「社内弁護士」急増!そのワケは? 2014/7/17WBS番組ルポ | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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最初に紹介されたのがヤフー!
IT企業らしく、社員たちはカジュアルな服装。

シャツにジャケット姿のネットセーフティ企画室・尾西祥平弁護士(2012年登録)は、2013年にヤフーに入社した入社2年めの若手社員。弁護士バッジを持ってはいるが、会社の中でつけることはない。

入社2年目だが、吉田奨企画室長との重要な打ち合わせにも参加する。
「インターネットプロバイダーとしての当社の重要性について、どこまで裁判所に伝わっているのか若干疑問に思う。」「裁判官は年輩の方が多いので分かりやすい資料を作って(尾西氏が)まとめてくれるとありがたい。」

 

尾西氏は訴訟対策で重要な役割を果たしている。というのも、ヤフー知恵袋などの書き込みで、名誉毀損されたと考えるユーザーが、プロバイダーを訴えるケースが増加しているため、ヤフーにとって裁判への対応は重要。
さらにヤフーは、前例のない新ビジネスに取り組むことも多く、法的にサポートすることも重要。「日々前例が乏しい事案ばかりなので非常にチャレンジングな仕事だと思う」

 Tシャツ姿でやってきた新入社員の田中芳樹氏(登録年不明)も弁護士。「どういうビジネスが望ましいのかを法律的側面からサポートして一緒に考える作業に加わるのは面白い」
 現在、ヤフーの社内弁護士は18人。その数は日本ではトップクラスで(ほかにも、三菱商事17名・三井住友銀行13名・三井物産12名・伊藤忠商事12名・みずほ証券12名・野村證券10名が紹介されていた)、アメリカでは自然だが、日本でも大手企業で採用が増えてきた。実は日本の社内弁護士はこの10年で、10倍以上の1000人近くに増加している。

 

ヤフーコーポレート政策企画本部・古閑由佳本部長「法律知識は確実に身につけているし、裁判実務についてもしっかり知識を持って入ってくる。そうした観点から積極的に採用を進めている」

 

次に紹介されたのが住宅設備最大手・LIXIL。
コンプライアンスの徹底に取り組むLIXILでコンプライアンス強化のため採用されたのが社内弁護士である法務部・青谷賢一郎弁護士(2011年登録)。

 

「ライバル社と接触するのはカルテルや談合の温床になる。青谷賢一郎弁護士が社員と行っているのは、独禁法の社内監査のリハーサル。LIXILでは2014年7月から社内弁護士が地方支店に出向き、独禁法に関する監査を始める。
「日々の事業活動、営業活動に独禁法違反がないかは、チェックしないと分からない部分がある」

 

5社が合併したLIXIL。タイルや玄関ドアなど、高いシェアを誇る商品が多いため、独占禁止法に注意する必要があり、社内弁護士を監査に活用して、コンプライアンスの徹底を図る。LIXILでは20147月現在、社内弁護士は6人。M&Aなど外国企業との契約でも活躍。LIXILでは、弁護士の採用環境が大きく変化したと感じている。
 法務部・二宮圭二法務室長「1年半くらい前から応募が急激に増えたと感じている。」

 

C&Rリーガルエージェンシー社近藤和志取締役「弁護士の合格者が増えたことに起因している。法律事務所以外にも弁護士自らが働く場所を求めて企業という分野を開拓した。」

 

司法制度改革によって1980年には11441人だった弁護士は2013年には33624人に急増したため、既存の法律事務所だけでは弁護士を抱えきれなくなった。


 ただ年収を考えると、法律事務所の方が企業より高いというイメージがあるが・・・?

 

「もちろん大手法律事務所は給料が高いことが実際あるが、一般的な法律事務所と企業の給料は大きな差が無い」
実は弁護士の数が増えているのに、訴訟の数は
2002年の587万件から2012年の379万件に減少傾向。このため弁護士の年収も下落している。

 

ここで匿名を条件に、法律事務所の弁護士が実態を明かしてくれた。

 

「昔であれば30万円いただいていた事件が20万円でないと厳しかったり相場が下がっている。年収200万円いかない場合もある」
かつて弁護士合格者の間では、法律事務所が一番という空気があったが、合格者の意識は大きく変化している。

 「法律事務所の弁護士が土日もなく働いているのに比べると、社内弁護士は休みもきちんとあると聞いているので、正直うらやましいと思う気持ちはある。企業の年収800万円でも当然高い年収だと思うし、どっちにいったら成功で、どっちに行ったら負けとかそういうイメージは全くない」

 

こうした中、地方自治体にも動きが。東京・多摩市役所では弁護士資格を持つ、総務部・船崎まみ(2007年登録)副参事を職員として2014年4月に採用。この日は防災安全課で会議。倒壊寸前の空き家対策のため、多摩市は条例の制定を検討中。

 

「強制的に取り壊しができる代執行を条文にいれた場合、法的な問題は?」「あとで所有者から訴えられたり財産権侵害で問題になってくる。第三者の審議会を設けたり、事前に何らかの形で所有者に弁明の機会をきちんと与える」
こうした役所内部の法律問題には、従来は顧問弁護士が月1回対応するだけだったが、今は弁護士資格を持つ船崎氏が毎日対応している。

 

そんな船崎氏に、多摩市・阿部裕行市長も期待している。「みんなで幸福感のある健康都市をめざしていきたい。そんな条例も作っていきたい、力を貸してほしい」地方分権をめざし独自の政策作りを目指す市長、船崎氏の法律の知識がますます必要になってくる。
「弁護士を必要としている人は社会のいろいろな分野にいると思うので、広がりを見せること自体は意味のあること」


みずほ総研・チーフエコノミスト・高田創のしめのスタジオコメント。
「供給要因とすると、ロースクールができてから大量の弁護士の供給になっており、従来の弁護士事務所だけでなく、企業のところに行く、ということがそもそもの弁護士改革の中で重要な部分だった。通常の業務の中に、コンプライアンス重視だったり、コーポレートガバナンス重視だったり、そういう動きが出てきている。
イレギュラーな大きな案件が発生した場合には今なお顧問弁護士に頼むというスタイルになっているようだが。」


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