「この映画観たい。人間大失敗」
妻のマリーアントワネットがテレビを観ながら僕にそう言った。
「人間大失敗じゃなくて人間失格でしょ」
「えっ!? 人間大失格?」
「人間失格だって。あんた大、好きだね」
「そうか。大失格はあたしか」
「そうだよ」
「そんなことねーわ! 引いてみたら調子に乗りやがって」
こんな調子の妻は適当なところが多々あり、最近では韓国のキム・ヨナを
「誰だっけこれ? 韓国の台所」
「ソウルか!? 国民の妹だろ」
「そうそれ。全国民の妹」
大とか全とかちょいちょい規模大きくするのが好きね。そもそもなんで台所なんだよ。多分、大阪が天下の台所、と中学の時に習ったことをニアンスでまねしたのだろう。そんな妻の続きをどうぞ。

「つーか、何で国民の妹なの? 妹なわけねーじゃん」
「そうだけど、妹みたいな存在だから、そう例えてんでしょ!?」
「妹みたいだからって、それなら国民っておかしいでしょ? 年下とかいるでしょ」
「細かいことは知らないよ。初めに言った奴に文句言って来いよ」
「グラビア界の黒船か!」
「リア・ディゾンはね」
「流氷の天使か!」
「クリオネね」
「バッカルコーン!」
両手を広げて僕をカニ挟み。
「何それ?」
「クリオネが餌食う時の用語だわ。バッカルコーン、バッカルコーン。あたしバカみたいじゃない」
「やっと気付いた。台所から相当だよ」
「バカとかけまして、バッカルコーンと解きます。そのこころは・・・どうぞ」
「なんで俺が解く!? 自分で解け」
「あたし解くほうはできないから」
「だったらやらんでいいわ」
こんな毎日。そんなにやじゃない。

「でっかい本屋いったよ」
妻が新しくできた本屋の話をしてきた。
妻が本屋に興味があるとは意外だったので、ちょっと聞いてみた。
「あそこいい?」
「いいよ。だって12時までやってるもん」
「でもきみ本読まないじゃん」
「カフェもあるよ」
「でもロッテリアでいんじゃない?」
「まね。あたしゃ不妊の先生になるんだよ!」
「不妊の先生って産婦人科医のこと?無理じゃね?」
「あたしゃね、赴任先の先生になるんだよ!」
「何、赴任先って?どこも行ってないじゃん」
「あたしゃね、担任の先生になるんだよ!」
「どこの担任だよ。担当持って無いじゃん」
「あたしゃね、保健体育の教員になるんだよ」
「だから教員は無理だって。言い方変えてもダメ」
「あたしゃね、水泳の北島くんになるんだよ」
「北島くんって、北島康介のこと?同級生か!?」
「あたしゃね、およげたいやきくんになるんだよ」
「曲になっちゃった。もう目に見えるものじゃないね」
「あたしゃね、最新の選曲になるんだよ」
「考えになっちゃった。思考回路になっちゃった」
「あたしゃね、最先端の技術になるんだよ」
「身に付けるわけじゃなくてね。技術そのものになるんだね」
「そう」
つまり、妻は本屋に通って最先端の技術そのものになるらしい。
応援しよう。。。
「ねー、お茶ちょうだい」
何気なく言った僕の台詞に妻のマリーアントワネットが反応する。
「お茶ちょうだいだって、亭主関白か?」
「どこがよ? お茶ちょうだいって言っただけじゃん」
「いや、亭主関白の始まりだ。そこからあたしはどんどんパシリに使われるんだ」
「何でよ? お前の服を閉まっているのは誰だ? お前のCDを録音してあげてるのは誰だ?」
「貴様か!?」
「何、犯人見つけた、みたいな言い方してるの? いいからそこの"おーいお茶"取って」
「おーいお茶! もう亭主関白の最終形だ。妻におーいって言ってる時点で亭主関白だ」
「商品名でしょ」
「この商品を開発した妻も亭主関白に耐えてるんだわ。気持ち分かるわ」
「どの気持ちが分かるって? 開発者は未婚者かもしれないじゃないか」
「そんなん言ったらなっちゃんだって夏子じゃ無いかもしれないじゃん」
「夏子って名前までは分からないでしょ。結構選択肢広いと思うよ」
「ちょっと何言ってるか分からない」
出た! サンドイッチマン
違うよ! サンドウィッチマンだよ。セバス間違えるなよ。
勝手に人のブログに入ってくるな!
ほら、亭主関白。
また入ってきた。だから亭主関白じゃないって。
いいかげんチャット風も面倒なので
「早くお茶」
「はいはい、あたしゃお茶と歳を取って生きていくんだよ」
そう言って僕にお茶を手渡す妻が次に言った言葉は。
「おーいお茶が亭主関白ってあたしうまいこと言ったな」
「自分で言うか」
「ファンタがファン太郎よりいいわ」
「言ってねーし。思い付きで言うな」
確かにおーいお茶はうまいと思った。