文殺シリーズのあれこれ 『文豪、そして殺人鬼』キャスト編 | ゆるりとしましょ

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公演ごとにだいたい2パターンのキャスティングで上演され、公演時によって配役や

組み合わせが変わる文殺シリーズ。

 

ここでは、私が聴いた人たちを中心にそれぞれへのことを書いていこうかと。

まずは、シリーズのはじまりである『文豪、そして殺人鬼』から。
演者によって分量が違うのはご容赦下さいませ。

 

『文豪、そして殺人鬼』 

◆一糸朱知役 

野上翔くん(第2回)

快活な少年って感じ。甘えもするけど、しっかり自我もある雰囲気。
ラスト付近、菅が罪を悔いて語る場面彼に全力で手を伸ばすようなイメージで
否定したりすくい上げようとしたりするイメージ。
菅への思いの強さが強い。

 

酒井広大くん(第3回) 

私が最初に触れた朱知が彼でした。聴き直してみたら、色々覚えてたイメージと違ってて、

こんなに少年らしい朱知だったんだと驚いた。
無邪気で活発っぽい。全盲じゃなく少しは見えていたんだと明かした時の必死さが
菅の抱く罪悪感の重荷を下ろして欲しかったようにきこえた。
「逃げるんやね」の時の気持ちの方向性的にホッとした感じだったかな。離れることへの
寂しさはあれど、先に立ったのは若干の安堵という感じ。

 

永野由祐くん(第3回・第6回)

声質のせいかな、聞いた5人中一番幼い印象が第一声からあった感じ。
目をケガするきっかけを語る時、はじめは感情をのせずに出来事だけを口にする感じで
徐々に気持ちがあふれていく様が感じられた。
菅に「逃げるんやね」って口にした時、尺から命を狙われてる、現在の場所から逃げるんだと

思って口にしたように聞こえ、菅を責めるでなく、むしろちょっとだけホッとした雰囲気が

滲んでたようにも聞こえたり。

 

千葉翔也くん(第4回)

少しヤンチャっぽい。幼さはそこまで出てなかったかな。
自分の境遇の話をする時もあっけらかんとした物言いをしてて、彼の中では

事実をくちにしただけって感じだったのかなと思ったり。

 

小松昌平くん(第4回・第6回)

幼さは薄めな朱知って感じで勝気な部分も表に出やすい子ってイメージ。

「逃げるんやね」の所、菅が離れていくことを悟った感じだった。本当は寂しくて嫌だけど、
でも口にはできないし、自分の元から離れるなら遠くに・・・って思いから口にしたっぽい。

 

 

◆菅忠義役

熊谷健太郎くん(第2回)

ガタイの良さそうな好青年って雰囲気も持ち合わせた感じ。正義感の強いタイプに聞こえた。

自分が朱知を傷つけた張本人なのも、それを言い出せなかったことも、己の不甲斐なさだって
感じてて悔やみ続けてた人。自分へ向ける怒りが強い。
池に身を投げる瞬間の「おおきにな」の言い方、全てが吹っ切れたような感情があったように
きこえた。全体的に「ヒーロー」っぽいなって思ってた。

 

近藤孝行さん(第3回)

大人の男性。朱知が家族を亡くした辺りから、彼に寄り添う色が濃くなった感じ。
父性だったのか、はたまた違う感情だったのか、守ろうとする意識がより明確になっていったかと。

『血のつながりは大事』って口にすることに自分に言い聞かせてたんだろうな。

「死んだひとの罪は流れる」って文言を尺から聞いて、菅さんは「死へ」気持ちが向いた気がする。

そして、「もう一晩、朱知を預かって欲しい」と口にした時、完全に心が決まってた感じ。

本来は懐深い質を持ってた気がする。「朱知の友達に」と尺に言ったのも、朱知の為にっていう
のはもちろんのこと、尺の先のことを思って言った気がする。

増元拓也くん(第3回)

厭世観がすこしある感じ。生きることに疲れてるところもある。
他者と朱知に向けるまなざしにはっきりと違いがある。他に目が行く朱知に対して
無自覚で嫉妬するくらい。
長年、朱知から守られてきたと理解して、救われていたことに気づく。
最期の始末は自分でつける思いで身を投げた。

 

田丸篤志さん(第4回)

小柄でどことなく、良いとこの坊ちゃんという感じ。
善良な青年ではあるが、実のところ、そのことに疲れていたところもあった空気が漂ってる。
「死ねば罪が流れる」と思い至った瞬間、光明を得えたように一瞬、愉悦のような
心持になった声音が聞こえた。

 

