本田美奈子さんが亡くなられました。
私は携帯で訃報を知ったのですが、思わず「うそ!?」と声を上げてしまいましたね。
どうしてなんだろう。
白血病って本当に恐ろしい病ではあるけれど、でもそれにしたって、なぜ、このタイミングで。
・・・なぜ、と言って分かる疑問ではないということは承知しつつも・・・そう思わずにはいられない。
だってまだ、38歳ですよ。しかも芸能生活20周年という節目の年。クラシックへと活躍の場を広げようとした矢先。
私は基本的に、いいことも悪いことも何事にも意味があると思って人生を過ごしてきたけど、時々本当に、とてつもなく良い人が早すぎる死を迎えてしまうことに無力感を覚えることがありました。
今回も本当に。早すぎると思う。
ただ、クラシックに転向しつつあるということを聞いたとき、ちょっと変な胸騒ぎはしたんですよね。
クラシックって、もともとクラシックをやってきた人には免疫があるんだけど、ちょっと妙な部分があるように思うんです。なんていうのかなあ。軽く呪術めいた部分というのかなあ。クラシックをやってく人って、基本的に体も心も相当タフなんですよ。努力して体力があるとかじゃなくて、体自体にもともと問題が少ない人が多い。分かりやすく「丈夫」な人が多いし、特に歌科の人はおおらかというか、真剣すぎる人は少ないように思うんです。完璧主義過ぎないと言うか・・・ああなんか、うまくいえないんですけど。
発声が、普通じゃないんですよね。あの声を自然に出すために訓練する方法は、実は体にとってはあんまり自然ではない。男の人は特に「生まれつき」の声が求められるので、努力うんぬんのジャンルじゃないんですが、女の人は努力が声に反映されるんですね。そのかわり、ホルモンバランスが変わって太ってしまう人もいるし、体調に変化を起こす人もいるんです。あ、これは声楽が体に悪いと言っている訳ではありませんよ、健康にはむしろ良い。私が書いているのは、プロとしてある一線を越えようとしたときに抱える可能性のあるリスクの、ほんの一例に過ぎないので、その旨御容赦御理解くださいね。
本田美奈子さんの場合、もともと本当に小柄な人でした。バイタリティはあるけど、バランス的には消耗するものが普通の人よりは多い感じの体型。これでクラシックに転向するのは、本当に心配に思いました。消耗バランスが追いつくんだろうか。あるいは、その一途な思いから、「グランブルー」のようにフイッと、人ではない部分に踏み込んでしまう(=命を落としてしまう)んではないかなあ。ふと、そんな風に思ったことを覚えています。
昔友人で、若くして肺がんで亡くなったミュージシャンがいました。
彼は、今なら誰もが知っている有名なバンドでサックスを吹いてました。でもその頃は、まだまだメジャーではなかった。それでも、当時からそのユニークな音楽性でファンを多く持っていたバンドだったので、ライブをするたびに未来が開けるような、そんな勢いがあった中での、発病。
病院の中庭で、彼はサックスを練習してました。当初、家族は彼に病名を知らせていなかったこともあって、彼は治ると信じていたんです。だって、「俺らって不健康じゃん?だからこれじゃいかんなあと思って、昨日の朝、体力つけるためにジョギングしよ~と思ったら急に横っぱらが痛くなって調子悪くなってさあ。風邪かなと思って病院に来たら、肺炎気味だって。ライブ近いのに参ったなあ」って普通に言ってたんだもの。
普通に、朝、体調が昨日とちょっと違っただけですよ。
でも、手遅れだったらしい。
二回目の入院で、形だけの切開手術が行われました。ちょうどその頃私は次女を同じ病院で産んだので、外科病棟まで次女を見せに行ったんです。
そうしたら、そこにはげっそりと別人のように憔悴しきった表情の彼がいた。でも、目だけは一生懸命優しいんですよ。かつてサックスを振り回してた腕がもう細くって、でも、生まれたばかりの次女を「う~あっ・・・すごいなあ。まさに、命や。」と言って大事そうにフワッと抱っこしてくれた。でも、そのあとに、「俺昨日、初めて『俺死んでしまうかもしれない』と思った。怖かった」と言ったんです。かつてない苦しさと不安を感じる、と。一度目の入院では、あろうことかそれでも喫煙室で油を売ってたり、病院を抜け出してラーメンを食べてたりした彼。でも、二度目の入院ではそういったイタズラをすることさえも出来なくなっていたんです。
かろうじてもう一度退院し、闘病のため地元に帰る(実は手の施しようがなかったため)前に、ライブがありました。私は辛くて行けなかった。病院の看護師さんが何人か観に行ったようです。いいライブだったんだろうな。でも、しんどかっただろうな。「息が続かない、悔しい」と楽屋で苦しそうにいいながらも、表に回れば来てくれた看護師さんに冗談を飛ばしていたと聞きました。
それから数ヵ月後、彼は亡くなりました。青山でお別れ会があったとき、遺影にすがり付いて、いかついタトゥを腕に掘り込んだ男性ファンが、おいおい泣いてました。「ユタカさんのサックスが聴けなかったら、オレどうすりゃいいんだよ!」と言いながら。
彼のお父さんによると、最期の言葉は、「ああ、オレももうこれで、ちゃんちゃん、か。」だったそうです。
最期まで周りへの気遣いを感じさせるような、あったかいトーンの、彼らしい言葉だったと思う。
あれからもうすぐ、11年。
ジャンルはちがうけど、また若い才能が逝ってしまった。
でも、これが人生なんだ、と、生きている人は心を引き締めなきゃいけない。悲しみ続けるだけじゃなくて。
ましてや、命を育てる「親」というポジションにつくことを許された私たちは、尚更だなって、
そう思うんです。
親にとって、子どもの時間を良くも悪くもコントロールできるのは、実はほんの十数年。
そこから先の彼らの運命は、いくら親であっても、知る由はないんですよね。
本田美奈子さんが亡くなられた日と同じ日に、山口もえさんが入籍しましたよね。本田美奈子さんの訃報のあとに見る山口もえさんの華やかな艶やかな笑顔、なんだかすごく対照的だった。
二人とも綺麗なんだけど、なんか、何かが、あまりにも違いすぎる。いくら人生いろいろとは言え。
非常に不謹慎ながら、自分の子どもが歩むならどちらの人生がいいのだろうか、と考えてみました。
親としてならば、やはり安定している方を望んでしまうけど、でも実際はわからない。
幸福って、難しいです。
だからこそ、「今」を大切に感じるような子育てをしてあげたいなあ、と、心から思うし、
努力できる立場にいるならば、努力していきたいなあって思うんです。
親として、人として。
本田美奈子さんのご冥福を、心からお祈り申し上げます。