モンテッソーリ・スクールにはテストがないので成績表がありません。望ましい学習態度が身につくよう工夫がされていたり、助言や注意はありますが、それが成績表で数値化されることはありません。

先週から娘の高校が始まり、すべての授業を1回ずつ受講しました。アメリカの中高では各授業ごとにSyllabus, Policy, Scheduleの3点セットが揃っているのが普通です。シラバスは講義内容のことで、旅行のパンフレットのようなものです。授業の概要と目的、学習範囲、いつ誰が何を教えてくれるか、先生の連絡先などが書いてあります。ポリシーはスポーツのルールのようなものです。どんな授業態度が加点・減点されるのか、テストでやってもいいこと、いけないこと、宿題の提出の仕方、テストの採点、成績表の付け方が細かく書かれています。私が自分が日本の学校に通っていたときは試験結果重視のようですが実際どのように成績が付けられているのか不明でしたが、アメリカの学校では授業態度20%、宿題5%、プロジェクト35%....というように成績を構成する要素とその割合が分かります。スケジュールは細かな旅程のようなものです。授業日ごとの予習範囲、宿題、小テストなどで、必要に応じて途中で更新されますが、一学期分の凡その予定があらかじめわかります。ここまで揃っていればあとは粛々と学習を進めるだけという、明朗会計ならぬ、明朗授業です。

最初の授業はどのクラスも、この3点セットの説明から入ります。一般の学校に通っていたお子さんには飛行機の安全説明のように退屈だと思いますが、娘は初めてのことなのでどれも熱心に聞いていた様子。特に成績の決まり方は、ゲームでどうやって勝つかと同じで大切なことなのでどうプレイするのがよいのか考え、すぐにゲームのルールを理解したようです。

「授業でみんなが発言するとき、どうやったら自分の番が来るのかわからなくて最後になっちゃった。手をあげるアイコンがあって、それをクリックすればいいって分かったときはみんなが意見を言ったあとだったから、被らないよう発言するのが大変だった。今度からは最初に手を上ることにした」

「(オンライン高校なので) チャットするだけでも点数をもらえるんだって! それならすぐ出来るからちゃんとやろうと思う。」

ラットも人間も、簡単に抜け道を見つけるのが上手なのはなぜでしょう? 環優舎の子供たちにも、好ましい行動をするようなインセンティブがあるルールを作ると必ず予期せぬ副作用が出ます。インセンティブよりも、地道に褒めたり注意し自然に良い習慣がつくようにしたほうが良い思うこと多々です。


娘の変わりようを見て、"授業に積極的かつ建設的に参加する姿勢"をモチベートするために、発言回数で評価をするというやり方は間違っているとつくづく感じました。成績表をつけるときにテストだけの評価では不十分というのは理解できます。日本の学校のように評価項目や基準が可視化されていないと公正さに欠けます。オンライン会議ツールを使うと挙手の回数や各人の発言時間を記録出来るのでどれだけ授業への参加具合がより正確にわかるようになりました。遠隔教育だけでなく、同じ教室にいてもこうしたツールを使って生徒の参加状態をモニターして授業に役立てている学校もあります。でもそれを評価とする場合は取り扱い注意の劇薬で、思わぬ副作用が出てしまいます。目の前の子供が全てなんだから、成績表っていらなくない? モンテッソーリ母を長くやりすぎて、成績表の必要性が全然わかりません。面倒な保護者になっているかも、私。

私はルールを決めて授業参加を評価することは良いやり方とは思えませんが、"積極的かつ建設的に参加する姿勢"を育むことが大切だということは賛成です。それはコーチングを受ければ、ある程度は本人の性格と関係なく体得できるスキルです。ビジネス・スクールではチーム・ビルディング・エクササイズを繰り返しやらせるので、そうした訓練を受けた経験者が集まると"highly effective team風"は簡単に作ることが出来ます。Task forceというやつです。これを機に娘と話をして良い方向へ持って行きたいところです。一度そうした態度が身に付けば、特に意識をしないでもそこの部分は満点をもらえますし、一生役に立つスキルではありますからね。高校の教科書を見て怖気づいたいだけれど、親が教えてやれることもそれなりにまだあるなぁと思った次第です。