弁護士後見人の不祥事対策5項目を日弁連が提案 | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

福岡若手弁護士のブログ「ろぼっと軽ジK」は私です。交通事故・企業法務・借金問題などに取り組んでいます。実名のフェイスブックもあるのでコメントはそちらにお寄せ下さい。

 恥ずかしながら福岡でも被後見人の財産を守るべき弁護士が、積極的に被後見人の財産を蚕食し刑事事件に発展するニュースが何度か報道されましたお金

 以前は東京大阪といった大都市以外では弁護士の着服事案は見受けられなかったのですが、弁護士激増による経済的苦境が全国に広がったため、静岡・香川・名古屋・岩手・神戸、どこで起きても珍しくなくなりました。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131003/crm13100322210016-n1.htm

 日弁連では平成23年にアンケート調査を実施しており、その際は不祥事予防対策として次の3つがあげられていました。
ⅰ、複数後見の活用。ⅱ、後見監督人の選任と同意の活用。
ⅲ、金融機関との協議による、払出行為の規制

http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/committee/list/data/koukennin_houkoku.pdf
 
 ⅲに関して、2013/6/4に日経新聞で<後見制度支援信託の対象を、親族後見人と専門後見人とを問わず、被後見人全員に拡大適用することに、最高裁と日弁連が合意した>と報じられたましたが、棒線箇所は誤報との指摘がなされています。http://gohoo.org/alerts/130612/

 日弁連は専門後見人が就任している場合は、たとえ後見制度支援信託が弁護士後見人による横領を予防する効果があることは認めつつも、後見制度支援信託利用に反対のスタンス をとっているようです。

 信託銀行が濡れて粟で儲けることが日弁連はイヤなんでしょうか。
 「親族後見人には性悪説で臨んで問題ないが、弁護士後見人は性善説で臨むべきだ」というスタンスなら、現に弁護士後見人に虎の子の資産を横領された被害者たちの前で言ってみてほしいですよぷんちゅか
 http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/111018_3.pdf

 さて日弁連新聞2014年3月号に、日弁連がとりまとめて各単位弁護士会に要請する<弁護士後見人の不祥事対応策5つ>が載ってます。
 『今後とも増大する成年後見制度利用の中で、弁護士が専門職後見人の一翼を担うことは国民の期待するトコロであり、また今後の弁護士業務の位置づけとしても重要である
 後見人の監督権が法律上は家裁にあること、弁護士会員の個々の業務に過干渉にならないように配慮しつつも、被後見人自らは苦情の声をあげることが困難であるという特殊性を踏まえ』、日弁連は今回の取り組み検討5項目を提案したそうです。

1、一定の質が確保された的確な人材を登載した推薦名簿の整備
(研修の受講義務、一定の弁護士職務経験年数、定期的な登載の更新など)
2、家裁と情報共有や早期対応ができるよう、定期的な協議会の開催
3、定期報告書遅滞のチェックを通じ、家裁から必要な助言を図る体制を構築
4、家裁が適切な後見人の選任を行い得るよう、現在の推薦方式の見直しを検討
5、弁護士後見人の職務ガイドラインの基準化・後見人業務に精通した会員による相談窓口の開設などバックアップの整備

 全て並べてみたが、どれ一つとっても、後見人弁護士が横領行為に着手することを、いまわのきわで防ぐ効能はゼロと言ってよいものばかりです
 本当に国民が弁護士後見人を望んでいるなら、弁護士がその領域の仕事でてんてこ舞いになっているはずなのにそういう事実が無いことからみても、冒頭の棒線箇所のおためごかしもひどいもんです。
 
 たとえば「人の預り金を横領しちゃいかん」なんてガイドラインにうたうまでもない研修以前の倫理だろうし、経験年数が高いほど経営基盤がしっかりして横領リスクが下がるなんて事実も全くなし、家裁と弁護士会が協議しようとも経験のある弁護士に相談できる体制をつくろうとも「来月家賃と人件費が払えません。。。」なんちゅー弁護士をタイミングよく堰き止められることはまずないでしょう、突っ込みどころ満載です。

 そもそも事件数がキャパを超えており、家裁や弁護士会が現実的に監視できないから、それを補う意味で後見支援制度信託が重宝されているという背景もあります、便利な道具があるのに自分たちの業務領域を保持するために利用させないなんて、誰の方を向いた仕事なんだか本末転倒もいいところじゃないすかね。

 かろうじて、3、定期報告書の遅滞チェックだけは被後見人の被害が長期的に広がることを防げる効果はあるでしょうが、例えば、50万円ずつ20か月かけておろす被害と、1000万円を1か月間におろす被害は、実態としては同じわけで、長期にわたって行われる横領事案しか防ぐ効果はないのです。

 後見信託支援制度の拡大に自らの業務縮小を防ぐために反対するという狭量な団体であることは仕方ないにせよ、こんな弁護士後見人による不祥事を防ぎようのないおためごかしの提言しかできないのなら、弁護士自治があるのでそっくりは導入できないでしょうが、端的にカルパ制度類似の制度の導入 を早急に検討すべきである
 、、、と私は何年も前から提言しているのに、日弁連はいったいどこを見とるのだろうむうっ
 ↓ランキング参加中、更新の励みになります、1日1回応援クリックを
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村     http://jiko110.jp/