「自他の境界線 ~アドラー心理学「課題の分離」~(前編)の続きです。
以前ツイッターで呟いた↑このツイートに、とても多くの方からRTやいいねを頂いたことがありました。
この「…と、あなたは思うんですね。」という言葉は、以前このブログ記事「言葉の力(後編)」でも触れたカール・ロジャースの来談者中心療法について学んでいたときに、カウンセラーにとってひじょうに役に立つ表現の1つだと知りました。
たとえば、クライエントの方が「○○は酷い人間だ。絶対に許せない。」と仰ったとします。カウンセラーはクライエントに対して「無条件に肯定的な姿勢で」「クライエントの話を共感を持って理解する」ことと、「自分自身に常に誠実である」ことを両立しなければいけないので、この場合の相槌としては、目の前で起きていることだけを表現する「…と、あなたは思うんですね。」を使うという話でした。
カウンセラーにしてみれば、「○○さん」を知らない、または、自分自身が直接酷いことをされた経験無しに、クライエントと同じように「酷い人間だ」と感じることはできません。ですから安易に「そうですね、酷いですね」と言うわけにはいかないのですが、このクライエントが「○○さん」を「酷い人間だ」と表現されたことは事実です。その事実だけに焦点を当ててあなたがそう思っていることは私も理解しましたよという意味で、この「…と、あなたは思うんですね。」という表現になるわけです。
そしてこの表現は、自分と他人の境界線を明確にするにも、とても良い表現だと私は思っています。誰かが失礼なのも、攻撃的なのも、不快な表現をすることも、その人自身の問題であって「私」の問題ではないと、自分自身に気付かせることができるキーワードのように思うからです。
また、ネットで多く見かけるような、公共交通機関や飲食店での子連れに対する批判、制服を着た警官や消防士、医者や学校の先生までに向けられる監視と苦情(多くはコンビニで買い物をしていた、飲み物を飲んでいたなど、普通の人間として当たり前の行為)も、いかに自他の境界線があいまいで、常に他人を自分のルールで裁いている人が多いのかを表しているのだろうと思っています。
そして、昨今ひじょうに目立つようになってきた「自己責任論」。これも一見、自他の境界線を明確にしているが故の冷たさのように見えますが、実は逆で自分のルールで他人を裁いていることに他なりません。他人の問題は他人のものですが、困っている他人がいたときに手を差し伸べるのか、無視するのかは、まさしく自分自身の問題です。それを見たくない、手を差し伸べたくない、そんな自分を正当化したいがために、あえて「自己責任」という言葉を持ち出しているのではないでしょうか。
つまり、他者の課題、本来は社会の問題であったり、生来の問題であるかもしれないものまでを、自業自得のような意味合いで「自己責任」と自分のルールで勝手に裁いて、「だから自分で解決しろ」と言うのは、自他の境界線があいまいだからこその冷淡さなのだろうと、私は思っています。
誰であっても「自分の目に見える世界にいる全ての人を、自分の思い通りに動かす」というのは不可能ですし、そう思えば思うほど、思い通りにならないことで自分自身に余計なストレスがかかります。誰が何をしているかや、それが自分のルールに合っているかどうかばかりに神経を尖らすことは、他者によって自分の感情が常に左右されているということです。
自分が幸せであることも不幸であることも、無自覚のうちに自分の視界に入ってくる他人次第になる、他人のあり方を評価することで自分を肯定するまたは否定する行為に依存してしまうということが、自他の境界線があいまいであることの最大の問題点です。
自分の判断が常に正しいわけではない。自分のルールが社会全体を支配しているわけではない。社会通念は時代と共に変化し続けています。他人のことをとやかく決め付けて批評する権利は誰にもありません。
アドラー心理学の「課題の分離」が出来るようになると、他人の課題に自分のルールを持ち込んでむやみに批評することから開放されます。その結果、その相手が本当に必要とする援助、または支援が何なのかを見極めやすくなり、相手が望んでいて自分に出来ることを、惜しみなく、迷いなく出来るようになるのではないかと思います。
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