MIKATA以外も日常トラブルで使える弁護士費用特約の販売を開始する | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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 2015/12/1からいま、売上高では日本トップの3メガ損保の1つ、損害保険ジャパン日本興亜(株)が日常生活における法的トラブルに備えた弁護士費用特約の販売を開始する
http://www.sjnk.co.jp/~/media/SJNK/files/news/2015/20150831_3.pdf
 とうとう少額短期保険のみならず3メガ損保もこの領域に参入してきた。ただし現時点では導入形態に幾つかの特長がある。

1、傷害総合保険の特約ではあるが、企業を契約者とする団体契約で、団体の構成員が加入者となる
 →個人は契約主体として想定していない。つまり、SJNKは企業向け保険のセールスポイントにする狙いが強いようで、純粋に個人を契約主体とするMIKATAとは違いがある。
 推測するに、SJNKが売上を伸ばしたいのは企業向け保険なんだろう。

2、補償対象の法的トラブルに、遺産分割や離婚が入っている。
 もし従業員はこの特約を利用しようと思ったときも、同時に企業に「いま遺産分割でもめてて」「いま離婚でもめてて」という話を伝えないといけないとなれば、利用を躊躇することもありうる。
 企業がトラブル内容を知りえないファイアウォールの構造的設置が必要となるが、それはどのような仕組になるのか、ハッキリしない。

3、人格権侵害はいじめを想定しているのだろうが、定義次第では、ネット上の名誉棄損も含まれることになる。
 現在、ネット上の名誉棄損は弁護士に依頼しても必ずしも費用対効果が見合いにくい(どうしてもある程度の弁護士費用を必要とする)領域ではあるのだが、もしネット上の名誉棄損も人格権侵害に含む定義になっていたら、かなりその領域での弁護士利用が増えるのでは
 補注)人格権侵害に関するトラブルの場合は、警察などの公的機関または学校などの相談窓口への届出などを行い、その事実を客観的に証明できるトラブルに限ると小さい字で書かれていました。


4、労働はオプションになっていますが、セクハラなりパワハラなり未払残業なり労働トラブルを従業員が利用する場合の相手方となるのは、当該契約者となった企業ですよね。
 すると、労働をオプションで付するというのは、自分を刺すナイフを貸すに等しいわけで、労働はオプションにするより最初から除外したほうがよくはないですか、商品設計として。

5、MIKATAの普通保険約款の箇所で説明したとおり、交通事故の弁特のように自己負担ゼロという形にはならないほかに(現時点では相談の自己負担金は1000円、弁護士費用の自己負担金は10%と明記されている)、適用除外事由がけっこう細かく設けられるのではないかと予測する。また、支払基準も内規に即した形になるそうです。
*写真がぼけていますが、写真をクリックすると文字も鮮明に見えます
 この自己負担割合自体もMIKATAと異なっているし、今後、他の損保もこの領域に参入してくることで、よりスタンダードな約款類型ができてくるのではないかと期待したい。
 


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