富士山頂まであと一歩・白い鳥居
富士山頂まで長い登りです。ゆっくりゆっくり止まることなく少しずつ進んでいきます。
彼の声が聞こえました。私の視線が動きます。青い空に白い鳥居です。「はぁ、ここまで来た。」昨年、2022年はは暗くて気がつかなかったんですが、白い木製の鳥居は、よく見ると小銭が隙間なく縦に刺さっています。外せないくらいしっかりとです。実に日本らしいと思います。お賽銭感覚だろうが、鳥居も痛むし回収も大変そうです。山頂の浅間大社にお参りすべきなのにと苦笑します。まるで池に放り込まれて酸化した小銭のように、自己満足の完成された行いです。昔と今、時代の流れを感じます。
九合目、迎久須志神社。
立入禁止の標識を過ぎた頃、また岩場です。前回の御来光登山とは違う静かな登りです。私たちの周りに登山する人がちらほら見えます。日差しが背中に突き刺さります。息を吐き、富士の空気を吸い込みます。歩幅は小さくゆっくりです。何人かに追い抜かれます。気がつくとその何人かを追い越しています。私たちは止まることなく山頂を目指します。
九十九折りの登山道は果て無く、歩みを進めても変化がないような錯覚に陥ります。山頂までどれくらいだろう。自分が重いです。だからこそ、自分で歩くしかないのです。彼が止まりました。
目の前に白い狛犬と白い鳥居が現れました。歩みを止める私。初めて見る光景です。狛犬の足元には個人名で富士登頂三十三回記念の石碑が立っています。昭和四十七年九月。想いの強さが過去から届きました。
白い鳥居の上に紺碧の空と白い飛行機が見えました。もう少し。この言葉が現実味を帯びます。私は歩き出しました。
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