日本人論/小林よしのり | 奇跡の今日一日

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たとえ功罪両面があろうとも、戦後の一大芸能文化を築いた事実は否定できない故・ジャニー喜多川という人物に対して、その痕跡を消し去ることまでを目指す「キャンセル・カルチャー」と呼ばれる運動を小林よしのり氏は痛烈に批判。

 

キャンセル・カルチャーは人権を盾にしてアメリカ左翼が始めた運動にすぎず、人権意識についても西洋・キリスト教の感覚こそがグローバル・スタンダードと妄信することを戒めて、「人権」vs「文化」なら「文化」を取ると言い切る。

 

当事者の会を神輿にしてキャンセル・カルチャーをミスリードしたマスコミは、そもそも大昔からジャニー喜多川氏の少年愛の話など知ってたのに、今さら正義面して検証報道みたいな茶番劇。

 

僕は予備校時代に本屋の隅の本棚に、ジャニー喜多川を告発する本が置いてあってペラペラ立ち読みしてジャニーズの闇に触れた記憶が残っている。

 

あの本も長く本屋に並ぶことはなかっただろう。

 

本作では日本固有の男色の文化、芸能の文化について歴史を辿り語られていての部分はとても勉強になって考えさせられた。

 

歴史、文化、伝統の基盤の上に今の日本があるのだという保守の思想からすれば、「人権」を最上の価値観とするリベラレル左翼とはこの問題では絶対に相容れないだろう。

 

芸能界は光が強烈なだけ闇も深いかもしれない。そんな芸能界に「人権」のスポットライトを隅々まで当てることを正義とはせず、芸能界は異形の者たちの晴れ舞台でいい、日本人の倫理基準は一神教の「人権」であってはならいと締めくくっている。

 

倫理基準が画一で他の考え方を絶対に許さないみたいな風潮は僕は賛同できない。

 

日本の美は陰翳にこそあるとは、本著に登場する谷崎潤一郎の言葉。