本紹介《ザ・ニューリッチ~Richistan》ロバート・フランク著 | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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福岡若手弁護士のブログ「ろぼっと軽ジK」は私です。交通事故・企業法務・借金問題などに取り組んでいます。実名のフェイスブックもあるのでコメントはそちらにお寄せ下さい。

 私の日常生活からは全く縁遠い存在なのですが、読もうと思わせたきっかけはNHKスペシャル’新富裕層VS国家’を見たからです。
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20130910-00010003-biz_bj-nb
 阿部公久氏はじめ、何十台もの赤いフェラーリが連なって、シンガポールから隣のマレーシアまで(距離140km)、1杯千円以下のローカルヌードルを朝早くに食いに行くシーンという、えらくバブルで刺激的な行動がTVに映させていたんですが、この新富裕層なる存在はアジアより圧倒的にアメリカで増えている存在だそうで。

 おりしもエイベックス社長松浦勝人氏が「こんな僕でさえ富裕層と言われるならば、富裕層は日本にいなくなっても仕方ない」とfacebookで呟いて話題になったんですが、同意するにせよ反論するにせよ、情報を得ようとしないで正確な評価はできないんじゃないかと

 そう思ってこの本を手にしたのです。読後、漏れのない形で内容を上手くまとめたブログを見つけたので、忙しい人はこの記事を読んでください(なおリーマンショック前の著作なのでそのことを踏まえて読む必要はある)。
 邦訳された引用本のアマゾンURLもリンクされているのが魅力
http://memodokushonote.seesaa.net/article/311468766.html#more
http://memodokushonote.seesaa.net/article/311680838.html#more
http://memodokushonote.seesaa.net/article/311844660.html#more
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 本の目次も紹介しておきますね
http://www.tradersshop.com/i/bin/showprod?c=9784478001196

 新富裕層の増加するスピードに、優秀な執事(ハウスホールドマネージャーと今は呼ぶらしい)の供給が追い付いていないので、就職は引く手あまただとか知りもしない世界でした。カジノディーラーよりおもてなしの日本人向けの職種かも。

 新富裕層のタイプはIPO創業者・ストックオプション・M&A売主・ファンドマネージャー・企業CEOの5つに分けられていました。
 ただ、前3者になるには必ずしも高学歴である必要も金融工学も必要ないので、ミニチュアハウスとか材木屋といった、日本では想像もつかない仕事のビリオネアが紹介されていた。実は新富裕層のほとんどはその人がお金持ちであることはあまり一般人には知られていないそう。

 新富裕層の間でも、ロウアーとアッパーでは100倍も1000倍も差があって、その差はどんどん広がっているらしい。そして新富裕層の特徴としてワーカホリックが登場しているそうだ。
 つまり、オールドリッチのように、スポーツをのんびり楽しんだり、映画を最後まで見たり、忍耐力のあるタイプとは変わってきているんだと。そういわれりゃ、孫正義氏も柳井正氏もれっきとした新富裕層だよね。

 アメリカでは、新富裕層とオールドリッチの間で、慈善パーティだったり会員制クラブなどでの階級闘争というか、確執があるのは映画チックでした。金持ちケンカせずじゃないのね。ゴシップが一番の刺激で娯楽だからかな。同じパームビーチ内で服装や行くレストランが違うというのもユニークではあるがみみっちい。

 お互いに財力の証しを示すためによりでかいクルーザー・よりでかいPJ(プライベートジェット)・よりでかい家を競うように買うので、売主だったり日常手入れのための従業員雇用だったりトリクルダウンが生じているという言い方がされてたんだけど、、、どうにもアホくさい。
 お互いの見栄はりのために消費が過剰化していくことを、ヴェヴレンの顕示的消費と呼ぶらしい。何かの機会に使おかな、この言葉。この顕示的消費のために、毎年2ケタの割合でぜいたく品が値上がりしてるんだとさ。そうそう、絵画も例にあがってたな、まさしくバブル再来。

 リーマンショックの前だから、フランクミューラーのクレージーアワーズ がべた褒めされてたな。知らない人に言っとくけど、おもちゃの時計じゃないよ、値段もちゃんと見てね。

 とはいえ、新富裕層の慈善活動と、政治活動にはしびれる感動を覚えました。フィリップバーバー の「一褸の望み」かっちょえぇ~
 真に人の役に立つ慈善活動は何か、日本テレビの24時間テレビを見て疑問を感じた人は、この本の第8章だけ抽出して記事 をつくりましたので、ぜひ読んでほしい。

既存のNGO団体のことは知らないが、これを読むと日本テレビの24時間TVが真の慈善でないことをやはり感じた私です。

 それと新富裕層が政治に自ら携わり始めた理由が振るってる。
 ミドルリッチやロウアーリッチは減税や規制緩和など自分に短期間で利益をもたらす政策を誘導してくれるかに関心を払うけれども、アッパーリッチは環境・財政・教育・医療・雇用といった数世代を見越した遠大な政策を実行してくれるかに関心を払うらしい。

 恒産無き者、恒心無し。そういえば最近の弁護士からは私も含めて人格的に余裕を感じさせる発言を耳にしないが、やっぱお金は人生観に影響をあたえるのですね、万国共通で。
 「政治家とつるんで設けたるで」そんな次元はせいぜい越後屋くらいの小金持ちの発想なのね。
 
 後は、新富裕層も子供の教育で頭を悩ませてるとか(例:パリスヒルトンやニコールリッチ―のシンプルライフ )、新富裕層はオールドリッチと比べてお金との付き合い方を伝統で学んでいないから代わりにサポートグループでお互いの悩みを似た者同士で話し合うとかいう話だった。

 著者は最後に「多くのアメリカ人は今なお富裕層を肯定的に見ている。国民の望む格差是正策は、富裕層を罰することではなく、中間層への恩恵を施すことにある。だから、プルトノミー(格差拡大)がリッチスタンの増加を終焉させる可能性は薄い。今後、リッチスタンは国家を簡単に飛び越える存在としてますます大きくなっていく。同時に、国家との結びつきを失い、リッチスタンという国籍無き世界市民になっていくようだ。」と結んでいる。
 英語の苦手な私もリッチスタンになれるかしら?(変なオチで終わった、、、)
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