フィックスロープは危険個所において安全確保のため設置したり、ロープを張ることで恐怖心を取り除く効果がある。大人数を通過させるときには効果的な確保方法。
フィックスロープ設置の考え方の原則は、「スピードと安全性のバランス」(フィックスロープに限らず重要な考え方)。
安全性が高くても手間と時間のかかる方法は、フィックスロープでの確保そのもの選択自体が面倒になりかねない。
また、時間をかけることによってその後の行動時間が制約を受ける等のリスクが高くなりビレイカバー率が低下していく。
◆フィックスロープ設置の手順一例
ビレイなしでの単独での設置を想定。ザック上部に収納したロープ終端をザックの隙間から外に出し、カラビナでショルダーストラップにかけて行動。

① 始点を設置
・落下時を想定するとフィックスロープは腰から上の位置が望ましい。
・立木を使用する場合、根を張った強固な立木であることが前提。
・立木の場合、始点はラウンドターン+ボウライン+余端を長くとってセルフビレイ用にダブルフィギュアエイトノット。ラウンドターンすることによりズレを防止(ボウラインでセルフビレイ用にリング荷重することは厳禁)。

・ロープ末端をダブルフィギュアエイトノットにしてから立木に1~2回巻きつけ、延びていくロープにカラビナで固定してもよい。

② ザックからロープを繰り出しながら移動
・アッセンダーかフリクションヒッチで繰り出していくロープにセルフビレイを取りながら移動。

・または、次の中間支点まで必要な長さのロープを繰り出してから、安全環付カラビナ+クローブヒッチでロープをハーネスに固定しながら移動。
・確実に落ちない状況であれば、スピード優先でロープを繰り出しながら移動。
③ 中間支点を設置
・フィックスロープの中間支点はメインロープを素通しの場合はスリング+カラビナが原則。

・立木にスリングをガースヒッチなどで巻きつけカラビナにロープを固定する場合の結びは、クローブヒッチ、バタフライノット、エイトノットなど。


・上から通せる鉄杭はクローブヒッチやラウンドターンが使える。
・鎖のコマにカラビナをかける。スリングの場合は2コマにまたがって掛ける。
・岩角は回り込んだり、ロープを巻き付けるだけで強固な始点となる。
・ピトン、ボルトなどあれば使用。
③ 終点の設置
立木への固定方法はテンション張りやすい方法を状況に応じて選択。
・スリング+ムンターヒッチ+ミュールノット+ダブルオーバーハンドノット末端処理

・クローブヒッチ+ダブルオーバーハンドノット末端処理

・トラッカーズヒッチ

④ 回収
・リーダーはザックを終点のビレイポイントへ残置、始点へ戻りメンバーの誘導。
・中間支点を回収しながら終点へ。
◆ビレイヤーがいる場合
ビレイヤーがいる場合、スタカットでビレイしてもらいながらフィックスロープ設置する。
① ビレイしてもらいながら中間支点設置して終点へ移動。
② 終点設置(※先にロープアップしてもよい)。
③ ビレイヤーは始点にロープフィックス、もしくはそのままビレイ継続。
④ メンバーのフィックスロープ通過が終了したらロープアップ、ラストはスタカットでビレイしてもらい中間支点回収しながら終点へ移動。
◆フィックスロープ通過の手順
① 準備
・ラビットノットでランヤードを作り、ランヤード先端に安全管付カラビナ2個をセットしてハーネスに連結。
・ランヤードを2本準備、あるいはスリングの途中にオーバーハンドノットで2つ結び目を作ってカラビナを2個セットできるようにしてもよい。PASなどのセルフビレイコードがある場合は使用。
② トラバース、横移動の場合
・カラビナ素通しで通過が基本。
・中間支点通過の際は、カラビナを1枚ずつ架け替えて通過。

③ 縦移動の場合
・ロープにブリッジプルージックなどのフリクションヒッチを巻く(ブリッジプルージックは解除がしやすい、巻くときに1巻きずつきっちり締めるのがコツ)。
・60cmスリングをランヤードにして伸ばす(PASなどのセルフビレイコードでもよい、手が届く長さに)。
・親指と人差し指でローブをつまみフリクションヒッチを下から押し上げながら登る(フリクションヒッチを握らない)。

・転落時に結び目は絶対に握らない。
・中間支点では掛け替えをする(支点側に2個のカラビナがセットされてる場合は、支点の下のカラビナを外しフリクションヒッチを通過させ下のカラビナを再装着、次に上のカラビナを外してフリクションヒッチを通過させる)。
・アッセンダーがある場合は使用。