日弁連臨時総会で東弁会員の複数の委任状の変造が露呈 | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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http://kabumatome.doorblog.jp/archives/65887471.html 

 正当な受任者と異なる会員に委任したかのように変造された被害会員の名前と変造された現物が写真でUPされています。
 修正箇所に押捺された印鑑が被害会員のものでなく東弁会長の判子であること、被害会員自身が修正を了解していないことをSNSで明言していることからも、非常に高い確率で、これらの委任状は変造されたといってもよいでしょう。
 なお、私は福岡県弁に議案ごとの委任状を差し出しましたが、○の位置を勝手に変えられてたら同じです。委任状を預かった組織による変造がありうることは議決権の代理行使による会員の意思表明を躊躇させ、正しい意思表明の機会を奪うもので、あってはならないことです。弁護士の業務の1つには議事運営の指導があるのですが、委任状の適正な管理はまさしくそのメソッドの1つに含まれるものです。

 

 教えて!GOOでも執筆者が法律家かどうか不明ですが、委任状の委任者への無断修正は刑法159条2項(有印私文書変造罪=3か月以上5年以下の懲役)にあたると明記されています。
 この条文は司法試験に合格した法律家ならだれでも知っているレベルのものです。
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/5544420.html

 

  日弁連執行部からは、この委任状については「誤って別の会員に振り分けられたもの」という弁明報告がなされたそうですが、誤まって本来の受任者に二重線を引いて、誤まって別の会員名を書いて、誤まって東弁会長印を押して、とか誤りが3つも重なるわけがないです、普通に考えれば故意を認定するほかないでしょう。
 なお、東弁執行部からは「事務局のミス」という弁明がさっそく広報されています
http://www.oricon.co.jp/article/132342/

 

 書き換えられた委任状で議決権行使を委託された受任会員から、総会決議無効の動議を出したところ、議長は「そのような動議はしない。後は決議無効確認訴訟で争ってください」と言い放ち、それを言われた受任会員は「今日の決議で利用された委任状の現物はすべて捨てないでほしい(ほかにも変造されている被害会員が存在する可能性があるから)」と求めたのですが、議長からは保管するという約束はなく「東弁内部で調査していただく。この問題はこれで終わりにしたい」ということで、見舞金制度が可決し議事終結。

 仮にほかに変造に気づかない被害会員がいたとして、日弁連執行部が変造した委任状をわざと破棄した場合には、証拠隠滅罪(刑法104条)が成立するかもしれません。
 というのが、委任状の変造者が日弁連でなく東弁だった場合に、別法人で他人の刑事事件にあたるから。他方、委任状の保管者が東弁だったならば証拠となる委任状を破棄しても構成要件に該当しないというこの皮肉。
 マスメディアは見舞金制度の可決を報道するために来ていたのに、まさかのハプニング。

 

 WIKIPEDIAには「弁護士自治とは、弁護士が権力から独立し、自治により職能集団としての弁護士を統治するありかたをいう」と定義されています。組織として自らを治めるには、最低限のモラル(自浄力)がなければならず、もはやそれすら失っている団体であることを、露呈させてしまいました。

 刑事事件への進展、総会無効確認訴訟の前に、少なくとも、東弁以外の各単位会は、現時点でできることとして、自らが同様の委任状変造に手を染めていないなら、「委任状の変造はあってはならないことの再確認」「東弁内部での、迅速な関与者の責任徹底追及(懲戒含む)による再発防止を求めること」「各単位会が承認した日弁連臨時総会に利用した委任状の原本保管を徹底すること」この3点について、常議員会決議なり会長声明なりだすべきでないか。
 身内に甘い対応こそ、世間へのアピール力を甚だしく損なうし、企業に法令順守とか勧める立場と矛盾するぞ。なにより少なからぬ会員が自浄力の無さに呆れかえってプロボノを放棄しかねるぞ。弁護士自治崩壊のカウントダウンの始まりが今日かもしれない。

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