櫛や簪を蒐集していくうちに、それらに関する書籍も集まってくるようになりました。
図録に始まり、日本髪に関する本、池田重子女史の蒐集物の本、そして芝木好子女史による『光琳の櫛』など。
とりわけ『光琳の櫛』は私の愛読書の一つになりました。
この光琳の櫛は、以前当ブログでも紹介したことがあるのですが、櫛かんざし美術館の所蔵品のもとの主である、岡崎智予女史をモデルにした小説です。
主人公の久住園は赤坂で小さな料亭を営む女性で、京都の花街で芸妓をしていた経歴を持ちます。
そんな彼女はなんと数千点にも及ぶほど、櫛や簪を蒐集しており、銘を持つ佳品の櫛を欲しては、絶対に手に入れるという執念を持った女性なのです。
その強かぶりがとてもすごくて、男性を手玉にとってまで美しい櫛を手に入れるという、かなり真似できない集め方をするのですよね。
でも園の櫛に対する執着心は、同じ蒐集家である私にとって、尊敬に値するものです。
きっとモデルとなった岡崎女史も、とても櫛を愛し執着し、強かに生きたのでしょう。
私はまだ岡崎女史の足元にも及ばない蒐集家ですが、いずれは岡崎女史のように、そして久住園のように、多数の簪や櫛を所持したいと思っております。
さて、この光琳の櫛という小説は、櫛や簪の描写だけでなく、着物や主人公である園の色香の描写もとても美しいので、ぜひとも読んで頂きたい作品の一つなのです。
ぜひ機会がありましたら、光琳の櫛を読んでその美しい世界に浸っていただくと良いでしょう。