水木しげる 神秘家列伝 其ノ参 其ノ四 | Talking with Angels 天使像と石棺仏と古典文献: 写真家、作家 岩谷薫

水木しげる 神秘家列伝 其ノ参 其ノ四

 以前御紹介した神秘家列伝の其ノ参 其ノ四です。其の壱、其ノ弐でかなりハートを鷲掴みだったので、続編読んでみました。
 紹介されている人物は、出口王仁三郎、役小角、井上円了、平田篤胤、仙台四郎、天狗小僧寅吉、駿府の安鶴、柳田国男、泉鏡花。 みんなめちゃ面白いです。

$『Talking with Angels』西洋墓地の天使像 : 岩谷薫-10_4_23_1 一番印象に残ったのが、柳田国男さんです。『遠野物語』は以前読んだことあるけど本当に面白いヨ。国男さんの、子供の頃の狐のエピソードが怖かったよ。
 隣の家の下男が畑に作った狐の穴を埋めてしまったんだけど、翌日、国男少年が畑に行ってみると、そこには恨めしそうに、隣家を見つめる狐の夫婦が… とたんに国男少年は金縛りにあったそうです。
 すると恐ろしいことに、隣の下男が突然狂いだして、刀を振り回し、隣家の主人を斬り殺してしまった!そ、う、な…。 怖ェ~!!

 水木さんの狂人の絵がまた怖いんですよぉ…以前、御紹介した『猫楠』でも、熊楠の息子が狂ってしまい、熊楠の粘菌のスケッチや文献をビリビリに破いてしまうシーンがあるんだけど、あのシーンもめちゃ怖い! 狂人には太刀打ちできませんからね…妖怪より断然リアルなので、よけいに怖い。 後年、熊楠の娘が語っているらしいのですが、熊楠が声をあげてオイオイ泣いているシーンは、生涯の内でその日だけだったらしいです。
 そりゃ、愛している息子が狂って、自分の大切な文献を破るなんて、筆舌しがたい苦しみだよね……。 きっと熊楠の天才ぶりは、常に狂と紙一重で、息子さんは狂の方へ振れちゃったんでしょうね…。熊楠家の脳みそ自体に、狂と天才の紙一重の因子があったのかも。

 話を国男さんに戻すと、私はいままで「狐」って言うと、いろんな神通力や昔話から「狐」と呼ばれる妖怪や精霊のたぐいだろと思っていましたが、この話を読むと、やっぱり狐本人(?)笑、が想念を送って、人をたぶらかしているようですね…。
 『イタリアの天使達』でもちらっとふれた、華厳経なんかを調べると、世の中は全て繋がっていると言いますが、そう考えると、狐の恨みが、人間に飛ぶということも、全然信用できる事象だと思うのです。
 もしかすると、狐や狸のたぐいが、たまたま殊に人間の心の波長に合っちゃうのかもしれませんね。
 そう思うと、駿府の安鶴さんのお話も面白いです。安鶴さんが、狐をなぐって、その復讐に狐が安鶴さんの奥さんに乗り移るって話です。
 動物でもなんでも恨みを買わないのが、一番ですね。密教も西洋魔術も言っていますが、呪いの想念は飛びますから、気をつけないと…。

$『Talking with Angels』西洋墓地の天使像 : 岩谷薫-10_4_23_2 仙台四郎さんは、可哀想。7才までオリコウな子供だったのに、河で溺れて脳に障害が… 障害を持ってから、たのまれもしないのに家々の玄関先を掃除する変わった子に。掃除された家は、栄えると噂され、ラッキーグッズまで売られちゃう。四郎さんの写真を見ると、この笑顔はいいなーと思いますけどね。そーいえば、以前、東北ロケの時に、この奇妙な写真を見た覚えが…これだったのね。
 47才の最後は、道端で捕まえた放火犯を放してしまい、追ってきた人に怒られ突き飛ばされたのを機に、行方不明になったとか… 純真な心が突き飛ばされて、カナリショックだったんだと思う…可哀想すぎる…。
 
 天狗小僧寅吉。平田篤胤を夢中にさせた、天狗の国を行き来したという少年。
 上野の五条天神で、薬売りをしていた天狗に導かれ、天狗の壷の中に入って常陸国や伊勢なんかに何度も何年も行っちゃうのね。
 これだけの説明なら、単に人さらいが、天狗と称して寅吉を連れているような気がするけど、どうやらそうでもないらしい…。そういえば、出口王仁三郎さんも20代の頃、松岡と名乗る天狗に連れられ、丹波の国から信濃の国まで飛んで行ったとか…松岡っていう人っぽい名前が笑えますが。
 私は思うのだけれど、明治ぐらいまでは、天狗やカッパのたぐいは本当に居たんじゃないかと思っています。笑! 
 江戸時代までは、天狗やカッパの精霊の話は、全国的に圧倒的に多いですよね。
ところが、昭和になると、あまり聞かないでしょ…(昭和の妖怪話で有名なのは「口裂け女」かな…。情緒がないよね…笑)
 やはり自然の破壊とともに、そうした精霊は居なくなったんだと思っています。笑。
 ところで、五条天神と言えば私が東京に居たとき、何故かよくお参りに行っていた神社です。今思うと、何故だかよくわかんない?笑。そんなエピソードがある神社とは全然知らなかった。天狗に呼ばれていたのかな?笑。隣にお稲荷さんの洞窟みたいな穴があって、あの空間好きでしたけどね。狐に呼ばれたのかな?笑。枯れ果てた平成の時代ともなると不思議スポットでもなんでもないですが…。
 この寅吉くん、最後の方は、ちょっと気がふれはじめたらしく、篤胤さんも手を焼くように。だもんで、青年期以後からの寅吉くんの消息は不明に…。篤胤さん、もうちょっと最後までレポートしてよ!笑。きっと天狗の国へ行っちゃったんでしょうが…。

 フシギちゃん大好きなので、ついウダウダと書いてしまいました…笑。オモチロイネ。