弁護人選任届だけ取り付けて入金までは業務を中断する被疑者弁護はアリなのか | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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  最初に言っておきますが、いまの私は全く刑事事件をしていませんので(稀にある私選を除いて)、いまどきの刑事事件に関する知識不足のまま言及していることはご容赦ください。
 弁護士専用のSNSでこんな話が話題にのぼっています、問題点を意識しやすいよう、事案を少しわかりやすく変えていますが。

【被疑者国選対象の刑事事件。被疑者の親族が、刑事事件を専門的に取り扱う法律事務所に接見を依頼した。
 被疑者は弁護士を信頼して、言われるがまま弁護人選任届をその弁護士に提出した。
 接見から戻り、弁護士は親族に、被疑者から聞いた被疑事実の内容や、被疑事実と異なる被疑者の弁解を伝え、防御のためには弁護士を就ける必要が高いので、被疑者の希望に従い弁護人選任届を取り付け、急ぎ捜査機関に提出したと説明した。
 そして、今後も引き続き被疑者弁護を続けるにあたっての料金を説明した。が、その金額は被疑者の親族が容易く用意できるものでなく、思いのほか高額であった。
 弁護士から親族は、着手金が支払われるまでは弁護活動に入ることができないと言われた。結果、親族が着手金を用意できたのは、最初の接見から1週間後であったが、その間、弁護人は具体的な弁護活動をしなかったので、被疑者の供述が捜査機関の思惑とおりに固められてしまった
 こういうやり方をする弁護士が黙認されてよいのか!!(怒)

 疑問点その1:親族が依頼するお金を用意できるかどうか不明な時点で弁護人選任届を被疑者から取り付ける行為は、品位を損なう方法で事件の依頼を勧誘(弁護士職務基本規程10条)したことに該当しないのか
 疑問点その2:弁護士は弁護人選任届を受領した時点で、事件を受任したことになり、着手金の支払を待たず、速やかに被疑者弁護に着手しなければならない義務(弁護士職務基本規程35条)が発生するのではないか
 疑問点その3:弁護士が着手金の支払があるまで刑事弁護活動を停止したことは、被疑者の防御権を擁護するため最善の弁護活動をなすべき義務(弁護士職務基本規程46条)に違反するのではないか
 疑問点その4:弁護士は弁護人選任届を受領するならば、被疑者に仮に親族がお金を用意できなくても、弁護権保障のために被疑者国選制度があり、これを利用できることを説明(弁護士職務基本規程33条)しなければならないのではないか

 債務整理については、受任弁護士自らが個別面談により事情聴取すべき義務、不利益事項や民事法律扶助の説明義務、過払金返還請求のつまみ食い禁止などを、2011年に日弁連がルール化した。
 しかし、刑事弁護については、上記の設例が起きる危険を防ぐルール化はまだされていないようなので、そういうことをしている法律事務所が存在しているようなウワサが流れている。
 刑事弁護では民事と異なり1日1日の着手停止が取り返しのつかない状態を生むことも珍しくない。弁護士性善説に立たず、刑事弁護に関して一刻も早い日弁連による明確なルール化を望む

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