ネズミ講の上位会員の不法利益、破産管財人からの返還請求を認容 | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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 件の会社(株)クインアッシュは、デジタルコンテンツブログという商品の代金など出資金を支払って会員になれば、2年間にわたって毎月出資金の10%に相当する配当金が返還される、また、他の会員を紹介すればさらに高い配当金がえられるとうたって全国4000名余りから25億円余りの出資金をかき集めた末、平成232月に破産しました。
(株)クインアッシュの事業は無限連鎖講防止法(通称ネズミ講禁止法)に抵触するものでした。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141028/k10015753891000.html

 

 (株)クインアッシュの破産管財人は、お金の流れを調査し、出資金を支払った会員の中にも、多額の被害を被っただけの悲惨な下位会員と、他方、事業遂行の過程で会員を勧誘して多額の紹介料などを受け取った上位会員がいることを突き止めました。

そして、破産管財 人は返還財力がありそうな上位会員に対して「アンタの獲得した利益は、たくさんの被害者の犠牲で生み出された不法な利益だ。会社がやっていたのはネズミ講 という公序良俗に抵触する事業だ。会社がアンタに支払ったお金は、公序良俗に抵触する事業を遂行するための契約に基づいて下位会員の犠牲の上でアンタに支払われたもんだ。その契約は公序良俗に反して無効なのだから、アンタは受けとった金を不当利得として会社に返金し、たくさんの被害者の弁償に充てるべきだ」と獲得した利益を吐き出すよう主張したのです。

果たして、上位会員は真っ向から破産管財人への返還義務はないと争ってきました。

「たしかに、会社がやっていたのはネズミ講という公序良俗に抵触する事業だ。でも会社はその違法な事業を自ら遂行していた主体だぞ。仮に会社が倒産せず今も生き残っていたら、公序良俗に抵触する事業を遂行するために契約してお金を会員に渡しておきながらぬけぬけと返金せよという請求はできなかったはずだ。不法原因給付の規定があるのだから。だから、会社が倒産して破産管財人から請求されたとしても、裁判所が返金を命じることもできないはずだ。会員への支払が不法原因給付だったことに変化はないのだから」

この不法原因給付(民法708条本文)の典型例はこうです。

Aが賭博で負けてB100万円支払った。もともとこの100万円の支払はAB間の公序良俗に反する無効な賭博契約によるから、Bは法律上の正当な原因を欠きながらAから100万円を受け取ったことになる。
 ただ、Aは賭博という公序良俗に反する不法な原因に従って給付したのだから、司法はA100万円をBから取り戻すことに助力しない。ゆえに、
Bに渡した100万円を、たとえ渡した原因が公序良俗に反する賭博であったとしても、Aが返還請求することは認められない>

 

 東京地裁2012/1/27金法1981108頁・東京高裁2012/6/6金法198197頁は上位会員に軍配を上げ破産管財人を負かせ、東京高裁2012/5/31判タ1372149頁は破産管財人に軍配を上げ上位会員を負かして、下級審の判断は真っ二つに割れていたのです

 

 最高裁2014/10/28 は前記東京高裁2012/6/6をくつがえしたのですが、木内道祥裁判官の補足意見を除き多数意見は東京高裁2012/5/31のように法 主体云々という講学上の理由づけは付さず、「仮に上位会員が破産管財人に対して返還を拒絶できるとしたら、被害者である他の会員の損失の下に上位会員が不 当な利益を保持し続けることを是認することになって相当でない。上位会員が、破産管財人に対し不法原因給付にあたることを理由に返金を拒むことは信義則上 許されない」と信義則を持ち出してきたのです。結論にも少し驚きましたが、理由づけがラフなことはかなり予想外でした。 


最高裁のケースはネズミ講でしたが、世上数多あるMLMへも波及することを期待します。
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