益山武明くん(第4回・第6回)

気が良さそうな青年って感じ。自然と朱知に向ける視線が優しい。

4回目の時はしっかりした体つきぽく聞こえて、6回目の時は少しすらっとした中肉中背の
イメージに聴こえた。世間ずれしてる印象はあんまりなくて、大人って感じ。
単調ではないけど、わりとフラットな話し方に聴こえた。

 

◆尺光輝役

加藤将之さん(第2回)

フットワークの軽い、人好きのする記者を始終演じてた。よく笑う。
全ての企みがバレそれを笑って肯定してきかせる。手の内を明かしてる時楽しそう。
朱知の失明の原因が菅にあるのだとバラす時の言い方が、誰よりも憎らしい言い方してて
印象的だった。
ずっと、俯瞰でみてた人って感じ。そのスタンスはラストまで変わらなかった。

 

新垣樽助さん(第3回)

細身のすらっとした雰囲気。強い印象の残らない「普通に人」っぽい。
でもそれは表に出してる他者に向けている顔であって、独白なんかで声が低くなる。

本来の尺が顔を出すイメージだったのかな。
言葉で誘導するのが巧みで、「死ねば罪は流れる」って言葉も菅に向けて囁いてた感じ。
「追い詰められると笑ってしまう尺」が樽さんの尺にはいた気がする。
 

興津和幸さん(第3回)

身軽で一見、裏表がなさそうな人に見えるタイプ。少しだけヤンチャの香りもするかな。
糸目っぽい。ふわっとした浮遊感がどことなくあって、善良な人を演じてるけど、

実際はそうじゃない。あえて道化のふりをする。あえて平坦な感じで言葉を紡ぐ時がある。
後半、悪いのは自分だと菅が言った辺りから内心ざわつきだす。
「朱知の友達になってやって」と乞われ、突拍子もない菅の言葉に「はぁ?」って言葉で
イラつきが顔を出しはじめる。
菅と朱知の思い合う姿を目の当たりにして、

『生きる理由』になる人が自分の傍には今いないことを改めて自覚した。

鬼を装ってるけど、本当は誰かに気づいて欲しかった。
 

佐藤拓也さん(第4回)

始終、笑顔の張り付いた優しい雰囲気。心の中を他者に明かすことはない。
静かなるサイコパス。迷いがない。殺人への罪悪感は皆無。
朱知の光を奪った事故の加害者が菅だとバラした時ですら優しい声音をくずさなかった。
ショックを受けるだろうと予想して、その顔を想像して楽しそうにも聞こえた。
独白の時だけ、笑みが少なくなる。本来の自分の顔が出てくるから。

子供の頃のことをモノローグで紡ぐとき、ゆっくりしたテンポ。過去を思い出してるけれど、
どこか遠い所に視線があるような現実味が薄い感じ。
初めて敗北感のようなものを感じる。
2人が逝ったあちらの世界に憧れを無意識に抱く。それでも「死ぬ」理由を見つけられず
彼はこの世に留まった、ような気がする。

 

小松昌平くん(第6回)

細身のすらっとした青年。ぽきっとした口調で若干、早口だった所も。
「朱知の友達になってやって欲しい」と乞われ、自分の中に「人らしい優しさ」あるんだと
暗に言われてるようで焦った感じ。自分の中の知らない自分を言い当てられた気分で
驚いたようにも聞こえたかな。
サイコパス味が出るとゆっくり静かに口にする。
小松くんの目指してるキャライメージはなんとなく想像できるんだけど、そこまで
しっかりたどり着けたかときかれたら、私的にはそこまでは…って感じ。
セリフの間が短い気もよくしたから、そのせいで他の演者よりも若い尺に感じたのかも。

 

濱野大輝くん(第6回)

感情が若干薄めな、イイ男っぽい尺。感情の起伏もそこまで激しくなくて
昔語りもわりとフラットなイメージ。殺人に罪悪感を抱いてる感じはあんまりない。
押し殺した感情があるって感じもそこまで見えない。殺人にルーティンがあって
そこにちょっとだけ酔ってるかも?
誰かと話してる時は常に仮面をかぶってるイメージがあったのかも。

 


演じる人たちによってちょっとずつ、キャラへの解釈が違ってて、聴き比べると
同じセリフを言ってるのに印象がまるで違うから面白い。

役者の組み合わせが変われば、また違ってく聞こえたし、いろいろ試されることの

多いシリーズだろうけど、挑戦しがいはある演目ではあるんだろうなぁとか
思ったり。

ほんと、沼の入り口ですよ。文殺ってシリーズは。