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2013/4/10怒り新党で夏目三久アナとマツコデラックスが、番組最後に泣いて司会ができなくなったということで話題になっている回を、とりあげました。
スルヤボナリー選手はフランスの黒人女子フィギュアスケーターで、もともとは体操選手をやっていたけれども、女子フィギュアに転向しました。
日本でいえば伊藤みどり選手の後の時代、ヨーロッパでいえば東ドイツ出身で80年代に抜群の強さを誇ったカタリーナビット(世界選手権4回+オリンピック2回連続金メダル)選手の後の時代に活躍した人です。
怒り新党にとりあげられた記録よりも記憶に残る3大試合は、①1991年世界選手権=幻の4回転ジャンプ②1994年世界選手権=表彰台渋り+メダル外し③1998年長野オリンピック=禁止技のバックフリップと観客のオベーション、でした。
①については成功直後に競技中ながら氷上で飛び上がる無邪気さが現れたり、②については圧倒的なジャンプ技術を持ちながら2位にとどまった悔しさの表現、それらの経緯を踏まえての③で『審判員よりも観客にフィギュアスケートを楽しんでみてもらう』ことを自ら選択した演技をした人、という流れは確かに泣かせる上手い構成でした。
ただ不思議に思ったのは、スルヤボナリー選手がオリンピックのメダルには縁遠かったのは本当に黒人であるがゆえだからなのかという点です。
まずスルヤボナリー選手は欧州選手権を5連覇しています。世界選手権も3回連続で2位を獲得しています。欧州選手権は参加選手が欧州圏しかいないのでまだしも、世界選手権では人種差別はないがオリンピックでは人種差別が披露されるということがありうるのでしょうか。
そう考えるとオリンピックでは彼女の持つベストパフォーマンスが披露されなかったにとどまるように思えるのです。欧州選手権は5連覇していても文字とおり世界のトップに立つには紙1枚の差が残っていたのでしょう。
そもそもフィギュアスケートに黒人選手が圧倒的に少ない理由は、ベルリンの壁崩壊前の世界選手権のメダルは共産圏がほぼ独占していたこと(除アメリカ)でわかるとおり、選手育成に圧倒的な資金を要することがあげられます。圧倒的な資金投下を要する競技であるという宿命が、そもそも黒人をあまた輩出するには不利なのです。
それを考えると、ここ8年連続して女子フィギュア世界選手権の表彰台に日本人が上がっていることは脅威ですね。
それから当時の採点は6・0システム=ワンバイワンでした。簡単に言うと、技術点で6・0満点、芸術点で6・0満点を等配分されており、相対的に表現力に乏しいと技術が圧倒的でも負けることが珍しくないのです。
6・0システムについては伊藤みどり選手が3回転アクセルを世界の女子で唯一飛べて圧倒的なジャンプを誇っていながら、オリンピックでは金メダルに手が届かなかった理由として紹介されていました。
今でも名残はありますが、フィギュアスケーターはアスリートなのか、アクトレス(アクター)なのかという立ち位置が前記採点システムにも反映されているのです。採点システムが変わってから技術の比重があがりましたけども。
スルヤボナリー選手の演技についていうと、技術点は圧倒的ながらほかの世界トップレベルの選手に比べて粗く、表現力が見劣りすることは否めません。
「私はこんなに凄いのに、私はこんなに練習しているのに」「自分がトップに立たせてもらえないのは黒人だからだ。アンフェアだ」、怒り新党の構成では彼女の涙の中にかような心情を強く滲ませていましたが、フィギュアスケートという採点競技の特性に照らすとといえます、まして当時は。
ちなみに、ここ最近の女子フィギュアでアジア勢が強いのは、もともとの技術力に加えて、芸術性に強いロシアコーチにその部分を特に強化してもらっているからだと思います(ご承知のとおりロシアは200年を誇るバレエ団が2つもあるお国柄ですから)。
最後に白人中心スポーツでの黒人差別についての光明を、1つ紹介して話をとりまとめることにします。
フィギュアスケート同様、技術点に加えて芸術点が占める競技にスルヤボナリーが若い頃やっていた体操がありますけれども、アメリカのギャビーダグラスという黒人女子選手が昨年のロンドンオリンピックで初の女子個人総合金メダルを獲得したのです。
体操の世界には先に人種差別が無くなったことが証明されました。
また、2006・2010年のオリンピックでは、スピードスケートでアメリカのシャ-ニーデイビスという黒人男子選手が1000mで2回連続金メダルを獲得しました。彼も母子家庭で経済的に苦しい中、スピードスケートで偉業を達成したのです。お金のかかるスケート競技でも黒人のポテンシャルが着実に爪痕として残されています。
フィギュアスケートの世界でも必ず来るはずです、彼女の表彰台での悔し涙が正真正銘、過去のエピソードになる日が。
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