企業内弁護士の展望と課題 | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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 JILA (日本組織内弁護士協会)の梅田康宏事務総長(司法修習53期、NHK勤務経験あり)が、自由と正義2013年3月号に寄稿していたが、これまでの日弁連執行部発信の情報に比べると、アーカイブとして掲載する価値ある情報がいくつも載っていたのでとりあげました。

 日本で2001年9月に64名だった企業内弁護士は、2012年6月には771まで12倍に膨れたとのこと。とはいえ日本の上場企業数は2013年3月時点で2300社あります。それに比べるとまだまだ全然ですね。
 増加ペースを単純に適用すると、2015年には1500人・2020年には5000人に達する計算だそうで、梅田氏も決して荒唐無稽な数字とまではいえないと言ってますが、ネズミ算みたく、弁護士の居場所って日本で増えますかね
 
 採用企業の傾向として2001年のときは外資系企業(メリルリンチ・ゴールドマンサックス・モルガンスタンレーなど)が企業内弁護士の多くを採用していたのに対し、今では上位20社のうち外資系企業は3社しかないとか。
 私はリーマンショックよりむしろ、外資系がアジアの中でも日本市場より香港・シンガポールなど税率の低い国を選択したゆえではと勘ぐってます。

 次に、梅田氏は【企業が弁護士を採用するのは、企業にとってその人材が必要だからであり、雇用することに経済合理性があるから。幾ら法曹人口が増えて採用が容易になっても、必要がないものに1円たりとも出さないのが企業である】という企業のニーズを打ち出して、新人弁護士の就職難対策に企業内弁護士を持ち出す発想を牽制しています。

 今の日弁連のやり方は「市場に商品がだぶついているので買って下さい」というセールスのようなもので、企業が就職先のない弁護士を押し付けられるのではと疑心暗鬼を抱くのは当然であり、むしろ「性能の良い人気商品です。買って下さい」とセールスできるようにしなきゃという梅田氏の意見にはまさに同感。
 
 加えて、梅田氏は「企業内弁護士のニーズはあるはずだ」という漠然とした議論の立て方でなく、どの企業にどのような経験や能力を有する弁護士がそのときどきのタイミングで求められているか、個別具体的なニーズを探そうとしなきゃダメでしょ、いつ探すか今でしょ!と言ってます(一部、加工してますキャピ)。

 例として同じ保険業界でも生保では企業内弁護士の採用が加速しているが、損保ではそのように進んでいない違いをあげ、企業体質として集中型法務と分散型法務の差異などは大規模アンケートではなくヒアリングなどで地道に収集していく必要があり押し付けではない説得力のある採用推進につながると建設的意見を提言しています。

 驚いたのが、梅田氏の
「これまであまり問題視されていな
いが、実は企業に就職した弁護士の一定数が毎年離職している。特
に新人弁護士の場合、入社から1~2年という早期で離職する例が
散見される。」というカミングアウト。離職した弁護士はどこに行ってるんでしょう?

 最後に取り上げたいのが専門職大学院であるLSのカリキュラムに対するⅠ+Ⅱの提案。
 でも、Ⅰを体系立ててやってくれる弁護士教員定着させるのは大変だと思うぞ、なぜならLSは薄給だから。Ⅱについても、サテライトシステムを採用しないと東大とか一部の首都圏大学しかできないよね。

Ⅰ、ビジネス交渉と契約書ドラフティングを一連の流れとして行う実習プログラム(エンタメだったり合弁会社設立だったり)
 企業が求めるのは法律知識よりむしろ、ビジネスを理解し、相手と交渉し、交渉結果を契約書にドラフトする能力だから。そのプロセスでプレゼンとディベートをも磨くことができるのだとか。
 
Ⅱ、現役の企業弁護士をGSとする授業や講演プログラム
  すでに10人くらい企業内弁護士がいる企業がLSと提携して毎週1人ずつ分担する。

 おまけに、梅田氏はその授業は企業ニーズに即して英語で行われるべきと提言している。なるほど、LSを司法試験とは直結しない法務技術を有料で身につけさせる塾と捉えてもらえる環境が整うのなら、LSの生き延びる道にもつながるかもしれない。

 ただ肝心の学生が積極的に受講できるようにするためには、司法試験合格率の改善も不可欠と梅田氏は言ってますが、Ⅰ+Ⅱの導入司法試験と直結させず、むしろLS自体を司法試験と切り離しても存在意義のある機関に変えるべきという提言をした方がベターなように思いました。がLSを礼賛している方々にどこまで届くかは心もとない。
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