文科省が急に学校にICTを使えと発破をかけていることが話題となっているけれど、学校は教室で一緒に学ぶというメディアだから、それを全く性質が異なるメディア上に再現しようとすることには印鑑ロボットを作るような無駄があります。

小学校受験をしても学習指導要領のせいで国公私立小学校の授業内容は大同小異だったのに、今や各学校が好き勝手に課題を出している無法状態で、いっそ文科省とズブズブのベネッセが天下を取ったほうがいいんじゃないかとすら思えます。通信手段が限られている時代から全世界で毎週同じ説教をしているバチカンはすごい!!

学校と塾が似て非なるように、対面授業とオンライン授業は全く別物です。私はなぜ保護者がこの非常事態に今までIT化がどこよりも遅れていた学校にいきなりオンライン授業を求めるのかまるで解せません。蕎麦屋にフランス料理の出前を頼むようなものです。当面休校なのだから、馴染みのある市販の参考書や問題集、長年実績がある通信教育、新たに伸びているオンライン教育の中から子供にあったものを保護者が選ぶのが一番理に適っています。家庭に判断力や経済力がないというのであれば保護者に代わって学校がそれらを選定して推奨するなり暫定的に仕入れて提供するべきで、学校の先生が個別にオンライン授業を企画するのは誰もハッピーにならないやり方です。

学校の先生たちにオンライン授業を期待する人たちは、まともなオンライン講座を受けたことがないのだろうと思います。インターネットがそれまでのメディアと決定的に違うのはその進化の速度です。教科書や、参考書、問題集、通信教育教材は親が子供の頃とほとんど変わらないロングセラーで、未だに黒電話やタバコの絵、野球用語が使用されていてそろそろ改訂したらいいのにと思うことすらあります。しかしオンライン教材は絶えず進化してどんどん新しいコンテンツに置き換えられてしまいます。技術の進化により出来ることが増え、それにより教え方が変化し、ライブ配信や動画、AIなどのミクスドメディアで今までにない学習体験が可能となりました。一つの教育コンテンツの作成にはベンチャー・キャピタリスト、教員の知識、クリエイティブ・ディレクター、アプリケーション・エンジニア、ユーザ・インタフェース・デザイナーなど様々な専門家が関わり、時間とお金と社運をかけて映画ような仕上がりになっている昨今、忙しい学校の先生が1人でオンライン教育に挑むのは無謀(←今日のテーマ) と言ってもいいでしょう。

良質のオンライン・コンテンツは生真面目に制作されています。Accredition Courseか否かは、オンライン教材を選ぶ一つの指標です。Diploma Millもあるので単位認定の互換性があるかきちんと調べねばなりません。Accreditionがなくても有料なコンテンツは沢山あります。重要なのは子供に合っていて学習効果が出る教材かどうかです。例えば、Johns Hopkins Center for Talented Youthではオンライン授業がある認定講座と認定なしの自習講座のいずれかの形式を選べる科目もあります。教材や課題、採点方法は同じで、自習コースは半分の期間で修了できます。娘は科目によっては自習型を選んでいます。環優舎を卒業した中学生から「学校が休校になって受けたくない授業が課題だけになって快適です」という手紙が先日来ました。Learner Centricもオンライン教育の特徴です。

娘のIT学習履歴を少々。

娘は小1~小2の頃にかけて学校で習ってタッチタイピングをマスターしました。小3からレポートはwordで作成するようになりました。小4になってからKhan Academyを始めました。2008年に始まったKhan Academyを娘がよく利用したのは2013~18年ごろで中学数学が終わるころまでやりました。オンライン高校の指定教材が教科書会社のPearsonのウェブサイトだったのでKhan Academyはやらなくなってしまいましたが、娘はKhan Academyで1人で勉強するほうが好きだったので数学は独学させたほうが良かったと今にして悔やまれます。If it ain't broke, don't fix it.  子どもに合っていて成果が出ているなら学習方法を変える必要はありませんでした。

オンライン高校 ($5,500/科目・年)、Cybrary(無料コースをやりつくして今は$500/年)、大学院のオンラインコース($3,000/6週間)

娘は5月11日にスタートしたばかりの某有名コンテンツサイトのスピン・オフの最新オンライン講座($400/7週間)を始めました。通常は1年間(30週)かかる授業を半年(14週)で履修出来ます。娘が受講しているのは正式リリース前のベータ版で7週間の集中コースです。第一課を見ましたが動画・オンラインテキスト・練習問題・テストとも今までのオンライン・コンテンツにない完成度でnew level of educational experienceです。修了したら米国の中堅大学の単位認定が取れますが、きちんと履修したにも関わらず期末試験に合格しなかったら受講料が返金されます。1) masterlyにfocusした授業をする、2) 高騰する大学教育費を適正化する、という試みで既存の学校にとっては大きな脅威となりうるでしょう。

オンライン教育の善し悪しの簡単な判断方法は、"学校の授業だから仕方なく参加している"のであればそれは多分無駄なコンテンツです。親目線で"単位互換できるレベルの授業"かどうかも判断基準となります。素晴らしいオンライン授業も沢山ありますが、無駄なコンテンツも沢山あります。子どものITリテラシーが下がるような使い方は有害と言ってもいいでしょう。時間がたっぷりあることは子供に無駄なコンテンツをやらせていい言い訳にはなりません。親は学校に文句を言うのではなく、自分の目を養って見極めてください。


今週になってから各学校から宿題がどっさり出されて困惑している保護者の方が沢山いらっしゃいます。特に、やっといいペースでホームスクールが回り始めた方ほど困られています。「新学期が始まっても困らないだけの学力があるのならやらなくてもいいのに」というのが私の提案なのですが、皆さん学校の宿題をやらないという選択肢はないようです。教育産業の中の学校というジャンルはいまとてもグラグラしています。投資は自己責任で。