀賞を受賞した涼香と直下(そそり)。自分の作品の方が薫子のものより出来が良いと思いながらも、薫子を励まし脚本家としてデビューできる日を夢見て頑張る涼香。
薫子は順調に脚本家として名を挙げていくんですけど、ところどころ薫子に対する暴言が挟まるんですよ。これは涼香がSNSでドス黒い気持ちを発言してるんだろうな、なんて思いながら読んでましたけど、違いました。涼香は薫子に負けじと頑張っていました。
薫子殺害予告が書き込まれ、薫子は涼香が犯人だと思い警護を依頼。空港にやってきた涼香は純粋に薫子に会いにきただけで、SNSに殺害予告を書き込みしたのは直下でした。涼香は薫子をかばうように直下に刺されて死亡。
直下の存在を忘れてましたので、私も薫子同様に騙されましたわ。
珍しい苗字ばかりだけど大豆生田以外は変換できた。
罪深き女
無差別殺人事件を起こした犯人・正幸について語る、幸奈の語り。
幸奈は正幸が幼い頃同じアパートに住んでいました。
正幸は母親からネグレストされていて、母親の恋人が来たら家を追い出され、ろくにご飯も食べさせてもらえない可哀想な男の子。てことで世話を焼いた時期もあったんだとか。
それよりも、幸奈の母親の毒親っぷりがまた酷い。男女交際禁止、自分は高学歴、死んだ夫も高学歴!と幸奈の友達関係にもマウンティング。いや〜こんな親いやだわ。
ある夜2人の住むアパートが火事で燃え、正幸と幸奈の母親は死亡。幸奈は正幸が自分のために火をつけたのだと確信していた。
ところがどっこい、正幸が言うには、DVなんか受けてなかったと。母親の彼氏は優しいし、再婚も決まってた。だけど何者かに母親が襲われ顔に傷が残り恋人の誹謗中傷がばら撒かれ結婚話がなくなり、そこからDVが始まったらしい。そしてどうやら正幸の母を襲ったのも誹謗中傷したのも幸奈の母親のようですよ。やりかねん。
自分より格下のシングルマザーが再婚なんて! て思ったのかね。恐ろしいね。幸奈は、自分が正幸を助けたから大勢の人が殺された、と悲劇のヒロインぶってましたが、正幸は幸奈のことなんかこれっぽっちも覚えてませんでした。残念。
優しい人
誰に聞いても「優しい人」と言われる友彦が殺された。一緒にいた同僚の明日美が殺したと思われる。
とにかく友彦が人畜無害で良い人だと褒め称えられるエピソードの間に明日美の語りが挟まれるんですけど、明日美の母も毒親でした。自分の思う通りに子供を動かそうとして、子供の意見も聞いてもらえない。明日美が可哀想でした。
でも恋人ができてようやく母親からの呪縛を解かれて、就職して順調だったのに、そこに現れたのが会社の先輩の友彦。こいつ、悪質なストーカーでした。明日美が優しくしてくれるから好意があると勘違いしたんでしょうね。明日美の悪評だけでなく恋人についても有る事無い事拡散させて、明日美を追い詰めてましたよ。明日美もそれに気づき、どうしたらやめてくれるか聞いたら一緒にBBQに行きたいとな。そして「彼氏の会社の顧客情報を彼氏が漏洩したようにしちゃうから、結婚してくれる?」だって。馬鹿じゃないの。これは刺し殺したくなる気持ちわかるわ。
友彦の気持ち悪い部分が表に出れば良いのに。明日美がレコーダーで友彦の発言を残してくれていたら良いのに。なんて思いました。ほんと、明日美が可哀想だ。
ポイズンドーター
女優の弓香の語り。
幼い頃から母親からの過干渉と縛りがきつくて辛い思いをしていたが、33歳になった今でもいちゃもんつけてくるからやりたい仕事もできない。と愚痴るんですね。うんうん、確かにこの母親も酷いわ。娘が亡くなった夫と同じ職業につくのは当然だと思ってるし、子供の気持ちを考えず自分の主張をするだけ。学生の時は彼氏を作ったらいかがわしいと怒ったくせに、成人したら結婚しろ、て言うのはどうかと思うね。しかしなんで反撃しないの、弓香。役柄だって母親に何を言われても自分で選んで、母親に言葉に耳を貸さなければ良いのに。なんてことも思いましたけどね。
弓香は建前と本音をぶっちゃけるテレビ番組出演にあたり、親友の里穂の母親が毒親で彼女はそれに打ち勝ち親の用意した見合い相手を選ばず恋人と駆け落ちしたエピソードを語ろうと思っていたようです。でも、実際には自分の母親がどれだけ毒親だったか、と語り、それにまつわる本を出版してました。そして毒親と言われた母親は交通事故で死亡してしまいました。自殺では?と報道されているようです。
ホーリーマザー
弓香の同級生・理穂の語り。
弓香の母親の佳香がいかに良い人だったかと言うエピソードがずらり。理穂の義母が佳香と仲が良かったと言うことで、佳香は決して毒親ではない、と理穂のブログに載せろと原稿を渡してきました。これを読むと、まぁ、確かに弓香の母は良い人のようです。でも家族に見せる顔とは違うからな。
ともかく、理穂は弓香が佳香を悪く言うのは違うと思い、週刊誌に手直しした義母の文章をリークしたようです。
あらあら、ですね。
週刊誌を読んでショックを受けた弓香と対峙した理穂。自分の母親は毒親ではないし弓香は母親のことを誤解している、と弓香を否定。本当の毒親とは、マリアの母だと告げるのでした。
ボッチになった弓香がやはりボッチだったマリアと仲良くなったけど、マリアの母が売春婦だったため母に止められてマリアから離れた過去がありました。内緒で仲良くすれば良かったのにな〜と思っておりましたが、マリアも母親によって売春させられていたんですって。更にそのことを婚約者にバラされて自殺。母親は香典を持ち逃げしたらしい。
確かに、これは紛れもなく毒親だわ。
理穂は毒親と言われようと、自分の娘を守ると誓い、弓香と決別するのでした。
どうやら佳香の母が自らトラックの前に飛び出たところを理穂は目撃していた様子。でもこれは本当に見たのかしら? とか思うのは穿ち過ぎかな。
理穂は弓香が被害妄想過多だと思っているようですが、弓香が理穂を誤解していたのと同様、本人以外分からないことだしね。
テレビで毒親持ちを語る前に、母親と大げんかしていればまた違っていたでしょうね。
この本を読んで改めて思ったのは、同じ物事でも人によって見方も感じ方も違うのだな、と言うこと。良かれと思ってのことも、嬉しいと感じる人と迷惑と感じる人もいるし。難しいよねぇ。
でもなんか、この作品シングルマザー率が高い気がした。
そして、小さい「つ」が「っ」ではなく「つ」で表記されていたんですけど、これって前から? それともこの作品だけ?