神隠し | 脳梗塞と民話語り

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月・火曜日はブログ定休日だよ、

時間がないので
  現代版創作民話を作りましたので披露します

今の世相を表したものですから
   良かったら読んでみてくださいね

  神隠し
  
今は昔、昔の家族ちゅうのは大家族でな
  爺ちゃん夫婦に親父ら夫婦、そこに倅ら夫婦がいてナ 
  倅ら夫婦には子供が五人も六人も居たもんだから

  ご飯食う時なんか、おとなしくしてたんじゃ食いそびれてしまう
  オカズだって今みたいなゴッツオウはねぇ
  沢庵こうこうか、ナッパのお新香で、飯かっこむだけだったと

  そんな大所帯だ、爺ちゃん夫婦も年取って具合悪くなってナ
  奥の部屋で寝込むようになると

  親父様夫婦も倅ら夫婦も、野良仕事が忙しくて看てやれね
  そんな時、ひ孫が「じっちゃん、これ食って早く元気になれっ」
  そう言って、世話していたんだが、日が経つにつれ死んでいった。

  そんなもんだから、人が死ぬって事も学習していたんだべな
    今平成の世の中んなって、核家族化が増えてきて
      
  子供達は外に出て行ってナ、新しい家族と、新しい家を造り
   家に残ったのは、爺さまと婆さまの二人っきり

  その爺さまと婆さまも、やがてはどちらかが先に逝くと
    残されたのは、一人ぽっち

  そんな光景は、
  「なにも俺らげに限ったことじゃねぇぞ
    この村の半分以上の世帯であるかも知んねぇぞ」

  「でも、最近、はやってきているのが
    年寄りが「神隠し」にあっちゃうんだってサ」

  「へぇー、こんな年寄り、誘拐したって一文にもなるまいしなぁ」
  「九十歳の人が、十年も二十年も行方が
    分からず終いなんて事もあるんだってよ」

  「そう言えば隣の爺さま、
   しばらく見てねぇが、倅の所にでも行ってるんだべか」

  「あれっ!そうかね、あの倅、まだ嫁貰ってねぅって云うべ、」
  「まだ嫁貰ってねがったのけ、あの倅もう六十近いんじゃねぇべか」

  「この間、新聞に出てたんだがよ、
    親の年金貰いたくって死亡届出さないんだってサ」
     「あれっ、もしかして、あの倅!」
       「これ!めったなこと云うもんでねぇ、人に聞けたらとんだこったぞ」

  一人暮らしだけじゃなくて同居している年寄りまでも
   「神隠し」にあって、行方が分からなくなっているんだと

  新聞見たら、年寄りの年金ほしさに、
  倅娘が年金を受け取り続けているんだと
  「うわ~おっかね、俺らげでも、そうやられっかな」

  「俺らじでも、爺様と二人暮らしだ、
    爺様が逝ったら・・・俺らも独りぼっちになっちまうなぁ」
    「俺らだって同んなじだぁ、」

  「国の統計によっと、六十五歳以上の高齢世帯が
   全世帯の二割にも達しているんだってよ」

   「へ~ほんじゃ、独居老人は全体の三分の二って事だんべか」
  「こんな田舎でも、誰にも看取られずに逝く
    孤独死ってやつが増えていくかもしんねぇな」

「神隠しに会うのもイヤだけど、
    死んで誰にも発見されないちゅうのもイヤだなぁ」

  「よ~し、これからは婆さんパワーで
    地域活動していくぞー」 「おー」
    「まず、なにからやるぺ」「そだなぁ・・・・・・」

お し ま い





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