世界を変えた14の密約 | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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林修が初耳学で「BMIは医学的裏付ゼロ」という話を紹介した際に「ぜんぶ抜群に面白いルポ。タイトルで損してるが、怪しい陰謀論は全くない」と絶賛していた。
 14章がお金・食料・税金・貧富二極化・健康・製薬会社・労務管理・製品寿命・政治と企業の上下・現代の長者スタンス・フェイクニュース・ロボット・AI・近未来、と非常に多岐にわたりながら、1章ごとにNスぺがつくれるほどの切れ味のよい取材が施されている。一貫しているのは、いまわれわれを取り巻く世界は偶然の産物ではなく、権力者や実力者の共謀によりなるべくしていまの形になったことを解析するスタンスである。

 ビジネスは政治を駆逐し再分配機能が自己責任論で駆逐され、新自由主義の台頭で一握りの人たちが世界の大半の富をにぎり、砂時計のように中間層が無くなりかつての中間層は砂時計の下方に収れんされ、ロボットより安価になった人間がロボットのできない仕事を奪わなければ生きていけなくなり、世界は平等に不平等になりつつあるという姿である。
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  物理的な現金を手放す行為は脳神経に痛みを感じさせるという実験結果(クレジットカードでは痛みを感じにくい、だから中間手数料すら要らない電子マネーのようなデジタル経済が発展するのは自明の理で、むしろケニアのようにインフラのない発展途上国ほどその技術進展になじみやすい。オンラインショッピングは瞬間的な満足を与える駄菓子屋であり糖尿病患者にとっての砂糖のようなもの、さらに個人の嗜好という情報までただで手に入るのでビッグ5は今後これを支配したがっている)。
  アラブの春の真の原因は穀物メジャーが小麦への投機を一斉に始めたことでチュニジア・エジプト・リビア・イエメン・シリアに深刻な食糧不足が発生したことにある、ブラックショールズモデル(デリバティブの基礎となるオプション価格の算定方程式)はエイズ患者向けの生命保険という死の先物市場を生み出しサブプライムローンを復活させた、国際的な水取引という人類の存亡にかかわることすら資本家は金儲けの対象にしている。
  租税回避のアイデア普及のきっかけとなったのはイギリスで高額納税に苦しんだジョンレノンでだから彼はニューヨークに移住した、さらにイギリスが世界各地に多数の植民地を持っていたためオフショアが普及した(シビルローは許されることを規定するのに対し、コモンローは禁止されることしか規定しないので、後者のほうが新たな金融イノベーションが生まれやすく、国が停めるまでは好きなことが出来る)。
 ラッファー曲線(税率を上昇させるとある点までは税収も増大するが,その点を過ぎると逆に税収が減少するという関係を示した)がレーガノミックスなどネオリベの理論的支柱になった、中国企業がニューヨークに上場できるようになったのはローファームがタックスヘイブンのペーパーカンパニーを利用するVIEスキームを生み出して外資参入規制を潜脱させたから、地球上の富の半分4260億ドルをわずか8人が保有している(メキシコ通信王のカルロススリム・ビルゲイツ・ザラのアマンシオオルテガ・ウォーレンバフェット・ジェフベゾス・マークザッカーバーグ、オラクルのエリソン、マイケルブルームバーグ)。
  格差が際限なく拡大していく背景には、最貧困層から最富裕層へ財が吸い上げられる仕組みになっているから、例えば家賃のあがるスピードは給料のあがるスピードよりも今は早くなっている。逆に年収が平均人の1000倍ある人が1000倍もたくさん食べたり買ったりするわけではなくせいぜい数倍。トリクルダウンには現実の裏付がない。
  統計上の肥満を増やし見せかけの健康リスクあると警告し保険契約加入者を増やすために編み出されたBMI。実はBMIは筋肉と脂肪を区分していないので、ウサインボルトですら肥満に該当することになる(筋肉は脂肪よりも比重が重い)。ダイエットが太りやすい体質をつくることが飢餓実験で判明。逆に言えば、ダイエット業界にとってダイエットキープは非常に成功しにくいわけで、1回きりでないリピーターをつくる旨味のある商売といえる。しかも、ダイエット失敗を自己責任と捉えるユーザーが多いので訴えられるリスクもない。低脂肪信仰は死亡を悪者にしながらコーンシロップからつくられた甘みで味を調えているので結局ダイエットに向かないはずなのに、砂糖業界が学者を研究資金で巻き込んでそれを打ち消す学説を躍起に強調するので真実が闇に埋もれている(敵視された煙草の二の舞にならぬよう細心の注意を払っている)、ネスレはアマゾン先住民にアイスやチョコを無料で配る船を出して、これまでの食生活を壊して、新たな先進国っぽい消費を増やそうとしている。
  製薬会社はまるでチューインガムのように健康な人がクスリを常用するようになってほしがっている。製薬業界から大学研究室への直接献金が可能になったことで、そのような方向での研究が活発となり、それまでは病気として診断されることのなかった病名がやたら増え始めた(ADHD,PTSD,メタボ、SAD,生理前症候群)まるで病名のバーゲンセールであるが、たとえあいまいで不吉な感覚や不安に対してもいまや大学の研究によって病気に区分されることになり、投薬のチャンスが増えた。昔なら手のかかる子供をADHDと称して薬漬けにて不自然に大人しくさせた。ここでも基準値が操作され、年々ADHDや高コレステロールの患者が増えている。網を広げ軽度の症状の人も処方の対象にする。遠からず、遺伝子操作で老化を止めたりスポーツの能力をあげることも治療の一環となり21世紀の格差は経済格差に加えて生物格差もでてくるだろう。
