一度、水に潜らせて強めに絞り上げた糸。
そうすることで、均一に染液が入るそう。
染め作業
まずは、糸束を持って熱々の染液に
一気に浸す。
それから引き上げ、両手で輪を回すように
クルクルと一部だけ液に漬け回す。
次に片手に持ち、液に全て浸しながら
一方向ではなく、逆にも回す。
陰陽☯️の円を描くようだ。
カセットコンロにかけて
熱湯に近い温度をキープした染液に、
軍手に厚いゴム手袋をして黙々と浸け回す。
("分厚いゴム手袋"でまたスートラが浮かぶ)
次に束を引き上げ強めに絞り上げる。
テラスに出て、束をあやとりの輪のように
両手に掛けて、パンパン🙌と引き伸ばす。
この作業を数回繰り返して
刈安の色をいただく。
媒染作業
テラスに出て、媒染作業。
色を定着させるために、媒染液に浸ける。
絹糸の束は、まだ薄っすらと肌色。
想像する黄色には程遠い。
🤔…本当にこれが黄色になるのか?
刈安には椿の灰汁を使う。
緊張の作業。
さあ、浸けようか〜?
と、その時‼️‼️
私達のど真ん中を
黄色の蝶々が一頭、ヒラヒラと華麗に
舞いながら横切って行った。
黄色い、蝶
なんだろうな、
こういう事が起きる、普通に。
いよいよ、椿の灰汁を溶かした
媒染液に糸束を一気に浸す!
一瞬で鮮やかな、言葉では、
表現しがたい色がパッと現れた。
歓声が上がる🎶
刈安が産まれた瞬間
それから冷水で媒染液を洗い流すと
金粉を纏ったように輝き、
透明な色が上がってきた。
ここまでで、ようやく、
染作業が終わる。
目に映らない自然界の不思議が
五感を解放して、
ほんの少しだけ、観えてきた。
ゆったりした時間。
言葉にはならない。
染め上げた刈安の糸が語ってくれた。
…糸を乾かしてから、紡ぎ、機織りに。
同じように、草木や実から命を頂き
産まれた様々な糸を選び、黙々と織る。
機に向かい、あっという間に2時間以上。
体の隅々まで意識を巡らせながらも
直感で糸を入れ替えながら織る動きは
心地良く、内側から緩んでいく。
本当に雲の上に遊ぶような感覚だった。
仕上がった布は、
6人6様。心を映した色。
みんな素晴らしかった。
刈安の色は、
クチナシで染めた黄色に比べると、
柔らかく弱々しく観えるかもしれない。
それが、藍の青と結ばれて、
初めて鮮やかな緑を産む。
刈安が創り出す
緑に、
光と闇の結合を観た
志村ふくみさんは、
伊吹山の頂きで太陽の光を
一身に抱えた刈安が、
暗い藍甕の底に潜む闇に触れ、
生命の緑を産む陰陽を観た。
…そんなふうにおっしゃったそうです。
その意志を受け継ぎ、
一日、講師をして下さったお2人から。
「私達は、一応、講師の立場ですが、
この色をこう組み合わせて、
この順番で使わなければならない
こうしてはいけない…
という事は一切ありません。
全て自由に。
皆さんと一緒に楽しむために居ます。」
私が初めて書を伝える場を頂いた時に
同じ気持ちで同じことを話したのを
ふと思い出した。
それをしっかり観て下さった方も。
…いろいろな事が起きて、それを
"苦しみ"と名付けてしまう事もある。
名付けは呪。
けれど、目を逸らさずに、
しっかり受け止めて、
自分を信じること。
ただ、信じるだけではなくて、
信じることを貫く。
信じ抜くということが
どういうことか。
それを観た幸せに満ちた一日だった。
臆することなく
光を受け止めて、
しっかりと根を張り、
黙して他を引き立て、
何か新しいものを産み、
自らも輝く。
そんなふうに生きる。