消費生活相談業務の民間委託に問題はないのか | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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 かつて消費生活センターといえば、地方公共団体が住民サービスの一環として丸抱えする存在だった。
 ところが、財政難を解消し経験豊富な人材の確保を図るという目的から【民間人でも可能なことは民間にやってもらうのが合理的だ】というお題目で、民間委託が全国各地で進んでいる。
 http://www.caa.go.jp/region/100209plan5/reference3.html

 民間委託には、経験豊富な人材を確保しやすくなる、勤務シフトの工夫による土日開所など民間ならではのサービス向上が実現できる、そして何より役所の財政負担や事務負担が軽減されるメリットがあると、消費者庁の調査で公表されている
 http://www.caa.go.jp/region/pdf/131022sankou_6.pdf

 福岡市の民間委託先は、株式会社ビスネット という営利企業である。
 これに対し、福岡県弁護士会は少なくとも営利企業への業務委託は不適切という意見書を出しているものの、上述の事情からか福岡市がこれを辞める様子はなさそうである
 http://www.fben.jp/statement/dl_data/2013/0312.pdf
 
 私は消費者委員会に所属していないけれども、意見書を読んですぐ得心した箇所は、①相談業務の中立性が制度的に確保されていないのではないか、PIO-NETを株式会社が利用できることによるリスクを軽く考えすぎているのではないか、の2点である。

 ①について、株式会社ビスネットは、モニター調査グループインタビュー を業務として行うことがある。当然、企業からお金をもらって行うのであろう。もしその企業に関する消費者相談が来たとき、果たして中立的に調整が行えるのだろうか、普通行えないだろうと思えるのだ。
 だって、企業経営には継続的な資金調達が必要であって、もしそのモニター調査を依頼している会社が大スポンサーだったなら、厳しく接することはのちの仕事を失うことにつながるのだから、手心を加えない方が不自然である。
 
 ②について、PIO-NETの情報というのは企業にとって宝の山である。消費者の苦情とは、新製品や新サービスを開発する手掛かりになることもある。同業他社が進出したり提供している商品やサービスの欠陥点を知ることができるのだから。
 先ほどの話と関連するが、もしビスネットが「ひそひそ、、、当社の知るところによればA社のこの商品はかくかくしかじかのクレームが入っているようですよ。ですから御社の商品はこの点を注意して製造したり販売した方が良いですね」などというサービスをはじめたらどうだろう。
 ビスネットがしなくても、ビスネットにかつて在籍していた職員が独立してやることは全くあり得ないと言い切れるのだろうか。PIO-NETの情報がこのような形で使われるリスクもゼロではないのである。

 とはいえ、時代の趨勢であり、一切の民間委託を辞めろと言い切ることももはや無理だろう。ただ、そういう発想を持てば、少なくとも営利企業はマズイんじゃないのと気づくはずなのに
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