「金がどんどんなくなっていくわ」
もしもの時のために自宅に確保している現金を見ながら僕が呟いた。ちなみに僕たちの〝もしも〝は大半が娯楽に使う遊び金。そんな僕を慰めるためか、妻のマリーアントワネットが言う。
「大丈夫だよ。私の八万冷蔵庫にあるもん」
「えっ!そんなとこにへそくりがあるの?」
「違う違う。あそこ、コンビニ」
???そんなとこにお金?妻はコンビニなんて経営してない。
「もしかして銀行?」
「そうそう。それ。失業手当入ってるから」
「そういうことね。つーかコンビニのATMにお前のお金があるわけじゃないからね。それより冷蔵庫ってなによ?」
「だからさ、何で冷蔵庫なんてでてきたんだろうね?」
知らないよ。。
「まあいいじゃん。それよりその紙取って」
妻が買ってきたばかりの服を持ちながらあごで合図する。
「はい、ハサミね」
「そうそう。よく分かったね。セバス凄いじゃん」
「値札切りたいんでしょ。つーか紙って何?一人連想ゲームじゃないんだから」
「一人連想ゲーム、うけるー」
うけるな!ハサミ→切る→紙。なんのこっちゃ。
最近益々言葉を失いつつある妻であるが、それ以上に分かってしまう僕がいる。「ツー」と言ったら「カー」ではないが、妻の一人連想ゲームも日に日に高くなるレベルにどれだけついていけるか。
「はい、この服タンスにしまっていいよ」
妻のマリーアントワネットが自分の脱いだ服を僕に渡し、タンスに片付けさせてくれた。
ありがとう。
って違う!!!
片付けてくれてありがとうと言う立場だろ。しまっていいよって僕がお願いしたみたいじゃないか!?
そう思いながらタンスにしまう。そういえばこの前も保険に入る入らないの話をしていた時も
「ねー、あたしの保険いつ入るの?」
「あー、今探しているよ」
「ちゃんと探してるの?あたしが病気したらどうすんの?あたしが死んでもいいの?もっとちゃんとしてよ!」
「探すよ」
そう言って僕はパソコンの電源を入れた。
「何見てるの?」
「えっ!保険調べてるの」
「別にそんなんいいから一緒にテレビ見ようよ」
僕に与えられた時間はわずか5分足らず。その間に調べられないと妻の興味は別のものに移ってしまう。
「ねー。この保険とかどう?3年毎にキャッシュバックがあるし、女性の病気の保障もあるし」
「よし。任せた」
「任せたって、人事だな」
「だってあたしよく分かんないから、セバスに任しておくのが一番確実だし」
そう言ってアメトーークのDVDを見出した。
言われるまでにやっておけ!言われてからはすぐ片付けろ!そう言われている気がした。
昨日書いたブログに妻はツンデレですか?という気を使っていただいたコメントがありました。
いいえ、妻はツンデレでもなく、ただの子供です。
今日も快便の話をうれしそうにしていました。
「ねー、一生のお願い、このゴミ捨てて」
そう言うと妻のマリーアントワネットが手を差し出す。その手には何か握っているかのように思われるが、僕には何が入っているか見えない。
「いいよ、貸しな」
僕がちょうだい、のポーズで手を出す。
「そんなんじゃダメだって。なまはんかな気持ちじゃ落とすって」
ますます、そのゴミが何か分からなくなった。虫か何かか?いや、妻は大の虫嫌い。素手で触れるわけがない。
「何?いいからちょうだい」
「大丈夫?」
「大丈夫。つーか何」
妻の手が僕の手の上に来る。しかしまだ何か分からない。
「離すよ。ほら」
ん?髪の毛。
「ちゃんとつかんでる?」
「うん。大丈夫」
「あっ! 逃げた! ほらここにいる。あっ、また飛んだ」
「え、え。乗せて」
「また逃げた。こいつら油断するとすぐ逃げるから。ここにも一匹。あーもーダメだ、一回下に逃がして。はい、ここに」
「あ、はい」
「こうやってつまんで捕まえないと逃げるから。分かった?」
「はい。つーか二回に分けてもいんじゃない? ホントに逃げるわけじゃないんだから」
そう言いつつも一回で片付けたい僕は髪の毛を全部捕まえた。そしてそれをゴミ箱に捨てようとすると妻が
「ゴミ箱気をつけて。気抜くとそいつ飛ぶから」
舞うとか、散るじゃないの?
髪の毛を捨て終えると
「一生のお願い。窓閉めて」
今日で二回目?
「はい閉めたよ」
「最後のお願い、ピッピ取って」
「はい、リモコンね」
つーか何回あるの?しかも一生や最後が小さい。ドラゴンボール集めても同じお願いするの?
妻に言わせると今日死んだらそれが最後のお願いになるかもしれない。一生のお願いになるかもしれないから。だから一生のお願いは生きている限り一生続くのだと・・・
僕の一生のお願いは、お願いの規模が大きくならないこと。