  マッキンゼーは7Sを提唱した。ソフトの4S ①Shared value (共通の価値観・理念)②Style(経営スタイル・社風)③Staff(人材)④Skill(スキル・能力)、ハードの3S⑤Strategy(戦略)⑥Structure(組織構造)⑦System(システム・制度)。まるで刑務所のような監視体制を、いかに従業員から自発的に献身を引き出すかの研究において日本が参考にされ、仕事にやりがいを感じさせ、仕事への献身こそ自由精神の発芽なのだと売り込めばよいということになった。資源が高騰するにつれいずれグローバルな物価上昇が起きる。そうなれば、低賃金と低成長の上に成り立つ経済モデルはつづかなくなる。
 長持ちする消費財をつくった企業を廃業に追い込むカルテルが存在した。アップグレードはエンドルフィンを巻き起こす、アップル新製品にそのハイグレードを利用する必要がないのに誰もがならぶように。修理よりも交換のほうを安くさせる。アップルの花びら型5弁ネジにあうねじ回しはなく、修理を前提として販売していない。ついには、遺伝子操作して健康長寿を獲得するという人間の生物学的アップグレードが控えている。
  政治家の仕事は国民への奉仕から企業が経済を円滑に運営することを後押しすることに変わった。もはや企業は国家を超えるほどの富を持っており、国境もたやすく移動できる、しかも税金はごく低額しか納めない。権力の意向を象徴するのはPFI(民間資金活力事業)であり、官僚は弱体化し、ロビイストは変容した。投資家と国家との間の紛争解決手続ISⅮS法廷はニューヨーク・ロンドン・パリ・香港・ハーグに設置されているが、投資家と同じレベルの法律家を集められない第三世界が対等に戦えず、結果、政府は企業利益を損なう社会政策や環境政策に二の足を踏む抑止効果が生まれている。
  トランプ大統領は労働者代表のアウトサイダーのようにふるまうが、実際にはシリコンバレー出身のミリオネアと肌のあわない、昔ながらのものづくり産業から出てきたミリオネアでありビジネスマンである。ロシアはプーチンにより経営され、中国はあたかも国家自体が企業として行動している。ただ企業内にもCSRなどを叫ぶ進歩的CEOと株主利益の還元を最優先させようとする株主の対立軸が新たに出てきた。CEOが長期的ビジョンなら正しいことをやろうとする際に障壁となるのが四半期決算であり、長期計画を犠牲にせざるを得ない。ただアマゾンやウーバーのように、四半期決算を短期利益追求のための道具でなく、次の時代に何が起こるか知らせるシグナルにとどめることを株主に了解してもらっている会社もある。
  SNSは一瞬で自分のバイアスを裏づける道具になった。かつては新聞がその役目を果たしていた。ところが、自分の世界観に反する事実を突きつけられた人は、実験の結果、なぜその事実が違うのか反論を考えがちということも判明した。すなわち、人は自ら信じたいことだけを信じ耳障りな情報を排除しようとする。抗菌グッズよろしく、おそれはセールスにとって武器である、いまは抗菌が徹底したためにかえって子供の喘息や湿疹が増えてしまった。
  AIがどこまで人に似せることができるか(会話やりとりする複数の人間の中に1台だけAIを混ぜたとして、どれが真の人間でどれがAIか見抜くことが出来るか)、ゲームを実施した所見抜けないケースが多数出た。AIのシンギュラリティ(人間を乗り越える転換点)は遠くない。そして、スマホをとり出さずとも体内にバイオ操作アプリが網膜に装着される日が来る。これは人間対ロボットではなく、人と機械のシームレス融合である。ナノコンピューターが血液を浄化し血圧やストレスを自動調節するテクノロジーの開発。コンピューターはチェスに勝つだけにとどまらず、クイズチャンピオンにも勝利するようになった。ただベッドメイキングは複雑な作業でロボットにはまだできない。つまり、動力系の仕事と制御系の仕事に分けるとAIは制御系も支配するようになる。ロボットが扱えない仕事はほんのわずか。教師だってむしろいないことで(わからないところだけAIに尋ねる)子供が発達段階に応じて自在に学習して効率があがったという実験結果も報告されている。ロボット革命は人間の仕事を奪うのではなく、低賃金の膨大なルーティーンの労働集約的な仕事を生み出すことになる、ロボットが上司になり人間の仕事を管理し配分する。
  リーマンブラザーズは潰せるが、ビッグファイブは社会のシステムに組み込まれてしまったのでもはや潰せない。グーグルの関心は、いまやバイオテクノロジー・長寿健康・自動運転・空飛ぶ車・ドローン・大気汚染と地球温暖化のソリューション・ナノテクノロジーと極めて多岐にわたっており、未来をつくる独立国である。社員ですらその企業の信者である。フェイスブックは個人情報のバンキングを目指している。アルゴリズム化されたデータが人間を決断させるデータイズムは新時代の神ともいえる。古い町ほど古いインフラが自動運転の安全を阻害しているという現象が起きているので、インフラが何もない所がむしろ一気にシステム環境が逆転しやすい。

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