ところでそのTV番組というのは、NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』という番組だった。 初めて見る。 最初は爪を切りながらただTVを流し付けていた状態であったが、気がついたら無我夢中でその番組を見ていた。 昨日の特集はコンピューター研究者『石井 裕』さんだ。

石井さんは現在、ボストンにあるマサチューセッツ工科大学(MIT)の教授である。 長い研究の末、コンピューターに直接絵や文字を書いて認識させるという技術を生み出した偉大な人である。 その成果を買われてMITの教授として招かれた訳だが、当初先輩研究者にこんなことを言われたそうだ。
『日本でやって来た事、実績その他一切を捨てろ。そして自分のアイデアを再起動させ成果を生み出し続けなくては、この天才ばかりが集うMITの研究者の壮絶な戦いに生き残れないぞ!』と。
その方が言うには、『日本人はとにかく"継続"ということに最も価値を置き、自分のやってきたこと又は人が開発した事に進化をさせて評価を得るという人種だ。だがそんなやり方からは絶対に斬新なアイデアは生まれない!!!一旦、真っ白な自分に戻り、そこから今までの自分の発想にはなかった、斬新な独自のアイデアを悩みに悩み抜いて重圧なプレッシャーの中、生み出せ。』 と言われたそうだ。プレッシャーを快感と思える様でなければ生き残って行けない、と。最初はそんなことを言われて石井氏も驚いたという。 『今までに苦労して積み上げて来たすべてを捨てるだ!?』 そう思うのが普通だろう。 石井氏は番組の中で強い眼力でこう言っていた。
『ものすごい屈辱感、悔しさを味わった時が飛躍するチャンス。 こういう気持ちになった時でないと人間、自分でも想像出来ない様な底力が出て来ない。僕は凡人だから、新たに斬新なアイデアを生み出すこの17年間、人の何倍もの努力をして悔しい思いもしやっと認められるから、天才と言われる人達が本当に羨ましいと思う時がある。 日本にもアメリカにも"出る杭は打たれる"という諺があるが、しかし"出過ぎた杭は誰にも打たれない"という信念がありその為に日々寝る間も惜しみながら人の2倍働き、揺るぎない3倍の成果を出す様に自分に課している』のだそうだ。
大学院の生徒に対しても石井氏は手厳しい。『why?』という問いかけに具体的なビジョンをもってきちんと答えられないまでは、そのアイデアは十分に練られていない証拠という。アイデアを磨き、インパクトをより強くして行く為には、そこまで問いつめられても揺るぎがない程自分自身の生み出したアイデアがクリアでなくてはいけない。研究者は自分の考えたアイデアを愛する。しかし、そのアイデアを本物の技術にまで高めるためには、そのアイデアを客観的に見つめる視線が必要だと石井氏は考える。そこで、最も大きな壁になるのが「自分自身」だ。自らのアイデアにプライドを持つ研究者たちにとって、弱点を認めるのは難しい事だ。しかし、自らのプライドを捨て、自分に打ち勝つために、石井はあえて厳しい言葉をぶつける。
私は去年の今頃、松尾明さんに全く同じ事を言われたのを思い出し、ちょっと鳥肌が立った。 去年以来、その事でもうずっと考え悩み抜いている。試行錯誤はまだまだ続いているが、このタイミングでこの番組を見れたのは、私にとってとてもタイムリーで大きなメッセージであった。
そして石井氏が番組の最後に語った、彼の思う『プロフェッショナル』とは?
自分がこの世からいなくなった後、その未来の世界にどういう良い影響を与えられるか、インパクトを残せられるか。そこまで真剣に考えられる人だと思います。
素晴らしい!!! I strongly agree!