信州読書会さんに参加させていただいて、毎週金曜日に
課題図書の感想文を提出させていただいています![]()
今回は、石牟礼道子氏の『 苦海浄土 』の感想です![]()
工場排水の水銀が引き起こした文明の病・水俣病。
熊本県水俣を中心とする八代海周辺の沿岸漁民の人々は、
新日本窒素水俣工場の排水に含まれる有機水銀によって
「水俣」の症状が現れます。
手足がしびれ、言語障害をきたし、衰弱もしくは死に至り、
必ず後遺症を残す病です![]()
1950年代以降の高度経済成長期の陰で、公害によって
苦しむ人々に寄り添い、患者とその家族の苦しみを
「聞き書き」という形で壮絶なルポとして残しました。
人間の尊厳とは何か?について、綺麗事ではない真摯な
メッセージが伝わってきます。
私は、教科書上でしか水俣病を知りませんでした。
「最初に認定された公害病」「四大公害病」「水銀を食べた魚を
食べたら水俣病になる」・・・・・・という薄っぺらい知識しか
持ちえなかったことを恥じました。
こんな底なし沼の苦しみを同じ日本人として、見過ごしてきた
ことを心から恥じたのです。
是非、実際に手に取っていただきたいと思います![]()
『 許されて生きる 』
水俣病とは、この小説を読むまで、私にとって「記号」だった。
「有機水銀の摂取を原因とした公害病で、熊本で発生した」との浅い知識と社会の教科書で見た患者の方の写真が、水俣病に関するすべてだった。何ひとつ、人間味のない字面だけの理解だ。
解説を上梓している渡辺京二氏は言う。
( 引用始め )
実をいえば『苦海浄土』は聞き書なぞではないし、ルポルタージュですらない。ジャンルのことをいっているのではない。作品成立の本質的な内因をいっているのであって、それでは何かといえば、石牟礼道子の私小説である。
新装版『苦海浄土』わが水俣病 解説P.368
( 引用終わり )
なるほど、聞き書と写真や数値が中心のルポルタージュであれば、ここまで心に沁みなかったかもしれない。それはデータであり、人間の生き様と何の関係もないからだ。
ふと、井伏鱒二著『黒い雨』を思い出す。広島に投下された原爆も「世界初の核兵器使用で、14万人の命が失われた」という字面だけの理解が大半だと思う。しかし、『黒い雨』の中で、市井の人々がどのように未曽有の状況を耐えて生き抜いたかが、作者のフィルターを通して、登場人物に命が吹き込まれる。
『苦海浄土』でも、実際に患者の方に面会した石牟礼氏のフィルターを通し、水俣病の発症から死に至るまでが、現実味をもって、読者の胸に迫る。
国と県とチッソの綱引きや「日本が降伏しないから、投下された」等の高度な政治判断の話ではなく、有機水銀の管理や核兵器使用について、過ちを繰り返さないために、このような「私小説」が果たす役割の大きさを実感する。苦しみを引き受けるのは、市井の人々だからだ。
エヴァタ氏にアップしていただいた「水俣病“真の救済”はあるのか~石牟礼道子氏が語る」の映像の中に、認定患者の杉本栄子氏の言葉を引用した作者のインタヴューに、深く頭を垂れてしまう。
( 引用始め )
「私たちは許すことにした。全部許す。日本という国も、チッソも。差別した人も許す。許さないと、苦しくてたまらない。みんなの代わりに私たちが病んでいる。」と言って、でも死ぬ前に「まだ生きたい」と言って(杉本氏は)亡くなった。
「私たちは、代わりに病んでいる人たちに許されて生きている。罪なこと。
代わりに病んでいる。日本人の代わりに。」
( 引用終わり )
私たちは、許されて生きている。いつ、「許す」立場になるかもしれない。
だからこそ、「許されている」ことを深く自覚して生きねばと思う。
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