トップロープクライミングの基本手順 | 奇跡の今日一日

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宮崎薫ブログ

 
トップロープクライミングは、ルート最上部の強固な確保支点に通してぶら下がったロープで、クライマーが登る。
 
ロープを支点に通して最上部にかけているため、クライマーが登った分のロープをビレイヤー(確保者)が下から引っ張りビレイデバイス(確保器)に取り込むことで、墜落しても落下距離は基本的に生じない(ロープのたるみと伸びを除く)。
 
ロープクライミング初心者は、安全性の高いトップロープクライミングから練習を始めるのが一般的だが、基本的な技術をしっかりと身に付けることが重要。
 
◆ギアの準備
・ビレイグローブ
・クライミングシューズ
・クライミングハーネス
・ビレイディバイス
・HMS型カラビナ
(反転防止機能付きが望ましい)
・シングルロープ
 (ルートの応じて、30m、50m、60m)
 
◆クライマーの準備

1.エイトノットでロープをハーネスに結ぶ
 ・ロープがよじれることなくきれいに結ばれていること
 ・一本一本それぞれ四方向に強く締め込む
 ・ループの直径はビレイループと同径
 ・ロープ余端がロープ径の10倍以上あること
 (IFSCのルールではエイトノット+末端の二重止め結び必須だが、ロープ余端がロープ径の10倍以上あれば末端処理は不要)
 ・ロープを結んでる最中のクライマーには話しかけない

2.ロープを結んでからシューズを履く
 
◆ビレイヤーの準備

ハーネスのビレイループに、ビレイデバイス付きのHMS型安全環付カラビナをセット。
 
① ロープをU字にしてビレイデバイスの穴に通す。この時、クライマー側のロープが上、ブレーキハンド側のロープが下になるように通す。
 
② U字に通したロープとビレイデバイスのワイヤーケーブルの両方を、環付カラビナにセット。
 
③ カラビナの環をしっかりと締める。
 
 
◆相互チェック
 
登攀開始前、相互に安全チェックを必ず実施する。

・ハーネスがきちんと装着されているか?(ねじれがないか、シングルバックルの場合折り返しがされているか)
 
・カラビナの安全環が締まっているか?
 
・クライマー側のロープがハーネスのタイ・イン・ポイントを通って、8の字が正しく結ばれているか?
 
・ビレイヤー側のロープが、ビレイループに正しい向きでセットされたビレイデバイスを通っているか?
 
最後にお互いロープを強く引っ張り合うこと!
 

(ペツルのビレイデバイス取扱説明書イラストはダブルロープだが、シングルロープも同じ)
 
◆ビレイの手順
 
基本的には、クライマーが登ってたるんだ分のロープをたぐるという操作の繰り返し。
 
クライマー側に伸びてるロープを、顔の前ぐらいの位置で握る(利き手が右手の場合は左手で)。右手でビレイデバイスすぐ下のロープを握る。右手は制動手となるため決してロープから離してはならない。
 
① ホームポジション。
 

 
① 右手で持ってるビレイデバイス下のロープを、クライマー側に伸びてるロープとV字になるように引き上げる。クライマー側ロープはビレイデバイスに取り込まれ、顔の前ぐらいにあった左手は、ビレイデバイス近くまで下がる。
 


② ロープを取り込んだら、左手をビレイデバイスすぐ下に握り替えてロープを下に引く。
 

 
③ 右手をビレイデバイスすぐ下に戻す。

 
④ ホームポジションに戻す。
 
 
◆ビレイの注意事項

・ビレイデバイスはお腹の上で常に立った状態で操作する(ビレイデバイスが下を向いた状態にしない)。
 
・ビレイデバイス下の制動手はクライマーが墜落した場合にロープの流れを止める手になるので、決してロープから離してはならない。
 
・ビレイヤーはクライマーをグランドフォールさせないことが義務。いつクライマーが落ちても確実に止められるように考えて確保。クライマーが墜落したら、ビレイデバイス下のロープを両手でしっかり握って止める。
 
◆クライミング開始

ロープが張られた状態か、トップロープ支点を中心として、ロープにねじれがないかを必ず確認!

ビレイヤー 「ビレイOKです、どうぞ!」
 
クライマー 「登ります!」
 
・ビレイヤーはクライマーの動きに合わせて、ロープがたるまないようにたぐる。

・クライマーは常にロープが右手と左手の間にある状態で登る。
 

◆ロープを張ってほしいとき
 
クライマー 「テンションお願いします!(張ってください!)」
 
ビレイヤー (しっかりとロープを張ってから) 「テンションOKです!(張りました!)」
 

◆終了点に到着して下降(ロワーダウン)するとき
 
クライマー 「テンションお願いします!(張ってください!)」

ビレイヤー (しっかりとロープを張ってから) 「テンションOKです!(張りました!)」

クライマー (ロープに完全にぶら下がってから) 「降ろしてください!」

ビレイヤー 「降ろします!」
 (ビレイヤーはゆっくりと降ろす。クライマーは手と体を壁から離した状態で、足でバランスを取りながら下降。)