永井荷風『腕くらべ』の登場人物紹介 | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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 100年前の大正5年に書かれているので、芸者文化を知らないと、着物やその周りの小道具はピンとこずに、いちいちググる必要があるでしょう。また、小説の舞台は江戸伝来の花街柳町に対して、薩長政権の庇護を受けて新興の花街新橋なので、その辺りの地理に詳しい方がより楽しめるかもしれない。
 しかし、そこまで詳しくなくても、大正時代のドラマ’’嬢王’’であり、キャラさえ把握できれば、文体は軟らかくかつ巧みでそれでいて、何度も発禁されたわいせつな表現もあり、いろいろ観点から楽しめる作品です。粋なのか、男も女もバンバンタバコを吸います。
 同じ著者の花街シリーズ’’おかめ笹’’も続けて読んでみたい。
 そして、文庫本に収録されている坂上博一の解説は読後に読んでも読前に読んでもどちらでも味わい深いという稀有な水準に達してます。

 キャラ把握に難儀しないために、基本用語とあわせて登場人物をUPしておきます。

 

駒代♀=主人公の芸妓。尾花家の抱え芸者。吉岡から身請けを申し込まれるも巧みに返事を濁した。一糸と吉岡を両てんびんにかけていたが、、、

力次♀=意地の悪い姉さん芸者

杉島♂=大連で羽振りの良くなった客

花助♀=貯金通帳をお守りにしている現金な芸者、お金になることならばうまく立ち回る。

吉岡♂=プライドの高い精力的な実業家。力次とそのほかにも女性も抱えているが、綺麗になった駒代と帝国劇場で再会し、待合浜崎でやけぼっくりに火がつく。駒代を身請けしようと思っていたのだが、、、

江田♂=吉岡の会社での部下

菊千代♀=淫乱で奔放な性分の枕芸者。駒代とはさほど仲良くない。

蘭花♀=芸者というより女優器質。お座敷でヌードになって有名に

瀬川一糸♂=女形の役者、浜村屋ともいう。対月という待合の別荘三春園で駒代と久しぶりに会う。それがきっかけで待合宜春で駒代と逢瀬を交わす仲になるのだが、、、

お半♀=瀬川の継母。普通の芸者に過ぎない駒代が瀬川と夫婦になるのを全く歓迎していない。

金竜♀=実業家の妾になっていた時に実業家が死亡したため、にわかに金持になった芸者。力次姉さんが可愛がっている。
お定♀=元芸者の内箱(芸者側に所属して芸者の送迎や身の回りの世話をする人)。

呉山老人♂=新橋では古看板で知られた尾花家の主人。昔気質の人、高座の講談師でもあった。

倉山南巣♂=新聞小説家。浄瑠璃も書く。昔気質の人、妻の名はお千代。

十吉♀=呉山老人の妻

山井要♂=芸術家と称して、西洋の裸体画を会員向けに出版して金儲けしている俗物。

お歳♀=山井要に惚れて、飲食を供してあげ、いい仲になった鶴菱という銘酒屋の女。

滝次郎♂=呉山の子供。女や博打に手を付ける不良少年で親に勘当された。山井要に憧れている。

海坊主♂=潮門堂主人。茶屋対月で、金に物を言わせて芸妓を苛めては喜ぶ成金。

宝屋♂=金で手を回す手法で、業界でなりあがってきた芸者屋の亭主

 

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箱屋(芸妓の三味線を箱に納め、座敷に向かう芸妓に同行する付き人。芸者の玉代を記入する玉帳という帳簿の勘定もとりおこなう)

半玉(半人前の、年少の芸者)

待合(待ち合わせのための場所を提供する貸席業。主に芸妓との遊興や飲食を目的として利用される場所)
うずら(劇場の1階桟敷)

水仕(台所で見ず仕事をする下女)