借りました。思っていたより重くてドンヨリ。

臓器提供と臓器移植、脳死判定等々、考えさせられる内容です。

 

人魚の眠る家 人魚の眠る家
 
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和昌は浮気がバレて別居中で離婚を決めた。そんな時に娘の瑞穂がプールで溺れて植物人間状態になり、脳死判定をして臓器移植を…となった段階で息子の生人の声に反応したため、妻である薫子は離婚を撤回し、瑞穂を自宅介護することにした。

 

和昌の会社では脳と機械を信号で繋いで動かすという、障害者支援になる事業に取り組んでました。部下で若手ホープの星野の手を借りて自宅介護に漕ぎつけましたが、薫子の熱意というか執念というか、瑞穂を思う強い気持ちには脱帽です。

でも、ちょっとやり過ぎ。

瑞穂に横隔膜ペースメーカーを入れて自分で呼吸できるようにしたり、電気を流して筋肉を動かしリハビリさせたり等で、バッと見は普通の女の子が寝ているだけ、状態まで回復させました。薫子の努力は凄いけど、ちょっとやり過ぎ。

生人の入学式に瑞穂を連れて行ったお陰で生人が苛められたことか分かったときに、薫子が「みんな瑞穂を死んでると思っているのか」と怒り爆発させたシーンはなんとも考えさせられますね。

警察を呼んで「今私が娘を殺したら私は殺人犯になるのか?」と問うんですよ。既に脳死と判定されて死んでいるというのであれば、娘を刺し殺しても殺人犯にはならないのでは?てことを警察官に尋ねるわけです。これには警察官も応えられませんわな。

 

医者は脳死判定をしたけど、それならなぜ瑞穂は成長するのか? 薫子は瑞穂が生きていると確信しているけど、和昌は疑問視してたり、薫子が教師の名前を借りて「海外で心臓移植をする少女を救うため」の募金活動に参加したり、なんてエピソードもありました。

海外での心臓移植が高額なのは、ほとんどが心付けなのは知っていました。現地で移植を待っている子どもを飛ばして金を積んだ日本人が移植を受けていることに反発があることも描かれています。ほんと、国内で解決できれば良いことですよね。でも、大人でも本人が「臓器提供したい」と意思表示していても、家族が反対して提供できなかったりってこともあるし、ましてや子供であれば尚更「体を切り刻まないで」と思う親の気持ちも分かる。

何とも悩ましい。

 

事故に遭ってから3年数ヶ月後、寝ていた薫子の元に瑞穂が現れて別れを告げたそうです。そこで薫子は瑞穂の死を受け入れ、再度脳死判定を受けて臓器提供をすることを決意しました。

脳死判定後に出る死亡診断書は4月1日になるけど、薫子は瑞穂が声をかけた3月31日が命日だと主張。医者にも、瑞穂がずっと脳死状態だったなら死亡日は事故に遭った日では無いのか?と問うわけですよ。これは正解が出ないですよねぇ。

物語の始めに、瑞穂の家の近所に住んでいた少年が寝ている瑞穂の姿を見て恋心を抱くのですが、瑞穂の心臓はこの少年に移植されたようです。驚きのオチでした。

瑞穂の医療費のために離婚をしなかった薫子と和昌でしたが、その後どうなったんだろう。生人のためにもなる選択をしてくれていれば良いのだけど。

 

 

余談ですが、私は骨髄移植してるし白内障の手術もしているので臓器提供したくても向こうから断られるんじゃない?開いてみたら使えなくて外科医が怒るんじゃない?と思っていました。

でもお医者さんに相談したら「臓器提供の意思があるなら、その旨意思表示してくれれば問題ない」と、そこまで考えなくても大丈夫と言われ、臓器提供の意思表示をしています。
そういえば、献体希望者が増えているそうですね。ひとり暮らしだと葬儀を出すことも難しいかららしいですけど、それだけ身寄りの無い人が増えているということなのかしら。